【短編集】とあるニートの人生目録 ―ニートが織りなす狂気な日々―

piyopiyo

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暴走ニートと妄想ニート

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 僕のお父さんとお母さんはニートです。
 働かず、食事もコンビニで済ませています。
 おじいちゃんの遺産と生活保護があるので、お金には困っていません。
 そんな両親ですから、家には誰も来ませんでしたし、両親も外には出ません。
 しかし、先週から見知らぬおばさんが家に来るようになりました。
 両親と何か話をしています。
 そしておばさんが僕に話しかけてきました。
「世の中悪魔がいっぱいいるから、ぼうやも気をつけなさい」
「うん」
 僕は元気良く返事をしました。
 悪魔って、なんだろう……。同級生は僕を嫌っている。
 僕は何も悪いことしていないのに……。
 理由もなく人を嫌うのはよくないこと、つまり悪魔なんだ。
 僕はそう考えました。

 学校で友達が僕の背中を蹴ってきました。
 友達はきっと悪魔なんだ。
 だから理由もなく人を傷つけるんだ。
 そして次の日、学校で僕の靴がなくなりました。
 友達の誰かが隠したのだと思います。
 一生懸命探しましたが、結局見つかりませんでした。
 やっぱり、あの子は悪魔なんだ。
 だから人のものを平気で盗むんだ。
 靴がなくなったのでお母さんに言いました。
「友達に靴を取られたから、新しいの買って」
「靴をなくしたのを友達のせいにして……」
 お母さんは僕の言うことを信じてくれませんでした。
 きっとこれも悪魔のせいなんだと思います。
 この世は悪魔だらけ。
 もしかしたら悪魔は僕を狙っているのかもしれません。
 僕はおばさんに悪魔のせいでつらい思いをしたことを打ち明けました。
「ぼうやは良い子だから、悪魔が嫉妬して取り付いたんだよ。そうだ、悪魔を追い祓う儀式をやりましょう。そうすれば悪魔のせいでつらい思いをしなくて済むようになるよ」
 おばさんは僕の頭をなでてから、両親と何か話し始めました。
 僕は悪魔が見えない。でも僕のそばにきっといるんだ。
「大丈夫、悪魔はきっと祓われる」
 お母さんは僕のところに来て頭をなでました。

 その日の夜、悪魔祓いの儀式が始まりました。
 三本のロウソクに火をつけて祭壇を作り、僕の身体に塩をすり込みました。
 そして両親も加わり、儀式が本格的に進みました。
 まず僕と向き合うようにしておばさんが座り、僕の顔をじっと見つめています。
 ずっと、ずっと僕の目をじっと見つめています。
 僕もずっとおばさんの目を見つめていました。
 十分ぐらい経って、おばさんは目を閉じました。
「だめだ、悪魔が強すぎてこれでは祓えない。もっと強い儀式を行わないと……」
 おばさんは両親となにか話しています。
 両親の声は上手く聞こえませんでしたが、おばさんの声だけは聞こえました。
「このような強い悪魔を追い出す方法はもう一つしかない……」
「このままだと肉体も魂も失われてしまいます」
「たとえそうでも魂は救われるので大丈夫ですよ」
 そして明日再び儀式をすることになりました。


「次のニュースです。市内のアパートで、夫婦が自分たちの子供を殺害・遺体を切断したとして逮捕されました。夫婦は“悪魔祓いのためだった”と供述しており、警察は宗教的な背景があった可能性もあるとみて調べを進めています。」

 現場を目撃したAさんの証言:
「部屋一面に子供の体の一部が散乱してました。私が踏み込んだとき部屋には音楽がかかってました。そして両親ともに遺体に切断していたところでした。私が声かけても作業を止めず、なんとか取り押さえたのです」

 近所に住むBさんの証言:
「いやね。あのお宅は本当に人の出入りがなくてねぇ。ご近所付き合いもほとんどなかったよ。子供だけが学校に通ってるのを見かけるぐらいで、ご両親の顔を見たのはほんの数回です。まさかこんな事件が起こるとは、本当に驚いていますよ」
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