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第1部【明暗の大魔導師】編
第3話 陰暴論魔術師、アポロ
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俺達は今、すっかり暗くなった山の中で野宿の準備をしている。
テントは無いけど…火と1人分の寝袋はある、俺が番をするのでインが寝ることに。
インは体力が少ない、早めに休めておこう。
「(大丈夫…だよな?さっきの野盗とか来てないよな…?)」
昼間に野盗に襲われたが撃退し、なんとかここまで逃げて来たのだが…大丈夫そうだ。
先ほどの場所からかなり離れているし、結構目立ちにくい場所に居る。
だけど…火はマズいかな…けど火が無ければ野生動物に襲われる可能性が高くなる…一部の動物には効果が無いとも教えてもらったなぁ。
「ふぁあぁ~…いっけね…寝ちゃダメだ…」
「すぅ…すぅ…」
「(インって意外と神経が図太いんだなぁ。)」
インはとても気持ちの良さそうに寝ている…沢山歩いたから疲れたのだろう。
自分も眠いが…ダメだ、もし2人共寝てしまったら誰か来た時に対処できない。
だけど…この眠気とあくびだけはどうにもならないな…
「う~ん……すぁ………ッ!?ンギッ!?いってぇ!!」
いつの間にか眠っていたのか、突如として足に走る痛みで飛び起きた!!
足を見てみれば…さっきまで持っていたダガーが右足の甲を掠めていた…ちっくしょう…痛いなぁ…うん?待てよ…これは…使えるかも?
このままナイフを持って寝ていれば痛みで起きるし、眠気も回復する。
それにこのくらいの傷なら大した魔力を使わないで回復出来るし、靴もある程度は直せる…うん。
「すごくバカっぽいけど…やってみよう。男は度胸だ。」
何事も試しが重要と、自分は同じようにダガー持って…寝てみた…
あのような騒ぎでもインはまだ寝ている。
「………が!?」
「……んぎごッ!!」
「………んにぉ!?」
数回試して回復したところで…止めることにした…だって痛すぎる。
痛みでちょっと眠気は飛んだ、それだけでもマシってものだ。
靴を片方脱いで、修繕しながら切実にそう思った。
「(さて…暇になってしまった…)」
夜の番と言うのは非常に退屈な事に気づいてしまった…やる事が無い。
そりゃ、番をやっているが…やると言ってもただ起きてるだけ…退屈だと1秒1秒が長く…そう5億年くらいに感じてしまう。(大袈裟かな?)
すること無いし…おしっこでもして来るか…
「(やるにもあまり離れるワケにもいかない…)」
出すにも近すぎるとアレだし、遠すぎると危険だ…夜の山は暗すぎる。
しょうがない、ちょっと近いけど近場の岩陰でしてくるか。
インが起きてたら嫌がるだろう…人間、出すものも出さないと気が済まないのに。
「(ここなら良いだろう、うん。インも見える。)」
近くの岩場まで来ると、ズボンを少しだけ降ろしてアレを出すと出来るだけ遠くへ飛ばすように出した…なんか…ちょっと落ち着かないな…
大丈夫、インは寝ている…だれも聞いていない。
出し終えて水気を切ってる途中に大変な事も思い出してしまった…そう、大の方の仕方である。
生物と言うのは入れれば出すもので、食べて出さないのは一部の魔物と植物くらい。
「(紙を持って来れば良かった…)」
「んん…すぅ…」
せめて紙があれば穴を掘って、出して拭いて埋めるという事が出来る。
がしかし、紙はおろか…スコップすら持って来て無いのだ…これでは出す、放置の2つの手順しかない…もちろんそれは良くない事だ。
森は万物の恵み、容易く汚してはならない。
(自然的には正しい行いなのだが、道徳と羞恥心がそれを許さない)
「~♪夢で生きてる~♪」
・・・
「コォ、起きて。起きてよコォ。」
「んが?あ、あで?イン?起きて……うん!?あれ!明るい!」
「もう朝だよ…ずっと寝てたの?」
気が付くとインに起こされた…どうやらガッツリ寝ていた様だ。
何も起きなかったので良かったが、次からはこういう事が起きてはいけない。
一瞬の気の緩みで死ぬかもしれないんだ…気を引き締めなければ。
「腹減った…何か食えるものを探さないとな…」
「虫とかきのことか?」
「どっちも軽々しく手は出せないな…2人で離れないほどに分かれて何か探そう。」
「分かったー」
俺とインは近場で離れすぎないように二手に分かれると辺りで食べられそうな物を探した…流石は深い山の奥、割と色々なものが見つかる。
数分して合流すると2人共、それなりの量を見つけたが…
自分のはともかく、インが持って来た物は…毒物ばかりだ。
「コォ、これ食える?」
「それはタツゴロシっていう木の実だな。毒だからだダメだ。」
「これは?」
「えーっと…確か…アミカブトの幼虫だから食えるよ。」
虫とトカゲを串に刺して火に掛け、食べられる果物は半分に切って分けた。
虫などは見た目がアレなので普段はあまり食べないが、贅沢は言えない。
「うげー…苦い…」
「文句を言うなって…言いたいけど…これは苦いな…」
焼いただけの虫とトカゲは苦く、噛めば炭のように口内へ散らばる。
栄養もクソも無さそうだが、一応はある…なのでこの苦みは損にはならないだろう…良薬は口に苦しとも言うし。
パッサパサの消し炭を食べ終えた俺達は先を急ぐことにした。
まだまだ先は遠い。
「………コォ、おしっこしてくる。」
「え?分かった…1人で大丈夫か?」
「別に平気。そこの茂みでして来るから此処に居てね。」
「あんまり遠くに行くなよ。」
「うん……絶対置いて行かないでね!」
「行かないよ!」
その後、インは3回ほど「置いて行かないでね!?」と言ってから茂みへ入った。
あれ以上言われると本当に置いてってやろうかと言ってやろうかと思ったが…そうすると「我慢する」と言い出しそうなのでやめた。
それにしても景色が綺麗だなぁ…空気も綺麗だし!深呼吸すれば!
……今は止めておこう。
「ふぅ…おまたせ。」
「もう大丈夫か?大の方は?」
「うんこなら出ないよ。」
「そうか…(あんまりうんこって言わない方が良いんだけどな…)」
何故かインはハンカチをポッケに仕舞った…なぜ?手でも汚れたのかな?
まぁ良いや、気を取り直して先へ進もう。
2人で山道を進んで行く…ちょっと怖いけど、2人ならヘッチャラだ。
「………イン…」
「う、うん…前に…誰か座ってる…」
しばらく進み…大分道が舗装されてきたところで俺達の前方には岩へゆったりと座っている人が居た…格好を見るからに野盗では無い、服が綺麗だ。
汚れていない白い服なので悪い人では無さそう。
俺達は警戒しながらも声を掛けることに…だって無視は失礼かも。
「……うん?うん!?そこの君達!!」
「ひぃ!?な、なんですか!」
「こ、怖ぃ…」
だが先にあちらの方から声を掛けられてしまった。
俺は少しびっくりして後ずさり、インは俺の後ろへ隠れる…
なんだこの人は…右目の焦点が合っていない…こ、怖い!
「いやー!君たちの到着を待ってたんだよ!4日連続で待った甲斐があった!」
「俺達のことを…知ってるんですか?4日前って…」
「参ったよ!こんな山奥じゃないと王国の監視が厳しくて…」
「お、王国の監視?」
「ホラ!そこのカブト虫!!雹球!!」
「うわっ!?」「あ、危ないよ…」
突如として男は雹球という氷の弾を撃ち出す魔法を唱えると近くの木に止まっていた虫へ直撃し、虫は粉々に吹き飛んだ…な、何なんだこの人は本当に…
でも自分達の事を知っているなんて…4日前と言っていたし…占い師かな?
「ああいう虫や鳥はカラクリで動かされているんだ…監視に気を付けろ。」
「え?カラクリ?監視?」
「そんな事はどうでも良いんだ!薬がほしい!例の薬を!」
「薬?薬って…コレの事ですか?」
バッグから取り出したのはインの皮膚薬…もう不要だが、念のために持って来た。
占いをしてまでコレを欲しがるなんてよっぽど、皮膚が酷いのだろう。
「ちょっと変色してますけど使えると思いますよ。」
「あれ?こんなドロドロの液体だったっけ?まぁいいや、助かった!」
「あぁ!!それは飲むんじゃなくて!!」
そう言うと男は瓶をポンッ!と開けて中身のドロドロした液体を飲み始める!
これは塗り薬で皮膚に塗らないといけないんだけど…内臓が痛いのかな?
味も最悪だと思うけど…しかし、回復魔法も一応かけておくように…
「かぁー!!美味い!!……うぐ…」
「うわぁ!?だ、大丈夫ですか!!ねぇ!!ちょっと!」
「し、死んじゃったの…?」
薬を飲み終えた男はバタンッ!と倒れてしまい、微動だにしない…
どうしよう!!死んじゃったかもしれない!!マズい…近くには医者も無いし…埋めるしか無いのかな…けどスコップが無いしな…あっても掘るのに何日もかかるし…
だが、男は何事も無かったかのようにスッと立ち上がる!
「うぉおお!?生き返ったよぉ…」
「あ、あの…大丈夫…ですか?気分が悪いなら医者に…」
「あれ?ここ何処だ?君達は何処の誰だい?」
「えぇ!?もしかして記憶喪失ですか!!」
「何を言う!オレはアポロ、アポロ・レイヤーコーン…名前は分かる。」
なんだこの人は…本当に…けど…元気になったのかな?
目もシャキッと元に戻っているし、ピンと立っている…良かった…のかな?
「キミたちは誰だ!オレは何故ここに?」
「あ、それは…」
「さては貴様等!王国の回し者だな!オレを此処に連れてきて殺すつもりだな!!」
「そんな事は滅相もありませんでございまする!!」
アポロは後ろの立て掛けていた杖をこちらへ向ける!ど、どうしよう!
話を聞いてくれる気がしない!言葉は通じるが話は通じないって感じがする!
やるしか…無いのか?
「ラインド・スモッグ!!」
「うぐぁ!!め、目が見えない!!なんだ…」
「コ、コォ!」
「ハハハハハ!!お前等が発する科学の煙を思い知れ!!」
何かの術を掛けられ、目がバチバチと痛んで何も見えない!
しかも…痛い!杖で俺の足や肩を何度も殴って来ている!それって魔法に使うんじゃないんだ!!近接攻撃用だったなんて…ど、どうする…
とりあえずこの魔法を解かなければ!
「無駄だ!それは呪い!魔法では無い!」
「の、呪い……タ、タニポ・カース…」
「ッ!?あれ、目が見え…」
「うぎゃぁぁあああ!!目が痛いぃ!!滲みる!!」
インが呪いを押し付ける魔法「タニポ・カース」を使ったおかげで自分は助かった。
インで押し付けられるなら大した呪いでは無いのだろう…だが辛そう…
「イン、この人の呪い…解除できない?」
「簡単だから出来るよ…でも…助けるの…?敵かも…」
「この人だって何かしらのワケがあるんだよ…仕方ないよ。」
「そこまで言うなら…」
この人が俺達へ攻撃を仕掛けたのには理由が有るハズだ…だったらこのまま放置と言うのも可哀想だ…アポロは気が動転しているので自分では解除できないだろう。
インに頼み、グチグチ文句を言いながらも解除すると…
「クッソォォ!!このクソ野郎共め!!よくも俺の目を!!」
「待ってください!話を聞いてください!俺達は貴方を狙っていません!」
「ほざけ!!こうなったら山ごとお前等を燃やしてやる!!」
「や、山を燃やすなんて…」
アポロは自分達の上空へかなり大きな火球を造り上げる!!まるで太陽のようにメラメラと燃えている!!あんなに大きい火球が作れるなんて!
コインぐらいの大きさでも自分は精一杯なのに…せ、世界は広い…
いや!そんな事より!どうすれば良いんだ!?
「コ、コォ…私…死にたくない…」
「あ…あぁあ…どうすれば…」
「ヒャハハハハ!!インデス様バンザイ!!オレを見ていてください!!」
「ヤァァアアアッ!!」
「な!?う、後ろに…ぐっはぁあああ!?」
その時!アポロの後ろから1人の人間が現れて持っていた剣で奴を斬り裂く!!
背中から鮮血を噴き出し、アポロはその場へ倒れ込んでしまった…
上空に造られた大きな火球もドゴォォオン!!と爆音を鳴らして散った。
な、なにが起きたんだ…この人は一体…
「陰暴論魔術師アポロ…討ち取ったり…」
「あぁ…し、死んでる…」
「見りゃ分かるだろ。よう、こんにちは。」
気さくに挨拶する男は騎士の恰好をしているが…顔に黒い眼鏡をかけている。
何とも変な人だ…しかも…アポロっていう人…死んじゃってる…人ってこんな感じで死ぬんだ…怖いな…さっきまで生きてたのに…
「ありがとう…ございます…貴方は?」
「オレはザリィ。自称凄腕の賞金稼ぎさ…お前等、お上りさんか?」
「お、おのぼり?」
「言い方が悪かった…田舎の冒険者か?」
「はい。(田舎…だよね?街を知らないから田舎なんて知らないや…)」
ザリィと名乗る男の人は流れの賞金稼ぎと自称した。
彼は剣を布で拭くとアポロの持ち物をガサガサと漁り始める…そして小さな袋を取ると…こちらへ投げ渡した。
「慰謝料にでも取っておけ、お前等襲われたんだろ?」
「えぇ!?だ、駄目ですよ!人の持ち物を!ましてや死人のものなんて…」
「お前さん、冒険初心者だな?旅ってのに道徳は不要だ。」
こ、この人は…敵意は感じない…それに悪い人でもなさそうだ。
フレンドリー…っていうのかな?そんな感じがする…俺達は近くに村があると聞いて彼について行くことに…インはちょっと怯えていた。
つづく
・・・
キャラクタープロフィール2
名前:イン・テヌシィ(女) 身長:164 瞳の色:灰色 髪色:クリーム色
誕生日:2月4日 星座:カッコ座 血液型:0(ゼロ型) 人種:ダニーグ人
好物:川魚の薬膳スープ 趣味:押し花と魔導書の作成
『インはコォの双子の妹である。どちらが先に生まれたかは分からないが…なんとなくでコォが兄をやっている。性格は暗く、人付き合いが苦手。コォとは性格も魔法も身体も全然違う、そのせいで度々自分は本当の娘なのだろうかと悩むことがある。』
テントは無いけど…火と1人分の寝袋はある、俺が番をするのでインが寝ることに。
インは体力が少ない、早めに休めておこう。
「(大丈夫…だよな?さっきの野盗とか来てないよな…?)」
昼間に野盗に襲われたが撃退し、なんとかここまで逃げて来たのだが…大丈夫そうだ。
先ほどの場所からかなり離れているし、結構目立ちにくい場所に居る。
だけど…火はマズいかな…けど火が無ければ野生動物に襲われる可能性が高くなる…一部の動物には効果が無いとも教えてもらったなぁ。
「ふぁあぁ~…いっけね…寝ちゃダメだ…」
「すぅ…すぅ…」
「(インって意外と神経が図太いんだなぁ。)」
インはとても気持ちの良さそうに寝ている…沢山歩いたから疲れたのだろう。
自分も眠いが…ダメだ、もし2人共寝てしまったら誰か来た時に対処できない。
だけど…この眠気とあくびだけはどうにもならないな…
「う~ん……すぁ………ッ!?ンギッ!?いってぇ!!」
いつの間にか眠っていたのか、突如として足に走る痛みで飛び起きた!!
足を見てみれば…さっきまで持っていたダガーが右足の甲を掠めていた…ちっくしょう…痛いなぁ…うん?待てよ…これは…使えるかも?
このままナイフを持って寝ていれば痛みで起きるし、眠気も回復する。
それにこのくらいの傷なら大した魔力を使わないで回復出来るし、靴もある程度は直せる…うん。
「すごくバカっぽいけど…やってみよう。男は度胸だ。」
何事も試しが重要と、自分は同じようにダガー持って…寝てみた…
あのような騒ぎでもインはまだ寝ている。
「………が!?」
「……んぎごッ!!」
「………んにぉ!?」
数回試して回復したところで…止めることにした…だって痛すぎる。
痛みでちょっと眠気は飛んだ、それだけでもマシってものだ。
靴を片方脱いで、修繕しながら切実にそう思った。
「(さて…暇になってしまった…)」
夜の番と言うのは非常に退屈な事に気づいてしまった…やる事が無い。
そりゃ、番をやっているが…やると言ってもただ起きてるだけ…退屈だと1秒1秒が長く…そう5億年くらいに感じてしまう。(大袈裟かな?)
すること無いし…おしっこでもして来るか…
「(やるにもあまり離れるワケにもいかない…)」
出すにも近すぎるとアレだし、遠すぎると危険だ…夜の山は暗すぎる。
しょうがない、ちょっと近いけど近場の岩陰でしてくるか。
インが起きてたら嫌がるだろう…人間、出すものも出さないと気が済まないのに。
「(ここなら良いだろう、うん。インも見える。)」
近くの岩場まで来ると、ズボンを少しだけ降ろしてアレを出すと出来るだけ遠くへ飛ばすように出した…なんか…ちょっと落ち着かないな…
大丈夫、インは寝ている…だれも聞いていない。
出し終えて水気を切ってる途中に大変な事も思い出してしまった…そう、大の方の仕方である。
生物と言うのは入れれば出すもので、食べて出さないのは一部の魔物と植物くらい。
「(紙を持って来れば良かった…)」
「んん…すぅ…」
せめて紙があれば穴を掘って、出して拭いて埋めるという事が出来る。
がしかし、紙はおろか…スコップすら持って来て無いのだ…これでは出す、放置の2つの手順しかない…もちろんそれは良くない事だ。
森は万物の恵み、容易く汚してはならない。
(自然的には正しい行いなのだが、道徳と羞恥心がそれを許さない)
「~♪夢で生きてる~♪」
・・・
「コォ、起きて。起きてよコォ。」
「んが?あ、あで?イン?起きて……うん!?あれ!明るい!」
「もう朝だよ…ずっと寝てたの?」
気が付くとインに起こされた…どうやらガッツリ寝ていた様だ。
何も起きなかったので良かったが、次からはこういう事が起きてはいけない。
一瞬の気の緩みで死ぬかもしれないんだ…気を引き締めなければ。
「腹減った…何か食えるものを探さないとな…」
「虫とかきのことか?」
「どっちも軽々しく手は出せないな…2人で離れないほどに分かれて何か探そう。」
「分かったー」
俺とインは近場で離れすぎないように二手に分かれると辺りで食べられそうな物を探した…流石は深い山の奥、割と色々なものが見つかる。
数分して合流すると2人共、それなりの量を見つけたが…
自分のはともかく、インが持って来た物は…毒物ばかりだ。
「コォ、これ食える?」
「それはタツゴロシっていう木の実だな。毒だからだダメだ。」
「これは?」
「えーっと…確か…アミカブトの幼虫だから食えるよ。」
虫とトカゲを串に刺して火に掛け、食べられる果物は半分に切って分けた。
虫などは見た目がアレなので普段はあまり食べないが、贅沢は言えない。
「うげー…苦い…」
「文句を言うなって…言いたいけど…これは苦いな…」
焼いただけの虫とトカゲは苦く、噛めば炭のように口内へ散らばる。
栄養もクソも無さそうだが、一応はある…なのでこの苦みは損にはならないだろう…良薬は口に苦しとも言うし。
パッサパサの消し炭を食べ終えた俺達は先を急ぐことにした。
まだまだ先は遠い。
「………コォ、おしっこしてくる。」
「え?分かった…1人で大丈夫か?」
「別に平気。そこの茂みでして来るから此処に居てね。」
「あんまり遠くに行くなよ。」
「うん……絶対置いて行かないでね!」
「行かないよ!」
その後、インは3回ほど「置いて行かないでね!?」と言ってから茂みへ入った。
あれ以上言われると本当に置いてってやろうかと言ってやろうかと思ったが…そうすると「我慢する」と言い出しそうなのでやめた。
それにしても景色が綺麗だなぁ…空気も綺麗だし!深呼吸すれば!
……今は止めておこう。
「ふぅ…おまたせ。」
「もう大丈夫か?大の方は?」
「うんこなら出ないよ。」
「そうか…(あんまりうんこって言わない方が良いんだけどな…)」
何故かインはハンカチをポッケに仕舞った…なぜ?手でも汚れたのかな?
まぁ良いや、気を取り直して先へ進もう。
2人で山道を進んで行く…ちょっと怖いけど、2人ならヘッチャラだ。
「………イン…」
「う、うん…前に…誰か座ってる…」
しばらく進み…大分道が舗装されてきたところで俺達の前方には岩へゆったりと座っている人が居た…格好を見るからに野盗では無い、服が綺麗だ。
汚れていない白い服なので悪い人では無さそう。
俺達は警戒しながらも声を掛けることに…だって無視は失礼かも。
「……うん?うん!?そこの君達!!」
「ひぃ!?な、なんですか!」
「こ、怖ぃ…」
だが先にあちらの方から声を掛けられてしまった。
俺は少しびっくりして後ずさり、インは俺の後ろへ隠れる…
なんだこの人は…右目の焦点が合っていない…こ、怖い!
「いやー!君たちの到着を待ってたんだよ!4日連続で待った甲斐があった!」
「俺達のことを…知ってるんですか?4日前って…」
「参ったよ!こんな山奥じゃないと王国の監視が厳しくて…」
「お、王国の監視?」
「ホラ!そこのカブト虫!!雹球!!」
「うわっ!?」「あ、危ないよ…」
突如として男は雹球という氷の弾を撃ち出す魔法を唱えると近くの木に止まっていた虫へ直撃し、虫は粉々に吹き飛んだ…な、何なんだこの人は本当に…
でも自分達の事を知っているなんて…4日前と言っていたし…占い師かな?
「ああいう虫や鳥はカラクリで動かされているんだ…監視に気を付けろ。」
「え?カラクリ?監視?」
「そんな事はどうでも良いんだ!薬がほしい!例の薬を!」
「薬?薬って…コレの事ですか?」
バッグから取り出したのはインの皮膚薬…もう不要だが、念のために持って来た。
占いをしてまでコレを欲しがるなんてよっぽど、皮膚が酷いのだろう。
「ちょっと変色してますけど使えると思いますよ。」
「あれ?こんなドロドロの液体だったっけ?まぁいいや、助かった!」
「あぁ!!それは飲むんじゃなくて!!」
そう言うと男は瓶をポンッ!と開けて中身のドロドロした液体を飲み始める!
これは塗り薬で皮膚に塗らないといけないんだけど…内臓が痛いのかな?
味も最悪だと思うけど…しかし、回復魔法も一応かけておくように…
「かぁー!!美味い!!……うぐ…」
「うわぁ!?だ、大丈夫ですか!!ねぇ!!ちょっと!」
「し、死んじゃったの…?」
薬を飲み終えた男はバタンッ!と倒れてしまい、微動だにしない…
どうしよう!!死んじゃったかもしれない!!マズい…近くには医者も無いし…埋めるしか無いのかな…けどスコップが無いしな…あっても掘るのに何日もかかるし…
だが、男は何事も無かったかのようにスッと立ち上がる!
「うぉおお!?生き返ったよぉ…」
「あ、あの…大丈夫…ですか?気分が悪いなら医者に…」
「あれ?ここ何処だ?君達は何処の誰だい?」
「えぇ!?もしかして記憶喪失ですか!!」
「何を言う!オレはアポロ、アポロ・レイヤーコーン…名前は分かる。」
なんだこの人は…本当に…けど…元気になったのかな?
目もシャキッと元に戻っているし、ピンと立っている…良かった…のかな?
「キミたちは誰だ!オレは何故ここに?」
「あ、それは…」
「さては貴様等!王国の回し者だな!オレを此処に連れてきて殺すつもりだな!!」
「そんな事は滅相もありませんでございまする!!」
アポロは後ろの立て掛けていた杖をこちらへ向ける!ど、どうしよう!
話を聞いてくれる気がしない!言葉は通じるが話は通じないって感じがする!
やるしか…無いのか?
「ラインド・スモッグ!!」
「うぐぁ!!め、目が見えない!!なんだ…」
「コ、コォ!」
「ハハハハハ!!お前等が発する科学の煙を思い知れ!!」
何かの術を掛けられ、目がバチバチと痛んで何も見えない!
しかも…痛い!杖で俺の足や肩を何度も殴って来ている!それって魔法に使うんじゃないんだ!!近接攻撃用だったなんて…ど、どうする…
とりあえずこの魔法を解かなければ!
「無駄だ!それは呪い!魔法では無い!」
「の、呪い……タ、タニポ・カース…」
「ッ!?あれ、目が見え…」
「うぎゃぁぁあああ!!目が痛いぃ!!滲みる!!」
インが呪いを押し付ける魔法「タニポ・カース」を使ったおかげで自分は助かった。
インで押し付けられるなら大した呪いでは無いのだろう…だが辛そう…
「イン、この人の呪い…解除できない?」
「簡単だから出来るよ…でも…助けるの…?敵かも…」
「この人だって何かしらのワケがあるんだよ…仕方ないよ。」
「そこまで言うなら…」
この人が俺達へ攻撃を仕掛けたのには理由が有るハズだ…だったらこのまま放置と言うのも可哀想だ…アポロは気が動転しているので自分では解除できないだろう。
インに頼み、グチグチ文句を言いながらも解除すると…
「クッソォォ!!このクソ野郎共め!!よくも俺の目を!!」
「待ってください!話を聞いてください!俺達は貴方を狙っていません!」
「ほざけ!!こうなったら山ごとお前等を燃やしてやる!!」
「や、山を燃やすなんて…」
アポロは自分達の上空へかなり大きな火球を造り上げる!!まるで太陽のようにメラメラと燃えている!!あんなに大きい火球が作れるなんて!
コインぐらいの大きさでも自分は精一杯なのに…せ、世界は広い…
いや!そんな事より!どうすれば良いんだ!?
「コ、コォ…私…死にたくない…」
「あ…あぁあ…どうすれば…」
「ヒャハハハハ!!インデス様バンザイ!!オレを見ていてください!!」
「ヤァァアアアッ!!」
「な!?う、後ろに…ぐっはぁあああ!?」
その時!アポロの後ろから1人の人間が現れて持っていた剣で奴を斬り裂く!!
背中から鮮血を噴き出し、アポロはその場へ倒れ込んでしまった…
上空に造られた大きな火球もドゴォォオン!!と爆音を鳴らして散った。
な、なにが起きたんだ…この人は一体…
「陰暴論魔術師アポロ…討ち取ったり…」
「あぁ…し、死んでる…」
「見りゃ分かるだろ。よう、こんにちは。」
気さくに挨拶する男は騎士の恰好をしているが…顔に黒い眼鏡をかけている。
何とも変な人だ…しかも…アポロっていう人…死んじゃってる…人ってこんな感じで死ぬんだ…怖いな…さっきまで生きてたのに…
「ありがとう…ございます…貴方は?」
「オレはザリィ。自称凄腕の賞金稼ぎさ…お前等、お上りさんか?」
「お、おのぼり?」
「言い方が悪かった…田舎の冒険者か?」
「はい。(田舎…だよね?街を知らないから田舎なんて知らないや…)」
ザリィと名乗る男の人は流れの賞金稼ぎと自称した。
彼は剣を布で拭くとアポロの持ち物をガサガサと漁り始める…そして小さな袋を取ると…こちらへ投げ渡した。
「慰謝料にでも取っておけ、お前等襲われたんだろ?」
「えぇ!?だ、駄目ですよ!人の持ち物を!ましてや死人のものなんて…」
「お前さん、冒険初心者だな?旅ってのに道徳は不要だ。」
こ、この人は…敵意は感じない…それに悪い人でもなさそうだ。
フレンドリー…っていうのかな?そんな感じがする…俺達は近くに村があると聞いて彼について行くことに…インはちょっと怯えていた。
つづく
・・・
キャラクタープロフィール2
名前:イン・テヌシィ(女) 身長:164 瞳の色:灰色 髪色:クリーム色
誕生日:2月4日 星座:カッコ座 血液型:0(ゼロ型) 人種:ダニーグ人
好物:川魚の薬膳スープ 趣味:押し花と魔導書の作成
『インはコォの双子の妹である。どちらが先に生まれたかは分からないが…なんとなくでコォが兄をやっている。性格は暗く、人付き合いが苦手。コォとは性格も魔法も身体も全然違う、そのせいで度々自分は本当の娘なのだろうかと悩むことがある。』
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