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7 やはり旅に出る
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そう、この世界に「落ちる」直前に読んでいた本。学校の図書室にあった正体不明のあの本だ。そこに書いてあった架空の(と思っていた)世界が、まさにこの世界なのだ、
何故今まで気が付かなかったのかというと、まあ、落ちてきたショックが大きかったのが一番の理由だけど、私の読んだところまでには「女神」は出て来なかったからだ。
「なるほど、分かりました」
フレアが言う。
「ユウカさんの読んだ部分は、殆ど『神話の時代』ですね。神話と言っても作り話ではなく、現在でもその痕跡が残っている実話とされています。ただ、神々がこの世界を見捨てたのか、その後は、女神様しか降臨なさっていないのです。それが『女神の時代』と言われるもので、今もその時代ですね」
そう、魔王は完全に死ぬことはなく、時が経てば何らかの理由で復活する。そして復活した魔王は、四天王、十六将といった部下を復活させる。過去、神々は英雄とともに魔王を何度も倒した。というのが本の内容だった。ちなみに下位の魔物は、魔王がいなくても普通に発生するが、魔王が復活すると活性化して、特に増えて凶暴になると言われている。
「結局、ユーカは女神じゃないってこと?」
「何とも言えませんね。わたくしは、『女神の剣』は女神様にしか扱えないと聞いていたのですが」
イルダの問いに、フレアが答える。いやいやいや、私は女神じゃない。…と思う。
「その剣は誰にでも使えると思うわよ。すごく軽いし」
「本当か?…いや、無理無理!」
私の言葉に、床に落ちていた剣を拾おうとしたアルスが首を振る。
「すごく重いぞ。俺にはとても持ち上げられない」
「何?じゃあ、あたしが…、なんだこりゃ」
イルダも首を振る。やはり持ち上げられないようだ。
「おい、ユーカ。持ってみろよ」
アルスに言われて、首をかしげながら剣に手を伸ばす。もしかしたら、いつの間にか重くなっているのかと思ったけど、あっさりと持てた。重いどころか本当に重さを殆ど感じない。
「…ユーカ、ちょっとこれ持ってみ」
「…お、重ーい!」
右手に女神の剣を持ったまま、左手でイルダの剣を受け取ると、あまりの重さに落としそうになり、剣先がガツンと床に当たる。10kg以上あるんじゃないの?こんなのを良く振り回せるものだ。
「…あたしにはその女神の剣の方がずっと重く感じる。それこそ持ち上げられないほどにだ」
やっとの思いで剣を返すと、イルダはその10kgはありそうな重さを感じさせないように、くるくると廻して背負っている鞘に戻す。
「もう一つ気になることがあります。さっき、あのヴァンパイアは、わたくしたちに『さっさと死んでもらって、魔王様の復活のための贄になってもらうとしよう』と言っていました」
「そういえば…」
「ということは、まだ魔王は復活していないことになります。しかし、魔王よりも先に、部下が復活するという話は聞いたことがありません」
フレアの話に、私は本の内容を思い出す。下級の魔物は、一部の土地の魔力や魔石を取り込んだりして、自然に発生する。しかし、魔王の直属の部下とされる魔族は、元々魔物に魔王が魔力を与えることで生まれたもの。元々いるヴァンパイアに魔王が魔力を与えて生み出されたのがヴルドで、普通のヴァンパイアよりも強い力を持っている。魔王が復活するよりも早く復活するはずはないのだ。
うーん。
「ひょっとして、今のユーカの状態にも関係する?」
「かもしれませんね…」
「どういうこと?」
イルダの問いにフレアが答えるが、私には意味が分からない。
「魔王が復活して、それを倒すために女神が降臨する、というのが通常の流れですからね。魔王が復活するまではユウカさんが女神として覚醒しないのかと」
…それも何か無理がある考えのような。
「まあ、良いんじゃね?」
アルスが言う。
「すぐに魔王の脅威がないらしいのは安心だ。でも、魔物が活性化してるのは事実だし、魔王の復活もありえなくはない。ユーカの他に女神っぽい人もいないようだし、差し当たり最初の予定通り、魔物の討伐の旅に出るってことで良いんじゃないかと思う」
「そうだな、女神に仕えるんじゃなくて、女神っぽい人と旅をするってのがちょっと引っかかるけど」
アルスにイルダ、言いたいこと言ってるけど、その「ぽい」禁止~。しかも、そんな行き当たりばったりな。もう少し待っていれば本当の女神が戻ってくるかも知れないし。
「それは良いですね!わたくしも女神様との旅にあこがれていたのです!」
フレアまで何言ってくれてるの。
「真面目な話、魔物が活性化しているのは事実ですし、商人の行き来が減って困っている方も多いかと。魔物退治は、すばらしいことだと思います。それに、中央の聖都まで行けば、女神様の情報もあると思いますよ?文献も多いですし」
「聖都まで行けば、前に女神が降臨した時に実際に会った人もいるかもしれないなぁ」
「あたしもそれが良いと思うな。ここにいても何の情報も得られないだろ?それに、もし他に本物の女神がいたとしたら、追いかけて来てくれると思うぜ。その女神の剣を持ち出してるんだからな」
