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第1部【明暗の大魔導師】編
第2話 日常からの離脱
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「コ、コォ…行くって何処に…?」
「ビーミスと言う街にだ、母親を探しに行くんだよ…2人で。」
集落の診療所から戻った自分はインに父さんの事と母親の事を話した。
明日にでも出発しなければならない、いくら父さんが自分の時間を止めていると言っても長い間、診療所へ置くと迷惑が掛かってしまう。
(ドクターは気にするなと言っていたが…気にしてしまう)
「は、母親…?私達にママが居たの?」
「光の大魔導師って人がそうらしい…明日にでも出発する。」
「ママ…居たんだ…」
長くて険しいかもしれないとインへ伝えたが、彼女は「行く」と言った。
もし来たくないならサーマさんに預けることにしたが…その心配は不要だ。
大きなバッグに一通り必要な物を詰め込む…地図と方位磁石、色々な道具…護身用のダガー…大分年季が入っているが…まだまだ使える。
「後は救急品に………そう言えば…」
そう言えば父さんが受け取った手紙…あれは何だったのだろう?
あれを呼んで出掛けることになったのなら…原因だ、なら知っておこう。
父さんの部屋へ入り、机の上に置かれた封筒を手に取る…見た事のない印…これは何処のだろうか?明日、サーマさんに聞いてみよう。
そして、問題の中身だが…
「なんだこれ…白紙…?」
封筒の中の紙を取り出したが…それはまっさらな白紙であった。
光に透かしても何も字は見えない…何なんだこれは一体?とにかく…これも持って行こう、知っている人が居るかもしれない。
「このくらいか…お金はどうしよう…」
自分の財布を開いても…入っているのは2ドルと73セント…何処かへ買い物しに行くわけでも無いので、この金はずっと前に貰ったお小遣いだ。
悪いとは分かっているけど…今は非常事態だ…父さんの引き出しからお金を持って行こう、留守にするんだし貴重品は置いておけないよ。
一番の下の引き出しを開ければ…取っ手が付いた金庫がある。
「(番号は教えてもらった…)」
教えてもらった番号は「0204」…俺とインの誕生日だ。
金庫の中には794ドルと334セント、指輪とロケットペンダント、が入っている。
ペンダントの中には…何もない、写真は無い。
だが小さく古い言葉で何かが書かれている…これは読めないな…
とにかく、お金を財布に仕舞って貴重品をポーチに入れるとバッグへ入れた…あとは…父さんの懐中時計も借りよう、高級品だが実用しなくてはならない。
「イン、本当に良いのか?本当に来るんだな?」
「1人は嫌だよ…それに…パパを救うなら…怖いけど行く。」
「出来るだけインの事は守る、だけど…戦う時は…やらなきゃならない。」
「影の魔法には自信があるよ。体力は無いけど。」
インが使うのは影の魔法や相手の気分を悪くさせるといった陰湿なものだ。
父さんが直々に教えた影魔法は強力…それに体力は無いけど魔力は父さんと同じくらい多い、俺より頼もしいかもしれない。
「よし……けど…その服じゃ…ダメだな…」
「コォもその服で行くの?」
自分の服装は普通の部屋着だし、インの服装も同じく部屋着だ。
とてもじゃないが旅に行くような服装では無い…俺は山へ行くための服がある、動きやすいが防御力なんて無い、薄くて耐水性に優れている服…
冬は寒いけど春なのでまだ大丈夫、と言うかこれから暑くなる。
「イン、このワンピース、もう着てないな?切って丈を短くするぞ。」
「良いよ。けど…短いと出ちゃうよ…」
「そのまま着るわけじゃない。ちゃんとズボンとかは着てもらう。」
ワンピースは換気性が高くて動きやすい、下に長袖を着れば山道も進めるようになるだろう…下もちゃんと履けば恥ずかしくない。
ワンピースを裾上げした…俺も上手いもんだ、将来は服屋になろうかな?
