幼なじみの恋を応援していたらいつの間にかに二股をかけていたんですけど!?

彩世ひより

文字の大きさ
8 / 46

本や作品というのは人生と同じなんです……価値観や考え方、趣味嗜好、周囲の人間は自分と違うのだと分からせてくれ(ry

しおりを挟む
 悠ちゃんが我が家の敷居をまたぐのはその実初めてであります……あ、口調が変になっていますね? 彼女の緊張が伝播してしまいましたか。
 結ちゃんが既に帰宅済みだったので、覇王様と当家で一番ラブリーな美少女との対面がなされました。

「月島結です。えと、こう見えましてもお姉ちゃんの妹です」

 世の中には似ている姉妹もいれば、てんで似ていない姉妹もいるかと存じますが「出来」という大きな点に目をつむれば、我が家の姉妹は瓜二つほどではないにせよ面影は似ていると思います。

 初っ端から悠ちゃんが「余は覇王だ」と宣ったのが空気のぎこちなさを生んでいる感ありますが……どちらもとても良い人格を持っているので何とかなるでしょう。

 私はどのみち肩にかけた荷物を冷蔵庫や台所に置くという作業がありますので――お互いに酸素が足りて無さそうな対面をしているから、その場を放って逃げるわけではないんですよ?

 出来うる限りの最高速で片付けを終えてリビングに戻りますと、結ちゃんと悠ちゃんが朗らかな表情を浮かべて談笑しているではありませんか。

 心の底から安堵しつつ、手前勝手な理由で放ってしまったことに謝意を示すと、

「良い。貴公の妹は良き娘だ」
「ふふ~。ありがたき幸せにござります~」

 受験勉強のさなか、ほんの少しの癒やし体験になったのなら姉としても本意。
 元々、両者ともに気に入らないことがあって暴力的になるタイプじゃないから、ボタンの掛け違いで殴り合いになるって可能性は考えてなかったですが……。

 歴史を踏まえてもこんなきっかけで!? みたいな事項は欠きませんし、どの選択をしても結局のところ詰みだったのも枚挙にいとまありません。

「では、部屋へと向かおう……身体を大事にな」
「はい」

 姉妹揃って返事をすると、悠ちゃんの口元が嬉しそうに緩んでいた――私は敬愛しているんだけども、そうじゃない人もいる……知り合い筆頭は初ちゃん。

 思いだして頂きたいんだけども、彼女のところに行くってだけで少々尻すぼみな態度をしていましたよね? なんとなく両者ウマが合わないと申しますか、険悪ではないのにギクシャクすると言いますか。

 階段を上って自室に招き入れますと、悠ちゃんは物珍しいモノを眺める視線を部屋に這わしてから

「本がたくさんあるな……」
「はい。時間潰しは常に読書なインドアさんなので」
「ふふ、良き良き……余もネットの濁流に埋もれていると、結局何も手に付かないということを繰り返してばかりだからな」

 綺麗にしているつもりですが、ほぼほぼ誰かが読まなくなったのを無償で頂いているので、手が汚れるかもと進言しました。

 悠ちゃんはそんなことは意に介さずとするように手に取り、

「字が細かい」
「分かります」

 中身をパラパラとめくりながら出た言葉には同意するしかなかったです。
 教科書の文字やテレビの字幕、インターネットの検索結果等々文字を目にする機会は数多いですが、誰々の何とか全集になるとそれなりのサイズの本に極小サイズの文字がびっしり並んでいます。 

 さらには作者○○作者○○作者○○全集と一人の作家では全集が賄えないともなれば、全集欲張りセットみたいな感じで一冊の本になったりも……。

「面白いのか?」
「みんなから聞かれますね……」

 本棚に本を戻してから問いかけられて、そこが一番気になるのですね、と考えた。
 初ちゃんからも結ちゃんからも、これで悠ちゃんからも尋ねられ、部屋に招いた人間すべてに同様の問いかけをされました――自室に入った人間があまりにも少ないではないかと言われると「はい……」と涙目で俯くほかありません。

 一般的なデータかは材料が少ないのでなんとも言えませんが、このような問いかけをされると必ず私はこう答えます。

「本を読むとたくさんの発見がありまして、自分ではない方の経験を追体験をするのを……好むと言いますか、面白いから読んでいるとは言いがたいです」
「追体験?」
「はい。私は明治や大正……はたまた昭和や江戸の生まれではないので、その時代の事って誰かから教えて貰うしかないんですけど。明治時代の文豪の書いた作品は、当然明治の価値観や文化が中心となって出来ているので……ええと、現代にそぐわないものもあるんですが、違いを知るのが好きなんです」

 月島柊には月島柊の価値観があって、結ちゃんには結ちゃんの、悠ちゃんには悠ちゃんの送ってきた人生から委ねられる価値観があります。
 私とそぐう部分があれば、はたまた反り合わないところもありますし、じゃあ二人で妥協できるところはしましょうって部分も。

 本はその人が送ってきた人生でこう感じた、ああ感じたというのが基本的に描かれています……親しみの深い部分でないので分かりかねぬこともありますが、異世界や宇宙とかも……俗に「私の宇宙ではこうなっている」とか言われたりもしますよね。

「袖振り合うも多生の縁と言いますから、覇王様相手に趣味を語るとなれば……すごく大事にしなければ……あれ!? ぬいぐるみの方が興味ありましたか!?」
「話が長い」
「申し訳ありません!?」

 そうでした――そもそもこれはおうちデートの練習だったのです……自分一人が悦に入って長々と会話しているようではいけません。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

処理中です...