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日常編(単発)
福引
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ある日、マルセルとクライブがコンビニで買い物をしていた。
「百点で960FDになります」
「めっちゃ買うじゃんマルセル」
「アイスは色んな味を味合わないとね」
「半分以上ストロベリー味じゃねぇかよ」
「だってマルセラが好きなんだもん」
「え~お客様」
「あっ、温めないです」
「アイス温っためるやつどこにいるんだよ」
「ただいま店の外で福引大会をしておりまして、これがその券でございます」
店員の手には束になった夥しい数の黄色い券が握られている。
「量やばいね」
「なんせ百個物買ってるからな。ってかどうすんだよこのアイス。いくらこの季節でも溶けちまうぞ」
「クーラーボックス持ってきたからクライブの氷結魔法で冷やしといて」
「人を保冷剤扱いしやがって」
二人は店を出て福引会場に向かった。
店外には黄色いテントが設置されており、中にはガラガラ抽選機と黄色い法被を着たスタッフがいる。しかし、そのスタッフには見覚えがあった。
「あっ!アウルだ!」
「ほんとだ」
アウルだった。
「マルセルさんにクライブさんじゃないですか。釣りの帰りですか?」
「違ぇよ。確かにクーラーボックス持ってるけどさ」
「なんだぁ。これから魚屋さんに寄るんだと思ってました」
「なんで釣れなかった前提なんだよ」
「あれ、その手に持ってるの福引券ですか?」
「うん!さっき貰ったんだ」
「じゃあそれで福引できますよ」
アウルはマルセルの持つ福引券に手を伸ばす。しかし、マルセルは券を渡そうとしない。
「あれ、やらないんですか?」
「やらない」
マルセルは無愛想に、吐き出すように言った。想像するとすっげー可愛い。
「は?やらないかよ!」
「使わないとその券ただの紙ですよ!」
「だって、一等がテレビでしょ?」
「はい。画質も良くて、常に番組を録画し続ける優れものですよ」
「それ僕の家になん十台もあるの」
「なん十台……」
「他の賞品も買おうと思えば買い占められるから、ここで当てても意味ないんだよね。だから、僕にとってこの券の方が珍しいんだ」
「こいついく所までいってんな」
「重症ですね」
これが金持ちの性ってやつらしい。
「マルセル、その券半分でいいから俺にくれないか?」
もったいない症候群のクライブはそう問いかけた。
「じゃあ全部あげる!」
「えぇ!?珍しいんじゃなかったのかよ」
「だって使わなかったらただの紙じゃん」
なんだこいつ。
「過去の自分とクソ矛盾してるって気づいてねぇだろお前」
とりあえず券を受け取ったクライブは福引を引くことにした。
「うわっ、百枚くらいあるじゃないですか。もうめんどくさいんで中の玉全部出しちゃいましょうか?」
「それだとガラガラ抽選機の楽しみが味わえないだろ!」
頬を赤らめて興奮した様子でクライブは言う。こいつの方が意外と子供心満載なのだ。
そして、数十回か回すと青い玉が出てきた。
「おっ!当たりか!」
「おめでとうございまーす!126等です!」
「どんだけ等あるんだよ」
「ちなみに125から4等まではめんどくさいんで端折ってます」
「で、賞品は?」
「輸血用に保存してあった血です」
「要らねぇよ!どこに置いとけばいいんだよ!」
「もう保存期間過ぎててどす黒くなってるので玄関にでもぶら下げといてください」
「どういう廃棄の仕方してんだよ」
この後もクライブは抽選機を回し続けた。しかし、白い玉しか出てこない。
「全然当たりが出ないな」
「白い玉が出すぎて枯山水みたいになってますね。ちなみにこの玉全部チョコなんで食べていいですよ」
「こんなに食べらんねぇよ……。マルセル食べる?」
「食べるー!炙って溶かすからクライブ固めて」
「人を冷凍庫扱いしやがって」
炎魔法によって溶かされた玉は一つの塊になり、クライブの氷結魔法で凍らされた。
「わーいチョコだ!クライブ大好き!」
「現金なヤツだな」
「あの~クライブさん。まだ続きやりますか?」
「なんかめんどくさくなってきちゃった」
「じゃあ中身全部出しますね」
アウルは抽選機を横にして側面を外した。ガラガラ抽選機の風情もクソもないね。
しかし、中は白い玉しか無く、色つき玉は他に見あたらない。
「おいアウル。まさか不正か?」
「やめてください!不正なんてしてません!殺さないで!」
「いくらなんでも殺さねぇよ。俺は勇者でヤクザじゃねぇんだから」
「うぅ……。どうやら熱でチョコのコーティングが溶けてしまったようです」
「なんで白は溶けないんだ?」
「そういう薬物が混合してあるので」
「だから白いのかよ。マルセル、それ食べない方がいいぞ」
「大丈夫!僕も薬物常習犯だから!」
「ふーん。通報していい?」