「裁縫道具も持って行くべきか…」
「コォ、男なのに裁縫上手だよね…本には仕立ては女がするって書いてあったよ。」
「だったらインがするか?」
「……何でもない。」
これでインの分の服装は整った…頭はつばが広いモノでも被せておこう。
肝心な俺の分は…いつもの服の下に鎖帷子を着るか、重いけど防御力は高い。
明日から旅に出る…かなり不安だが父さんを救うには行くしかない。
今日はもう寝てしまおう…ベッドで寝られるのも今日までだ。
・・・
「う~ん…はぁ…行くぞ、イン。」
「うん。」
今日から始まる…長く険しい旅が。
昨夜に用意した服装へ着替えると、荷物を背負った俺は汗拭き用に白いバンダナを頭に絞めた…気が引き締まるな。
山の奥へ行く前に集落へ向う事にした、サーマさんから推薦状を受け取るためだ…アレがあると大魔導師会の支部に話を聞いてもらえないかも。
【来たかコォ…そちらはインだな。】
「………」
「すみません。コイツ、人が苦手で…」
【そうか。ホラ、これが推薦状だ。インの事だが…】
俺は礼を言って推薦状を受け取ると、インは自分と共に旅へ向かうと伝えた。
【確か同い年…だったな。だったら大丈夫か。】
「はい…それで…これって何の印か分かりますか?」
【手紙か。どれどれ……これは…!サイジィ一家の印じゃないか!】
サーマさんは手紙の印を見ると何か恐ろしいモノでも見た様な表情をして手紙を手放した。
自分は手紙が地面へ落ちる前に拾うとサイジィ一家が何かを聞いた。
【サイジィ一家は遥か遠方の国の貴族だ…凶悪な呪術師の家族と聞いたが…そ、そうか!タブルスの呪いはサイジィ一家のものだったのか!】
サイジィ一家は遠方の国「コブサラ」に住む貴族であり、凶悪でタチの悪い呪術師の家族…こちらも8人家族であるらしい。
そして父さんの呪いは…奴らがかけた可能性が非常に高い。
そうだとしたら許せない…だけど…それほどの理由が有るハズだ…父さんは影の大魔導師、そのくらいになれば誰かから怨みを買うのも不思議ではない。
「そいつ等…まさかここら辺に居るんじゃ…」
【その可能性は否定できないな。怪しい奴が居たら直ぐに逃げろ。】
「分かりました…サーマさん、何から何までありがとうございます。」
【気にするな。タブルスには恩があるんだ。】
その恩が何かは教えてくれなかったが、知る必要も無いだろう。
サーマさんは山の入り口まで一応付いて来てくれる事になった…本当に良い人だ。
【さて…此処までだ。家の事は心配するな、見回っておこう。】
「ありがとうございます。それでは。」
「ばいばい…」
【ああ。二人共、検討を祈る。】
俺達2人はサーマさんと分かれ、山の奥へと入って行った。
普段は山の奥まで行くが…この道を歩くのは初だ…俺は山の外へ出ることが少ない…行ったとしてもあの集落のみだ、こっち側へ行くのは生まれて初めてだ。
父さんからは「危ないから行くな」と言われているので背徳感もある。
「コォ、こっち側って何があるの?」
「地図を見た時はパリング村っていうのがあったな。」
「人…いっぱい居るのかな…やだなぁ…」
「しょうがないさ。居ても数人程度だとおもうけど。」
地図で見たパリング村はかなり小規模なものなので人は少ないとおもう。
だけど…山を全然出ない俺達と話してくれるのかな…
「………ッ!?コォ!!誰か居る!!」
「なに!?ど、何処だ!」
「あそこに!!…あれ…い、居ない…」
敵襲か!?と思ってインの指さす方を見たが…なにも居ないし、誰も居ない。
木の幹か何かを人と見間違えたのだろう、たまに自分も熊だと思ってビビりまくった挙句に切り株だったっという事が何回もあった。
「気のせいだったのかな…」
「警戒するのは良い事だ、どんどん見てくれよ。」
いくら見間違いと言えども、そうやって警戒してくれるのは大事だ。
自分だけでは警戒しきれない…それにしても山の中ってこんなに静かだったんだなぁ…鳥の鳴き声だけが聞こえてとても優雅…いや、神秘的?