何だかんだ言われて、他に良い方法があるわけでもない。魔物討伐はともかく、情報を得るために、旅をするしかないようだ。
やれやれ。
何故今まで気が付かなかったのかというと、まあ、落ちてきたショックが大きかったのが一番の理由だけど、私の読んだところまでには「女神」は出て来なかったからだ。
「なるほど、分かりました」
フレアが言う。
「ユウカさんの読んだ部分は、殆ど『神話の時代』ですね。神話と言っても作り話ではなく、現在でもその痕跡が残っている実話とされています。ただ、神々がこの世界を見捨てたのか、その後は、女神様しか降臨なさっていないのです。それが『女神の時代』と言われるもので、今もその時代ですね」
そう、魔王は完全に死ぬことはなく、時が経てば何らかの理由で復活する。そして復活した魔王は、四天王、十六将といった部下を復活させる。過去、神々は英雄とともに魔王を何度も倒した。というのが本の内容だった。ちなみに下位の魔物は、魔王がいなくても普通に発生するが、魔王が復活すると活性化して、特に増えて凶暴になると言われている。
「結局、ユーカは女神じゃないってこと?」
「何とも言えませんね。わたくしは、『女神の剣』は女神様にしか扱えないと聞いていたのですが」
イルダの問いに、フレアが答える。いやいやいや、私は女神じゃない。…と思う。
「その剣は誰にでも使えると思うわよ。すごく軽いし」
「本当か?…いや、無理無理!」
私の言葉に、床に落ちていた剣を拾おうとしたアルスが首を振る。
「すごく重いぞ。俺にはとても持ち上げられない」
「何?じゃあ、あたしが…、なんだこりゃ」
イルダも首を振る。やはり持ち上げられないようだ。
「おい、ユーカ。持ってみろよ」
アルスに言われて、首をかしげながら剣に手を伸ばす。もしかしたら、いつの間にか重くなっているのかと思ったけど、あっさりと持てた。重いどころか本当に重さを殆ど感じない。
「…ユーカ、ちょっとこれ持ってみ」
「…お、重ーい!」
右手に女神の剣を持ったまま、左手でイルダの剣を受け取ると、あまりの重さに落としそうになり、剣先がガツンと床に当たる。10kg以上あるんじゃないの?こんなのを良く振り回せるものだ。
「…あたしにはその女神の剣の方がずっと重く感じる。それこそ持ち上げられないほどにだ」
やっとの思いで剣を返すと、イルダはその10kgはありそうな重さを感じさせないように、くるくると廻して背負っている鞘に戻す。
「もう一つ気になることがあります。さっき、あのヴァンパイアは、わたくしたちに『さっさと死んでもらって、魔王様の復活のための贄になってもらうとしよう』と言っていました」
「そういえば…」
「ということは、まだ魔王は復活していないことになります。しかし、魔王よりも先に、部下が復活するという話は聞いたことがありません」
フレアの話に、私は本の内容を思い出す。下級の魔物は、一部の土地の魔力や魔石を取り込んだりして、自然に発生する。しかし、魔王の直属の部下とされる魔族は、元々魔物に魔王が魔力を与えることで生まれたもの。元々いるヴァンパイアに魔王が魔力を与えて生み出されたのがヴルドで、普通のヴァンパイアよりも強い力を持っている。魔王が復活するよりも早く復活するはずはないのだ。
うーん。
「ひょっとして、今のユーカの状態にも関係する?」
「かもしれませんね…」
「どういうこと?」
イルダの問いにフレアが答えるが、私には意味が分からない。
「魔王が復活して、それを倒すために女神が降臨する、というのが通常の流れですからね。魔王が復活するまではユウカさんが女神として覚醒しないのかと」
…それも何か無理がある考えのような。
「まあ、良いんじゃね?」
アルスが言う。
「すぐに魔王の脅威がないらしいのは安心だ。でも、魔物が活性化してるのは事実だし、魔王の復活もありえなくはない。ユーカの他に女神っぽい人もいないようだし、差し当たり最初の予定通り、魔物の討伐の旅に出るってことで良いんじゃないかと思う」
「そうだな、女神に仕えるんじゃなくて、女神っぽい人と旅をするってのがちょっと引っかかるけど」
アルスにイルダ、言いたいこと言ってるけど、その「ぽい」禁止~。しかも、そんな行き当たりばったりな。もう少し待っていれば本当の女神が戻ってくるかも知れないし。
「それは良いですね!わたくしも女神様との旅にあこがれていたのです!」
フレアまで何言ってくれてるの。
「真面目な話、魔物が活性化しているのは事実ですし、商人の行き来が減って困っている方も多いかと。魔物退治は、すばらしいことだと思います。それに、中央の聖都まで行けば、女神様の情報もあると思いますよ?文献も多いですし」
「聖都まで行けば、前に女神が降臨した時に実際に会った人もいるかもしれないなぁ」
「あたしもそれが良いと思うな。ここにいても何の情報も得られないだろ?それに、もし他に本物の女神がいたとしたら、追いかけて来てくれると思うぜ。その女神の剣を持ち出してるんだからな」
何だかんだ言われて、他に良い方法があるわけでもない。魔物討伐はともかく、情報を得るために、旅をするしかないようだ。
やれやれ。
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