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あの悲しみをもう一度
崩れ落ちた日常の果てに
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次の朝
僕は、いつもよりも少し遅めに起きた。
まあ、さすがに徹夜した後の睡眠はしっかりとった。
ただ、ちょっと体に違和感も感じた。
それは、これまでに感じてきた、鈍痛とは比にならないほどの痛みだった。
僕の場合、本当に徹夜したら危険な病気だから、徹夜明けはつらくなって当然かもしれないけど。
もう完全に日はその目を見せていて、二度寝を許すまいととしていた。
仕方なく、布団を抜け出して、一階に降りた。
すると、普段の光景が広がっていた。
暁さんがキッチンで、朝食の準備をしている。
テーブルには、トーストが用意されていて、いつでも食べられるように...
ん?
テーブルに用意されていた朝食は、三人前だった。
もしかして、誰か来ているのだろうか。
例えば、先生とかが訪問しているのだろうか。
焦って辺りを見回したが、特に僕と暁さん以外の人は見当たらなかった。
そうして、もう一度暁さんのほうに向きなおる。
すると、いつもと何ら変わらない口調で
「おはよう、蓮」
と、笑いながら挨拶してくれた。
ちょっとどぎまぎしながら
「お、おはよう」
とだけ返して、自分のタオルを盗むようにとって、洗面所に向かった。
そして、洗面所の扉を閉めて、ちょっと立ち止まって、考えた。
何があったんだろう、と。
いつも通りの朝
いつも通りの暁さん
いつも通りの朝ごはん
でも、そこに置かれていたごはんの数は三つ。
しかも、そのことに何の疑問もない様子で、朝食の準備を進める暁さんがいた。
最初、僕はある恐怖を感じた。
それは、僕だけが取り残されているのではないかというもの。
つまり、あの場には僕が気が付けなかった人がいるんじゃないだろうか。
そう思って、少し洗面所の扉を開けて、リビングの方を覗き見た。
暁さんに気が付かれないように、注意を払いながら、見まわした。
けど、そこにはいつもと変わらない、リビングがあるだけだった。
やっぱり、僕が感知できない人がいるんだろうか。
それとも、これは夢なんじゃないだろうか。
そう思って、洗面をした。
自分の目を覚ますように。
冷たい水が、顔の表面ではじける。
その時、僕の思考もはじけるような気がした。
それは、彼方からの忠告。
「存在しないものと話す」
という暁さんが発狂したときの状態
その可能性に気が付いたとき、僕は少し安堵した。
もしかしたら、僕がくるってるわけではないのかもしれないと。
けど、次の瞬間に、その安堵は、さっきの何倍もの恐怖と不安に変貌していた。
頬をつたう水が、まとわりつくいやな予感と重なり、急いでそれを振り払うように、顔を横に振った。
大切な人が、近くからいなくなったときに、暁さんに起こる狂い
それは、自分の欲求と現実の乖離によっておこるもの
残酷な現実から逃れるためのもの
確かに、暁さんがその状態だとすると、この状況につじつまが合う。
暁さんが、いつもより一人分多く配膳していることに、何の疑問も抱いていないこと。
それは、暁さんにしか見えない、彼方がいるからなのではないだろうか。
僕は、あの時、彼方とこのことについて話した時に感じた、気味悪さを軽蔑した。
今、ここにある気味悪さのほぅが、何倍も大きかったから。
あの時に感じた薄気味悪さが、どれだけちっぽけか思い知ったから。
けど、まだ確かと決まったわけじゃない。
だから、僕は勇気を振り絞るように、もう一度顔を横に振って、扉に手をかけた。
そして、勢いよく洗面所の扉をあけ放った。
リビングに向かうと、トーストだけでなく、香ばしいコーヒーの香りが漂っていた。
もちろんのように、三人分用意されていた。
僕のことに気が付くと、待っていたかのように暁さんがキッチンから、自分の席に向かって歩き始めた。
僕も、なるべく暁さんと同時に、席に着けるように、足早に椅子に向かった。
そして、自分のタオルを椅子に掛けて、席に着いた。
暁さんも、僕と同時に座った。
二人で同時に手を合わせて、
「いただきます」
と言って、食べ始めた。
食べ始めた最初は、わずかな恐怖も残ってたけど、いくらか食べているうちに、その恐怖は消えていた。
同じように、最初感じられなかったコーヒーの酸っぱさにも気が付けるようになっていた。
