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1章:勇者誕生
1話:社畜、ゲームの世界へ逝く。
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(……今日もなんとか生き残った)
終電が駅のホームに滑り込むのを、私はまるで命綱に飛びつくみたいな気持ちで駆け込んだ。
息を整えながら、反対側の扉へともたれかかる。
車窓からは、東京の煌びやかな夜景があたり一面に広がり、どれだけ疲れていても「綺麗だ」と感じさせる。
背負っていたリュックを胸の前に抱える。
中には、仕事道具であるノートパソコンとペーパーレス化には程遠い分厚い資料、それと食べ損ねたコンビニのメロンパン。
ここ数ヶ月、私の帰宅ルーティンはこのパターンだ。
大学を卒業して入社した広告代理店。
憧れの業界ではあったけど、想像を超える激務の毎日。
新卒の研修が終わった途端に自分のキャパに見合わない仕事が与えられ、日付が変わる前に布団に入れた日なんてもう遠い記憶だ。
でも、今日は少しだけ足取りが軽い。
理由は本当に単純。明日は、珍しく何も予定が入っていない休日だからだ。
(ゲーム、久しぶりにできるかな……)
そう心の中で呟いて、頬がゆるむ。
社会人になってからというもの、大好きだったRPGを全くプレイできていなかった。
彼氏とお金を出し合って買ったゲーム機もテレビの横でほこりをかぶっているに違いない。
そう想いを馳せながら電車に揺られること30分。
都会から一気に住宅街へと戻ってきた。
ロマンチックな夜景は一切無くなり、線路沿いの飲み屋だけがやけに騒がしい。
そこに立ち寄ることなく、最後の体力を振り絞り、何とか夜道を歩く。
早歩きで街灯をいくつも潜り、1DKの我が家があるアパートへと帰ってきた。
ここは、大学生時代から住むオートロック付きの小さなアパート。
「女の子がひとりで住むには心許ない」なんてお母さんに言われたけど、今までなんの事件もなく過ごしている。
他の住民とすれ違っても会釈すらしないし、されない。
そういう近所付き合いがない所も気に入っている。
パンパンのリュックから鍵を取り出し、玄関のドアを開けると、真っ暗な部屋。
廊下の蛍光灯が玄関に置かれた見覚えのある靴を小さく照らす。
有名なスポーツブランドの有名なスニーカー。彼の靴だ。
「帰ってきてるんだ……」
なんだか久しぶりに家で顔を合わせる気がする。
せっかくだし徹夜で一緒にゲームでもして……なんて考えながらリビングのドアを開けた。
手探りで部屋の電気を付ける。
その瞬間。
私の幸せな時間は、ぷつん、と途切れた。
目に飛び込んできたのは、長年連れ添った彼氏と見知らぬ女の子。
乱れたシーツの上、まさに「そういうこと」をしている真っ最中だった。
「……え?」
自らの意思で発した音ではなく、反射で声が漏れた。
じんわりと汗をかいている彼がぎょっとした顔でこちらを振り向く。
見知らぬ女の子は慌てて毛布にくるまった。
私のお気に入りの毛布にーー。
「ち、違うんだ、英美(えいみ)!」
彼は、大学時代から付き合ってきた人。
ゲームも、恋も、笑いも涙も、一緒に分かち合ってきたと思っていた人。
顔はまぁ、あれだけど、優しい人だ。
優しい人、"だった"。
「な、何が……違うの……?」
声が震える。
どういうしてこうなったのか分からないけど、目の前の事実を覆すことは出来ない。
私は、彼氏に"浮気"をされたのだ。
私が借りている部屋で、私が買っておいたビールを空けて、私が買ったベッドでーー。
私の気持ちなんてお構い無しに、ベッドから立ち上がり、一糸纏わぬ姿で彼はお決まりのように言い訳をベラベラと並べ始める。
仕事のストレスがどうとか、寂しかったとか。
「彼女とは遊びだった」と言った瞬間、ベッドの中の女の子も騒がしくなったが、何も耳に入ってこない。
今さら「私の事を1番愛してる」とか、そんな言葉を信じられるほど私はお人好しじゃない。
「……ふざけないでよ!」
絞り出した声が、夜の部屋全体に響いた。
一瞬の沈黙の後、彼の顔色が青から赤へと一瞬にして変わる。
逆ギレ。そう、まさにそれだ。
「お前が全然かまってくれなかっただろ!」
その言葉が、胸に突き刺さる。
それは私が望んでそうしたんじゃない。
生きるために働いていただけで、それを彼も理解してくれていた。と、思っていたのにーー。
「……最低」
それだけ言うのが精一杯だった。
「俺だってなぁ!!」
次の瞬間、彼の手が私の肩を乱暴に突き飛ばす。
ぐらり、と視界が揺れ、ごつん、と何か固いものにぶつかり、頭の後ろに衝撃が走った。
それは、二人で買った思い出のゲーム機だった。
「あ……」
視界が暗くなっていく。
意識が遠のく中、記憶が走馬灯みたいに駆け巡る。
大学のサークルで出会った日。
初めて一緒にRPGをプレイした日。
休日には、ゲームのレベル上げを二人でひたすら頑張った。
エンディングで二人して泣いた夜。
隠しボスを倒した瞬間、思わず抱き合って笑った。
続編が発表されて、「絶対一緒にやろうね!」と約束したあの日。
全部、宝物だったはずなのに。
薄れる視界の先に、彼氏、いや元カレが私を心配そうに覗き込んでる。
これが私の運命なのかもしれない。
最悪なエンディング。
だけどせめて、大好きだったあのゲームの続編だけは、やりたかったな。
そう思った瞬間、まぶたが勝手に閉じていった。
ーー風の音がする。カタカタと窓枠が揺れる音。
木が軋む匂い。
不思議な感覚に、私はゆっくりと目を開けた。
そこには、見慣れない古びた木目の天井が広がっていた。
天井板には小さな隙間があり、外の光がちらちらと差し込んでいる。
「……どこ?」
ここは私の部屋じゃない。
ワンルームの、白い天井のクロスじゃない。
まるで、そう、ゲームに出てくる“主人公の初期の家”みたいな。
ごくりと喉を鳴らす。夢だろうか、それとも。
そんな私の戸惑いを打ち消すように、元気いっぱいの声が部屋中に響いた。
「いつまで寝てるのよ! 今日は成人の儀式の日でしょ?!」
「え……?」
声の方へ顔を向けると、そこには栗色の髪をポニーテールにした『お母さん』が立っていた。
まん丸で恰幅の良いその人は、腰には淡い黄色のエプロン。
手にはフライパン。
初めて見る人だが、確実に『お母さん』だった。
心臓がどきん、と跳ねた。
「まさか、ここって……」
まるでRPGの世界みたいな場所に、私は放り込まれていたのだ。
終電が駅のホームに滑り込むのを、私はまるで命綱に飛びつくみたいな気持ちで駆け込んだ。
息を整えながら、反対側の扉へともたれかかる。
車窓からは、東京の煌びやかな夜景があたり一面に広がり、どれだけ疲れていても「綺麗だ」と感じさせる。
背負っていたリュックを胸の前に抱える。
中には、仕事道具であるノートパソコンとペーパーレス化には程遠い分厚い資料、それと食べ損ねたコンビニのメロンパン。
ここ数ヶ月、私の帰宅ルーティンはこのパターンだ。
大学を卒業して入社した広告代理店。
憧れの業界ではあったけど、想像を超える激務の毎日。
新卒の研修が終わった途端に自分のキャパに見合わない仕事が与えられ、日付が変わる前に布団に入れた日なんてもう遠い記憶だ。
でも、今日は少しだけ足取りが軽い。
理由は本当に単純。明日は、珍しく何も予定が入っていない休日だからだ。
(ゲーム、久しぶりにできるかな……)
そう心の中で呟いて、頬がゆるむ。
社会人になってからというもの、大好きだったRPGを全くプレイできていなかった。
彼氏とお金を出し合って買ったゲーム機もテレビの横でほこりをかぶっているに違いない。
そう想いを馳せながら電車に揺られること30分。
都会から一気に住宅街へと戻ってきた。
ロマンチックな夜景は一切無くなり、線路沿いの飲み屋だけがやけに騒がしい。
そこに立ち寄ることなく、最後の体力を振り絞り、何とか夜道を歩く。
早歩きで街灯をいくつも潜り、1DKの我が家があるアパートへと帰ってきた。
ここは、大学生時代から住むオートロック付きの小さなアパート。
「女の子がひとりで住むには心許ない」なんてお母さんに言われたけど、今までなんの事件もなく過ごしている。
他の住民とすれ違っても会釈すらしないし、されない。
そういう近所付き合いがない所も気に入っている。
パンパンのリュックから鍵を取り出し、玄関のドアを開けると、真っ暗な部屋。
廊下の蛍光灯が玄関に置かれた見覚えのある靴を小さく照らす。
有名なスポーツブランドの有名なスニーカー。彼の靴だ。
「帰ってきてるんだ……」
なんだか久しぶりに家で顔を合わせる気がする。
せっかくだし徹夜で一緒にゲームでもして……なんて考えながらリビングのドアを開けた。
手探りで部屋の電気を付ける。
その瞬間。
私の幸せな時間は、ぷつん、と途切れた。
目に飛び込んできたのは、長年連れ添った彼氏と見知らぬ女の子。
乱れたシーツの上、まさに「そういうこと」をしている真っ最中だった。
「……え?」
自らの意思で発した音ではなく、反射で声が漏れた。
じんわりと汗をかいている彼がぎょっとした顔でこちらを振り向く。
見知らぬ女の子は慌てて毛布にくるまった。
私のお気に入りの毛布にーー。
「ち、違うんだ、英美(えいみ)!」
彼は、大学時代から付き合ってきた人。
ゲームも、恋も、笑いも涙も、一緒に分かち合ってきたと思っていた人。
顔はまぁ、あれだけど、優しい人だ。
優しい人、"だった"。
「な、何が……違うの……?」
声が震える。
どういうしてこうなったのか分からないけど、目の前の事実を覆すことは出来ない。
私は、彼氏に"浮気"をされたのだ。
私が借りている部屋で、私が買っておいたビールを空けて、私が買ったベッドでーー。
私の気持ちなんてお構い無しに、ベッドから立ち上がり、一糸纏わぬ姿で彼はお決まりのように言い訳をベラベラと並べ始める。
仕事のストレスがどうとか、寂しかったとか。
「彼女とは遊びだった」と言った瞬間、ベッドの中の女の子も騒がしくなったが、何も耳に入ってこない。
今さら「私の事を1番愛してる」とか、そんな言葉を信じられるほど私はお人好しじゃない。
「……ふざけないでよ!」
絞り出した声が、夜の部屋全体に響いた。
一瞬の沈黙の後、彼の顔色が青から赤へと一瞬にして変わる。
逆ギレ。そう、まさにそれだ。
「お前が全然かまってくれなかっただろ!」
その言葉が、胸に突き刺さる。
それは私が望んでそうしたんじゃない。
生きるために働いていただけで、それを彼も理解してくれていた。と、思っていたのにーー。
「……最低」
それだけ言うのが精一杯だった。
「俺だってなぁ!!」
次の瞬間、彼の手が私の肩を乱暴に突き飛ばす。
ぐらり、と視界が揺れ、ごつん、と何か固いものにぶつかり、頭の後ろに衝撃が走った。
それは、二人で買った思い出のゲーム機だった。
「あ……」
視界が暗くなっていく。
意識が遠のく中、記憶が走馬灯みたいに駆け巡る。
大学のサークルで出会った日。
初めて一緒にRPGをプレイした日。
休日には、ゲームのレベル上げを二人でひたすら頑張った。
エンディングで二人して泣いた夜。
隠しボスを倒した瞬間、思わず抱き合って笑った。
続編が発表されて、「絶対一緒にやろうね!」と約束したあの日。
全部、宝物だったはずなのに。
薄れる視界の先に、彼氏、いや元カレが私を心配そうに覗き込んでる。
これが私の運命なのかもしれない。
最悪なエンディング。
だけどせめて、大好きだったあのゲームの続編だけは、やりたかったな。
そう思った瞬間、まぶたが勝手に閉じていった。
ーー風の音がする。カタカタと窓枠が揺れる音。
木が軋む匂い。
不思議な感覚に、私はゆっくりと目を開けた。
そこには、見慣れない古びた木目の天井が広がっていた。
天井板には小さな隙間があり、外の光がちらちらと差し込んでいる。
「……どこ?」
ここは私の部屋じゃない。
ワンルームの、白い天井のクロスじゃない。
まるで、そう、ゲームに出てくる“主人公の初期の家”みたいな。
ごくりと喉を鳴らす。夢だろうか、それとも。
そんな私の戸惑いを打ち消すように、元気いっぱいの声が部屋中に響いた。
「いつまで寝てるのよ! 今日は成人の儀式の日でしょ?!」
「え……?」
声の方へ顔を向けると、そこには栗色の髪をポニーテールにした『お母さん』が立っていた。
まん丸で恰幅の良いその人は、腰には淡い黄色のエプロン。
手にはフライパン。
初めて見る人だが、確実に『お母さん』だった。
心臓がどきん、と跳ねた。
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