勇者ライフ!

わかばひいらぎ

文字の大きさ
117 / 133
日常編(単発)

おみくじ

しおりを挟む
 ある日、三人が歩いていると貼り紙を見つけた。
 フーリが言った。
「なんだこれ?『おみくじあるかも』だって」
「なんだよかもって。せめて確定させとけよ」
「時と場合によって無いからじゃない?」
「脚でも生えてんのか」
 変な張り紙だが、それが逆に気になったので三人は路地に入ることにした。路地の突き当りには机に乗せられた小さな箱が置かれていた。
「なんだこの汚ねぇ箱」
「なんか書いてあるよ。読みにくいけど」
「うーん……『燃  るゴ  』って!燃えるゴミの箱を再利用してんじゃねぇか!」
「環境に優しいね!」
「そこ?おみくじなんだからもっと得の高い箱にしろよ」
「とりあえず引いてみようぜ。金かかるのかな?」
「あっ、机の下に何かあるよ」
 マルセルの言う通り、そこにはゲーセンでよく見る両替機みたいな機械がある。
「なんでおみくじの箱よりも金入れる箱の方がハイテクなんだよ」
「おみくじは古き良きものだからね。雰囲気は大事だよ」
「この箱は古き良きと言うよりただボロボロなだけだろ」

 フーリは腕を組みながら言った。
「よーし。じゃあ早速引いてみようぜ」
「お金入れたら勝手に出てくるんだね」
「自販なんだな」
「じゃあクライブ。やれよ」
「は?なんで俺なんだよ。早速引いてみようぜってさっき言ってたじゃねぇかよ」
「誰がって言ってねぇじゃねぇかよ!」
「なんで怒ってんだよ」
 仕方なくクライブはお金を入れた。すると、燃えるゴミの箱からおみくじが出てきた。
『ウィーンウィーン ヴ、ヴ、ヴェェェゲロロロ』
「汚ねぇ出し方」
「何吉だ?秀吉ひできち?」
秀吉ひでよしじゃねぇのかよ。ってか止めろ、そういうこと言うと世界観が分かんなくなるから」
 クライブが紙をめくると、そこには大きな文字で『あぁ 君が望むなら吉』と書いてある。
「何この俺に委ねられた感じ。というより、望んでも吉止まりなんだな」
「それじゃ、次は僕が引くことにするか!」
 フーリは腕まくりをしてお金を入れた。すると、箱から音声が流れてくる。
『隊長!追っ手が来ます!このままじゃ全滅です!』
『そうか……ならば、王子だけでも逃がすのだ!彼は、我々最後の希望!あの惑星に落とすのだ!』
 そう言い終わると同時におみくじが出てきた。
「なんか出方が壮大だったね」
「無駄に長いだけだったけどね」
 フーリのおみくじは、至って普通だった。内容はこうだ。
『願望:叶うわけねぇじゃん。
待人:〈待〉と〈侍〉って似てね?
失物:大切なものってのは、失った後に気づくもんだ……。
学問:馬鹿なんだからもっと勉強しろ
争事:結局のところ暴力で解決するのが一番なんだよ!
病気:病の時は寝込む。鍋の時は煮込む
恋愛:あ、これだけは良いよ
結果:Aランク』
「なんだこれ。どこが『至って普通』なんだよ」
「ちっ、Aランクかよ」
「そこ悔しいポイントなんだ」
「Sランク以上になるとコンビニのコピー機でコピーし放題になるんだよ」
「そうなの!じゃあ僕引くー!」
 マルセルが元気いっぱいにお金を入れると、今度は無音で出てきた。そこには細かい字でびっしりと書かれている。
「えー読むのめんどくさい。フーリ読んで!」
「クライブ読んで!」
「なんでだよ!しょうがねぇな……。『凶がでると、逆に運が良いとなだめられる。だが、僕は決してそうは思わない。
 凶は、どんな理屈を捏ねても凶なのだ。
 だけど、今日凶を引いてしまって恐怖に怯える君も、そんなに恐怖することは無い。凶の効力は今日だけで強力じゃないし、それに協力する力もない。今日、強靭な精神を持って生きようではないか!という訳で今日の君の運勢は凶!』……って!『きょう』ばっかで読みにくいんだよ!」
「え~僕凶なの?」
「可哀想だなマルセル。僕のAランク半分分けてやろうか?」
「どう分けんだよ」
「ううん。僕は二人と一緒なだけで運だと思うから大丈夫だよ!」
「マルセルお前……」
「もう『きょう』はいいよ……」
 こうして、三人はおみくじ箱をボコボコにして帰った。ちなみに、このおみくじを作った人はのちに『動物園ゴリラ脱走手助け罪』という謎の罪で逮捕されたらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...