勇者ライフ!

わかばひいらぎ

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日常編(単発)

非行大作戦

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 ある日、それもクライブがいない日に事件が起こったようである。
 今日は本来ならいつもの三人で食事に行くはずだったのだが、クライブにインタビューの急用が入ったためマルセルとフーリの二人で行くことになった。さすが名門の血統付きは大変そうだ。
「ねぇマルセル。提案があるんだ」
「なに?」
「実はさ、明日クライブを驚かせようと思って」
「春だからね」
「うん。季節はあんま関係ないけどな」
「でもどうやって?角から『わっ!』て出るとか?」
「いや、あいつ反射神経いいからそんなことすると切られるぞ」
 そう言いながらフーリは懐を探った。そして、テーブルの上に『ある物』を置いた。
「さぁマルセル、共に青年になろう」
「わぁ!空飛ぶの夢だったの」
「その夢は叶えてあげられないけど、クライブは絶対びっくりするぞ」
「ついに僕も非行少年デビューか~。これでテレビに出れるかな?」
「ニュースに取り上げられないレベルでやろうな」
 こうして彼らの計画は、翌日決行されるのであった。

~翌日~

 クライブは昨日フーリ達から連絡を受け勇者団本部のメインタワー裏に呼ばれていた。
「あいつら、タワー裏とかこんな陰気なところに何の用なんだか」
 自発的に文句が漏れる。送られた地図によればこの辺にいるはずなのだが……。
「あ、いた」
 そこには、黒い特攻服に無駄に長い鉢巻をまいて蹲踞そんきょをしているフーリとマルセルの姿があった。
「えっと……何かあった?」
「てめぇがクライブかよく来たのぉ」
「何を見ているのですかゴルァ!」
「お前らヤンキーの真似下手すぎだろ」
「お前、ビックリしたか?」
「そりゃ友人が社会不適合者に成り下がってたらビックリするだろ」
「んだとゴラァ!社会不適合者だとぶっ殺すぞ!」
「おーおー怖い怖い」
「怖い怖いだとぶっ殺すぞ!」
「はいはい」
「はいはいだとぶっ殺すぞ!」
「それしかパターン無いのかよ」
「おいマルセル!お前もなんか言ったらどうなんだコラ!」
「仲間にまでコラっていうのか」
「うるせぇ!こちとら猫と戯れてんだ話しかけると内臓燃やし尽くすぞ!」
「こっちの方が何倍も怖いな」
「くそ……負けた」
 こうして、フーリの謎の計画は謎の空気で終わった。ちなみにこの格好で帰ったら二回連続で職質された。
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