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昔話(西田)
昔話③
それから、俺は何度も何度も、用もないのにあのスーパーに足繁く通った。けれど、結局みずきくんと会えることはなかった。もし会えていたとしても、声をかけられていたかというと自信はない。俺は自分の思っていた以上に勉強が苦手で、塾に通う経済的余裕もなかったため、独学で一生懸命に頑張っても、せいぜい平均点止まりだったのだ。そんな体たらくじゃ、みずきくんに合わせる顔などあろうはずもなかった。
彼と会えない寂しさを埋めてくれたのは、日曜日の朝の番組でたまたま見つけた、みずきくん似の女の子、ふろ~らるプイキュアのキュアラベンダーちゃんだ。紫がかった暗めのショートヘアに大きなつり目、ストレートな物言いで周りとぶつかることもあるけれど、仲間想いで努力家で頑張り屋さんなところがみずきくんにそっくりだった。俺は毎週日曜日は欠かさず早起きしてプイキュアを視聴し、誕生日に買ってもらったキュアラベンダーちゃんのフィギュアを眺めてはみずきくんに思いを馳せる日々を送っていた。
再び彼と再会したのは、忘れもしない、高校の入学式でのことだ。勉強を頑張っても公立の志望校には手の届かなかった俺を見て、同じ偏差値でも私立なら入れる進学校があると母が薦めてくれた高校だった。こっそり貯めていたヘソクリと満期になった定期預金諸々があるから学費は心配ないと聞いていたが、実はかつて父親だったあの人やハルに頭を下げて出して貰っていたお金だったと知ったのは入学後しばらく経ってからのことだ。母に屈辱的な思いをさせて、苦労をかけてまで入学したことが正しかったのか、しばらくは自問自答の日々だったけれど、結果的に母のお陰でまた俺は、たかせみずきくんと再会することができた。
新入生代表として颯爽と登壇した高瀬瑞葵くんは、驚くほど小学三年生当時から何も変わっていなかった。華奢な骨格も、幼く凛とした顔立ちも、ハキハキとした物言いも、ピンと伸びた背筋も、全身から溢れる高潔なオーラも、何もかもがあの頃のまま。新入生代表に選ばれるぐらいだから、勉強もずっと頑張ってきたのだろう。眩しくて眩しくて眩しくて、それに引き換え俺は、なんて思ったら、俺があのときのカナだってことは墓まで持っていくことが確定してしまった。せっかく瑞葵くんに褒めてもらった髪も、女みたいってクラスでいじめられることに耐えかねてバッサリと切ってしまった。俺は弱い。そのせいでリセットしてニューゲームにはなってしまったけれど、高瀬瑞葵くんがずっと高瀬瑞葵くんのままでいてくれたことが俺は嬉しくて、またドキドキして、あの日恋に落ちたのは間違いじゃなかったんだって、改めてそう思えた。
あれから、うんと月日は経ち。
「おい西田、なに見てんだよ、置いてくぞ」
「あっ、すみません、高瀬様……今年のプイキュアの映画、アニバーサリーなので過去作のキャラも勢揃いするみたいで、観に行きたいなぁと思って……」
「出た、ロリコンアニメオタク」
「…………」
敢えて否定する必要もないので言ったことはないけれど、俺は別に幼女好きでもアニメ好きでもない、ただ高瀬瑞葵が好きなだけのオタクである。高瀬様は俺がどうしてプイキュアを好きなのか、その中でもキュアラベンダーちゃん推しだってことも含めて、何も知らない。俺と子どもの頃に一度出会っていることも、昔俺のボブカットを似合ってると褒めてくれたことも、友だちがいなくて学校に行くのが憂鬱だった俺に登校する理由と勇気をくれたことも、何も知らない。俺がどうしてこんなにも高瀬様を好きなのかってことも。
いつか自分に自信が持てたら言える日が来るのかな。
今はあなたにも言えない秘密があること、どうか許してください。
「……なんだよ、にやにやして」
「なんでもないですよ」
俺の今日が晴れてるのは太陽あなたと会ったからなんです。
おしまい
彼と会えない寂しさを埋めてくれたのは、日曜日の朝の番組でたまたま見つけた、みずきくん似の女の子、ふろ~らるプイキュアのキュアラベンダーちゃんだ。紫がかった暗めのショートヘアに大きなつり目、ストレートな物言いで周りとぶつかることもあるけれど、仲間想いで努力家で頑張り屋さんなところがみずきくんにそっくりだった。俺は毎週日曜日は欠かさず早起きしてプイキュアを視聴し、誕生日に買ってもらったキュアラベンダーちゃんのフィギュアを眺めてはみずきくんに思いを馳せる日々を送っていた。
再び彼と再会したのは、忘れもしない、高校の入学式でのことだ。勉強を頑張っても公立の志望校には手の届かなかった俺を見て、同じ偏差値でも私立なら入れる進学校があると母が薦めてくれた高校だった。こっそり貯めていたヘソクリと満期になった定期預金諸々があるから学費は心配ないと聞いていたが、実はかつて父親だったあの人やハルに頭を下げて出して貰っていたお金だったと知ったのは入学後しばらく経ってからのことだ。母に屈辱的な思いをさせて、苦労をかけてまで入学したことが正しかったのか、しばらくは自問自答の日々だったけれど、結果的に母のお陰でまた俺は、たかせみずきくんと再会することができた。
新入生代表として颯爽と登壇した高瀬瑞葵くんは、驚くほど小学三年生当時から何も変わっていなかった。華奢な骨格も、幼く凛とした顔立ちも、ハキハキとした物言いも、ピンと伸びた背筋も、全身から溢れる高潔なオーラも、何もかもがあの頃のまま。新入生代表に選ばれるぐらいだから、勉強もずっと頑張ってきたのだろう。眩しくて眩しくて眩しくて、それに引き換え俺は、なんて思ったら、俺があのときのカナだってことは墓まで持っていくことが確定してしまった。せっかく瑞葵くんに褒めてもらった髪も、女みたいってクラスでいじめられることに耐えかねてバッサリと切ってしまった。俺は弱い。そのせいでリセットしてニューゲームにはなってしまったけれど、高瀬瑞葵くんがずっと高瀬瑞葵くんのままでいてくれたことが俺は嬉しくて、またドキドキして、あの日恋に落ちたのは間違いじゃなかったんだって、改めてそう思えた。
あれから、うんと月日は経ち。
「おい西田、なに見てんだよ、置いてくぞ」
「あっ、すみません、高瀬様……今年のプイキュアの映画、アニバーサリーなので過去作のキャラも勢揃いするみたいで、観に行きたいなぁと思って……」
「出た、ロリコンアニメオタク」
「…………」
敢えて否定する必要もないので言ったことはないけれど、俺は別に幼女好きでもアニメ好きでもない、ただ高瀬瑞葵が好きなだけのオタクである。高瀬様は俺がどうしてプイキュアを好きなのか、その中でもキュアラベンダーちゃん推しだってことも含めて、何も知らない。俺と子どもの頃に一度出会っていることも、昔俺のボブカットを似合ってると褒めてくれたことも、友だちがいなくて学校に行くのが憂鬱だった俺に登校する理由と勇気をくれたことも、何も知らない。俺がどうしてこんなにも高瀬様を好きなのかってことも。
いつか自分に自信が持てたら言える日が来るのかな。
今はあなたにも言えない秘密があること、どうか許してください。
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俺の今日が晴れてるのは太陽あなたと会ったからなんです。
おしまい
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