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あの悲しみをもう一度
悲愴の予兆
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実は、このところ テスト勉強のためになかなか会いに行けなかったのである
だから、彼方に会えることを楽しみにしていた。
病院の玄関前の花壇では、梅雨時期に合わせて紫陽花が見ごろを迎えていた。
美しい紫と青の広がりを見ていたら、時間が過ぎたのだと知った。
彼方に頼まれて、暁さんを幸せにするという目標ができてから、五カ月以上がたったのだ。
紫陽花を眺めていると、暁さんから声をかけられた。
「あれ、紫陽花そんな好きだったの?」
「いやさ、僕らが逢ってから時間が経ったんだなって思ってさ」
「そうだね~
もう六月も下旬だし、かなり経ったよね」
「はじめは将棋したり、一緒に問題解いたところから始まったんだよね」
「あの頃が懐かしいね
彼方元気にしてるかな?」
「きっと元気にしてるよ」
何回通ったかわからない病院の中に、二人で入った。
手短に手続きを済まして、彼方のいる病室に向かう。
「あれ?
病室変わった?」
「本当だ
個室になってるね」
前は僕がいた複数人の病室だったのに、今は個室になっている。
もしかしたら...
と、いやな予感が首筋をなぞって後ろに抜けてった。
「まあ、とりあえず入ろうか」
二人で扉を開けて、彼方の病室に入る。
「久しぶりだね
お姉ちゃん、お兄ちゃん」
そこには、いつも通りの彼方の姿があった。
暁さんは、その姿を見て、うれしさのあまり彼方に抱き着いていた。
「あはは
お姉ちゃんが甘えてくるなんてね」
「久しぶりに会えてうれしかったんだよ
テスト勉強とか、新しい学校に通ってるからなかなか会いにこれなかったからね」
「そうそう
二人ともどうなの、高校生活は」
「楽しいよね、蓮」
「あ、うん
同じ高校だし、あんまり中学と変化はないかな」
「本当によかったよ
二人が同じ高校に通えてさ」
「受験勉強とか大変だったよ
結果二人とも合格できたからよかったけどさ」
と、言いながら、ふと彼方のベッドの近くにある机の上に視線を飛ばすと
そこには大量の薬があった。
二人はこちらに気が付いていないみたいだから、僕も気が付かなかったふりをする。
「そういや、お兄ちゃんはこのところ体調どうなの?」
「僕は問題ないよ
生活環境変わると、危ないかなって思ったけど、何とかなってるよ」
「それならよかった
前みたいに入院したらびっくりするからさ」
「そんなこともあったね
まあ、今は元気にやってるよ」
それから、日が暮れるまで他愛のない話で盛り上がった。
でも、ずっと彼方のことが気にかかっていた。
やがて、日も暮れて面会時間が終わりを迎えた。
「じゃあ、今日はそろそろ帰るね」
「また会いに来てね
じゃあ、お兄ちゃん頑張ってね」
彼方の目が僕の方を向いていた。
その目は、いつもの明るい光を宿していなかった。
その空気をかき乱すように、暁さんが割って入った。
「え~
私は応援してくれないの」
「だってお姉ちゃんはいつも頑張ってるじゃん
逆に少し休んでほしいくらいだよ」
「確かにそうかもね
それじゃあ、じゃあね」
「うん、ばいばい」
そして、僕らは彼方の病室を出た。
受付に向かいながら、暁さんと話す。
「彼方が元気でよかったね」
「うん
いつもみたいに喋れて楽しかったよ」
「彼方と話してると日が暮れちゃうよね」
「そうだね
今日もあたりは暗くなってきてるし
時間を忘れちゃうよ」
行きの手短さと異なり、帰りは名残惜しそうに手続きをしていた。
外では、梅雨時の代名詞の長い長い雨が降っていた。
「今日は雨が降ってるよ
帰りどうする?」
「濡れたくないしバスに乗って帰ろうよ
今あるの、小さい傘だけだし」
「それじゃあ、バスに乗ろうか」
バス停に向かうと、ちょうどバスが止まっていたので、駆け込んだ。
バスの中でも、彼方のことが頭から離れなかった。
普通に考えて、病室が急に変わることなんてないだろう。
もしも、病室が急に変わることがあるのは...
