世界一嫌いな自分へ

古明地 蓮

文字の大きさ
2 / 4

いつまでたっても…

しおりを挟む
結局私は、その日も飛び下りることが出来なかった。
屋上まで昇って、フェンスの外まで出たのに、あと一歩が怖かったのだ。
そして、また私は私を嫌いになった。
自分から死ぬことさえ出来ない自分が、嫌いになった。

それから、教室に戻りいつも通りに授業を受けている。
授業は自分の得意科目だった。
得意科目なら楽だと思う人もいる。
でも、私にとってはそうじゃないのだ。

得意科目ならではの欠点がある。
それは、ミスできないということ。

苦手科目でミスをするなら、仕方ないと思える。
でも、得意科目でミスしてしまうと、自分の計算や、答案作成を自問してしまう。
なんで得意なことでさえ出来ないんだと、自分を責め立ててしまう。

今日の授業も、同じようなことが起きた。
先生から渡されたプリントを、人より早く終わらせたのに、自分の回答に自信が持てず、考え込んでしまった。
そして、回答を渡されると、自分ができたと思っているところで、ミスが発生してしまった。

はぁ
なんでこんなに私はダメなんだろう。

どんなことをやっても、どんどん自分が嫌いになっていく。
そして、自分を嫌いになってはいけないとかの言葉が、重く突き刺さる。

結局ほとんどの時間を自虐思考に費やしてしまった。
そのまま、得意科目の授業が終わってしまった。
どうにか自分を責めないようにしたいとは思っている。
でも、なかなかそれができなくて、自分にやさしくすることさえできない自分が嫌いになる。
もう無限に繰り返していく。

そして、私はもう一度屋上に上っていた。
今なら飛び降りれる気がした。
何も考えずに、いや自分を殺したいとだけ考えて、フェンスの外に出る。
そして、体を前に傾けようとしたとき

体が引っ張られた。

首元をつかまれて、体を後ろに引っ張られた。
何かに引っかかっていた感覚もなかったから、誰の仕業と思って、後ろを振り向いた。
そこには

「それ、僕の番」

と言いながら、半ばめんどくさそうに、半ば死にたそうな顔をした少年がいた。

「あなた、誰?」

一切の見覚えのなさに、その質問しか出来なかった。
そして、この少年のおかげで、一時の自殺衝動は抑えられた。
彼への興味の方が強まったんだ。

「僕も君と同じ、死のうと思ってるんだ
 でも、死ぬ前に目の前で飛び降りられると、ちょっと心残りだから
 君を助けてあげたの」

「そう」

なんだか、彼の答えが予想に反して、ちょっとつまらなくて残念だった。
でも、彼に止められてしまったから、今は死ぬことは諦めて、フェンスの内側に戻った。
そして、私は自分の好奇心のために、ある交渉を持ちかけてみた。

「ひとつ私と交渉しない?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。

ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。 彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。 婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。 そして迎えた学園卒業パーティー。 ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。 ガッツポーズを決めるリリアンヌ。 そのままアレックスに飛び込むかと思いきや―― 彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

雪嶺後宮と、狼王の花嫁

由香
キャラ文芸
後宮に降る雪は、呪いではなく嘆きだった。 巫女として献上された少女セツナは、 封じられた狼王の“花嫁”としての前世を思い出す。 人と妖、政と信仰の狭間で、 彼女が選ぶのは従属ではなく均衡。 雪嶺を舞台に描く、異種婚姻×後宮伝承譚。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...