勇者ライフ!

わかばひいらぎ

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日常編(単発)

フルーツ屋さん

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 ある日、フーリとリアンが買い物をしていると、新しくできたフルーツ屋『肉屋ではない』を見つけた。
「『肉屋ではない』って、なんで果物屋なのにこんな名前なんだよ」
「確かに肉屋ではないけどね」
「とりあえず冷やかしてみようぜ」
「冷やかす前提なんだ」
 店内は緑を基調とした壁や装飾で、色とりどりのフルーツが置かれている。
「おぉ!結構すげぇじゃんここ」
「だね!見たことないのがいっぱい!綺麗だし臭い!」
 しかし、この店何かがおかしい。各フルーツの名前や値段を表示する札的なものが無い。きっと店主はクソ無頓着なやつなんだろう。
「にしてもこの店、フルーツの名前も値段も分かんないし、多分店主クソ無頓着な野郎だな」
「わざわざ地の文で言ったことを言わなくていいよ」
「え~いいじゃん言論の自由くらいあっても~」
「別にそこは否定してないよ」
 こんな感じでベラベラ喋っていると、奥から店員がぬっと現れた。
「ぬっ」
「ほんとに『ぬっ』って言いながら出てきたんだけど」
「あれ?ってかお前……アインじゃん!」
 そこには、エプロンをつけたアインがいた。
「アインって、フーリの後輩だよね。ここで働いてるの?」
「うっす!この店が余ってたみたいなんで、勝手に店開いてるっす!」
「許可ぐらい取れよ」
「あ、俺指名手配されてるんでできないっす」
「そんなドヤりながら言うことか?」
 色々と心配の募る店員だ。
「そうだね……あっ!この黄色いやつはなんて名前なの?」
 リアンが先程『臭い』と称したフルーツを指さした。
「うっす!そんなこと分かんないっす!」
「え~分かんないの!?」
「うっす!俺にそんな知識あるって思った方が悪いっす!」
「ねぇなんで僕が怒られてるの?」
 微妙にリアンは凹んでしまった。
「あっ!でもフーリさんの横にある赤いやつならなんて言うか分かるっすよ!」
「局部的にわかってもしょうがないんだよなぁ。で、なんて言うの?」
「レッドドラゴンエッグって言うっす!」
「へー、ドラゴンの卵みたいだから?」
「違うっす!そういう名前の手榴弾っす!」
「なんつーもん置いてんだよ」
「ちなみにちょっとでも衝撃が加わると爆発するっす!」
「こっわこの店」
 フーリはレッドドラゴンエッグから距離をとった。
 隣を見ると、リアンは真剣にフルーツを見ている。
「リアンなんか買うの?」
「うん。せっかくなら職場にお土産でもって」
「こんなとこのお土産でいいのかよ。隣の百均の方がまだマシだぞ」
「フーリはどれ買ったらいいと思う?」
「話聞けよ」
 確かにここには様々な果物があるが、店員がクソというか、心もとないので正直どれを選んでいいのか分からない。
「やっぱり色鮮やかな方がいいよね~」
「そう言えばリアン、この前仕事辞めたって言ってなかったっけ?」
「うん。お金貯まったからね。今はカフェで修行中だよ」
「なるほど。マスターへの媚び売りってことか」
「そ……そんな、決してそんなんじゃないよ!……あ、この青いやつとかテカってるしこれにしよっかな」
「お前の選ぶ基準がよく分かんねぇな。なぁアイン、この果物はどうなの?分かる?」
「名前はわかんないっすけど、多分毒があるっす」
「なんでそんなもん売ってんだよ」
「毒殺用っす!」
「どこに需要があるんだか」
 こうして、リアンは百均で単三電池を買って帰った。
 ちなみに、アインは商業法とか毒物取締法的なのに引っかかってまた罪を増やした。
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