【R18作品】コォとインの奇怪冒険譚

蛾脳シンコ

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第1部【明暗の大魔導師】編

第1話 コォとイン

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この世には影と光がある…光があるから影と言う概念があり、影と言う概念は光があってこそのものだ。
つまり良いモノがあれば悪いモノがあり、上があれば下もある…
世界と言うのは何事も真反対のものがあるから成り立つ、それこそが基本である。
・・・

「捕まえた!」
【ギー!ギー!】

俺の名前はコォ…カカオ山に住む思春期?っていう少年だ。
今日はお夕飯のオトリワニの尻尾を取りに来ている…いや…今、まさに取った。
後ろからワニの尻尾をとっ捕まえると、もごもごと動き出し…尻尾を切り離して何処かへ逃げてしまった…やった。
これで今晩は美味しいスープが食べられる。

「やったやった!早く帰って父さんに見せよう。」

自分は父と妹との3人暮らしで山に住んでいる。
いつもは父さんと妹との変わり番こで夕飯の材料を調達している、今日元々妹の日だが、皮膚病に罹ってしまったので俺が代わりにやっている。
それはともかく、川をバシャバシャ渡り、山道を歩いて家へと帰った。

「ただいまー」
「コォ、帰ったか。何も無かったか?」
「俺を誰だと思ってんの?もう何年も山を歩いているんだよ!」
「そうだったな…お前ももう1人で山を歩けるようになったか。」

父さんは昔、影の大魔導師とかいうやつでとても偉かったらしい…だけど、今はおじさんって感じかな…けど偉そうだ。
取って来た尻尾を父さんに見せてから台所に置くと、妹の様子を見に向かった。
部屋のドアをノックも無しに開ければ…

「イン、大丈夫か?」
「うーん…ガサガサ~」

妹のインは二段ベッドの下で肌を掻きながら寝ていた。
彼女の肌の一部は白くなっており、搔きむしればボリボリと表面の角質みたいなものが粉のように剥がれ落ちる。
なんとなく自分も掻いてみた…爪に溜まるなぁ…

「やめてー痒くなる…」
「コォ、イン、掻き過ぎると血が出るから止めなさい。」
「分かったよ…父さん、それ薬?」
「ああ。調合してみたんだ。」

父さんは調合したドロドロの塗り薬を塗った湿布を皮膚の白い個所へ張る。
薬の独特な匂いが鼻を突く…鼻詰まりが治りそうな匂いだ。

「熱は出て無いね…痒くても取ったり掻いちゃダメだよ。」
「ん~…」
「コォ、回復の魔法をかけてあげなさい。」
「分かった。」

言われた様に回復の魔法を…と言っても軽いものだが湿布の所へかけた。
俺は呆れられるほど頑丈だけど、インはハッキリ言って身体が弱い。
よく病気になるし、味が濃い肉なんかは食べられない…
だけどインの使う影の魔法は強力だ…自分は軽い光の魔法しか使えないけど。

「父さん…インって俺の妹なの?」
「何を言ってるんだ…お前達以上に似ている双子は見た事ないさ。」
「そうだよね…けど、俺は影の魔法が使え無いし…」
「誰しも得意、不得意はあるさ。コォ、お前はインじゃ無いだろう。」
「へへ…そうだよね。」

父さんは薬の調合器具を仕舞うと、台所で料理を始めた。
得意、不得意かぁ…俺はインと違って普通の魔法と軽い光魔法が使える。
回復魔法は切り傷や軽いやけどを治すのがやっとで他に使えるのも照明代わりになる光ぐらい…インと父さんが使う影の魔法とは正反対。

「コォ、薪が少ないから外から取って来てくれないか?」
「良いよ。まだ暗くないし。」
「すまないな。」

外へ行き、家の横の薪割り台へ行くと薪を…無いな。
しまった…最近、割るのを怠けてたからストックが無くなったのを思い出したぞ…一昨日ぐらいに「明日割ればいっか!」と思っていた気が…しなくもない。
今日はもう暗くなるから使う分だけ割っちゃうか。
父さんへ薪は無いから割ると伝えると、聖剣の如き台に刺さっている手斧を引っこ抜き、丸太を置いて割り始めた。

「薪割りの魔法なんて無いかなぁ………無いか。」

一応、一瞬だけ魔法の剣を出して斬り裂く!というカッコイイ魔法があるけど、自分のは形も見た目もショボい…薪割りには使えるかもしれないが、そんな事したら怒られる。
良い運動になるし、これはこれで良いだろう…さて、このくらいで良いかな。

