私は女神ではない。…と思う。

山口 慶佳

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13 辺境都市オクトー

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 森を抜けて、しばらく草原が続くと、やがて大きな城壁のようなものが見えてきた。かなり高い壁に囲まれた町のようだ。

 「…ふぇぇ」

 今までの町とは大違いだ。道も、今までの町は中心を通っていて、いかにも道の周りに町を作りました、という感じだったけど、オクトーでは町の壁の外を本道が通っていて、そこから門に向かって細い枝道が伸びているようだ。おそらく出入り口がそこしかないのだろう。

 「こっち側は草原だけど反対側は深い森で、昔は魔物がたくさん出たらしいぜ。そもそもここが辺境を開拓する最初の拠点ということで、魔物との大きな戦闘もあったらしい。今はそれほど強い魔物は出ない、ただの深い森らしいけど、名前は『魔の森』のままだな」

 アルスが言う。近づいてみると、門から馬車や人がかなりの行列になっているのが分かった。町に入る手続きに、かなり時間が掛かるようだ。

 「それにしては、大分警備が厳重みたいだけど…」
 「それは魔物が出るからじゃなくて、辺境伯がいるからだろ?要するに、魔物じゃなくて犯罪者のような人間を警戒しているわけだ」

 なるほど。

 町に入るときに、商人は一人当たりいくらかの税金を納めなければならないけど、冒険者登録をしていると不要。これは、昔魔物がたくさん出た時代の名残だとか。冒険者を優遇することで、魔物退治の助けにしたと。

 身分証明書のカードを見せると、割とあっさりと町に入れた。このカードは魔法で本人と繋がっているとか何とかで、偽造もごまかしも出来ないと、アルヒコ村でもらう時に聞いたけど、魔道具か何かできちんと確認しているのかしら。

 「これからどうする?」
 「軽く食事でもして、早めに宿を探すか」

 イルダの問いにアルスがため息を吐きつつ答える。そう、私たちのパーティーは、男1人に女3人というアンバランスな構成なので、今までも部屋を取るのに苦労してきたのだ。

 「ここは大きな町なので、あまり心配しなくても大丈夫ではないでしょうか」

 フレアは言うけど、まあ早めに宿を決めるにこしたことはない。大きな町で色々情報も仕入れたいし。

 「うーん、ギルドに寄って宿の情報を聞いてもいいけど、特に売却するものもないし、ワイバーンを倒したなんて知られると、何か面倒くさいことになるような気がするなあ」
 「一応、冒険者はギルドに居場所を報告することになってるだろ、そりゃあ、絶対の義務じゃないかもしれないけど」
 「適当な店で食事をしてから考えるのはどうでしょう?」

 アルスとイルダにフレアが言う。何となく町の中央に向かって歩いているけど、結構時間も経つし、確かにちょっとお腹が空いたかも。と、考えながら前を見たら、何か兵隊さんっぽい集団がこっちに向かって歩いてくる。町の入り口で受付をやっていた人達と同じ服装だ。
 何かあったのかなー、と思っていたら、兵隊の中でちょっと年上の偉そうな人が、声を掛けてきた。

 「あー、失礼。アルス殿とそのパーティーの方々とお見受けするが」
 「…そうだが?」

 アルスが答えると、その兵隊は言う。

 「我々は、警備隊のものだが、ベアード辺境伯が会いたいとの仰せだ。一緒に来てもらいたい」

 えー。

 「アルス、何をやったのよ」
 「まさかお前…」

 私とイルダが突っ込む。

 「…違うだろ。あー、もう知られちゃったかあ」
 「出来るだけ早く来て欲しいのだが…」
 「分かったよ…えっとこいつらと一緒で良いよな」
 「出来たらパーティーの方々も、と」

 「ユウカさん絡みではないようですね」
 「あたしは貴族とか王族とか嫌いなんだけど」
 「…あー、もう!行くぞ、みんな」

 雰囲気からいうと、女神っぽい人とか、強い魔物を倒してきたとか、そちらに興味があって呼びつけた、という感じではない。もしそうなら、「アルス殿とそのパーティー」などという言い方はしなかっただろうし、何より、アルス自身が呼ばれることを分かっていたような口ぶりだ。
 街の中を兵隊さんに連れられてぞろぞろ歩いている状態なので、何か町の人に注目されて視線が痛い。犯罪者か何かと思われているのではないだろうか。

 「申し訳ない。来られることがもう少し前に分かっていれば、町の入り口に馬車でも用意できたのだが、知らせを受けたときには、もう町に入られた後だったので」
 「それより、何の用だか教えてくれても良いんじゃないか?まあ、特に用事が在ったわけでもないし、アルスが行くって言ってるから別に構わないんだけどよ、早めに宿を探そうって話してたところなんだけど」
 「我々も理由は伺っていないのだが、ヘプタのギルドマスターから連絡を受けて、会いたいという話だった」
 「ヘプタ?ああ、前の町か。っていうとウルフンさんか…。やはりモンスターを倒した件か?」
 「…」

 イルダが兵隊と話して、疑問を口にするが、誰も答えない。アルスが知ってそうなんだけど。

 ちょっと開けた公園のようなところに出ると、まず目に付いたのは大きな噴水。そして、その向こうの大きな建物。城といって良いのかどうか、大きな屋敷だが要塞のようだ。大きな門の横には、門番と思しき兵隊が2人立っている。

 「アルス殿と仲間の方々をお連れした」
 「了解した。ではこちらに」

 門番が開けた門の横の通用口から、兵隊たちに続いて中へ入る。屋敷の扉の前で兵隊たちを残し、隊長さんだけが先導する。やがてやたら大きな扉の前で止まり、ノックする。

 「失礼します。アルス殿とお仲間をお連れしました」

 隊長さんに促されて部屋の中に入る。隊長さん自身は部屋の中には入ってこないようだ。
 まず、部屋に入って気が付いたのは、奥の机に座っている大柄で髭もじゃの中年の男性。恐らくは辺境伯なのだろうけど、とてもそういう人には見えない。冒険者とか木こりとかのイメージだ。その横に立っているのは、護衛だろうか。さっきの兵隊さんたちよりは、見るからに上等な鎧を着て、腰には剣を挿している。騎士といったところか。何だか、すごい厳しい目で睨みつけてくるけど。

 「久しぶりだな、アルス」

 辺境伯の言葉に、イルダ、フレアと私はいっせいにアルスの方を見る。アルスは、溜息を吐いた。

 「久しぶり、エルリクおじさん」
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