とにかく、いつもはうるさいと思っていてもいざこうしてみれば…悪くない。
(父さんがピンチだというのに俺は何を考えているんだ…)
「結構歩いて来たけど…はは、まだ山は大きいなぁ。」
「こんなに奥まで来たの初めて…」
「俺も。」
奥へ進むほどに森は鬱蒼として、道は舗装されたものでは無くなって行く。
そうなれば当然、体力は奪われて行く…かなり進んだと思いながら、俺とインは少し休憩する事にした。
水筒の水を飲み過ぎない程度に回し飲みすると、辺りを見渡す…
「はぁ…奥ってこんなに茂ってたんだな…」
「なんか…寒くない?」
「きっと木で太陽光が防がれてるんだよ。」
その証拠にここらへんの草は背が低く、薄い。
けど涼しいのは良い、最近温かくなってきたから助かる。
「そろそろ進むぞ。」
「うん………ッ!コォ!!前ッ!!」
「な!?」
インが突如として自分を伏せさせると、頭上をビュン!と何かが通過する!
先の方へ顔を向ければ…
「外したか…」
「や、野盗だ…」
そこに居たのは野盗だ!薄い服を着て笠を被っている…それに弓矢も持っている!
そうか!さっき飛んできたのは矢だ…ど、どうする…戦うしか無いのか…
考えている暇はない!相手は次の矢をつがえている!
護身用のダガーを抜くと、バッグを降ろして向かい合う…や、やってやる。
「(次は心臓を貫いてやる!)」
「イン!離れてろっ!」
「だ、だけど…1人くらいなら私の魔法で…」
「おっと!嬢ちゃんはこっちに来てもらおうか!」
「ッキャァ!?」
「イン!(まずい…もう1人…)あぐぁ!?か、肩が…」
インの後ろからもう1人、屈強な男が現れるとインを羽交い絞めにした。
そして後ろを振り返った隙に射出された矢が肩をかすり、周囲の肉ごと抉り取る!
い、痛い…よりにもよって利き腕の右肩を抉られるとは…
「コォ!!」
「おいキッカ!テメェなに勝手に攻撃してやがる!殺すんじゃね!!」
「手が滑っただけだ。次は外さないさ。」
「兄ちゃん嬢ちゃん、俺達は通行料だけ払ってもらえば大人しく通すぜ…肩は残念だがな…」
インを羽交い絞めにする男は100ドルほどくれれば大人しく通すと言っている。
仕方ないが…ここは払うしかない…右肩はもうダメかもしれないが…死ぬよりかは良い…
「タ…」
「や、やめろ!イン!魔法を使うな!!」
「タニポ…インジャ…」
魔法を唱えようとするインを止めたが!虚しく彼女は魔法を放った…
影魔法タニポ・インジャの効果は…
「ぐはぁ!?か、肩が…」
「や!野郎!キッカに何をしやがった!」
タニポ・インジャの効果は他人の傷を違う人間に移す能力だ…俺の右肩の抉れは無くなり、代わりに射手の男の肩からブシュゥ!!と血が噴き出す!
羽交い絞めにしていた男はインを離し、射手へ近付く…
「い、痛てぇ…肩が…」
射手の肩からはドクドクと血が流れ出ている…あのままでは出血多量で死ぬ。
インに怪我がないかを確認するが…よ、よし…怪我はない。
次はあの男だが…素直に治療を受けてくれるだろうか。
いくら敵だと言っても殺すまではしたくない、殺す必要もない。
「ちょ、ちょっと…」
「お前!よくもキッカをやりやがったな…ぶっ殺してやる!!」
「うわぁ!!ち、違う!治す!治すから!!」
「問答無用だ!死ね!!」
男は腰の鞘から小刀を取り出すとこちらへ突き立てる!!咄嗟に腕を掴んで止めたが大人の腕力には敵わない!!徐々に押される…
このままだと刺さってしまう!!仕方ない!やるしかない!!
