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幕引きと転換
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田中と九重は特に何も話さずにスタスタ歩く。先程会ったばかりだから仕方ないのだが、静寂に耐えられなくなった田中はついに話を振った。
「奏叶は、高校生?」
「うん。一応ね」
「どこ校?」
「確か生きてた時は、創連高校ってところだったらしいよ」
「らしいって、随分他人事なんだね」
「自分では実感無いからね。長年のリサーチの結果得た情報だよ」
九重は何を聞いても他人事のように振る舞う。ベタに好きな食べ物を聞いても、答えは「ハンバーグらしい」だし、好きなテレビ番組を聞いたら「テレビ番組を知らない」ときた。
そして、田中はついに一番気になっていたことを聞くことにした。
「じゃあさ奏叶。さっき言ってた機械幽霊ってなんなの?」
九重は特に反応せず淡々と答える。
「機械幽霊は、身体の大部分を失って死んだ人間が、その失った部分を兵器にして蘇った姿だよ」
「えっと……つまり、機械と幽霊のハイブリッドってこと?」
こうは言っているが、田中もよく理解していない。
「そんな感じ。でも、一般的な幽霊と違う所もいくつかあるよ。例えば、昼間は普通の人間にも認識されるんだ」
「えっと、それは、昼間なら普通に人と接触できるってこと?」
「うん。そして、夜になると幽霊の如く見えなくなる。夜の定義は曖昧だけど、大体十八時頃には見えなくなるよ」
九重はただ淡々と、あっけらかんとして話す。まるで物語の世界のような話だ。これは第一印象でしかないが、九重は真面目そうな見た目と話し方で、とても幽霊のようなオカルト話を初対面の人に振るようには見えない。
……これは本当に作り話なのだろうか?
そんな風に思っていると、数十歩先の右手に自宅が見えた。
「あそこが僕の家だよ。なんか悪かったね、付き合わせちゃって」
しかし妙だ。いつも止まっている両親の車が見当たらない。それでいて鍵は開けっ放しだ。
「不用心だなあ。……ん?」
道の方を見ると、九重が棒立ちしている。
「えっと……奏叶?」
「……うん。分かった。外で待っててあげる」
何を待つ必要があるのだろうか。もう外に出る用なんでないのに。
若干気味悪く思いながら足早に家に入り鍵を閉める。
「ただいまー。……あれ?」
声はこだました。返事は無い。それに、電気もついていない。
「いないのか?」
手探りで電気をつける。すると、廊下に母のバッグが散乱しているのが見えた。中からスマホやハンカチが吐き出されている。
「なんだ、いるんじゃないか。お母さん!どこにいるの?」
しかし、返事は無い。
「おかしいな……」
しばらく廊下で途方に暮れていると、奥のドアのガラスから奥に誰かいるのが透けて見えた。
「なんだ、いるんじゃないか!」
寂しさからか、少し声が大きくなる。
しかし、返事は無い。
「おーい。そこにいるんでしょ?」
よく見れば二つ影がある。父もいるのだろうか。しかし、返事は無い。
「……開けるよ?」
謎の緊張感が全身に走る。鳥肌がたち、取っ手に伸びた手は手汗をかいている。
そして、ドアを思いっきり開けた。
単刀直入に言えば、両親はそこにいて、二人とも首を吊っていた。
無気力な顔に、首にくい込んだ縄が目に入る。
「こ、これは……」
思わず後ずさる。
すると、玄関のドアの鍵が開いた音がした。
「お邪魔します」
紛れもない九重の声だった。耳をカチャカチャ元に戻しながら歩いてくる。
「ごめん。ピッキングしちゃった。鍵はちゃんと閉めといたから」
九重は死体の方に目配せをして言った。
「降ろしてあげよ。首が伸びちゃう」
死体を支えるように手を体に添えると、九重の耳はナイフに変形して縄を切った。二つの遺体が横たわる。
