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おまけ3
「私思うのよ、レダ様とロギルダ殿下には当て馬が足りないって!」
「はぁ?」
高らかにそう叫ぶ妹を横目に、胡乱な目で「また始まったよ…」と溜息をつく弟に同意するように俺もげんなりした。
妹は現在“レダ様とロギルダ殿下を見守る会”とか言う訳の分からん会に所属している。
この会は恐ろしい程の会員数と規模を誇り、今や他国にまで会員が居る程だ。
つい先日もお披露目はしないと宣言され怒り狂った見守る会の奴らが暴動を起こし、城に乗り込んだのは記憶に新しい。
望み通り成婚パレードでお披露目も果たされ、皆して幸せそうで良かった良かった言ってたってのに、なんでその幸せをぶち壊そうとするんだ。
全く理解できん。
「おい、おかしなことを口にするな。あの二人に当て馬なんぞ必要ない。むしろ波風が立たない方が平和でいいだろうが。」
「いいえ!恋愛とは山あり谷あり修羅場ありの愛憎劇があるから燃え上がるの!刺激の無い恋愛など恋愛ではないわ!それはただの倦怠期よ!」
「馬鹿か。あの二人はもう成婚されてるんだよ。刺激なんて必要ねぇ。見守る会って言ってんだから大人しく見守っとけよ。」
俺の忠告など何のその。
妹は鼻息荒く当て馬候補を挙げ始めた。
「そういえばエリーザ公爵令嬢は幼い頃からロギルダ殿下にご執心だと有名だわ!最近はどうなのかしら?」
「…エリーザ公爵令嬢はつい最近ロギルダ殿下の執務室に不法侵入して牢に入れられた上無期限で登城禁止令まで出されてただろ。」
「そうだったわ。ではレダ様の方は…」
「レダの方はそういう素振りが少しでも見えた時点でロギルダ殿下がその芽を根こそぎ摘んでるから誰も居ないぞ。」
「…さすがロギルダ殿下。愛が重いわね。」
そのロギルダ殿下を怒らせるようなことを口にしている事にいい加減気付け。
むしろこれがロギルダ殿下の耳にでも入ったらうちも無事では済まないかもしれん。
妹はロギルダ殿下の本当の恐ろしさを知らない。
実はこの前、妹の熱望する当て馬ポジションの男が現れた。
そいつは隣国出身の騎士見習いで、入団式の時に挨拶をしたロギルダ殿下に一目惚れしたらしい。
それからと言うもの訓練中だろうが何だろうがロギルダ殿下の姿が見えるやいなやすっ飛んで行き、媚びッ媚びでガンガンアピールしていたのだ。
なまじ小柄で可愛らしいタイプの男だったので、可愛こぶっていても許される感はある。
しかし、相手はあのロギルダ殿下だ。
許される訳がない。
案の定ロギルダ殿下の機嫌は急降下。
その上変に気を使うレダが当て馬がロギルダ殿下の近くに居ると悲壮感溢れる顔で距離を取り始めたものだから、ついにロギルダ殿下がキレて手袋を付けた手で男の前髪を掴み上げた。
「誰だか知らないけど、随分と無礼な男だな。誰が近付いていいと言った?何故話し掛ける?私は貴様に何一つ許しなど与えていない。見ろ。貴様のせいで私の大切な伴侶が傷付いた。どうしてくれる?まさか、王族にこの様な無礼を働いて無事でいられるだなんて思っていないな?誰か、この男を地下牢へ。拷問を許可する。こいつは他国の間者の可能性がある。何が目的で私に近づいたか吐かせろ。」
ロギルダ殿下はそう言って地面に男を投げ捨てると、付けていた手袋をその場で燃やす。
近衛兵達が慌てて男を拘束している間、ロギルダ殿下は素早くレダの元へ駆け寄り、ふわりと包み込むように抱き締めた。
「レダ、ごめんね?レダにヤキモチを妬いて貰うのは嬉しいけど、そんな顔をさせたい訳じゃないんだ。ねぇ、私がレダ以外に心を傾ける様な不誠実な男に見えた?私がどれだけレダを愛してるか、もう忘れちゃったの?なら、今から部屋にこもって沢山愛して思い出させてあげる。」
「え、あの、わ、忘れてないです!今朝だって、あの、その…」
「あぁ、起きてすぐ沢山可愛がってあげた事かな?だって、レダってば寝顔も愛おしいんだもの。私に抱かれてから色気まで凄くて…。本当、誰にも見せたくない位だよ。」
レダとロギルダ殿下がイッチャイッチャしまくっている間に、男は近衛達に地下牢へと連行されていく。
そしてレダも真っ赤な顔でロギルダ殿下に腰を抱かれ、離宮へと連れて行かれてしまった。
ちなみに今の時間はまだ訓練すら始まっていない、朝ミーティングの最中である。
ロギルダ殿下、ついさっきまでレダを抱いてたって言ってたのに、またすんのかよ…。
俺がそんな事を思い出していると、ふと妹が何かを閃いた様に俺の顔を見つめた。
「そういえば、兄さんって学生時代からレダ様と仲良かったわよね?まさかこんな身近に最有力当て馬候補が居たとは…!」
「やっやめろ!」
妹のキラキラした眼差しとは裏腹に、俺は真っ青な顔で立ち上がって椅子を後ろに倒す。
そう、俺とレダは幼馴染と言えるほど仲が良かった。
それに、レダは昔からかなりの美貌を持つ美少年だったのだ。
惚れない訳がない。
しかし、その想いは幾らも立たずまだ少年だったロギルダ殿下に勘付かれ速攻で圧し折られたのだ。
「いいかい?私が君をこうして生かしておくのは、君に何かあればレダに嫌われてしまうからだよ。もしレダにちょっかいを出そうものなら君だけでなく、家族も無事では済まないと思いなさい。あぁ、君の父上は確か文官として城に上がっていたね?そうだな…隣国近くの辺境への赴任なんてどうだろう?あそこは自然豊かで住んでいる人もおおらかな気の良いもの達ばかりだよ。それにいつも人員不足だから、喜んで迎えられるさ。」
冗談じゃない。
隣国近くの辺境だなんて、魔物がウジャウジャ湧いてる今国で一番危険だと言われている地じゃないか!
人員不足なのは時には文官ですら戦いに駆り出され魔物の被害を受けるから、補充してもすぐ欠員するからで…
俺だけならまだしも、家族があの地で無事でいられる訳がない!
俺は必死に首を振り、二度とレダに邪な想いを寄せないとロギルダ殿下に誓ったのだ。
あれ以来レダとは必要以上の接触を絶ち決して友人の枠を出ないよう努めてきたというのに、よりによって実の妹にそれを台無しにされそうになるとは…!
「いいか!お前、絶対外で変な事話すなよ!俺だけじゃない、俺達家族全員の命が掛かってるんだからな!?」
「何~兄さんたら大袈裟ねぇ。いいじゃない、ちょっとした恋のスパイス役になるくらい。可愛い妹の為に頑張ってよ。」
「クッ…こいつ全然事の重大性に気付いてない…!!!」
当て馬なんぞになろうもんなら恋のスパイスどころか家族全員命の危機だと言うのに!
俺は隣に居る弟に慰められながら、今度はこの妹をどうやって大人しくさせられるか頭を悩ますのだった。
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