勇者ライフ！

日常編(単発)

案内【前編】

　ある日、ルイスは従姉妹のレヴェルが経営する武器屋の前にいる。兄のフーリに会いにこの町を案内してもらう約束なのだ。
「ここの二階にフー兄さんが住んでるのか……。いやいや、まずはレヴェ姉さんに挨拶しないと……」
　久しぶりに従姉妹と会うことに少し緊張している様子だ。勇気をだして店に入る。
「失礼しま～す」
「いらっしゃいませ～。……ん、あなた……もしかしてルイス！？」
「久しぶり、レヴェ姉さん」
「やだ～大きくなったわね。相変わらず綺麗な金髪ね。フーリから聞いたけどトゥイル高行ってるんだって？凄いね～もう友達はできた？」
「うん！隣の人がたまたまフー兄さんのお友達の妹さんで」
「へぇ～女の子なんだ。……可愛いの？」
「えっ！？……うん、とっても」
「やだ～育ちがいい～」
　相変わらずレヴェルはおばさんみたいな喜び方をする。
「で、その子の名前は？」
「マルセラさんだよ」
「……マルセラ？」
「うん。どうしたの怖い顔して」
「じゃあその人のお兄ちゃんは？」
「え、確か……マルセルさん、じゃなかったっけな」
「ふ～ん……」
　レヴェルはニタリと微笑した。そして、ついにその場から動かなくなる。
「レ、レヴェ姉さん……？おーい！姉さーん！」
　ルイスが頬を軽く叩いても揺すっても半開きになった口の中に口内炎ができているのを見つけても返事はない。ついに動かなくなった従姉妹を諦めフーリを待つために店のソファーに座る。しかし、座りながら先程の出来事を思い返しも疑問に思うところがあることに気付く。
(なんでレヴェ姉さんマルセラさんの「兄」って分かったんだろ)
　結局、たまたまだということにして自己解決した。

　待つこと五分。レヴェルは相変わらず動いていない。そんな中トイレの水が流れるメカニズムの動画を見て待っていると突然階段から何かがすごい音を立てて転がってきた。
「何！？」
　その何かは階段下に蹲うずくまるように止まり、壁に寄りかかりながら立ち上がった。
「いてて……」
「フー兄さん！どうしたの？大丈夫？」
「おおルイス！この前ぶりだな」
「世間話してる場合じゃないでしょ！おでこから血出てるよ！？」
「平気平気！出かける時いつもこうだから」
「いつもこんなことしてんの！？」
「唾つけとけば治る理論だよ」
「結構出てるよ？滝というより理科室の水道くらい出てるよ？」
「このくらい勇者にはよくあることだろ。四肢だって無くなるんだぜ？この仕事」
「そうだけどさ……。フー兄さんって体がめっちゃ丈夫じゃん？高校生の時ナイフで刺されても平気だったとか」
「おまっ……誰から聞いたんだよその話」
「ヒナタさんから」
「なんて言うかな……まぁ気分だよ気分。心持ちによって防御力なんて変わるもんなんだ。……にしてもあいつ、ベラベラと話しやがって。今度会ったらパエリアのおこげの部分全部取ってやる」
「地味だね～やることが陰湿！」
　やや衝撃的な集合ではあったが、フーリは何事も無かったかのように外に出て手招きをする。果たして大怪我を負ったフーリはどのような町ブラをするのか。