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死と再生
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ホームルームが終わり、田中優は鞄を肩にかけて教室を出て、その先の階段踊り場で立ち止まる。ここが、彼女とのいつもの待ち合わせ場所だからだ。勿論、彼女とは言っても三人称としての意味だが。
「ごめーん!遅れた!」
廊下からひょっこり現れたのは白泉玲奈。田中と幼馴染である。
「何かあったの?」
「先生に手伝い頼まれちゃって」
二人は歩きながら和気藹々と話す。
ひょっとしたら僕らは恋人同士に見えているのではないか、なんて田中は考えたこともある。しかし、今はそうは思わない。僕らは幼馴染で、友達で、それ以上でもそれ以下でもない。彼女もきっと同じだろう。
「でね、お母さん酷いの!『優くんと遊ぶのもいいけど、少しは勉強しなさーい』だって!」
「別に酷くはないでしょ。むしろおばさん、真っ当な事言ってると思うよ」
「えー、優くんもお母さんの味方するの?」
田中曰く、白泉は少し抜けたところがあるらしい。特に勉強においてそれは顕著で、田中もテスト前しか勉強しないが、白泉はそれでもしない。むしろ遊びに誘ってくる始末だ。
ふと、田中は白泉を見る。特に理由はないが、目に収めたくなった。すると、白泉の鞄のチャックが空いていることに気づく。「やっぱり抜けてるな」と思い、閉めてやろうとすると、中に白泉には似合わないものが入っている。
「あれ?お前本なんて読むの?」
「あぁこれ?うん!私でも本くらい読むよ」
「へぇ、なんの本?」
田中が鞄から本を取り出す。
「『世界の幽霊』!?お前こんなのに興味あるのかよ」
「うん。たまたま見かけたから借りちゃった」
ペラペラとめくると、日本各地の幽霊から世界の幽霊、又はその名前、撃退方法などが書いてある。
「ふーん。こんな奇天烈な本もあるんだな」
「幽霊って面白いよね。なんで昼は見えなくて夜に出てくるんだろ」
「そりゃ、夜の方が怖いからじゃない?」
「優くんはそっち派か。他にも色々考え方があってね、例えば幽霊は基本的に服が白いから夜の方が見栄えがいいとか、幽霊は肌が白いから紫外線に弱いとか」
「なんだよそれ」
そう反応して信号を渡る。白泉は横断歩道の白線だけを踏む遊びをしているようだ。彼女は自然と大股になり、田中より前に出る。
すると、左の方から異様な音が聞こえてきた。聞いたことも無い程荒ぶるエンジン音。目をそちらにやると、見慣れた白い車がフラフラしながら猛スピードでこちらに向かってきている。白泉にぶつかるのも時間の問題だ。
「玲ちゃん!危ない!」
田中は咄嗟に彼女の背中を強く押した。
『おい!状況は?』
『男子高校生が一人、犠牲に……』
『少年は?』
『あちらの救急車に。しかし、あの怪我ではもう……』
『親の運転する車に轢かれて、吹っ飛ばされた先でトラックに踏み潰された、か』
『そのせいで右腕と右脚は完全に分断されてます』
『若いのに、なんてことだ……。ん?おい、あそこの女の子は?』
『あぁ、被害者の友達みたいで、事故現場に居合わせていたらしいです。これから事情聴取をする予定です』
『そうか……。あんまり根掘り葉掘り聞くなよ。彼女も心身疲労してるはずだ』
『わっかりましたー。……あ、どうかしました?』
『い、遺体が!遺体がありません!なくなりました!』
「ごめーん!遅れた!」
廊下からひょっこり現れたのは白泉玲奈。田中と幼馴染である。
「何かあったの?」
「先生に手伝い頼まれちゃって」
二人は歩きながら和気藹々と話す。
ひょっとしたら僕らは恋人同士に見えているのではないか、なんて田中は考えたこともある。しかし、今はそうは思わない。僕らは幼馴染で、友達で、それ以上でもそれ以下でもない。彼女もきっと同じだろう。
「でね、お母さん酷いの!『優くんと遊ぶのもいいけど、少しは勉強しなさーい』だって!」
「別に酷くはないでしょ。むしろおばさん、真っ当な事言ってると思うよ」
「えー、優くんもお母さんの味方するの?」
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ふと、田中は白泉を見る。特に理由はないが、目に収めたくなった。すると、白泉の鞄のチャックが空いていることに気づく。「やっぱり抜けてるな」と思い、閉めてやろうとすると、中に白泉には似合わないものが入っている。
「あれ?お前本なんて読むの?」
「あぁこれ?うん!私でも本くらい読むよ」
「へぇ、なんの本?」
田中が鞄から本を取り出す。
「『世界の幽霊』!?お前こんなのに興味あるのかよ」
「うん。たまたま見かけたから借りちゃった」
ペラペラとめくると、日本各地の幽霊から世界の幽霊、又はその名前、撃退方法などが書いてある。
「ふーん。こんな奇天烈な本もあるんだな」
「幽霊って面白いよね。なんで昼は見えなくて夜に出てくるんだろ」
「そりゃ、夜の方が怖いからじゃない?」
「優くんはそっち派か。他にも色々考え方があってね、例えば幽霊は基本的に服が白いから夜の方が見栄えがいいとか、幽霊は肌が白いから紫外線に弱いとか」
「なんだよそれ」
そう反応して信号を渡る。白泉は横断歩道の白線だけを踏む遊びをしているようだ。彼女は自然と大股になり、田中より前に出る。
すると、左の方から異様な音が聞こえてきた。聞いたことも無い程荒ぶるエンジン音。目をそちらにやると、見慣れた白い車がフラフラしながら猛スピードでこちらに向かってきている。白泉にぶつかるのも時間の問題だ。
「玲ちゃん!危ない!」
田中は咄嗟に彼女の背中を強く押した。
『おい!状況は?』
『男子高校生が一人、犠牲に……』
『少年は?』
『あちらの救急車に。しかし、あの怪我ではもう……』
『親の運転する車に轢かれて、吹っ飛ばされた先でトラックに踏み潰された、か』
『そのせいで右腕と右脚は完全に分断されてます』
『若いのに、なんてことだ……。ん?おい、あそこの女の子は?』
『あぁ、被害者の友達みたいで、事故現場に居合わせていたらしいです。これから事情聴取をする予定です』
『そうか……。あんまり根掘り葉掘り聞くなよ。彼女も心身疲労してるはずだ』
『わっかりましたー。……あ、どうかしました?』
『い、遺体が!遺体がありません!なくなりました!』
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