「はい、割って来たよ。」
「すまない、助かった。風呂に入って来たらどうだ?」
「うん、そうする。父さんは?」
「後で入るよ。」

裏口から外に出ると、直ぐ近くに温泉がある。
父さんは珍しいって言っているけど自分にはどこが珍しいのか分からない。
今日は1人なので服を畳まなくて良いか…
換えの服とタオル、脱いだ衣服を塗れない場所へ置いた…此処なら良いかな。

「(このまま入っちゃおうかな…)」
『コォ!ちゃんと身体洗ってから入れよ?』
「は、はーい!」

言われた通り、頭と身体を湯で洗ってから入浴した。
やっぱり…熱いなぁ…冬とかは良いけど…今は春で今日はそんなに冷えて無いんだよね…湯冷めする危険性は無いけど熱いのも耐えがたい。

「(早く100数えて出るか…)」

自分は肩まで浸かり、少し早めに100数えると直ぐに上がった。
全身と頭の水気を乱雑にタオルで拭き取ると、サッパリとした服に着替えて汚れた衣服を持って屋内へ戻った。

「早かったじゃないか、ちゃんと浸かったか?」
「浸かりはしたかな。」
「そうか…なら良いんだが。」

その日は食事を摂り、何も無く終わった…明日もこうなるだろう。
だって昨日だってそうだったし、その昨日も…去年だってそうだった。
・・・

「はーい…もう…どちら様?」

翌日、早朝に自分はドアをゴンゴンッ!と強く叩く音で目を覚ました。
父さんは朝に弱いのでまだ起きていない…「こんな早朝に誰だ?」と思いながらドアを開けると、無人のプテラが嘴でドアを叩いていた。

「なんだ手紙かぁ…」
【グッギャァー!】
「はいはい、ご苦労さん…」
【ゴゲゲゲッ!】

プテラの嘴から手紙を受け取ると、翼竜はそのまま飛んで行った。
こんな山の麓まで人間が手紙を届けに来るはずもなく、こうやって無人の宅配サービスがやって来る…とはいえ、他人と話さないのは良い事だ。
届けてもらった手紙には見覚えのない印が押されている…どこのだ?

「タブルス・テヌシィ様へ……父さんか…」

タブルスは父さんの名前だ…だったら勝手に開けるわけにはいかない。
父さんの部屋に行き、毛布に包まって寝ているところを起こすと、手紙を渡した。

「あぁー…コォ、眼鏡を取ってくれ。」
「ん、はい。」

父さんへ眼鏡を渡すと自分は顔を洗いに外へ出た。
近くの川で顔を洗い、歯ブラシを使って歯を磨く…この歯ブラシも大分開いて来た…そろそろ頼んで買って来てもらわないと。
口と顔もスッキリしたところで家へ戻ると…

「コォか…すまない、出掛けることになった。」
「え?急に?」
「ああ。インの事は頼んだぞ。」
「分かったよ…」
「夜までには帰って来るからな。」

父さんは他所行きの服に着替えていた…手紙に何か書かれていたのだろうか?
よっぽど急いでいるのか、水だけを飲んでそのまま行ってしまった。
薬の場所は教えて貰ったのでインの事は大丈夫だろう…俺は…どうしよう…
今日は当番じゃ無いけど…いや止めておこう、インを1人にできない。

「んん…コォ…なんかあったの…?」
「おはよ。父さんが用があるって出掛けたんだ。」
「ふーん…痒いの治ったよ。」
「本当に?どれどれ…」

インの湿布を剥がして見てみれば…うん、ちゃんと肌は元通りだ。
「顔を洗って来い」と言うと、インは眠そうに川まで向かった…朝食は昨日の残りを火に掛ければ良いか…父さん、今日は何時に帰って来るんだろう。

・・・

だが…陽が沈み、暗くなっても父さんは帰ってこなかった。
自分は何か…嫌な予感がすると少しだけ感じていた…今までだって父さんが夜に帰ってこなかったことは多かった…だけどその時は必ず「帰れそうにない」と伝えるのだ。
しかし今日は夜までには帰ると言っていた…気のせいだと良いが…

「コォ…パパは…いつ帰って来るの?」
「分からない…だけどそのうち………ホラ!」

その時、家のドアを叩く音が響いた!きっと父さんに違いない!
もう…こんなに遅くなって…ちょっとだけ心配しちゃった。

「父さん!!……だ、誰…」

だがドアの前に居たのは全く知らない男であった…ど、どうしよう…何かの支払いかな…だとしたらまた後で来てもらう事になるけど…
インは自分の部屋へと隠れてしまった。

「タブルス殿のお宅で間違いないかな?」
「う、うん…タブルスは父さんの名前だよ。」
「と言う事は息子さんか…急だけど落ち着いて聞いてくれ。」
「何か…あったんですか…?」

