不死鳥と救世使～異世界冒険記～

プロローグ

薄れゆく意識の中、泣き叫ぶ少女の姿が目に写る。必死にこちらへ手を伸ばしているが、鉄の格子に阻まれ届かない。俺は石牢の中で、手足を鎖に繋がれているようだ。

ああ、またこの夢か。
幾度となく同じ夢を見る。不思議と起きれば全てを忘れてしまっているのに、夢の中で記憶が蓄積されていく。

燃えるような深紅の瞳をした少女。涙で濡らすその瞳を拭ってやりたいのに、ただ見つめ返すことしかできない。必死に何かを叫んでいるのに、微かな意識の中ではっきりと聞こえない。

夢だとわかって見ている夢。知らない少女、俺の記憶にはない出来事のはずなのに、ひどく胸が締め付けられる。

誰かの声にならない想いが俺に流れ込んでくる。

『俺が弱いせいで、君を辛い目に合わせてしまった。俺のことは忘れて欲しい。きっと君には酷だろうから。どんな姿になっても、また会いに行くから。それまで約束はお預けになるけど、きっと守るよ』

誰かの想いと俺の感情が重なる。

『強くなる。強くなって今度こそ君を護り抜いてみせる。それまで待ってて……』

変わらず泣いている少女を見つめながら、俺は意識を手放した。


深い深い、魂の奥に刻まれた約束。
果たされる日が来るのはきっともうすぐ。