「キ、キム…」
「何を言って…ま、魔法!」
「キム・ムーア!!」
「キム・ムーア!」そう唱えると両腕がビキビキと音を立てて筋肉が肥大化する!
この魔法は腕を一瞬だけ強化する!だから一瞬のうちに決着をつけるしかない!
男を振り解き!相手の腹部目掛けて一発叩き込む!
「ダルァ!!」
「ごっはぁッ!?ま、魔法が…ぐふ…」
男はボトボトと色々吐きながら後ずさり…腹部を抑えたまま蹲り、失神してしまった。
それを見届けると腕はバッギバッギ!と嫌な音を立てて痛みと共に元へ戻って行く…どちらもまだ助かりそうだ…回復はまだ間に合う。
射手の男に近付き、肩へ回復魔法を唱えると…血は止まり、傷口は塞がった。
しかし、自分の技量もあるため…抉れた部分までは治せない。
次に羽交い絞めの男…名前が分からないや…この人にも魔法をかけておこう。
「早く!2人の目が覚める前に行くぞ!」
「え、えぇ!大丈夫かな…」
「大丈夫じゃ無いから先に行くんだよ!早く!」
「待ってよぉ!!」
2人が目を覚まさないうちに荷物を持つと、足早にその場を後にした。
先はまだまだ遠い、暗くなる前に出来るだけこの2人から離れなければいけない。
俺達の旅はまだ始まったばかりだ。(最終回ではない)
つづく
・・・
キャラクタープロフィール1
名前:コォ・テヌシィ(男) 身長:168㎝ 瞳の色:黒 髪色:橙
誕生日:2月4日 星座:カッコ座 血液型:A 人種:ダニーグ人
好物:お土産のハンバーガー 趣味:特に無し
『コォは思春期の男の子であるが、世間をあまり知らない。その為、頭はお世辞にも良いとは言えない。そのせいか使える魔法に複雑な物は無く、軽いモノや単純なモノしか詠唱できない…ちなみに魔法を使う時、名前を叫ぶがこれはただの癖であって特に叫ぶ必要は…無い。』
「ビーミスと言う街にだ、母親を探しに行くんだよ…2人で。」
集落の診療所から戻った自分はインに父さんの事と母親の事を話した。
明日にでも出発しなければならない、いくら父さんが自分の時間を止めていると言っても長い間、診療所へ置くと迷惑が掛かってしまう。
(ドクターは気にするなと言っていたが…気にしてしまう)
「は、母親…?私達にママが居たの?」
「光の大魔導師って人がそうらしい…明日にでも出発する。」
「ママ…居たんだ…」
長くて険しいかもしれないとインへ伝えたが、彼女は「行く」と言った。
もし来たくないならサーマさんに預けることにしたが…その心配は不要だ。
大きなバッグに一通り必要な物を詰め込む…地図と方位磁石、色々な道具…護身用のダガー…大分年季が入っているが…まだまだ使える。
「後は救急品に………そう言えば…」
そう言えば父さんが受け取った手紙…あれは何だったのだろう?