「タブルス殿が私の病院へ緊急搬送された。かなりの重体だ。」
「えっ…」

それを聞いた途端、思考がプツリと切れた気がした…
この人は集落の医者らしい…父さんは全身がズタズタにされた挙句、強力な呪いを受けた状態で発見されたらしい…生命力が強いのか、生きているが…何時まで持つかは分からない状態だと男は言った。

「こんな時間にすまないが…一緒に来てくれないか?」
「は、はい…けど…イン…妹が居るんです。」
「馬には2人までしか乗れない…ならば明日にでも…」
「いえ!ちょ、ちょっと待っててください!」

俺は直ぐに部屋に行き、インに村へ行って来ると伝えた。

「1人で…大丈夫か?お留守番できるか?」
「大丈夫だよ…コォと同い年だもん。」
「(まぁ双子だしね…)分かった。行って来る。」

自分は上着を羽織ると医者の待つ外へ向かい、馬に乗せてもらうと暗い夜道をナショナルランプで照らしながら村へと急いだ。
馬が地を踏み、駆ける度に心臓がバクバクと震える…暗い夜道を行く俺達をゴウゴウと風が吹きつける…大丈夫だ…きっと大丈夫に違いない。
父さんは元気を取り戻して…それで…また3人で暮らせて…
・・・

「………」
「と、父さん…?」

病院へ着き、父さんが寝ている病室へ行くと…血が染みた包帯だらけの人間がベッドへ横たわっていた…こ、これが父さん…?なのか…?

【ドクター、この人は?】
「タブルス殿の息子さんだ。名前は…」
「コォです…コォ・テヌシィです…貴女は?」
【私の名はサーマ。聖職者だ。】

病室にはリザードマンのシャーマン、サーマと言う者も居た。
この人は父さんに罹った呪いを調べて解呪するために来たが…呪いが強力過ぎるらしい。
一応、父とは知り合いらしい…

【今、タブルスは8つの呪いを受けている。】
「8つの呪い?」
【そう…今の彼は見えず、聞こえず、喋れず、身体も動かず…痛みも受け、幻聴も聞こえ、精神は侵され、炎の中へ担ぎ込まれた様に熱さを感じているだろう。】

「誰がそんな事を…」
『コ、コォ…聞いてくれ…』
「!?」

その時、父さんの声が聞こえた!いや…聞こえたのではない、脳に響いた感じがした…もしかして心へ問いかけているのだろうか…

『母を…光の大魔導師を探せ…呪いを解くには…彼女しか居ない…』
「それってどういう意味!?母親って…」
【どうした!何かが聞こえるのか!(テレパシーか?)】
『私は自身の時を止める…良いか、コォ…インを…頼んだぞ…』

父さんはそれを言い終えると、全身がビキリと止まり…謎の魔法が掛けられた…

「これは…時間停止の魔法か…自身にかけるとは…そうか、タブルス殿はそれで…」
【コォと言ったな。お主、何か聞こえたようだな。】
「はい…その…母を探せと言われまして…光の大魔導師って…」
【光の大魔導師…聞いた事があるな…】

サーマはその光の大魔導師とは何かを教えてくれた。
その魔導師は数百年前に8人の偉大なる大魔導師で結成された組織「大魔導師会」の内の1人である女性…数十年ごとに世代交代しているらしい。
自分の年齢から逆算すれば…1世代前の人になる。

「じゃあその人を探せば…でも何処に…」
「大魔導師会の事ならビーミス辺りに支部があったハズだ。」
【要塞都市か…しかし、あそこは遠い。私やドクターの様なジジイには…】
「俺…行きます、その要塞都市って所に…」

自分がそう言うとサーマと医者は俺を止めた。
ビーミス要塞都市まではカカオ山を越えてガトーヒルまで行かなければならないらしい…山を出た事ない自分にとっては無茶な話かもしれない。
だけど…それでも父さんを救うにそれしかないなら…俺は行く。

【困ったな…これは父親譲りの頑固…コォ、お主魔法は使えるか?】
「戦闘用のものなら…一応…回復魔法も使えます。」
【一応か…カカオ山の奥は野盗や野犬が出る。話が通じる奴ならまだしも、言葉すら通じない魔物が出てくれば…】

「妹のインも魔法が使えます。影の魔法を使うんです…」
【(あの父親の子か…だとすれば…)良いだろう、推薦状を書こう。】
「サーマさん!何を考えているんですか!」
【この年の子ならもうとっくに冒険者をする時代だ…おかしくはない。】

サーマは推薦状を書いてくれると言った。
それをビーミスの支部の人に見せれば話を聞いてくれるかもしれないらしい。
自分は礼をすると、家へ戻ることにした。
インを連れて行くべきか?…心配だが1人にするよりマシだ…それに…俺が守る。

つづく
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