だんだんと、ただの配膳ミスじゃないかと、頭の中で片付けようとした。
その時
「三人で食べるご飯は美味しいね」
と、目の前に座っている暁さんが、つぶやいた。
その瞬間、僕ははっとした。
当たってほしくない予想が、当たってしまったようだった。
その言葉の後、暁さんは何ら変わらぬ表情で、再度ご飯を食べ始めた。
僕は、しばらく驚きに飲み込まれてしまい、トーストがのどを通らなかった。
さっきまでの、予想が的中してしまうなんて。
どうしたらいいのかわからなくなってしまい、本当に何も行動できなかった。
けど、動けなかったのは、多分数秒ほどで、すぐにトーストの残りを片付け始めた。
いつまでも止まっていたら、暁さんに怪しまれてしまいそうだから。
けど、トーストーはただの無味のものに変わっていた詩、コーヒーもただの苦い飲み物に変わってしまっていた。
なんとか、残りのトーストを、胃の中に収めることができた。
暁さんの方を見ようと思ったけど、ちょっと右に視線をそらして
「ご馳走様」
といった後に、自分の食器を流し台まで運んだ。
そして、自分の食器の片づけをし始めた時、さらに驚くべきものを見てしまった。
それは、暁さんが、虚空に向かって声をかけ始めたのだ。
しかも、何度も何度も返答がないのに、いろんな文章を投げかけていたのだ。
まるで、僕には見えない何かと、僕には聞こえない声で会話しいるかのようだった。
僕は、見て見ぬふり、聞いて聞こえぬふりをして、片づけを済ませた。
そして、自分の席に戻って、腰を落ち着かせた。
すると、今度はしっかりと僕の方を見て、暁さんが言った。
「今日、どっかに出かける?
特に何もすることなくて暇だしね」
と、いつもの明るい口調で、笑顔を浮かべて提案してきた。
僕は最初、本当に自分に話しかけられているのかわからなくて返答しなかった。
けど、さっきと違い、暁さんが次の言葉を発さないあたり、僕の返答を待っているのだと察した。
「今日は天気もいいし、どっかに出かけてもいいね」
とだけ、暁さんに聞こえるか、ぎりぎりの声で伝えた。
「そうだね~
久しぶりに、洋服とか見に行こっか
彼方もつれてさ」
彼方だって...?
本当に言っているのだろうか。
凝視した暁さんの顔には、僕をからかっている表情は見られなかった。
いつもの、一切裏表のない、優しそうな表情をしていた。
それが、何倍も僕の恐怖をあおった。
ただ、僕はこの恐怖と驚愕を顔に出さないように、ひた隠しにして次の言葉をかけた。
「じゃあ、前みたいに、いろいろ買い物しようよ
洋服とか、本とかさ」
と、何とか応えた。
ただ、多分ものすごい形相だったと思う。
無理に笑おうとしながら、冷や汗が垂れている感じだった。
「そうだね
久しぶりにいろいろ買わないとね~
じゃあ、急いで準備するね」
と言って、暁さんは、流し台で暁さんの食器を洗いだした。
はてさて、どうしたらいいんだろうか。
本当にこのまま買い物に行くべきなんだろうか。
それとも、家にいたほうがいいんだろうか。
買い物に行って暁さんの、彼方に対する執着心が薄まれば、最善かもしれない。
でも、暁さんには彼方がいるように見えているんだろう。
それは、外出中でもきっと変わらない。
逆に、外出中に見えない彼方と話し始めたら、周りの人が怖がるだろう。
でも外出しないという選択肢も難しい。
家の中にいれば、もっと彼方に対する執着は強まるだろう。
なんせ、ここは彼女にとって、家族がいる場所なんだから。
周囲の人の視線の心配はなくなるかもしれないけど、根本的な解決にはならない。
結局、僕が決めかねていると、暁さんの準備が終わってしまったようだ。
「私の準備は終わったから、出発しようか」
「う、うん」
と言って、二人で家の扉を開けて、外に出た。
外は、きれいな青空が広がっていた。
ただ、いつもと違って、少し緑が強くなっていた。
僕は、いつもよりも少し遅めに起きた。
まあ、さすがに徹夜した後の睡眠はしっかりとった。
ただ、ちょっと体に違和感も感じた。
それは、これまでに感じてきた、鈍痛とは比にならないほどの痛みだった。
僕の場合、本当に徹夜したら危険な病気だから、徹夜明けはつらくなって当然かもしれないけど。
もう完全に日はその目を見せていて、二度寝を許すまいととしていた。
仕方なく、布団を抜け出して、一階に降りた。
すると、普段の光景が広がっていた。
暁さんがキッチンで、朝食の準備をしている。
テーブルには、トーストが用意されていて、いつでも食べられるように...
ん?
テーブルに用意されていた朝食は、三人前だった。
もしかして、誰か来ているのだろうか。
例えば、先生とかが訪問しているのだろうか。
焦って辺りを見回したが、特に僕と暁さん以外の人は見当たらなかった。
そうして、もう一度暁さんのほうに向きなおる。
すると、いつもと何ら変わらない口調で
「おはよう、蓮」
と、笑いながら挨拶してくれた。
ちょっとどぎまぎしながら
「お、おはよう」
とだけ返して、自分のタオルを盗むようにとって、洗面所に向かった。
そして、洗面所の扉を閉めて、ちょっと立ち止まって、考えた。
何があったんだろう、と。
いつも通りの朝
いつも通りの暁さん
いつも通りの朝ごはん
でも、そこに置かれていたごはんの数は三つ。
しかも、そのことに何の疑問もない様子で、朝食の準備を進める暁さんがいた。
最初、僕はある恐怖を感じた。
それは、僕だけが取り残されているのではないかというもの。
つまり、あの場には僕が気が付けなかった人がいるんじゃないだろうか。
そう思って、少し洗面所の扉を開けて、リビングの方を覗き見た。
暁さんに気が付かれないように、注意を払いながら、見まわした。
けど、そこにはいつもと変わらない、リビングがあるだけだった。
やっぱり、僕が感知できない人がいるんだろうか。
それとも、これは夢なんじゃないだろうか。
そう思って、洗面をした。
自分の目を覚ますように。
冷たい水が、顔の表面ではじける。
その時、僕の思考もはじけるような気がした。
それは、彼方からの忠告。
「存在しないものと話す」
という暁さんが発狂したときの状態
その可能性に気が付いたとき、僕は少し安堵した。
もしかしたら、僕がくるってるわけではないのかもしれないと。
けど、次の瞬間に、その安堵は、さっきの何倍もの恐怖と不安に変貌していた。
頬をつたう水が、まとわりつくいやな予感と重なり、急いでそれを振り払うように、顔を横に振った。
大切な人が、近くからいなくなったときに、暁さんに起こる狂い
それは、自分の欲求と現実の乖離によっておこるもの
残酷な現実から逃れるためのもの
確かに、暁さんがその状態だとすると、この状況につじつまが合う。
暁さんが、いつもより一人分多く配膳していることに、何の疑問も抱いていないこと。
それは、暁さんにしか見えない、彼方がいるからなのではないだろうか。
僕は、あの時、彼方とこのことについて話した時に感じた、気味悪さを軽蔑した。
今、ここにある気味悪さのほぅが、何倍も大きかったから。
あの時に感じた薄気味悪さが、どれだけちっぽけか思い知ったから。
けど、まだ確かと決まったわけじゃない。
だから、僕は勇気を振り絞るように、もう一度顔を横に振って、扉に手をかけた。
そして、勢いよく洗面所の扉をあけ放った。
リビングに向かうと、トーストだけでなく、香ばしいコーヒーの香りが漂っていた。
もちろんのように、三人分用意されていた。
僕のことに気が付くと、待っていたかのように暁さんがキッチンから、自分の席に向かって歩き始めた。
僕も、なるべく暁さんと同時に、席に着けるように、足早に椅子に向かった。
そして、自分のタオルを椅子に掛けて、席に着いた。
暁さんも、僕と同時に座った。
二人で同時に手を合わせて、
「いただきます」
と言って、食べ始めた。
食べ始めた最初は、わずかな恐怖も残ってたけど、いくらか食べているうちに、その恐怖は消えていた。
同じように、最初感じられなかったコーヒーの酸っぱさにも気が付けるようになっていた。
だんだんと、ただの配膳ミスじゃないかと、頭の中で片付けようとした。
その時
「三人で食べるご飯は美味しいね」
と、目の前に座っている暁さんが、つぶやいた。
