28 / 57
血
しおりを挟む
気が付いた時、私の体はふわふわと浮かんでいて、何も無い真っ白な空間に漂っていた。徐々に頭が覚醒してくると、先程まで吸血鬼さんと会話をしていて、その途中で体の異変を感じ、そのまま意識を手放したことを思い出す。私死んだの?ここは天国か何か?と混乱していると、遠くの方から篭った声が響いてきた。
『貴様………、馴れ馴れしく恋白の名を呼ぶな………』
その声は、間違いなく目隠しさんのもので、私は慌てて声がした方へと駆け寄る。そこには、吸血鬼さんと対峙する目隠しさんの姿と、何故か吸血鬼さんの方に寄り添っている、私自身の姿があった。その光景と、その光景を見ている私の間には、分厚いガラスのような透明な隔たりがあって、向こう側に行く事はできない。一体この状況は何なのか。それに、何故私が目の前にいて、吸血鬼さんの隣に立っているのか。分からないことだらけだが、恐らく私を助けにきてくれたのであろう目隠しさんの姿が、何だかすごく嬉しかった。
(目隠しさん、助けに来てくれたんだ…………)
あんなに冷たくして、勝手に1人になって、その結果攫われてこの有様だというのに、ちゃんと助けに来てくれた。嫉妬して不安になっていたせいもあってか余計に嬉しさを実感した。
『それはこちらの台詞です。貴方こそ、私の妻の名を馴れ馴れしく呼ばないでいただけますか?』
「つ、妻!?ちょっと、勝手なこと言わないでよ!」
しかし嬉しさを噛み締めていたのも束の間、勝手なことを言って私の肩を抱く吸血鬼に、私は思わず声が裏返りそうになった。バンバンと透明な壁を叩きながら抗議する。だが、こちらの声は全く聞こえていないようだった。そこにもう1人の私がいるのを考えると、ここは精神世界か何かなのだろうか。
「吸血鬼ー!私を騙したのねー!」
何度もこちら側で声を荒げたところで、やはりその声は届くはずもなく。私の本心とは関係なく、吸血鬼と目隠しさんの間でどんどん話が進んでいってしまう。私はここにいるのに………。
やがて吸血鬼が、私に吸血鬼か目隠しさんかを選ばせるとか何とか言いだした。そんなの当然、目隠しさんの手を取るに決まっているのに、目の前の私は吸血鬼を選ぶ。それどころか、目隠しさんのことを怖いと言って、吸血鬼にしがみ付いていてギョッとした。
「何してるのよ私………!目隠しさんの前でそんな………!」
自分で自分に呆れる。すぐ色んな霊にホイホイと着いていく軽い女だと軽蔑されないだろうか。ヒヤヒヤハラハラとするが、よくよく考えると、目隠しさんにとっては私の気持ちが誰に向けられていようと、関係ないのではないだろうか。目隠しさんに対して意識して、ヤキモチを妬いているのは私だけで、目隠しさんからしたら私はただのエネルギー源。呪いを解除すれば、お役御免………。自分で勝手にそう考えを膨らませて、ずきりと痛む胸を抑える。
しかし、そんな私の想像とは裏腹に、目隠しさんはかなりご立腹であった。そして、そんな目隠しさんを見た吸血鬼が口にした、「嫉妬深い男は醜いですよ」という言葉に、沈んでいた心が少し浮つく。
(妬いて………くれてる………?あの目隠しさんが………?)