こうして、福引の玉を提供していた業者は逮捕された。
ちなみに、マルセルの言う薬物とはコ〇アシガレットのことらしい。
「百点で960FDになります」
「めっちゃ買うじゃんマルセル」
「アイスは色んな味を味合わないとね」
「半分以上ストロベリー味じゃねぇかよ」
「だってマルセラが好きなんだもん」
「え~お客様」
「あっ、温めないです」
「アイス温っためるやつどこにいるんだよ」
「ただいま店の外で福引大会をしておりまして、これがその券でございます」
店員の手には束になった夥しい数の黄色い券が握られている。
「量やばいね」
「なんせ百個物買ってるからな。ってかどうすんだよこのアイス。いくらこの季節でも溶けちまうぞ」
「クーラーボックス持ってきたからクライブの氷結魔法で冷やしといて」
「人を保冷剤扱いしやがって」
二人は店を出て福引会場に向かった。
店外には黄色いテントが設置されており、中にはガラガラ抽選機と黄色い法被を着たスタッフがいる。しかし、そのスタッフには見覚えがあった。
「あっ!アウルだ!」
「ほんとだ」
アウルだった。
「マルセルさんにクライブさんじゃないですか。釣りの帰りですか?」
「違ぇよ。確かにクーラーボックス持ってるけどさ」
「なんだぁ。これから魚屋さんに寄るんだと思ってました」
「なんで釣れなかった前提なんだよ」
「あれ、その手に持ってるの福引券ですか?」
「うん!さっき貰ったんだ」
「じゃあそれで福引できますよ」
アウルはマルセルの持つ福引券に手を伸ばす。しかし、マルセルは券を渡そうとしない。
「あれ、やらないんですか?」
「やらない」
マルセルは無愛想に、吐き出すように言った。想像するとすっげー可愛い。
「は?やらないかよ!」
「使わないとその券ただの紙ですよ!」
「だって、一等がテレビでしょ?」
「はい。画質も良くて、常に番組を録画し続ける優れものですよ」
「それ僕の家になん十台もあるの」
「なん十台……」
「他の賞品も買おうと思えば買い占められるから、ここで当てても意味ないんだよね。だから、僕にとってこの券の方が珍しいんだ」
「こいついく所までいってんな」
「重症ですね」
これが金持ちの性ってやつらしい。
「マルセル、その券半分でいいから俺にくれないか?」
もったいない症候群のクライブはそう問いかけた。
「じゃあ全部あげる!」
「えぇ!?珍しいんじゃなかったのかよ」
「だって使わなかったらただの紙じゃん」
なんだこいつ。
「過去の自分とクソ矛盾してるって気づいてねぇだろお前」
とりあえず券を受け取ったクライブは福引を引くことにした。
「うわっ、百枚くらいあるじゃないですか。もうめんどくさいんで中の玉全部出しちゃいましょうか?」
「それだとガラガラ抽選機の楽しみが味わえないだろ!」
頬を赤らめて興奮した様子でクライブは言う。こいつの方が意外と子供心満載なのだ。
そして、数十回か回すと青い玉が出てきた。
「おっ!当たりか!」
「おめでとうございまーす!126等です!」
「どんだけ等あるんだよ」
「ちなみに125から4等まではめんどくさいんで端折ってます」
「で、賞品は?」
「輸血用に保存してあった血です」
「要らねぇよ!どこに置いとけばいいんだよ!」
「もう保存期間過ぎててどす黒くなってるので玄関にでもぶら下げといてください」
「どういう廃棄の仕方してんだよ」
この後もクライブは抽選機を回し続けた。しかし、白い玉しか出てこない。
「全然当たりが出ないな」
「白い玉が出すぎて枯山水みたいになってますね。ちなみにこの玉全部チョコなんで食べていいですよ」
「こんなに食べらんねぇよ……。マルセル食べる?」
「食べるー!炙って溶かすからクライブ固めて」
「人を冷凍庫扱いしやがって」
炎魔法によって溶かされた玉は一つの塊になり、クライブの氷結魔法で凍らされた。
「わーいチョコだ!クライブ大好き!」
「現金なヤツだな」
「あの~クライブさん。まだ続きやりますか?」
「なんかめんどくさくなってきちゃった」
「じゃあ中身全部出しますね」
アウルは抽選機を横にして側面を外した。ガラガラ抽選機の風情もクソもないね。
しかし、中は白い玉しか無く、色つき玉は他に見あたらない。
「おいアウル。まさか不正か?」
「やめてください!不正なんてしてません!殺さないで!」
「いくらなんでも殺さねぇよ。俺は勇者でヤクザじゃねぇんだから」
「うぅ……。どうやら熱でチョコのコーティングが溶けてしまったようです」
「なんで白は溶けないんだ?」
「そういう薬物が混合してあるので」
「だから白いのかよ。マルセル、それ食べない方がいいぞ」
「大丈夫!僕も薬物常習犯だから!」
「ふーん。通報していい?」
こうして、福引の玉を提供していた業者は逮捕された。
ちなみに、マルセルの言う薬物とはコ〇アシガレットのことらしい。
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