月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜

白亜凛

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◆鳴かぬなら鳴かせてみよう我が妻よ * 尊

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 食事を選ぶのはいつも俺だ。
 ほかの社員相手と違って、春海には普段から気を使わない。

 本人曰く気を使われるほうが疲れるらしい。
 見るからにフェミニンで壊れやすそうに見えるのに、実際の春海は、頑丈な精神力の持ち主だ。
 男同士の怒鳴りあいのような打合せにも、一歩も引かず割って入る。キックボクシングジムにも通っているので、仮に襟首を掴まれても、顔色ひとつ変えないだろう。

 俺のほうも秘書相手の時まで愛想笑いをしていたのではいい加減疲れるので、春海には言いたいことを言う。春海も遠慮なく物申すので、男同士のような感覚になる。

「では、鰻でお願いします」
「大きく出たな。わかった。鰻屋にしよう」


 近場で一番高級な店に入ると無事空席はあり、和楽器のフュージョンが流れる奥の個室に通された。

「それで、何か相談事ですか?」
「ん?」

「ご遠慮なく。そう思って鰻にしましたから」
 春海は澄ましてお茶を飲む。

 あけすけな物言いに思わず「お見通しか」と笑った。

「妻をね、喜ばせようと思って。明日土曜だから一日中、一緒にいられるし」
「あら。どれくらい喜ばせたいですか?」

「うーん、そうだなぁ。夫にメロメロになるくらい?」
 クスクスと春海は笑う。

「それは殊勝なことですね。そういうことでしたらいくらでもご協力いたしましょう」
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