勇者ライフ!

わかばひいらぎ

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日常編(単発)

リアンの初恋大作戦【後編】

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~あれから三日後~

 日曜日の夕方。あのテニスコート前でフーリはリアンと向かい合っていた。
「ようリアン。準備は出来てるか?」
「ちょっとまだ恥ずかしいけど、フーリや他の勇者さんも動いてくれてるみたいだし、頑張ってみるよ」
「そうそう、あくまでも話しかけるのはお前なんだからな。じゃあ行ってらっしゃい」
「……え?」
「ん?どうした?」
「いや、作戦は教えてくれないの?」
「うん。でも安心しろ。兎に角お前はテニスコートに入ってればいいんだ」
「なんか一気に不安になってきたよ」
 フーリは不安そうなリアンを強引に女性のいるテニスコートに向かわせる。そして自分は近くの垣根に隠れた。
「よし、まずは五分くらい時間を置いてリアンをあの空間になじませるぞ。そしたらリーダー、分かってるな」
「勿論だ!吊り橋効果作戦だよな」
 説明しよう!吊り橋効果作戦とはなんなのか。それは……

~in作戦会議~
「じゃあまずは人間の心理を利用しよう」
「心理って?」
「吊り橋効果だよ吊り橋」
「ああ、同じ恐怖を体験するといい感じになるっていうあの?」
「そうそう、同じ気持ちを共有することで話しかけやすくなるだろ?とりあえず俺がホームレスに扮して二人をきゃあきゃあ言わせるわ」

 ……という事だ。つまり、これからリーダーがリアン達が怖がることをするということである。
「じゃあマルセル、変装魔法を頼む。なるべく怖いやつな」
「おっけー!」
 という声だけ遠くから聞こえてきた。
「よし、準備完了!それじゃあ行ってくるな」
「頑張れリーダー」
 しばらく待っていると、テニスコート付近にホームレスみたいな人がウロウロしだした。
「もしかして、あれがリーダー?」
 完璧な変装をしたリーダーなのか、それともほんとにただのホームレスなのか見当がつかない。そして、そのホームレスはラケットもボールも持たずにテニスコートの中に入った。女性もリアンも横目でチラチラと気にしている様子だ。そして、ホームレスはテニスをする訳でもなく、懐をゴソゴソと漁り、錆び付いたナタを取り出した。そして大声でこう怒鳴る。
「お主ら全員、ワシと共に死ね!」
「怖。あんな事されたらトラウマになるわ」
 ホームレスはナタを振り上げた格好のままリアン達目掛けて走る。
「きゃぁぁ!」
「わぁなんだあれ!?とにかく逃げましょう!」
「はい!」
「自然に会話できてるね」
「自然か?それに嫌だろこんな事されたら」
 ナタを持ったホームレスに追いかけられる二人は一目散に出口に向かう。しかし……
「きゃあ!冷た!?何これ凍ってる」
 そのドアはキンキンに凍らされていた。勿論凍らせているのは……
「はぁ、なんで俺がこんなことしなきゃいけないんだろ。ほんとにカール様に申し訳ない……」
 クライブだ。彼もなんだかんだでこの作戦に一役買ってくれた。
 現在、リアンと女性は開かない扉を背にしてナタを持った狂気的な老人に追い詰められている。もはや彼らが何をしたいのか分からなくなってきた。
 しばらくジリジリと迫っていただけのホームレスだが、急に二人に飛びかかりながらナタを女性目掛けて振り下ろした。
「あ!あぶたい!」
「わぁ、あいつ噛んでる。博多弁かよ」
 博多の人になりながらもリアンは女性を突き飛ばすようにして守った。ちなみにこの世界に博多など存在しない。切るべき対象であった女性が避けたことでホームレスのナタは凍らされていたドアに衝撃を与える。古びた網型の扉は冷えていたこともありボロボロになって崩れた。
「あ、壊れてる!逃げましょう」
「はい……でも脚が……」
 女性は脚がすくんでしまっているらしい。
「それじゃあ……僕の肩に捕まってください!この人も……なんか動けないみたいですし」
 ホームレス(リーダー)は近頃のラーメン不足が災いして機能停止している。そして、リアンは女性をおんぶする形でテニスコートから逃げ出した。
「うんうん。あのリアンが僕達のおかげであんな自然に話しかけられてるしおんぶまでしてやがるぞ」
「よかったね~。変装魔法とかこれ無かったら一生使わなかったよ」
「あれから連絡先交換して食事に行って……想像が広がるな。あ、マルセル。リアン達今何やってるか投影魔法で見える?」
「うん、見えるよ。えっとね……あ!二人でスマホ出してる」
「これは連絡先交換キタコレだろ!」
 勿論だがリアン達は連絡先交換ではなく勇者団に通報していた。そして二人が連絡先交換することも無かった。だが、勇者一行は恋のキューピットになったと勝手に舞い上がりながら帰ったのであった。
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