あれを呼んで出掛けることになったのなら…原因だ、なら知っておこう。
父さんの部屋へ入り、机の上に置かれた封筒を手に取る…見た事のない印…これは何処のだろうか?明日、サーマさんに聞いてみよう。
そして、問題の中身だが…
「なんだこれ…白紙…?」
封筒の中の紙を取り出したが…それはまっさらな白紙であった。
光に透かしても何も字は見えない…何なんだこれは一体?とにかく…これも持って行こう、知っている人が居るかもしれない。
「このくらいか…お金はどうしよう…」
自分の財布を開いても…入っているのは2ドルと73セント…何処かへ買い物しに行くわけでも無いので、この金はずっと前に貰ったお小遣いだ。
悪いとは分かっているけど…今は非常事態だ…父さんの引き出しからお金を持って行こう、留守にするんだし貴重品は置いておけないよ。
一番の下の引き出しを開ければ…取っ手が付いた金庫がある。
「(番号は教えてもらった…)」
教えてもらった番号は「0204」…俺とインの誕生日だ。
金庫の中には794ドルと334セント、指輪とロケットペンダント、が入っている。
ペンダントの中には…何もない、写真は無い。
だが小さく古い言葉で何かが書かれている…これは読めないな…
とにかく、お金を財布に仕舞って貴重品をポーチに入れるとバッグへ入れた…あとは…父さんの懐中時計も借りよう、高級品だが実用しなくてはならない。
「イン、本当に良いのか?本当に来るんだな?」
「1人は嫌だよ…それに…パパを救うなら…怖いけど行く。」
「出来るだけインの事は守る、だけど…戦う時は…やらなきゃならない。」
「影の魔法には自信があるよ。体力は無いけど。」
インが使うのは影の魔法や相手の気分を悪くさせるといった陰湿なものだ。
父さんが直々に教えた影魔法は強力…それに体力は無いけど魔力は父さんと同じくらい多い、俺より頼もしいかもしれない。
「よし……けど…その服じゃ…ダメだな…」
「コォもその服で行くの?」
自分の服装は普通の部屋着だし、インの服装も同じく部屋着だ。
とてもじゃないが旅に行くような服装では無い…俺は山へ行くための服がある、動きやすいが防御力なんて無い、薄くて耐水性に優れている服…
冬は寒いけど春なのでまだ大丈夫、と言うかこれから暑くなる。
「イン、このワンピース、もう着てないな?切って丈を短くするぞ。」
「良いよ。けど…短いと出ちゃうよ…」
「そのまま着るわけじゃない。ちゃんとズボンとかは着てもらう。」
ワンピースは換気性が高くて動きやすい、下に長袖を着れば山道も進めるようになるだろう…下もちゃんと履けば恥ずかしくない。
ワンピースを裾上げした…俺も上手いもんだ、将来は服屋になろうかな?
「裁縫道具も持って行くべきか…」
「コォ、男なのに裁縫上手だよね…本には仕立ては女がするって書いてあったよ。」
「だったらインがするか?」
「……何でもない。」
これでインの分の服装は整った…頭はつばが広いモノでも被せておこう。
肝心な俺の分は…いつもの服の下に鎖帷子を着るか、重いけど防御力は高い。
明日から旅に出る…かなり不安だが父さんを救うには行くしかない。
今日はもう寝てしまおう…ベッドで寝られるのも今日までだ。
・・・
「う~ん…はぁ…行くぞ、イン。」
「うん。」
今日から始まる…長く険しい旅が。
昨夜に用意した服装へ着替えると、荷物を背負った俺は汗拭き用に白いバンダナを頭に絞めた…気が引き締まるな。
山の奥へ行く前に集落へ向う事にした、サーマさんから推薦状を受け取るためだ…アレがあると大魔導師会の支部に話を聞いてもらえないかも。
【来たかコォ…そちらはインだな。】
「………」
「すみません。コイツ、人が苦手で…」
【そうか。ホラ、これが推薦状だ。インの事だが…】
俺は礼を言って推薦状を受け取ると、インは自分と共に旅へ向かうと伝えた。
【確か同い年…だったな。だったら大丈夫か。】
「はい…それで…これって何の印か分かりますか?」
【手紙か。どれどれ……これは…!サイジィ一家の印じゃないか!】
サーマさんは手紙の印を見ると何か恐ろしいモノでも見た様な表情をして手紙を手放した。
自分は手紙が地面へ落ちる前に拾うとサイジィ一家が何かを聞いた。
【サイジィ一家は遥か遠方の国の貴族だ…凶悪な呪術師の家族と聞いたが…そ、そうか!タブルスの呪いはサイジィ一家のものだったのか!】
サイジィ一家は遠方の国「コブサラ」に住む貴族であり、凶悪でタチの悪い呪術師の家族…こちらも8人家族であるらしい。
そして父さんの呪いは…奴らがかけた可能性が非常に高い。
そうだとしたら許せない…だけど…それほどの理由が有るハズだ…父さんは影の大魔導師、そのくらいになれば誰かから怨みを買うのも不思議ではない。
「そいつ等…まさかここら辺に居るんじゃ…」
【その可能性は否定できないな。怪しい奴が居たら直ぐに逃げろ。】
「分かりました…サーマさん、何から何までありがとうございます。」
【気にするな。タブルスには恩があるんだ。】
その恩が何かは教えてくれなかったが、知る必要も無いだろう。
サーマさんは山の入り口まで一応付いて来てくれる事になった…本当に良い人だ。
【さて…此処までだ。家の事は心配するな、見回っておこう。】
「ありがとうございます。それでは。」
「ばいばい…」
【ああ。二人共、検討を祈る。】
俺達2人はサーマさんと分かれ、山の奥へと入って行った。
普段は山の奥まで行くが…この道を歩くのは初だ…俺は山の外へ出ることが少ない…行ったとしてもあの集落のみだ、こっち側へ行くのは生まれて初めてだ。
父さんからは「危ないから行くな」と言われているので背徳感もある。
「コォ、こっち側って何があるの?」
「地図を見た時はパリング村っていうのがあったな。」
「人…いっぱい居るのかな…やだなぁ…」
「しょうがないさ。居ても数人程度だとおもうけど。」
地図で見たパリング村はかなり小規模なものなので人は少ないとおもう。
だけど…山を全然出ない俺達と話してくれるのかな…
「………ッ!?コォ!!誰か居る!!」
「なに!?ど、何処だ!」
「あそこに!!…あれ…い、居ない…」
敵襲か!?と思ってインの指さす方を見たが…なにも居ないし、誰も居ない。
木の幹か何かを人と見間違えたのだろう、たまに自分も熊だと思ってビビりまくった挙句に切り株だったっという事が何回もあった。
「気のせいだったのかな…」
「警戒するのは良い事だ、どんどん見てくれよ。」
いくら見間違いと言えども、そうやって警戒してくれるのは大事だ。
自分だけでは警戒しきれない…それにしても山の中ってこんなに静かだったんだなぁ…鳥の鳴き声だけが聞こえてとても優雅…いや、神秘的?
とにかく、いつもはうるさいと思っていてもいざこうしてみれば…悪くない。
(父さんがピンチだというのに俺は何を考えているんだ…)
「結構歩いて来たけど…はは、まだ山は大きいなぁ。」
「こんなに奥まで来たの初めて…」
「俺も。」
奥へ進むほどに森は鬱蒼として、道は舗装されたものでは無くなって行く。
そうなれば当然、体力は奪われて行く…かなり進んだと思いながら、俺とインは少し休憩する事にした。
水筒の水を飲み過ぎない程度に回し飲みすると、辺りを見渡す…
「はぁ…奥ってこんなに茂ってたんだな…」
「なんか…寒くない?」
「きっと木で太陽光が防がれてるんだよ。」
その証拠にここらへんの草は背が低く、薄い。
けど涼しいのは良い、最近温かくなってきたから助かる。
「そろそろ進むぞ。」
「うん………ッ!コォ!!前ッ!!」
「な!?」
インが突如として自分を伏せさせると、頭上をビュン!と何かが通過する!
先の方へ顔を向ければ…
「外したか…」
「や、野盗だ…」
そこに居たのは野盗だ!薄い服を着て笠を被っている…それに弓矢も持っている!
そうか!さっき飛んできたのは矢だ…ど、どうする…戦うしか無いのか…
考えている暇はない!相手は次の矢をつがえている!
護身用のダガーを抜くと、バッグを降ろして向かい合う…や、やってやる。
「(次は心臓を貫いてやる!)」
「イン!離れてろっ!」
「だ、だけど…1人くらいなら私の魔法で…」
「おっと!嬢ちゃんはこっちに来てもらおうか!」
「ッキャァ!?」
「イン!(まずい…もう1人…)あぐぁ!?か、肩が…」
インの後ろからもう1人、屈強な男が現れるとインを羽交い絞めにした。
そして後ろを振り返った隙に射出された矢が肩をかすり、周囲の肉ごと抉り取る!
い、痛い…よりにもよって利き腕の右肩を抉られるとは…
「コォ!!」
「おいキッカ!テメェなに勝手に攻撃してやがる!殺すんじゃね!!」
「手が滑っただけだ。次は外さないさ。」
「兄ちゃん嬢ちゃん、俺達は通行料だけ払ってもらえば大人しく通すぜ…肩は残念だがな…」
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仕方ないが…ここは払うしかない…右肩はもうダメかもしれないが…死ぬよりかは良い…
「タ…」
「や、やめろ!イン!魔法を使うな!!」
「タニポ…インジャ…」
魔法を唱えようとするインを止めたが!虚しく彼女は魔法を放った…
影魔法タニポ・インジャの効果は…
「ぐはぁ!?か、肩が…」
「や!野郎!キッカに何をしやがった!」
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「い、痛てぇ…肩が…」
射手の肩からはドクドクと血が流れ出ている…あのままでは出血多量で死ぬ。
インに怪我がないかを確認するが…よ、よし…怪我はない。
次はあの男だが…素直に治療を受けてくれるだろうか。
いくら敵だと言っても殺すまではしたくない、殺す必要もない。
「ちょ、ちょっと…」
「お前!よくもキッカをやりやがったな…ぶっ殺してやる!!」
「うわぁ!!ち、違う!治す!治すから!!」
「問答無用だ!死ね!!」
男は腰の鞘から小刀を取り出すとこちらへ突き立てる!!咄嗟に腕を掴んで止めたが大人の腕力には敵わない!!徐々に押される…
このままだと刺さってしまう!!仕方ない!やるしかない!!
「キ、キム…」
「何を言って…ま、魔法!」
「キム・ムーア!!」
「キム・ムーア!」そう唱えると両腕がビキビキと音を立てて筋肉が肥大化する!
この魔法は腕を一瞬だけ強化する!だから一瞬のうちに決着をつけるしかない!
男を振り解き!相手の腹部目掛けて一発叩き込む!
「ダルァ!!」
「ごっはぁッ!?ま、魔法が…ぐふ…」
男はボトボトと色々吐きながら後ずさり…腹部を抑えたまま蹲り、失神してしまった。
それを見届けると腕はバッギバッギ!と嫌な音を立てて痛みと共に元へ戻って行く…どちらもまだ助かりそうだ…回復はまだ間に合う。
射手の男に近付き、肩へ回復魔法を唱えると…血は止まり、傷口は塞がった。
しかし、自分の技量もあるため…抉れた部分までは治せない。
次に羽交い絞めの男…名前が分からないや…この人にも魔法をかけておこう。
「早く!2人の目が覚める前に行くぞ!」
「え、えぇ!大丈夫かな…」
「大丈夫じゃ無いから先に行くんだよ!早く!」
「待ってよぉ!!」
2人が目を覚まさないうちに荷物を持つと、足早にその場を後にした。
先はまだまだ遠い、暗くなる前に出来るだけこの2人から離れなければいけない。
俺達の旅はまだ始まったばかりだ。(最終回ではない)
つづく
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キャラクタープロフィール1
名前:コォ・テヌシィ(男) 身長:168㎝ 瞳の色:黒 髪色:橙
誕生日:2月4日 星座:カッコ座 血液型:A 人種:ダニーグ人
好物:お土産のハンバーガー 趣味:特に無し
『コォは思春期の男の子であるが、世間をあまり知らない。その為、頭はお世辞にも良いとは言えない。そのせいか使える魔法に複雑な物は無く、軽いモノや単純なモノしか詠唱できない…ちなみに魔法を使う時、名前を叫ぶがこれはただの癖であって特に叫ぶ必要は…無い。』
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