このハッピーエンドは許されますか?

あや乃

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 嫌な予感は当たるもので……

「護衛って、シュゼットの?」
「そうなの。だから暫くユウナのところには来れなくなるかもしれないわね」

 間もなくしてシュゼットの案内兼護衛役に何故かカイルが任命された。本来なら陛下直属の騎士団から専属の護衛が付く筈だったんだけど……

『陛下、私の護衛にはカイル様を付けていただけませんか』
『カーライルはまだ学生の身。メインズ嬢の身の安全を守るためにも我が騎士団から人選したいのだが』
『カイル様がいいんです! 今後の展開のためにも……お願いします!!』
『うーむ……とはいってもな』
『陛下もこの力、解明したいんですよね。カイル様を付けてくれないなら私このまま田舎に帰っちゃいますよ!』
『うーむむ……』

 シュゼットがどうしてもカイルがいいと駄々をこね、彼女の力を解明したい王族側が半ば折れる形で決まったらしい。

 でも、同じ学生なら校内にいても違和感ないし結果オーライかな、とセシリアに翻弄されたあの陛下なら思ってそう。

 それからシュゼットとカイルはいつも一緒。まあ護衛だから当然だけど。

「出会いイベント? 確か学園内だったわよ。廊下で偶然シュゼットがカイルにぶつかってそれを助けるっていう王道パターンだけど」

 セシリアに聞いてみたらやっぱり転入初日のあれが二人の出会いイベントだった。

 偶然……か? 私にはわざわざ廊下に出てから全力で当たりに行ったように見えた。それにああいうのって二人の時に発生するもんじゃないの? 私、横にいたんですけど。

 と、突然私の前ににゅっと手が出て来た。

「!?」

 驚いて後ろに下がると何かにぶつかった。顔を上げると見知った顔が。

「カイル?」
「お前なぁ……」

 出て来た手も、ぶつかった相手もカイルだった。え、何で? と思って前を見るとそこには階段……って、あ、あぶなっ! カイルがいなかったら間違いなく転げ落ちていた。

 ぼーっとしたまま職員室の横を通り過ぎ、階段にさしかかっていたらしい。

「考え事か? 前見てないとケガするぞ」
「う、うん……ごめん、ありがとう」

 今更ながらに冷や汗が……集中し過ぎて周りが見えていなかった。気をつけよう。 

「そういやさ」
「え?」

 その時、横の扉が開いて職員室からシュゼットが出て来る。

「カイル様お待たせしました! あ、ユウナ様」
「おう、じゃあ行くか。またな、ユウナ」
「また教室で!」
「うん」

 あれ、さっきの何だったんだろう? でも流したってことは大した用事じゃないのかな。

 カイルとシュゼットを見送っていると、一瞬シュゼットがこっちを振り向い……え? 今、何かもの凄く勝ち誇った顔で見られた気が。

 これってもしかして……

*****

 嫌な予感パート2も見事的中。

 シュゼットの選んだ攻略対象はカーライルだった。まあ、出会いイベントの反応で何となく予感はしてたけどね。

 そういえばこの間、殿下とセシリアと三人でいた時こんなやり取りがあった。

『殿下』
『ああ、メインズ嬢。王都や学園での生活にはもう慣れたかな?』
『はい。皆さんすごく親切にしてくださるので毎日とっても楽しいです!』
『それは良かった』
『あの、殿下。私、ご相談したいことがあって』
『どうかした?』
『……少し二人だけでお話し出来ませんか』
『ここでは話しづらい内容かな?』
『はい、そうなんです』
『分かった、じゃあ専門のセラピストを付けるから』
『い、いえ。私は殿下と二人で』
『ごめんね、セシー以外の女性とは必要以上に近づかないようにしているんだ。愛しの婚約者に余計な心配をかけたくないからね』
『で、殿下!』
『……そうですか。分かりました、では失礼します』

 きっとこの時はまだハーレム狙いで全キャラクターの好感度を満遍なく上げようとしてたんだろうけど、セシリアしか目に入っていないアイスランがなびく筈もなく……あ、こいつ無理だわと悟ったシュゼットの動きは早かった。

 シフトチェンジしてからは他の攻略キャラクターそっちのけでカイルにべったり。
 
 あらゆる方面から好感度を上げにかかっている。いや、これ絶対にルート開けようとしてるでしょ! っていうのが丸わかり。

 これは一本釣りされるのも時間の問題かも……

 そしてそんなシュゼットの動きが前面に出るようになってから、下降していた私の評価が一気に下落した。

 愛されヒロインと恋人にしたい男子NO1。

 シュゼット至上主義の生徒たちからは既に公認の二人。そこに横やりを入れる聖なる乙女を笠に着たカップルクラッシャー……それが今の私。

 元々前科がある上にカイルと一緒にいることが多かったせいで噂に尾ひれがついて、セシリアと殿下の仲を引っ掻き回しただけでは飽き足らず、今度はシュゼットとカイルにまでちょっかいをかけようとするなんて! 本当に懲りない女ね……と言われているらしい。

 クラス内でも若干遠巻きに見られるようになった。

 私はどう言われても平気だけど、そのせいで一緒にいるセシリアまで悪く言われたり煙たがられたりしたら嫌だな、まあそうなったら殿下が黙ってないか。

 そんなことを考えながら教室の窓から外を見ていると、連れ立って歩くカイルとシュゼットの姿が飛び込んできた。会話までは聞こえないけど楽しそう。

 ふいにこっちを向いたカイルが私に気づいて大きく手を振っている。小さく振り返していると、横にいるシュゼットも笑顔で手を振っ……と次の瞬間カイルの腕にギュッと抱きついた。

 え、何だあの態度? ムカつくんですけど!!

 今まで誰彼構わず振りまかれていた愛想がカイル一点集中になったことで周囲は困惑しているかと思いきや……

 シュゼットは今やヒロイン無双状態なので、多少の自由奔放な振る舞いは許容範囲、むしろ好意的に見ている人が殆どだった。

 まあ彼女の本命は自分だと思っていた他のメインキャラクターはショックを受けているだろうな。あ、アイスランとジュラルドは論外で。

 そしてシュゼットがカイル狙いだと分かってから、私の中でもある変化が起こっていた。
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