勇者ライフ!

わかばひいらぎ

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現れし弟編

その8 逆襲からの〜?

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「そんな……本当に蘇った……」

「フーリさんとマルセルさんは?一緒じゃないんですか?」

「あいつらは映画見に帰っちまったよ」

「残念だなぁ。一緒に行きたかった」

「あいつは俺が倒す!アウルは早く逃げ……うっ!」

「どうしたんですか!?」

「急に……気分が……ってか腹が痛たたた!」

「これもあいつの仕業かも知れません」

「俺は……カール様の……って痛たたたた!」

「クライブさん無理しないでください」

「でも、このままじゃ校舎はめちゃくちゃに……。勇者団も間に合わないだろう。だから、俺がやらないと……ってだから痛たたたた!」

 クライブは痛みで震える体を無理矢理立たせようとするが、直ぐに体勢を崩してしまう。

「クソっ!勇者なのに、なんで魔物一匹倒せないんだ痛たたたた!」

 悔しさ(と痛み)からクライブは思わず叫ぶ。すると、その声を聞きつけ校舎側から誰かが駆け付けてきた。マルセラとルイスだ。

「クライブさん!?どうしたんですか!」

「マルセラちゃん?それにルイスくん。無事だったのか?」

「はい。……え!?なんでまたあいつが動いてるの?」

「どうやらあいつは核ってのを壊さないと死なないらしい。でも、俺はどうやら動けないみたいだ。だから、二人とも逃げるんだ。アウル、頼めるか?」

「もちろん!二人とも、ここを早く離れましょう!そこにいるのは先生……かな?」

 外に出てからはルイスが服を引っ張ってハンスを運んでいた。

「遠くに避難です!もうそろそろ勇者団も到着するようなので……」

「その必要はないですよ。私とルイスくんで倒しますから、あの魔物。ね?ルイスくん?」

「そ、そうです!その、絶対!多分!頑張る!」

「自信なさげね……」

 ルイスはアウルにハンスを預けた。

「え!?ほんとに……?やめといた方がいいと思うけどなぁ……」

「じゃあ行くよ!来い、ベルゼブブ!さぁルイスくん乗って!」

「うん!」

 二人はベルゼブブに飛び乗り、魔物目がけて飛び出した。

「えっと……僕何すればいいんだろ」

「ト、トイレ……トイレに連れて行ってくれ……」

「トイレ無いんでそこの花壇でしてください」


 ベルゼブブの背の上で二人は話していた。

「まだ完全にくっついてないから中にある核が狙えるね」

「うん。一瞬見えたオレンジ色のやつでしょ?」

「みたいね。突っ込んでいくけど、今はベルゼブブ召喚中だから他の悪魔で守ってあげられないわよ」

 ベルゼブブは少し勢いを増して突っ込んでいく。腕は絡むように迫ってくるが、グルグルとアトラクションのように避けていく。そして、魔物の下部に残っている割れ目から内部に侵入する。真上に光り輝く核が見えた。

「垂直に上昇するから落ちないように掴まって!」

「掴まるって……どこに?」

「どこって、私の肩とか腰とかあるじゃない」

「え!そんなセクハラできないよ!」

「この際ちょっとくらいいいわよ!」

 ルイスは顔を赤くしてマルセラの肩に控えめに手を置いた。その間にもグングンと核が近づいてくる。

「今よルイスくん!切って!」

「うん!」

 左手はマルセラの肩を掴んだままで、右手で刀身を出し、ベルゼブブの飛ぶ勢いを利用し核を真っ二つに切り裂いた。

「やったね!切れたよ!」

「よし、じゃあ逃げるわよ!」

 当然核を失った魔物は崩れ始める。魔物は大きければ大きいほど魔素化が遅いので早くここから出なくては下敷きになってしまうだろう。大急ぎで割れ目から外に出ると、予想通り魔物は崩れ落ちていた。しかし、力を失った八本の大きい腕もうねりながら落下してくる。そのうちの一本がこちら目掛けて降ってきたのだ。

「わぁ!う、腕が!」

「ルイスくん!危ない!……来い、イブリース!」

 マルセラは腕からルイスを守るために戦いに長けた悪魔イブリースを召喚した。勿論ベルゼブブは消えてしまい二人は空中で引き離される。イブリースが腕を切った後、マルセラは再びベルゼブブをルイスの元に召喚し自らは落下していった。

「そんな……僕を守るために……。僕なら、腕を切れたはずなのに。僕が臆病だから、マルセラさんは……」

 ルイスは手に握っている柄をじっと見る。涙で目が潤んできたが、ぼやけた柄を見てあることを思い出した。

「柄頭の穴……そうだ!この中の風魔法石を使えば、少しの間なら浮遊できるはず」

 ルイスは、勇気を振り絞りベルゼブブの上から飛び降りた。風魔法石に意識を集中さる。この石さえあれば一般人でも簡単に魔法を使うことができるのだ。風魔法は攻撃と言うよりも空を飛ぶのに使われるため、この魔法を使い体勢を立て直しながらマルセラの元に飛んで行った。

「マルセラさあああん!」

「ルイスくん!?」

 ルイスはマルセラを抱きしめるようにして合流した。合流を果たした後も風魔法を駆使し何とか着陸したのであった。

「よかった……。なんとか助かった」

「ありがとうルイスくん。だから……その、そろそろ離してくれる?」

 ルイスはまだマルセラを抱きっぱなしだった。

「わぁ!ごめん!」

 急いで首に回していた腕を外した。

「まぁ、少しくらい、ならね?」

 マルセラは顔を赤らめて目線を逸らしてきた。お互いの間に変な空気が流れた。

「おーい二人とも!大丈夫~?」

「あっ!アウルさん……でしたっけ?」

「うん。いや~二人が突然でかいハエに乗った時はビックリしたよ~」

「あはは……そうですよね」

「ほら、勇者団の人達来てるから一緒に行こ。あの魔物と接触したなら来てくれって言ってるよ」

 こうして、ルイスの転校初日はなかなかに悲惨な終わり方をした。ちなみにクライブの腹痛はフーリに奢ってもらった四川風上海坦々麺広東風のせいだった。

~一方その頃~

in映画館

「あの~、『世紀末西部ぐへへ物語』を観たいんですけど~」

「いつ聞いてもとち狂ったタイトルだなこの映画」

「大人一人と子供一人で」

「……?すみませんが、お客様。年齢を確認できる物はありますか?」

 すごくマルセルに疑いの目が向けられている。

「え?でもこいつどう見ても子供ですよね?白髪っすけど」

「白髪じゃないよ!」

「白髪みたいなもんだろ」

「フーリ!言う事聞かないと服焼くよ!」

「わぁぁぁ!ほんとに焼くなよ!あぁでも服の裾が焼けてカッコイイデザインに……」

「お客様。年齢詐欺はいけませんよ」

 店員さんの手にはぎらりと光る包丁が握られている。多分年齢詐欺撃退マニュアルに書いてあるんだろう。

「あ、すみません~あはは~……逃げるぞ!」

「わぁ!フーリいきなり担がないでよ!」

 こうして、学校で死闘が繰り広げられている時、この二人のクソ勇者は詐欺をしようとしていた。
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