「奏叶、お前……」
問いかけようとした時、九重が言った。
「優、後ろ。危ないよ」
「え?」
優の背後には、二つの影がいた。
「奏叶は、高校生?」
「うん。一応ね」
「どこ校?」
「確か生きてた時は、創連高校ってところだったらしいよ」
「らしいって、随分他人事なんだね」
「自分では実感無いからね。長年のリサーチの結果得た情報だよ」
九重は何を聞いても他人事のように振る舞う。ベタに好きな食べ物を聞いても、答えは「ハンバーグらしい」だし、好きなテレビ番組を聞いたら「テレビ番組を知らない」ときた。
そして、田中はついに一番気になっていたことを聞くことにした。
「じゃあさ奏叶。さっき言ってた機械幽霊ってなんなの?」
九重は特に反応せず淡々と答える。
「機械幽霊は、身体の大部分を失って死んだ人間が、その失った部分を兵器にして蘇った姿だよ」
「えっと……つまり、機械と幽霊のハイブリッドってこと?」
こうは言っているが、田中もよく理解していない。
「そんな感じ。でも、一般的な幽霊と違う所もいくつかあるよ。例えば、昼間は普通の人間にも認識されるんだ」
「えっと、それは、昼間なら普通に人と接触できるってこと?」
「うん。そして、夜になると幽霊の如く見えなくなる。夜の定義は曖昧だけど、大体十八時頃には見えなくなるよ」
九重はただ淡々と、あっけらかんとして話す。まるで物語の世界のような話だ。これは第一印象でしかないが、九重は真面目そうな見た目と話し方で、とても幽霊のようなオカルト話を初対面の人に振るようには見えない。
……これは本当に作り話なのだろうか?
そんな風に思っていると、数十歩先の右手に自宅が見えた。
「あそこが僕の家だよ。なんか悪かったね、付き合わせちゃって」
しかし妙だ。いつも止まっている両親の車が見当たらない。それでいて鍵は開けっ放しだ。
「不用心だなあ。……ん?」
道の方を見ると、九重が棒立ちしている。
「えっと……奏叶?」
「……うん。分かった。外で待っててあげる」
何を待つ必要があるのだろうか。もう外に出る用なんでないのに。
若干気味悪く思いながら足早に家に入り鍵を閉める。
「ただいまー。……あれ?」
声はこだました。返事は無い。それに、電気もついていない。
「いないのか?」
手探りで電気をつける。すると、廊下に母のバッグが散乱しているのが見えた。中からスマホやハンカチが吐き出されている。
「なんだ、いるんじゃないか。お母さん!どこにいるの?」
しかし、返事は無い。
「おかしいな……」
しばらく廊下で途方に暮れていると、奥のドアのガラスから奥に誰かいるのが透けて見えた。
「なんだ、いるんじゃないか!」
寂しさからか、少し声が大きくなる。
しかし、返事は無い。
「おーい。そこにいるんでしょ?」
よく見れば二つ影がある。父もいるのだろうか。しかし、返事は無い。
「……開けるよ?」
謎の緊張感が全身に走る。鳥肌がたち、取っ手に伸びた手は手汗をかいている。
そして、ドアを思いっきり開けた。
単刀直入に言えば、両親はそこにいて、二人とも首を吊っていた。
無気力な顔に、首にくい込んだ縄が目に入る。
「こ、これは……」
思わず後ずさる。
すると、玄関のドアの鍵が開いた音がした。
「お邪魔します」
紛れもない九重の声だった。耳をカチャカチャ元に戻しながら歩いてくる。
「ごめん。ピッキングしちゃった。鍵はちゃんと閉めといたから」
九重は死体の方に目配せをして言った。
「降ろしてあげよ。首が伸びちゃう」
死体を支えるように手を体に添えると、九重の耳はナイフに変形して縄を切った。二つの遺体が横たわる。
「奏叶、お前……」
問いかけようとした時、九重が言った。
「優、後ろ。危ないよ」
「え?」
優の背後には、二つの影がいた。
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