「次は1丁目です」
気が付けば、降りる駅についてしまった。
僕と暁さんだけが、その停留所で降車した。
「私の傘、入る?」
暁さんが、小さめの折り畳み傘を僕の方までかけようとした。
「いや、いいや
二人で入ったら、二人とも濡れちゃうから」
そして、僕はその傘から離れた。
すると、暁さんがちょっと悲しそうな横顔をしていた。
それから、僕らは話すこともなく、家に戻った。
この傘の件があってから、僕らはずっと話さなかった。
なんだか、すごい違和感があった。
話さない以外はいつも通りの生活を満喫した。
お風呂に入って、ごはんを食べる。
ずっと話さなかったから、すごい寂しかったけど、そのまま寝ることになった。
ただ、寝るのにも一つだけ問題があった。
それは、彼方のことを心配できるほど僕の体調も良くないことだ。
「うぅ...」
なかなか収まらなそうな痛みを胸に抱え込んで必死に耐えていると、いつの間にか寝ていた。
だから、彼方に会えることを楽しみにしていた。
病院の玄関前の花壇では、梅雨時期に合わせて紫陽花が見ごろを迎えていた。
美しい紫と青の広がりを見ていたら、時間が過ぎたのだと知った。
彼方に頼まれて、暁さんを幸せにするという目標ができてから、五カ月以上がたったのだ。
紫陽花を眺めていると、暁さんから声をかけられた。
「あれ、紫陽花そんな好きだったの?」
「いやさ、僕らが逢ってから時間が経ったんだなって思ってさ」
「そうだね~
もう六月も下旬だし、かなり経ったよね」
「はじめは将棋したり、一緒に問題解いたところから始まったんだよね」
「あの頃が懐かしいね
彼方元気にしてるかな?」
「きっと元気にしてるよ」
何回通ったかわからない病院の中に、二人で入った。
手短に手続きを済まして、彼方のいる病室に向かう。
「あれ?
病室変わった?」
「本当だ
個室になってるね」
前は僕がいた複数人の病室だったのに、今は個室になっている。
もしかしたら...
と、いやな予感が首筋をなぞって後ろに抜けてった。
「まあ、とりあえず入ろうか」
二人で扉を開けて、彼方の病室に入る。
「久しぶりだね
お姉ちゃん、お兄ちゃん」
そこには、いつも通りの彼方の姿があった。
暁さんは、その姿を見て、うれしさのあまり彼方に抱き着いていた。
「あはは
お姉ちゃんが甘えてくるなんてね」
「久しぶりに会えてうれしかったんだよ
テスト勉強とか、新しい学校に通ってるからなかなか会いにこれなかったからね」
「そうそう
二人ともどうなの、高校生活は」
「楽しいよね、蓮」
「あ、うん
同じ高校だし、あんまり中学と変化はないかな」
「本当によかったよ
二人が同じ高校に通えてさ」
「受験勉強とか大変だったよ
結果二人とも合格できたからよかったけどさ」
と、言いながら、ふと彼方のベッドの近くにある机の上に視線を飛ばすと
そこには大量の薬があった。
二人はこちらに気が付いていないみたいだから、僕も気が付かなかったふりをする。
「そういや、お兄ちゃんはこのところ体調どうなの?」
「僕は問題ないよ
生活環境変わると、危ないかなって思ったけど、何とかなってるよ」
「それならよかった
前みたいに入院したらびっくりするからさ」
「そんなこともあったね
まあ、今は元気にやってるよ」
それから、日が暮れるまで他愛のない話で盛り上がった。
でも、ずっと彼方のことが気にかかっていた。
やがて、日も暮れて面会時間が終わりを迎えた。
「じゃあ、今日はそろそろ帰るね」
「また会いに来てね
じゃあ、お兄ちゃん頑張ってね」
彼方の目が僕の方を向いていた。
その目は、いつもの明るい光を宿していなかった。
その空気をかき乱すように、暁さんが割って入った。
「え~
私は応援してくれないの」
「だってお姉ちゃんはいつも頑張ってるじゃん
逆に少し休んでほしいくらいだよ」
「確かにそうかもね
それじゃあ、じゃあね」
「うん、ばいばい」
そして、僕らは彼方の病室を出た。
受付に向かいながら、暁さんと話す。
「彼方が元気でよかったね」
「うん
いつもみたいに喋れて楽しかったよ」
「彼方と話してると日が暮れちゃうよね」
「そうだね
今日もあたりは暗くなってきてるし
時間を忘れちゃうよ」
行きの手短さと異なり、帰りは名残惜しそうに手続きをしていた。
外では、梅雨時の代名詞の長い長い雨が降っていた。
「今日は雨が降ってるよ
帰りどうする?」
「濡れたくないしバスに乗って帰ろうよ
今あるの、小さい傘だけだし」
「それじゃあ、バスに乗ろうか」
バス停に向かうと、ちょうどバスが止まっていたので、駆け込んだ。
バスの中でも、彼方のことが頭から離れなかった。
普通に考えて、病室が急に変わることなんてないだろう。
もしも、病室が急に変わることがあるのは...
「次は1丁目です」
気が付けば、降りる駅についてしまった。
僕と暁さんだけが、その停留所で降車した。
「私の傘、入る?」
暁さんが、小さめの折り畳み傘を僕の方までかけようとした。
「いや、いいや
二人で入ったら、二人とも濡れちゃうから」
そして、僕はその傘から離れた。
すると、暁さんがちょっと悲しそうな横顔をしていた。
それから、僕らは話すこともなく、家に戻った。
この傘の件があってから、僕らはずっと話さなかった。
なんだか、すごい違和感があった。
話さない以外はいつも通りの生活を満喫した。
お風呂に入って、ごはんを食べる。
ずっと話さなかったから、すごい寂しかったけど、そのまま寝ることになった。
ただ、寝るのにも一つだけ問題があった。
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