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◆嘘? 本当? * 弥衣
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しおりを挟むアパートに背を向け歩きだした時。
「あっ、ゆ、優介さん?」
こんなところに、いるはずのない優介さんが立っていた。
「一俊に聞いたんだ。アパートの解約をするって」
もう余計なことをと、ムッとしかけたが『逃げてないでちゃんと話しろよな』という一俊の声が聞こえる気がした。
はっきりと別れを言わないのは自分の都合だ。
優介さんが突然の私の告白に動揺するのも、話をしたいと言うのも当然なのだ。
彼との楽しかった日々を虚像にしないためにも誠実に向き合わなければいけない。
「飯は?」
「まだよ」
食事をしながら話をとなり、ほど近いイタリア料理のレストランに入った。
ひっそりと佇むその店は入口周りの壁にツタが絡まっている。小さな窓から見える店内は落ち着いた雰囲気の素敵な空間で、ここに住んでいた頃から気になっていた。
外食の余裕はないのでついぞ行くことはなかったが、こんなかたちで入ることになろうとは。
実際入ってみると、予想通りの落ち着いた雰囲気である。
流れているのはクラシック。
尊さんがリビングで流す選曲より、ずっと明るくてポップな曲調だ。
ふたりともパスタコースを頼んだ。
私はブロッコリーとエビのペペロンチーノ。優介さんは鮭とほうれん草のクリームソース。
もし尊さんが選ぶとしたらなんだろう。
少なくとも朝ごはんに食べている鮭は選ばないかなぁと思う。
目の前にいるのは優介さんなのに、なぜだか、頭に浮かぶのは尊さんのことばかり。
多分気持ちが逃げているんだろう。
それじゃいけないと叱咤して、ひとまず他愛のない質問をする。
せめて食事が済むまでは重たい話はしたくない。優介さんだってそう思っているはず。
「お医者さまの仕事はどう? 相変わらず忙しい?」
「うん。相変わらずバタバタしてるよ」
お互いに心の滓に触れないよう、上澄みをすくう会話を続けた。
ときには笑いながらテレビの話をしたりして。オードブルが終わり、パスタが終わり、ドルチェのパンナコッタを食べ始めたとき、遂に優介さんが切り出した。
「本当に結婚したのか」
優介さんはティカップを持つ私の左手をジッと見る。
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