その瞬間、僕ははっとした。
当たってほしくない予想が、当たってしまったようだった。
その言葉の後、暁さんは何ら変わらぬ表情で、再度ご飯を食べ始めた。
僕は、しばらく驚きに飲み込まれてしまい、トーストがのどを通らなかった。
さっきまでの、予想が的中してしまうなんて。
どうしたらいいのかわからなくなってしまい、本当に何も行動できなかった。
けど、動けなかったのは、多分数秒ほどで、すぐにトーストの残りを片付け始めた。
いつまでも止まっていたら、暁さんに怪しまれてしまいそうだから。
けど、トーストーはただの無味のものに変わっていた詩、コーヒーもただの苦い飲み物に変わってしまっていた。
なんとか、残りのトーストを、胃の中に収めることができた。
暁さんの方を見ようと思ったけど、ちょっと右に視線をそらして
「ご馳走様」
といった後に、自分の食器を流し台まで運んだ。
そして、自分の食器の片づけをし始めた時、さらに驚くべきものを見てしまった。
それは、暁さんが、虚空に向かって声をかけ始めたのだ。
しかも、何度も何度も返答がないのに、いろんな文章を投げかけていたのだ。
まるで、僕には見えない何かと、僕には聞こえない声で会話しいるかのようだった。
僕は、見て見ぬふり、聞いて聞こえぬふりをして、片づけを済ませた。
そして、自分の席に戻って、腰を落ち着かせた。
すると、今度はしっかりと僕の方を見て、暁さんが言った。
「今日、どっかに出かける?
特に何もすることなくて暇だしね」
と、いつもの明るい口調で、笑顔を浮かべて提案してきた。
僕は最初、本当に自分に話しかけられているのかわからなくて返答しなかった。
けど、さっきと違い、暁さんが次の言葉を発さないあたり、僕の返答を待っているのだと察した。
「今日は天気もいいし、どっかに出かけてもいいね」
とだけ、暁さんに聞こえるか、ぎりぎりの声で伝えた。
「そうだね~
久しぶりに、洋服とか見に行こっか
彼方もつれてさ」
彼方だって...?
本当に言っているのだろうか。
凝視した暁さんの顔には、僕をからかっている表情は見られなかった。
いつもの、一切裏表のない、優しそうな表情をしていた。
それが、何倍も僕の恐怖をあおった。
ただ、僕はこの恐怖と驚愕を顔に出さないように、ひた隠しにして次の言葉をかけた。
「じゃあ、前みたいに、いろいろ買い物しようよ
洋服とか、本とかさ」
と、何とか応えた。
ただ、多分ものすごい形相だったと思う。
無理に笑おうとしながら、冷や汗が垂れている感じだった。
「そうだね
久しぶりにいろいろ買わないとね~
じゃあ、急いで準備するね」
と言って、暁さんは、流し台で暁さんの食器を洗いだした。
はてさて、どうしたらいいんだろうか。
本当にこのまま買い物に行くべきなんだろうか。
それとも、家にいたほうがいいんだろうか。
買い物に行って暁さんの、彼方に対する執着心が薄まれば、最善かもしれない。
でも、暁さんには彼方がいるように見えているんだろう。
それは、外出中でもきっと変わらない。
逆に、外出中に見えない彼方と話し始めたら、周りの人が怖がるだろう。
でも外出しないという選択肢も難しい。
家の中にいれば、もっと彼方に対する執着は強まるだろう。
なんせ、ここは彼女にとって、家族がいる場所なんだから。
周囲の人の視線の心配はなくなるかもしれないけど、根本的な解決にはならない。
結局、僕が決めかねていると、暁さんの準備が終わってしまったようだ。
「私の準備は終わったから、出発しようか」
「う、うん」
と言って、二人で家の扉を開けて、外に出た。
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