偽装結婚のはずが、溺愛なんて聞いてません!

白亜凛

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四、また恋をしましょう

14 ☆

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 ぶるぶると左右に首を振り、きっと気のせいだと自身に言い聞かせる。

「じゃあねー、お疲れー」
「お疲れ様ッス」

 小野と別れ、隼人から到着を知らせるメッセージが届いたのはそれから間もなくだった。

 ほんの一、二分の距離とはいえ車には敵わない。スーパーのすぐ近くのコインパーキングで隼人が乗る車を見つけた。
 駆け寄ろうとしたのに、彼は車から降りて歩いてきて、驚く美咲にスーパーを指さす。

「うそでしょ! 買い物するの?」

 高級店ではなくごく普通のスーパーだ。買い物をする気はなく、当然のように彼には車で待ってもらうつもりでいたのに――

 慌てふためいて駆け寄る途中、同僚女性の姿が見えて、美咲の脳裏に〝終わった〟と言葉が浮かんだ。

 それでもスーパーで一緒に買い物をした時は普通だった。

 その後イタリアンレストランで食事をした時も、彼はにこにこしていて、横断歩道で目が合ったと思ったのはきっと気のせいだと安心した。
 彼は目立つ存在だけれど美咲は大衆に馴染む。彼は気づかなかったに違いない。

 鎌倉に帰って。彼はそのままバスルームに行き、美咲は着替えて明日のお弁当を何にしようかと考えた。

 もうすっかり横断歩道の件は忘れていたのに――

 シャワーを浴びた彼に手を引かれてリビングに行き、気づけば美咲はソファーの座面に組み敷かれていた。

「は、隼人さん?」

 彼はにやりと片方の口角を上げた。
 黒いガウンを羽織っただけで、緩く合わせた胸元がしっかりとはだけている。半渇きの髪が額に落ちていて、瞳は怪しげに光った。

「あの男は誰だ?」

 やはり彼は気づいていたのだ。

「こ、後輩です。後輩の、小野くんで」

「小野? 下の名前はなんて言うんだ」

 形のいい眉がピクリと動く。名前を言ったのは失敗だったのか。

(ごめん! 小野くん)

「あっ、だ、だから。ただの小野で」
 ただのとは何だと自分で突っ込みを入れ気が動転した美咲はギュッと目をつぶった。

「いいか、美咲。よく聞け」
「は、はい」

「俺が夫である限り、絶対に浮気は許さないからな」

 浮気? 誰が浮気? 私が?と仰天する間に空いた口を隼人の口が塞いだ。いつもの優しいキスはどこへやら、いきなりの激しい口づけに美咲はなすすべもなく口内を蹂躙される。

「んっ……」

 隼人の右手は美咲のブラウスをたくし上げ、難なくホックを外されたブラの中に滑り込んでくる。

「やっ……やめ――」

 激しいキスの合間にやっと声を上げるも、二度の行為に早くも馴染んだ体は隼人の指の動きに従順だった。固くなった胸の頂を指先で転がされ、抗議の声は甘さを帯びてくる。

「あっ――う……」

「ここを、誰にも触らせるなよ」

 耳元で囁かれて「ん……」と小さく頷いた。

「もうこんなに濡れて。お前の体は素直だな」

 そんなことを言わないでと、恥ずかしさに顔をそむけると上半身を起こした彼は一気に美咲の両足の太腿を掴み、間を割った。

「ちょ、や……だ、ダメ……」

 隼人と違ってまだシャワーもお風呂にも入っていない。

「いい匂いだな――お前の、甘い匂い」

 くすくす笑いながら、隼人は濡れぞぼったそこに顔を埋める。

「あっ……あぁ――」

 伸ばした手が宙を舞い、お腹の奥から込み上げる快感に必死に耐えようとしても、嘲笑うように彼の舌は音を立てて蜜を味わっている。


 快感に酔い抵抗する力を失った美咲は、遠のく意識の中で思った。

 どうしたらいいのだろう、と。

 隼人が好きだという気持ちが、溢れて止まらない――
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