13 / 31
近づく距離 執事お嬢様に興味を持つ
episode12 屋根裏部屋の少女
しおりを挟むお風呂に浸かりながら
日々のあった事を振り返るのが
少女の習慣だ。
執事がくる前は特に振り返っても
ため息しか出ない毎日だったが
最近は楽しいらしい。
本日は3日前の事を思い出している様子。
帰りが遅い不良執事。
彼の為に作った夜食を
いつものように彼の部屋に運び
ドア横のサイドテーブルに置こうとすると
ーーガチャ
ドアが開いて顔を出した彼に驚いた。
(いないと思ってたのに‥)
基本、屋敷から出ない日々。
人と関わる機会は少なかった。
加えて‥
"男の子とどう接していいか分からない"
というのもあって
彼が屋敷を空けがちなのは
彼女にとって助かっていた部分もあった。
(本当はお話したいけど‥
何話していいのか分からないし)
彼と関わりがなくても
"屋敷にいてくれるだけで心が温かい"
そんな気持ちでいたのにーー
急に鉢合わせても話題がない‥
困って逃げようとしたら
夜食は私が作ってたのか。
ラテアートできるのか。
とか彼は色々質問してくれた。
15分くらい話していたと思う。
ーー敬語使わなくていい。
使っても意味ないと思うし。
え、あっはい。
まぁ‥どっちでもいいけどーー
そんな事も話した‥
(とっても楽しい時間だったな。)
少し長風呂してしまった彼女。
そのまま眠りについたが‥
コホッコホッ
朝起きると見事に喉をやられてしまった。
なんとかベットから
起き上がろうとするが
体が鉛のように重い。
(いつもよりも色々動いてたけど‥)
体が弱い自分が嫌になる。
「はぁ‥」
でも‥そんな事も考える余裕もなくて
意識が遠のいていくのを感じた。
暫くして
心配してくれたのかメイドの
マリさんが部屋にやってきた。
「お嬢様起きてらっしゃいますか?
どうされました!?酷い熱です!」
(あぁ‥だから体が重たかったのか)
「せ、せんたくを‥」
「洗濯ですね。任せてください。
後でお粥も持ってきますから。」
彼女は母が死ぬ前から
この屋敷で働いてくれている。
何かあれば世話を焼いてくれる
ので助かっていた。
(とりあえず‥ゆっくりしよ)
再び眠りについた。
ーーあれ?
視点が変わってこちらは帰宅した執事。
朝に出した洗濯はいつも綺麗に片付けられているのに
(今日はそのままになってる‥)
理由は分からないが
とりあえず洗濯は部屋に戻し
メイドを訪ねた。
(確か‥マリっていうメイド‥)
「今日洗濯がされてなかったけど‥
なにかあったんですか?」
と問いかける。
「‥‥え?
お嬢様の洗濯はしたんですけど」
ー何のことか分かっていない様子。
何か変わったことがあったのか聞く。
「お嬢様が熱を出されて」
と話すメイド。
「いつも洗濯もあいつ自分でしてるんすか?」
「そうです。奥様の目があって。
こちらとしては何人分でも変わらないのに‥」
(こいつが知らないってなると、
俺の洗濯をしてたのはあいつ‥?)
「あいつの部屋は?」
「3階の階段を登って左の突き当たりの
階段を‥待って下さい!」
メイドの静止も聞かずに3階に向かうが
左手突き当たりには階段しかない。
階段を登ってみると小さな部屋‥
「‥景吾さん?」
屋根裏‥と呼ぶべき部屋には
小さなベットと絵の具が置かれたのみ。
寝心地の悪そうなベットには
苦しそうに横になるあいつがいてーー
(こいつ‥俺に部屋を譲って
自分は屋根裏に‥)
なんとなく理解して
言葉が出なかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる