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◆重なる点と線
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しおりを挟む右崎がメランコリーな気分に打ちひしがれていた頃。
アキラは少年の住むマンションに入り、彼の部屋の前で扉が開くのを待っていた。
そして、カチャっと開いたドアに手を掛けると「失礼しまーす」と言って、少年を押しのけるようにして玄関に中に入った。
「ちょ、な、なんだよ!」
慌てた少年が押し返そうと抵抗するが、難なくかわして廊下を進んで部屋の中に入っていく。
「待てよっ! お前、ふざけんなっ!」
「まぁまぁ、そう怒るなよ」
正面の開いている扉からリビングに入ると、ローソファーに座っていた若い男が、目を丸くして腰を浮かせた。
「えっ――」
大きく口を開けたまま、彼は怯えたように体をのけぞらせる。
察するに同級生か、もしくは先輩後輩か。
「勝手なことしてんじゃねーよ!」
少年がアキラの前に回り込んで立ち塞がる。
「警察呼ぶか? 今日うちの店に来たぞ? お巡りさんがふたり」
少年ふたりはわかりやすいほど動揺し、口をつぐんだ。
「何があったんだ。とりあえず食べて、話を聞かせてくれよ。な、少年」
アキラが少年の肩をポンポンと叩くと、少年は忌々しそうに舌を打った。
「食ってからでいいか?」
「ああ、もちろんだ。メニューはきのことロールキャベツのクリーム煮、白菜のカレー風味のサラダ、ブロッコリーとベーコンのガーリック炒め」
「へぇ」
「ロールキャベツのクリーム煮、絶品だぞ」
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