その言葉に対して否定も肯定もしない目隠しさんの真意は分からない。けど、もしその可能性が少しでもあるのなら…………。
(こんな状況でちょっと嬉しいなんて………)
もしかしたら、もしかしたら、そうなの………?と頬を赤く染めて、床にのの字を書いている内に、目隠しさんは鎌を構えて床を蹴った。同時に吸血鬼は、何か赤い液体が入った瓶を取り出して、それを足元へ落とす。目隠しさんが大鎌を一振り二振りするだけで、黒い斬撃はかまいたちの様に部屋を飛び交っていった。照明は消え、吸血鬼のお気に入りだと言っていたコレクションの機械は粉々に砕け、中から女性の体がドロッと液体ごと転がり出てくる。しかし肝心の吸血鬼を斬った感触は無く、ランプの火だけがぼんやりと不気味に揺れる薄暗い空間の中で、目隠しさんは消えた吸血鬼のことを探していた。
「こちらですよ」
目隠しさんの足元から吸血鬼の声がして、そこににゅるりと姿を現した吸血鬼が、手から赤い棘のようなものを発射した。至近距離で放たれたそれを目隠しさんも咄嗟に避けたものの、頬や肩、脚などに擦り傷を残し、じわりと血が滲む。避けた棘はそのまま壁にぶつかって、べちゃっと真っ赤な液体になり、壁のシミへと変わり果てた。
(………血か………)
棘はどうやら血液で作られているもののようで、それを目隠しさんが冷静に分析する。吸血鬼は、血を武器に変えたり、床に垂れた血溜まりを伝って移動したり身を潜めることができるらしい。やがて壁に付着したその血は、再び棘へと成形され、目隠しさん目掛けて発射された。更には、吸血鬼が懐から新たな血を取り出して床に叩き付け、その血液から赤く光る剣を作り出すと目隠しさんに斬り掛かった。
「私の妻たちから採取した血液のストックは沢山ありますからね………。どこまで耐えられるか、試してみましょうか!」
「………チッ………!」
小さく舌打ちをした目隠しさんが、壁から飛んでくる棘を鎌で払い落とした後、吸血鬼の剣も受け止めた。斬り合いを続ける2人だったが、その最中にも吸血鬼は更に瓶を割り、床にドバドバと血溜まりを作っていく。その血液から、1体、2体、3体と吸血鬼の分身が現れ、同じように目隠しさんに斬り掛かってきた。
「目隠しさん!!」
血液がある限り、どんどん増えていく吸血鬼の手数。やがて目隠しさんは全てを受け切ることが出来なくなり、その体に深い斬撃を受けて膝を付いた。ドバドバと目隠しさんの血も床に流れていく。その血すら、吸血鬼の術により鋭利な凶器となって、目隠しさんに襲い掛かった。傷で痛む体を何とか起こして、かろうじて避けた目隠しさんは、圧倒的に不利な状況に追い込まれていた。
(こんな所で戦ったら、吸血鬼が有利に決まってる………!)
相手の根城に乗り込んで戦っているのだ。吸血鬼には、色んな準備も策も整っている。目の前で目隠しさんが戦っているのに、目隠しさんが怪我を負っているのに、何もできないことが歯痒い。
「これだけ私の攻撃を受けて、その程度の傷で済んでいるとは、素晴らしいですよ」
「………………」
「おや。褒めているのですから、もう少し嬉しそうな顔をしたらどうです」
パチンと吸血鬼が、何度目か分からない指鳴らした。すると、薄暗い部屋に無数のコウモリたちが姿を現した。よく躾けられた大量のコウモリは、みな器用に口に瓶を咥えてバサバサと飛んでいる。そして一斉に、その瓶を床に落とした。どんどん広がっていく血液。やがて血は何かを作り出そうと1つに集まり始め、最後には3つの頭を持った犬………、大きくて獰猛なケルベロスを作り出したのだった。
「さあ、そこの小賢しい悪霊を食ってしまいなさい!」
ケルベロスは恐ろしい咆哮を上げ、吸血鬼の命令に従うように、鋭い爪を目隠しさん目掛けて振り下ろした。
『貴様………、馴れ馴れしく恋白の名を呼ぶな………』
その声は、間違いなく目隠しさんのもので、私は慌てて声がした方へと駆け寄る。そこには、吸血鬼さんと対峙する目隠しさんの姿と、何故か吸血鬼さんの方に寄り添っている、私自身の姿があった。その光景と、その光景を見ている私の間には、分厚いガラスのような透明な隔たりがあって、向こう側に行く事はできない。一体この状況は何なのか。それに、何故私が目の前にいて、吸血鬼さんの隣に立っているのか。分からないことだらけだが、恐らく私を助けにきてくれたのであろう目隠しさんの姿が、何だかすごく嬉しかった。
(目隠しさん、助けに来てくれたんだ…………)
あんなに冷たくして、勝手に1人になって、その結果攫われてこの有様だというのに、ちゃんと助けに来てくれた。嫉妬して不安になっていたせいもあってか余計に嬉しさを実感した。
『それはこちらの台詞です。貴方こそ、私の妻の名を馴れ馴れしく呼ばないでいただけますか?』
「つ、妻!?ちょっと、勝手なこと言わないでよ!」
しかし嬉しさを噛み締めていたのも束の間、勝手なことを言って私の肩を抱く吸血鬼に、私は思わず声が裏返りそうになった。バンバンと透明な壁を叩きながら抗議する。だが、こちらの声は全く聞こえていないようだった。そこにもう1人の私がいるのを考えると、ここは精神世界か何かなのだろうか。
「吸血鬼ー!私を騙したのねー!」
何度もこちら側で声を荒げたところで、やはりその声は届くはずもなく。私の本心とは関係なく、吸血鬼と目隠しさんの間でどんどん話が進んでいってしまう。私はここにいるのに………。
やがて吸血鬼が、私に吸血鬼か目隠しさんかを選ばせるとか何とか言いだした。そんなの当然、目隠しさんの手を取るに決まっているのに、目の前の私は吸血鬼を選ぶ。それどころか、目隠しさんのことを怖いと言って、吸血鬼にしがみ付いていてギョッとした。
「何してるのよ私………!目隠しさんの前でそんな………!」
自分で自分に呆れる。すぐ色んな霊にホイホイと着いていく軽い女だと軽蔑されないだろうか。ヒヤヒヤハラハラとするが、よくよく考えると、目隠しさんにとっては私の気持ちが誰に向けられていようと、関係ないのではないだろうか。目隠しさんに対して意識して、ヤキモチを妬いているのは私だけで、目隠しさんからしたら私はただのエネルギー源。呪いを解除すれば、お役御免………。自分で勝手にそう考えを膨らませて、ずきりと痛む胸を抑える。
しかし、そんな私の想像とは裏腹に、目隠しさんはかなりご立腹であった。そして、そんな目隠しさんを見た吸血鬼が口にした、「嫉妬深い男は醜いですよ」という言葉に、沈んでいた心が少し浮つく。
(妬いて………くれてる………?あの目隠しさんが………?)
その言葉に対して否定も肯定もしない目隠しさんの真意は分からない。けど、もしその可能性が少しでもあるのなら…………。
(こんな状況でちょっと嬉しいなんて………)
もしかしたら、もしかしたら、そうなの………?と頬を赤く染めて、床にのの字を書いている内に、目隠しさんは鎌を構えて床を蹴った。同時に吸血鬼は、何か赤い液体が入った瓶を取り出して、それを足元へ落とす。目隠しさんが大鎌を一振り二振りするだけで、黒い斬撃はかまいたちの様に部屋を飛び交っていった。照明は消え、吸血鬼のお気に入りだと言っていたコレクションの機械は粉々に砕け、中から女性の体がドロッと液体ごと転がり出てくる。しかし肝心の吸血鬼を斬った感触は無く、ランプの火だけがぼんやりと不気味に揺れる薄暗い空間の中で、目隠しさんは消えた吸血鬼のことを探していた。
「こちらですよ」
目隠しさんの足元から吸血鬼の声がして、そこににゅるりと姿を現した吸血鬼が、手から赤い棘のようなものを発射した。至近距離で放たれたそれを目隠しさんも咄嗟に避けたものの、頬や肩、脚などに擦り傷を残し、じわりと血が滲む。避けた棘はそのまま壁にぶつかって、べちゃっと真っ赤な液体になり、壁のシミへと変わり果てた。
(………血か………)
棘はどうやら血液で作られているもののようで、それを目隠しさんが冷静に分析する。吸血鬼は、血を武器に変えたり、床に垂れた血溜まりを伝って移動したり身を潜めることができるらしい。やがて壁に付着したその血は、再び棘へと成形され、目隠しさん目掛けて発射された。更には、吸血鬼が懐から新たな血を取り出して床に叩き付け、その血液から赤く光る剣を作り出すと目隠しさんに斬り掛かった。
「私の妻たちから採取した血液のストックは沢山ありますからね………。どこまで耐えられるか、試してみましょうか!」
「………チッ………!」
小さく舌打ちをした目隠しさんが、壁から飛んでくる棘を鎌で払い落とした後、吸血鬼の剣も受け止めた。斬り合いを続ける2人だったが、その最中にも吸血鬼は更に瓶を割り、床にドバドバと血溜まりを作っていく。その血液から、1体、2体、3体と吸血鬼の分身が現れ、同じように目隠しさんに斬り掛かってきた。
「目隠しさん!!」
血液がある限り、どんどん増えていく吸血鬼の手数。やがて目隠しさんは全てを受け切ることが出来なくなり、その体に深い斬撃を受けて膝を付いた。ドバドバと目隠しさんの血も床に流れていく。その血すら、吸血鬼の術により鋭利な凶器となって、目隠しさんに襲い掛かった。傷で痛む体を何とか起こして、かろうじて避けた目隠しさんは、圧倒的に不利な状況に追い込まれていた。
(こんな所で戦ったら、吸血鬼が有利に決まってる………!)
相手の根城に乗り込んで戦っているのだ。吸血鬼には、色んな準備も策も整っている。目の前で目隠しさんが戦っているのに、目隠しさんが怪我を負っているのに、何もできないことが歯痒い。
「これだけ私の攻撃を受けて、その程度の傷で済んでいるとは、素晴らしいですよ」
「………………」
「おや。褒めているのですから、もう少し嬉しそうな顔をしたらどうです」
パチンと吸血鬼が、何度目か分からない指鳴らした。すると、薄暗い部屋に無数のコウモリたちが姿を現した。よく躾けられた大量のコウモリは、みな器用に口に瓶を咥えてバサバサと飛んでいる。そして一斉に、その瓶を床に落とした。どんどん広がっていく血液。やがて血は何かを作り出そうと1つに集まり始め、最後には3つの頭を持った犬………、大きくて獰猛なケルベロスを作り出したのだった。
「さあ、そこの小賢しい悪霊を食ってしまいなさい!」
ケルベロスは恐ろしい咆哮を上げ、吸血鬼の命令に従うように、鋭い爪を目隠しさん目掛けて振り下ろした。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
氷華の吸血鬼ー銀氷の貴方と誓う永血の恋ー
四片霞彩
恋愛
霧の街で目覚めた私は契約を結ぶ――氷鏡の彼の人は孤独なヴァンパイアだった。
海外に暮らす祖母の元に向かっていたエレナは古びた鍵を拾ったことでヴァンパイアの国・ワムビュルス王国に転移してしまう。
辿り着いた街で人間を「餌」として捕えるヴァンパイアたちから逃げている最中、鍵に導かれるままにとある古書店の扉を開けてしまうのだった。
そこで出会った白銀のヴァンパイアの青年――ロシィから「説明は後だ」と告げられて、主従の契約を強引に結ばれたエレナ。
契約によってロシィの従者となったエレナの姿は子供へと変化して、やがて元の姿からかけ離れた愛くるしいヴァンパイアの少女に変わってしまう。
そして主人となったロシィから「ノエリス」と名付けられたエレナは、ヴァンパイアたちから保護してもらう代わりにロシィに仕えることになるのだった。
渋々ロシィが営む古書店で働き始めたエレナだったが、素っ気ない態度ながらも甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるロシィに次第に心を許し始める。
しかし砂時計の砂が全て落ちた時に2人の立場は逆転してしまう。
エレナは「ヴァンパイアの麗しき女主人・ノエリス」、ロシィは「女主人に仕える少年従者・ロシィ」へと姿まで変わってしまうのだった。
主人と従者を行き来する2人は種族や生まれの違いから何度もすれ違って衝突するが、やがてお互いの心を深く知ることになる。
氷鏡のような白銀のヴァンパイアが異なる世界から現れた人間に心を溶かされ、やがて“等しく”交わった時、主従の信愛は番の最愛へと変わる。
ダークファンタジー×溺愛×主従の恋物語。
凍りついた主従の鎖は甘く蕩けるような番の結びとなる。
※他サイトでも公開予定
同期に恋して
美希みなみ
恋愛
近藤 千夏 27歳 STI株式会社 国内営業部事務
高遠 涼真 27歳 STI株式会社 国内営業部
同期入社の2人。
千夏はもう何年も同期の涼真に片思いをしている。しかし今の仲の良い同期の関係を壊せずにいて。
平凡な千夏と、いつも女の子に囲まれている涼真。
千夏は同期の関係を壊せるの?
「甘い罠に溺れたら」の登場人物が少しだけでてきます。全くストーリには影響がないのでこちらのお話だけでも読んで頂けるとうれしいです。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる