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第1部【明暗の大魔導師】編
第24話 遥かなる遠き時代の申し子
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俺の名前はコォ、インと共にイワを救うため、宿敵チカの地下道を進む冒険者だ。
いや…別にギャグっぽくする気はなくて…
とにかく!イワが無事だと良いが…あと、別にこの道が奴の居場所に繋がっているなんて分からない…もしかしたらただの無駄なスペースかも。
そうだとしたら…心が折れてしまう。
「コォ…イワを助けるじゃん…?」
「ああ、どうかしたのか?」
「そうなるとチカって言う人とも戦う事になるじゃん…そしたら…勝てるかな?」
「……それは分からないな。」
チカに勝てる気がする…なんて言ったらウソになる。
俺を苦しめたガリパを瞬殺したんだ、どちらかというと負ける気しかしない。
しかし、別に戦う必要はない…ただ…相手の隙を見計らってイワを救出する…そしてその後はひたすら逃げる…これを行えば…イケる。
かもしれない。
「底なしの穴だって…何回も使えないし…」
「おそらくそうするとしても、魔法を使う前に殺されるのがオチだ。」
「ひぃぃい…お、恐ろしくなってきた…」
「だったら…此処で待つか?ここなら安全そうだが…」
「いや!行く!1人は嫌だ!」
「そうか。」
だとすれば一緒に進むしか無いな、俺達は合せて2人だ、3人では無い。
仮にこの場に3人いたとすれば3人目はイワだろう、そうなれば此処に居る必要もない、つまりそれは帰りの状況である。
気を取り直して2人でそのまま暗く、長い道を進んだ…そして…
「分かれ道か…」
「3つだね…どっちに行く?」
やがて道は3つに分かれた…1つは右へ曲がる道、もう1つは逆に左へ曲がる道…そして最後はそのまま真っすぐ…その先には木製の扉がある。
とりあえず、右と左の道を見たが…敵の姿は見えない。
同じ様に木の扉があるだけだ。
さて…どの道を行くか…3択問題だ、右か左か真ん中…成功すればその先は分からないがイワ居り、静かに脱出する事が出来るかもしれない。
「………真ん中だ。」
「ストレートだね…けど…私はコォに任せる。」
「じゃあ…行くぞ?気ィ引き締めてけよ?戦闘になるかもしれない。
「わ、分かってる…火球…はマズいから雹球の準備をしとく…」
静かに真ん中の…粗雑な木の扉をゆっくりと…開けると…
「……イワか?」
【!!コォ!イン!】
そこは大当たり…地下牢のようで脆そうな木の檻にイワは囚われていた。
直ぐに扉の閂を開けて、開放すると怪我がないか確かめた…良かった、特にコレと言った外傷がない。
なら、さっさとこんな所からおさらばしよう…
『おい、ちゃんとご飯をあげたか?』
『い、いいえ…今から上げに行きます…』
『だったら、早うせんかい、飢えたら可哀想じゃ。』
「ま、マズい…来るぞ!」
「何処かに隠れなきゃ…」
直ぐにイワを檻に戻して閂を掛けると自分達は木箱の裏に隠れた。
都合よく木箱があって良かった…積んで良いし、中に物は入れられるし、陰に隠れられる…本当に木箱は優秀だな、海賊が重宝するのも分かる。
それはそうと、隠れると直ぐにあの頭箱族のフィフィレーが部屋へ入って来た。
【おら、飯だぞ。(臭い鯉の丸焼きだけど)】
【…ど、どうしてウチを閉じ込めるの…】
【お前は貴重な人工魔族の紫肌族だ。造魔影の事などが分かるかもしれない。】
【それに…魔影団に高く売れるかもしれないしのう。】
【!?チ、チカ様…】
【お、お前…よくもウチを…】
そして次に現れたのはチカ…
だが…紫肌族や人工魔族が云々だが…そうか、イワは奴に事情を話させているのか、俺達へ伝えるために…ナイスだ。
【安心せい、お主を殺したり傷つけたりせん。値段に響く。】
【ところで…奴らですが…見つかっていないようですね。】
【きっと西の抜け道から逃げたに違いないな…あそこは人間の結界が張ってある故、魔導人も首飾りの影響も効かん。お主、完全に見捨てられたのう…】
バカめ…アイツ等、俺達が居ないのを良い事に好き勝手喋りまくってやがる…西の道だな、良い事を聞いたぞ。
チカとフィフィレーが居なくなったのを確認すると…
「イワ、行くぞ…走れるか?」
【うん…ちょっと足が痛いけど…】
「そうか…だったら、背中に乗れ。」
【ご、ごめん…恩に切る…】
「良いなぁ…」
「お前には数年前に死ぬほどやってやっただろ。」
そんなこんなで帰り道もあの2人を警戒しながら地下道を進んで行き、元の建物まで戻って来れた。
本当に戦わなくて済んだな…トンネルも爆破して生き埋めにしてやりたかったが、流石に可哀想なので止めた…アイツ等に関わらなけらばいい話だ。
次に毒牙に掛かった人が可哀想だけど、爆破する物も無いのでしょうがない。
・・・
「此処か…へへ、なんだ、何にもないじゃないか。」
「ふぅ…ようやく一息付けるって物ね…」
【ごめんコォ、イン…ありがとう…】
「気にすんなよ。無事に山を出させるって約束しただろ?」
数回、警備に見つかりながらもクッド旧市街を抜けた自分達は西の道を歩いていた…ここまで来たらイワも大丈夫という事で下ろした。
さて、このまま山を抜ければいよいよモース地方だ。
一体…どんなところなのだろうか…ちょっとワクワクしてきた…いかんいかん!!
これは父さんを助けるための旅だ…楽しむなんていい迷惑だ。
「それにしてもアイツ等もバカだよね、西の道が危ないなら警備を付けとけばいいのに。」
【うん…ウチより馬鹿かも。】
全くその通りだな…そう返事をしようとした時…凄く嫌な予感がした。
そうだ、何故考えなかったのだろう…インの言う通り、本当にこの道が危ないなら入り口に魔導人たちの警備を付けておくべきだ…なのにしなかった。
魔力が薄まるから?やはり危険だから…?違う…別にこの道が…普通だからだ…
ま、まずい…もしかしたら…騙されたか…?
【本当に莫迦よのう…お前等人間達は。】
「「【!?】」」
や、やはりそうだったか…最初からチカたちは…気付いていたのだ!俺達が居た事を!!
チカとフィフィレーが自分達の前へ立ちはだかった…逃げられないな…
「さ、最初から…想定内か…」
【莫迦でも窮地に立たされば理解するか…その通り、計画通りじゃ。】
【お前等を此処で待ってたんだぜ、ずっとな。】
「何のために…気付いていたなら…」
【始末しなかった…そう聞きたいのじゃろ?】
そうだ、もし俺達が隠れていたことに気が付いていたならあの場で始末すれば良いはずだ、それがこの場で待っている…おかしい。
【それは…お主らの親について興味があるから…じゃ。】
「お、親…まさか…」
「パパの事…?」
【その通り、コォと言ったな…お主の荷物に面白い物が紛れているのを見つけてな…】
そう言うとチカは懐から封筒を取り出した…それはあの日、父さんが読んだ…白紙の便箋が入ったサイジィ一家の印が入った封筒だ。
いつの間に取ったんだ…?まさか…寝ている間に?
【お主らの親、タブルス…とは少しだけ縁があってのう…】
「父さんと知り合い…」
【そうじゃ。もうアッチの方は覚えて無いかもしれないがな…それより、お主らの今後に少しだけ興味があってな…どうじゃ、この場は見逃す…その代わりに頼みを聞かんか?】
「た、頼み…」
「見逃すなんて…」
俺から見れば、コイツ等の言う事は嘘っぱちで手紙を見て出まかせを言っているのかもしれない…きっとタダで利用してその後に捨てる気だな…
仮にそうじゃなくても…父さんの知り合いでも………しょうがない。
聞こう、聞くだけなら無料で何の害も無い…一部の話題以外は。
「き、聞いてやる…」
「コォ!そんな…聞いちゃうの?」
【ほっほう!話の分かる子じゃ…それで…頼みだけど…】
な、なんだ…配達か?伝言か?
ヤバそうなもの以外なら何でも聞いてやる、聞くだけだ。
【造魔影について調べてくれんかのう?】
「ぞ、造魔影…?」
「ぞうさんなの?馬なの?エイなの?」
【愉快な動物さんじゃないぞ、造魔影はとある人間が創り出した古代の人工魔族じゃ…その調査をお主に任せたい。良いか、絶対に調べるんじゃぞ?調べるなら時間は惜しまん。】
チカ曰く、魔影団と言う組織が造魔影の復活を目論んでおり、もしそうなれば世界は終わってしまうかもしれない…そして調べるなら数年後でも何でも待つと言う。
どうやら寿命の概念が無いらしい…だが、その代わり…もし少しでも探る気を失うと…遠慮なしに首を掻っ攫いにくると言った。
「………良いだろう。調べてやる…」
「えぇ!?う、受けるの…」
「そうしないと…もうこの場は治まらない…」
今の状態ではこのチカたちに勝てないだろう…数年後…もし造魔影を探すついでに…充分に強くなれたのなら…その時は自らの手で葬ってやる。
【その返事を聞きたかった…そうなれば…ほれ、持って行け。】
「うわ!?な、なんだこの布切れは…」
チカが何処からか布切れを出してこちらへポイっと投げて来た…自分はビビッて後ろずさったが…何とも無い、布切れ…というか装飾品であった…いや、防具か?
へんな声を出してビビった自分が恥ずかしい…
【ふふふ…もしかしてお主ら、その子をそのまま連れて行く気か?】
【紫肌族は一部ではその名が知れている。もし正体がバレたら大騒ぎになるだろう。そいつにはそれを着けてやれ。】
【暑そ…】
【贅沢言うでない。良いか、お主はコォ達と旅を共にしろ。人工魔族たちはお互いに通じ合えると言われている…それが本当なら一緒に行け。】
曰く、人工魔族は現代において最も貴重な魔族の1つと言われており、見つかれば捕獲され拉致監禁、解剖分析云々…仕舞いには剥製になって博物館行き…
なので自分達について行って一緒に探せと言うワケだ。
イワと旅をするのは危険だが…従わなければ殺すと言われたのでイワは渋々従った。
「うひゃー…こわい…」
「すごい…鉄面だ…重くないか?」
【うん、重くない。】
【魔族と言えども…そこまで非力なのは初めてじゃが…身体だけは丈夫じゃの。】
【それだけが取り柄だから…】
そしてチカは後は任せると言うと…自分達の横を通り、徒歩で街へと戻って行く…魔法で行けよ…
「ちょ、ちょっと待って!」
【なんじゃ?えーっと…インじゃな。】
「何で…知ってたのに警備を出したの?」
「そうだ、殺そうとしてたじゃないか。」
確かに街には大量の警備、射手…など、自分達を殺す気満々だった。
【気にするな…ただ確かめただけじゃ。】
【今後に比べればぬるいモノさ。】
2人はそう言ってそのまま行ってしまった…自分達はそのまましばらく呆気に取られていたが…進むことにした、このまま此処に居て死んだんじゃダサい。
自分達はロリア山を抜けることに専念したのだった。
・・・
【チカ様、何もかも…思い通りですね。】
【これでゆっくりと羽が伸ばせる…来るべき時に備えてな…】
・・・
「や、やった…ついた…こ、これこそが…」
「モース地方…」
【凄い…こんな世界があったなんて…】
山を抜けた先の丘…そこから見えるのは…モース地方…ダニーグ大陸最大の地方で広大な平原に初めて見る海…何もかもが全て美しかった。
例えるとするならば、一枚の絵画のように美しい景色が広がっていた。
心地よい緑の平原、初めて見た広すぎる海…そしてモース城とその城下町…すごい。
遠くに見える岩山も大きいな…
「イワ…辛く険しい旅になるかもしれないが…付いて来てくれるか?」
【当たり前、ウチは役に立てるなら付いてく。】
「じゃあイワはやっぱり私の部下ね。ボスとお呼び。」
【インボス。】
「…やっぱり名前で良い。」
丘を降りて平原を踏みしめる…はぁ!!歩きやすい…イイ感じだ。
もうすぐ日暮れの時間なので、今日は(今日中に着けば)最寄りの村で休んで行こう。
数日かかるかもしれないが…あのお城まで行き…大魔導師会本部に着いたら光の大魔導師について聞く…そして場所が分かったら会いに行って…事情を話す…
だが……ハッキリ言ってどうなのだろうか?光の大魔導師は…話を聞いてくれるのだろうか…自分達の事を憎んでいるかもしれない、だって父さんと離れ離れなのだから。
「コォ…どうしたの?」
「いや、なんでもない、行くぞ。」
【こんな所でへこたれてたらダメ。】
「全くその通り。」
そうだ…このままウジウジしていてもしょうがない、前を向いて前へ進もう。
それと、イワにも武器を買ってあげよう…非力でも武器があれば変わるだろう。
俺達だけじゃ守れない時がある、少しでも自衛できるようにしなければ。
新たに仲間が増えた自分達はそのまま、最寄りの村まで進んだ。
(ところで…関所が見当たらなかった…違う道だったのか…)
つづく
・・・
号外
『先日まで行方不明だったべコタス氏が昨日未明、ビーミス城塞都市にて発見された。べコタス氏は「なぜわからないけど数日間の記憶がない」と発言しており、また背中には火傷の痕も見られるので魔物に襲われた可能性が高いと衛兵長クネ氏は感想を述べた。これにより、クッド地方とロリア山は危険地域へと正式に発表され、行き来する場合は別の手段を考えた方がよさそうだ。』
いや…別にギャグっぽくする気はなくて…
とにかく!イワが無事だと良いが…あと、別にこの道が奴の居場所に繋がっているなんて分からない…もしかしたらただの無駄なスペースかも。
そうだとしたら…心が折れてしまう。
「コォ…イワを助けるじゃん…?」
「ああ、どうかしたのか?」
「そうなるとチカって言う人とも戦う事になるじゃん…そしたら…勝てるかな?」
「……それは分からないな。」
チカに勝てる気がする…なんて言ったらウソになる。
俺を苦しめたガリパを瞬殺したんだ、どちらかというと負ける気しかしない。
しかし、別に戦う必要はない…ただ…相手の隙を見計らってイワを救出する…そしてその後はひたすら逃げる…これを行えば…イケる。
かもしれない。
「底なしの穴だって…何回も使えないし…」
「おそらくそうするとしても、魔法を使う前に殺されるのがオチだ。」
「ひぃぃい…お、恐ろしくなってきた…」
「だったら…此処で待つか?ここなら安全そうだが…」
「いや!行く!1人は嫌だ!」
「そうか。」
だとすれば一緒に進むしか無いな、俺達は合せて2人だ、3人では無い。
仮にこの場に3人いたとすれば3人目はイワだろう、そうなれば此処に居る必要もない、つまりそれは帰りの状況である。
気を取り直して2人でそのまま暗く、長い道を進んだ…そして…
「分かれ道か…」
「3つだね…どっちに行く?」
やがて道は3つに分かれた…1つは右へ曲がる道、もう1つは逆に左へ曲がる道…そして最後はそのまま真っすぐ…その先には木製の扉がある。
とりあえず、右と左の道を見たが…敵の姿は見えない。
同じ様に木の扉があるだけだ。
さて…どの道を行くか…3択問題だ、右か左か真ん中…成功すればその先は分からないがイワ居り、静かに脱出する事が出来るかもしれない。
「………真ん中だ。」
「ストレートだね…けど…私はコォに任せる。」
「じゃあ…行くぞ?気ィ引き締めてけよ?戦闘になるかもしれない。
「わ、分かってる…火球…はマズいから雹球の準備をしとく…」
静かに真ん中の…粗雑な木の扉をゆっくりと…開けると…
「……イワか?」
【!!コォ!イン!】
そこは大当たり…地下牢のようで脆そうな木の檻にイワは囚われていた。
直ぐに扉の閂を開けて、開放すると怪我がないか確かめた…良かった、特にコレと言った外傷がない。
なら、さっさとこんな所からおさらばしよう…
『おい、ちゃんとご飯をあげたか?』
『い、いいえ…今から上げに行きます…』
『だったら、早うせんかい、飢えたら可哀想じゃ。』
「ま、マズい…来るぞ!」
「何処かに隠れなきゃ…」
直ぐにイワを檻に戻して閂を掛けると自分達は木箱の裏に隠れた。
都合よく木箱があって良かった…積んで良いし、中に物は入れられるし、陰に隠れられる…本当に木箱は優秀だな、海賊が重宝するのも分かる。
それはそうと、隠れると直ぐにあの頭箱族のフィフィレーが部屋へ入って来た。
【おら、飯だぞ。(臭い鯉の丸焼きだけど)】
【…ど、どうしてウチを閉じ込めるの…】
【お前は貴重な人工魔族の紫肌族だ。造魔影の事などが分かるかもしれない。】
【それに…魔影団に高く売れるかもしれないしのう。】
【!?チ、チカ様…】
【お、お前…よくもウチを…】
そして次に現れたのはチカ…
だが…紫肌族や人工魔族が云々だが…そうか、イワは奴に事情を話させているのか、俺達へ伝えるために…ナイスだ。
【安心せい、お主を殺したり傷つけたりせん。値段に響く。】
【ところで…奴らですが…見つかっていないようですね。】
【きっと西の抜け道から逃げたに違いないな…あそこは人間の結界が張ってある故、魔導人も首飾りの影響も効かん。お主、完全に見捨てられたのう…】
バカめ…アイツ等、俺達が居ないのを良い事に好き勝手喋りまくってやがる…西の道だな、良い事を聞いたぞ。
チカとフィフィレーが居なくなったのを確認すると…
「イワ、行くぞ…走れるか?」
【うん…ちょっと足が痛いけど…】
「そうか…だったら、背中に乗れ。」
【ご、ごめん…恩に切る…】
「良いなぁ…」
「お前には数年前に死ぬほどやってやっただろ。」
そんなこんなで帰り道もあの2人を警戒しながら地下道を進んで行き、元の建物まで戻って来れた。
本当に戦わなくて済んだな…トンネルも爆破して生き埋めにしてやりたかったが、流石に可哀想なので止めた…アイツ等に関わらなけらばいい話だ。
次に毒牙に掛かった人が可哀想だけど、爆破する物も無いのでしょうがない。
・・・
「此処か…へへ、なんだ、何にもないじゃないか。」
「ふぅ…ようやく一息付けるって物ね…」
【ごめんコォ、イン…ありがとう…】
「気にすんなよ。無事に山を出させるって約束しただろ?」
数回、警備に見つかりながらもクッド旧市街を抜けた自分達は西の道を歩いていた…ここまで来たらイワも大丈夫という事で下ろした。
さて、このまま山を抜ければいよいよモース地方だ。
一体…どんなところなのだろうか…ちょっとワクワクしてきた…いかんいかん!!
これは父さんを助けるための旅だ…楽しむなんていい迷惑だ。
「それにしてもアイツ等もバカだよね、西の道が危ないなら警備を付けとけばいいのに。」
【うん…ウチより馬鹿かも。】
全くその通りだな…そう返事をしようとした時…凄く嫌な予感がした。
そうだ、何故考えなかったのだろう…インの言う通り、本当にこの道が危ないなら入り口に魔導人たちの警備を付けておくべきだ…なのにしなかった。
魔力が薄まるから?やはり危険だから…?違う…別にこの道が…普通だからだ…
ま、まずい…もしかしたら…騙されたか…?
【本当に莫迦よのう…お前等人間達は。】
「「【!?】」」
や、やはりそうだったか…最初からチカたちは…気付いていたのだ!俺達が居た事を!!
チカとフィフィレーが自分達の前へ立ちはだかった…逃げられないな…
「さ、最初から…想定内か…」
【莫迦でも窮地に立たされば理解するか…その通り、計画通りじゃ。】
【お前等を此処で待ってたんだぜ、ずっとな。】
「何のために…気付いていたなら…」
【始末しなかった…そう聞きたいのじゃろ?】
そうだ、もし俺達が隠れていたことに気が付いていたならあの場で始末すれば良いはずだ、それがこの場で待っている…おかしい。
【それは…お主らの親について興味があるから…じゃ。】
「お、親…まさか…」
「パパの事…?」
【その通り、コォと言ったな…お主の荷物に面白い物が紛れているのを見つけてな…】
そう言うとチカは懐から封筒を取り出した…それはあの日、父さんが読んだ…白紙の便箋が入ったサイジィ一家の印が入った封筒だ。
いつの間に取ったんだ…?まさか…寝ている間に?
【お主らの親、タブルス…とは少しだけ縁があってのう…】
「父さんと知り合い…」
【そうじゃ。もうアッチの方は覚えて無いかもしれないがな…それより、お主らの今後に少しだけ興味があってな…どうじゃ、この場は見逃す…その代わりに頼みを聞かんか?】
「た、頼み…」
「見逃すなんて…」
俺から見れば、コイツ等の言う事は嘘っぱちで手紙を見て出まかせを言っているのかもしれない…きっとタダで利用してその後に捨てる気だな…
仮にそうじゃなくても…父さんの知り合いでも………しょうがない。
聞こう、聞くだけなら無料で何の害も無い…一部の話題以外は。
「き、聞いてやる…」
「コォ!そんな…聞いちゃうの?」
【ほっほう!話の分かる子じゃ…それで…頼みだけど…】
な、なんだ…配達か?伝言か?
ヤバそうなもの以外なら何でも聞いてやる、聞くだけだ。
【造魔影について調べてくれんかのう?】
「ぞ、造魔影…?」
「ぞうさんなの?馬なの?エイなの?」
【愉快な動物さんじゃないぞ、造魔影はとある人間が創り出した古代の人工魔族じゃ…その調査をお主に任せたい。良いか、絶対に調べるんじゃぞ?調べるなら時間は惜しまん。】
チカ曰く、魔影団と言う組織が造魔影の復活を目論んでおり、もしそうなれば世界は終わってしまうかもしれない…そして調べるなら数年後でも何でも待つと言う。
どうやら寿命の概念が無いらしい…だが、その代わり…もし少しでも探る気を失うと…遠慮なしに首を掻っ攫いにくると言った。
「………良いだろう。調べてやる…」
「えぇ!?う、受けるの…」
「そうしないと…もうこの場は治まらない…」
今の状態ではこのチカたちに勝てないだろう…数年後…もし造魔影を探すついでに…充分に強くなれたのなら…その時は自らの手で葬ってやる。
【その返事を聞きたかった…そうなれば…ほれ、持って行け。】
「うわ!?な、なんだこの布切れは…」
チカが何処からか布切れを出してこちらへポイっと投げて来た…自分はビビッて後ろずさったが…何とも無い、布切れ…というか装飾品であった…いや、防具か?
へんな声を出してビビった自分が恥ずかしい…
【ふふふ…もしかしてお主ら、その子をそのまま連れて行く気か?】
【紫肌族は一部ではその名が知れている。もし正体がバレたら大騒ぎになるだろう。そいつにはそれを着けてやれ。】
【暑そ…】
【贅沢言うでない。良いか、お主はコォ達と旅を共にしろ。人工魔族たちはお互いに通じ合えると言われている…それが本当なら一緒に行け。】
曰く、人工魔族は現代において最も貴重な魔族の1つと言われており、見つかれば捕獲され拉致監禁、解剖分析云々…仕舞いには剥製になって博物館行き…
なので自分達について行って一緒に探せと言うワケだ。
イワと旅をするのは危険だが…従わなければ殺すと言われたのでイワは渋々従った。
「うひゃー…こわい…」
「すごい…鉄面だ…重くないか?」
【うん、重くない。】
【魔族と言えども…そこまで非力なのは初めてじゃが…身体だけは丈夫じゃの。】
【それだけが取り柄だから…】
そしてチカは後は任せると言うと…自分達の横を通り、徒歩で街へと戻って行く…魔法で行けよ…
「ちょ、ちょっと待って!」
【なんじゃ?えーっと…インじゃな。】
「何で…知ってたのに警備を出したの?」
「そうだ、殺そうとしてたじゃないか。」
確かに街には大量の警備、射手…など、自分達を殺す気満々だった。
【気にするな…ただ確かめただけじゃ。】
【今後に比べればぬるいモノさ。】
2人はそう言ってそのまま行ってしまった…自分達はそのまましばらく呆気に取られていたが…進むことにした、このまま此処に居て死んだんじゃダサい。
自分達はロリア山を抜けることに専念したのだった。
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【チカ様、何もかも…思い通りですね。】
【これでゆっくりと羽が伸ばせる…来るべき時に備えてな…】
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「や、やった…ついた…こ、これこそが…」
「モース地方…」
【凄い…こんな世界があったなんて…】
山を抜けた先の丘…そこから見えるのは…モース地方…ダニーグ大陸最大の地方で広大な平原に初めて見る海…何もかもが全て美しかった。
例えるとするならば、一枚の絵画のように美しい景色が広がっていた。
心地よい緑の平原、初めて見た広すぎる海…そしてモース城とその城下町…すごい。
遠くに見える岩山も大きいな…
「イワ…辛く険しい旅になるかもしれないが…付いて来てくれるか?」
【当たり前、ウチは役に立てるなら付いてく。】
「じゃあイワはやっぱり私の部下ね。ボスとお呼び。」
【インボス。】
「…やっぱり名前で良い。」
丘を降りて平原を踏みしめる…はぁ!!歩きやすい…イイ感じだ。
もうすぐ日暮れの時間なので、今日は(今日中に着けば)最寄りの村で休んで行こう。
数日かかるかもしれないが…あのお城まで行き…大魔導師会本部に着いたら光の大魔導師について聞く…そして場所が分かったら会いに行って…事情を話す…
だが……ハッキリ言ってどうなのだろうか?光の大魔導師は…話を聞いてくれるのだろうか…自分達の事を憎んでいるかもしれない、だって父さんと離れ離れなのだから。
「コォ…どうしたの?」
「いや、なんでもない、行くぞ。」
【こんな所でへこたれてたらダメ。】
「全くその通り。」
そうだ…このままウジウジしていてもしょうがない、前を向いて前へ進もう。
それと、イワにも武器を買ってあげよう…非力でも武器があれば変わるだろう。
俺達だけじゃ守れない時がある、少しでも自衛できるようにしなければ。
新たに仲間が増えた自分達はそのまま、最寄りの村まで進んだ。
(ところで…関所が見当たらなかった…違う道だったのか…)
つづく
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号外
『先日まで行方不明だったべコタス氏が昨日未明、ビーミス城塞都市にて発見された。べコタス氏は「なぜわからないけど数日間の記憶がない」と発言しており、また背中には火傷の痕も見られるので魔物に襲われた可能性が高いと衛兵長クネ氏は感想を述べた。これにより、クッド地方とロリア山は危険地域へと正式に発表され、行き来する場合は別の手段を考えた方がよさそうだ。』
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