勇者ライフ!

わかばひいらぎ

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日常編(単発)

闇の力

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 ある日、いつも通りイーデリッヒは屋台を引いて魔法焼き芋を売っていた。
「魔法やーきいも~……中はホクホク、たまにカチカチ、そんな恋、してみたくありませんか?」
 このプラスなのかマイナスなのかよく分からないことを拡散する。買って欲しいのか欲しくないのかどっちなんだろ。
「はぁ、売れねぇな」
 イーデリッヒは首を傾げながら炎魔法で暖を取る。
 というより、そもそもこの掛け声で売れるわけねぇじゃん。
 すると、向こうからスーツの男性が歩いてくる。イーデリッヒは知らないが、彼はリーダーの秘書、秘書さんだ。
「全く、仕事中に魔法焼き芋買ってこいとか、あいつリーダー向いてねぇだろ」
 秘書さんは何やらご傷心らしい。大変だね。
「あの、すみません。魔法焼き芋を二つ」
「分かりました……ん?この感じ、光か!?」
 イーデリッヒは時たま闇の敵対能力である光の力を感じるらしい。が、こいつは闇魔法使いでは無いので十中八九勘違いだ。
「あぁ……なんです?」
「そうなんだろ貴様!」
「すいません。もう一度伺っても」
「のんきな奴だな!俺は、闇の使いだ!」
 さっきも言ったけど、こいつは焼き芋を美味しく焼く程度の炎魔法しか使えないよ。
 しかし、秘書さんはこのタイミングで仕事用メールが来たので、この発言をほぼ聞いていなかった。
「やみ……?あ、もしかしてつき魔法焼き芋ですか?」
「え?いや、俺が言ってるのは闇の力……」
「ガーリックで味付けしてあるやつですよね。私あれ好きなんです。じゃあひとつはそれで」
「やみの……」
「あれ?もしかしてありませんでした?」
「あります」
 あるんかい。
 二本の焼き芋を入れた袋を抱えて、秘書さんは行ってしまった。
「う~ん、俺の勘違いかな。いや、そんなハズない!」
 そのハズだよ。
 続いて、向こうからチャラ男見たいな奴が走ってきた。イーデリッヒは知らないが、彼は勇者団のリーダーであるリーダーだ。何度も言うが、こいつは役職名と本名が両方リーダーだ。紛らわしいよね。
「あいつ一人だけ病みつき魔法焼き芋なんて許さねぇ!なぁ焼き芋屋!俺にも魔法焼き芋をくれ!」
 リーダーは大声で言った。すると、またイーデリッヒは何か感じたらしい。どうせ勘違いだけど。
「この感じ……お前、俺より格上の闇魔法使い!?」
「ん?だから、病みつき魔法焼き芋をひとつ」
「俺は屈しないぞ!お前らなんかには。俺は、俺の闇で世界を包み込む!」
「いいからさっさと病みつき魔法焼き芋をよこせよオラァ!」
「ひぃ!ごめんなさい!」
 こうして、未だに中二病をこじらせているイーデリッヒだが無事に魔法焼き芋を売ることが出来た。
 ちなみに、魔法焼き芋はイーデリッヒが商標権持っているので、作ろうとしている皆さんはお気をつけて。
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