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第1部【明暗の大魔導師】編
第23話 救出大作戦
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俺の名前はコォ、インと共に遺跡街で休んでいる冒険者だ。
昼間の激闘で体力と魔力を使い果たした自分達は先に進むことを止め、そのまま遺跡街で一晩を越すことにした…此処は廃屋だらけなのでゆっくり眠れる。
街で買っておいた携帯食も食べたので…寝ればある程度はマシになるだろう。
「コォ…その…明日、どうするの?」
「イワを捜しに行く。」
「やっぱり…けど、私もそうした方がいいって思ってる…」
イワは3魔士のボス、チカに連れ去られてしまった…イワが紫肌族だとか言っていたが…そんな事はどうでも良い、ちゃんと山から出すと約束したんだ。
見捨てて進むなんて男じゃない。
「場所は分かるの?」
「あの女の人が使ったのは転移魔法だと思うんだ…」
「だったら…そんなに離れてない?」
「その可能性が高い。」
転移魔法は最大でも、かなり離れた位置くらいにしか動けない。
つまり変質者の目撃情報からしても…アイツの本拠地はこの遺跡街の何処かだろう…どうやらこの街には特殊な魔法が掛けてあるようで、昼間に戦った場所は元通りになっていた。
あれだけ強力な魔力が満ちていると言う事は、間違いなく近くにチカが潜んでいると言う事だ。
「にしてもさ…外から…変な音が聞こえてるんだけど…」
「きっとアイツが寄こした見回りだろうな。確実に俺達を探している。」
外の道からは『ガッシャンガッシャン』や【ビーボッボ…】と言う不気味な音が聞こえる…きっと魔導人辺りがチカの使いで見回りをしているのであろう。
どうやら俺達がこの街に留まっていることに気付いている様だ。
もし見つかったら…良くて拘束、悪くて…死だ。
「異音が近づいたらあまり音を出すなよ。」
「えぇ…そんなぁ…寝てる間は?」
「知らん。とりあえず寝るしかないだろ。」
【ピギョギョ!!】
「ひっ…心臓に悪いなぁ…」
「じゃ…イン、おやすみ。」
今のうちに寝ておかなくては…明日はもっと大変になる。
俺達は時々聞こえる異音にビクビクしながらも眠りに就いた。
・・・
「うぅ…じんせーで一番寝起きが最悪…」
「しょうがないさ、この状況じゃな。」
特に何事もなく自分達はぐっすり眠って、明るい真昼に目が覚めた。
懐中時計を見れば時間は午前9時半…未だに外では魔導人たちがうろついている様だ…異音が聞こえる。
ちなみにインは俺と父さんが魔導人になる夢を見たようだ…凄い悪夢だな。
正夢にならなきゃいいけど。
「ど、どうするの?どうやって出るの?」
「外を見るわけにもいかないからな…音を聞いて、隙を見計らってから一気にこの家の裏まで行こう。路地裏から屋根に上って屋根伝いを伝って行くんだ。」
「カッコイイ…なんか忍者みたい…」
「ニンジャ…?」
ニンジャってアレだろ…?赤いマスク付けてたりドーモって挨拶する奴だろう。
確か本で見たのはそんな感じだった…自分がイメージしているのは暗殺者なのだが…まぁ似たようなもんか。
(違ってたらアレだけど)
「けど…まずは奴の居場所を探さないとな。」
「アッチが探す間にこっちも探すのね。」
「その通り、戦争と同じで相手と同じことをすればいい。」
アッチが探す前にコッチが探し出してやるという戦法だ。
いくらアイツでも用心深いに決まっている、きっと本拠地の近くには大量の兵を置いているであろう、そして自分達がイワを救出しに来ることも視野に入れているハズ。
一筋縄ではいかなさそうだが…行くっきゃない!
「よし…準備は良いか?」
「う、うん…出来てる…2割は。」
「その意気だ…次だ、次の物音が遠ざかったらだ…」
荷物は持った、もうここから去るべき時なのだ…次に何者かがそこを通って行った後を狙う。
歩いてくる頻度からして、見回りは一定の距離を均一に保って見回っていると思われる。
そして今まさに…ガッシャコンと音が聞こえる…魔導人だな。
【ビー…ブッブ…ボーンボーン…ピポポ…】
「(相変わらず不気味な音だな…)」
【ギュッビ…バシュシュゥウウ!!】
「「!?」」
今回の奴も直ぐに通り過ぎて行くと思っていたが…なんと魔導人は突如として壁を殴り壊して中を覗いて来た!
そして自分達を見つけると凄まじい音を出す!
な、なぜ…急にコイツだけが…いや!それよりも!逃げなくては!!
「行くぞイン!とにかくついて来い!」
「そ、そんな!?待ってよぉ…」
【ギュアガァアアアア!!ボッボ!!ビジィイイイ!!】
とにかく外へ出ると、追手が来る前に路地裏へ逃げ込んだ!
そこら中から共鳴するように異音が聞こえる!や、奴等…情報を共有できるのか!?いや…もしかしたら仲間を呼んでいるのかもしれない…
とにかく!全員こちらへ近付いてきている!
「ねぇ!何処から上に登るの!?」
「えーっと…俺を踏んで行け!それから引っ張れ!」
「分かった…逆の方が良くない?」
「それもそうだな…」
インが壁に手を付け、背中を丸めて向けると自分は荷物を屋根の上へ投げ…インの背中を踏んで上へ駆け上がった!幸いにもこの街の殆どの建物が四角い…
登るのは比較的容易かった。
【ビギギィ!!】
「ひぃい!?く、来る!早く上げて!!」
「待ってろ!キム…ムーア!!」
そして右手で屋根の縁を掴み、ぶら下がると左手でインの手を握って力を使えるだけ使ってどうにか上まで登った…あ、危なかった…しかし、魔力は回復してるな。
これも腕輪のおかげだろうか…
【ギッビビ!!ズゴゴゴゴッ!!】
「さ、探してる…」
「とにかく進むぞ、ジッとしてると命取りだ。」
「うん…何処に行くの?」
「ひとまずあの高い建物に向かおう。」
目指すは少し遠くの登場の建物…あそこに登って見渡そう。
屋根から屋根に飛び移るのは…ハッキリ言って恐ろしい!一歩間違えれば地獄に落ちることになる…地獄は比喩でも何でも無く、あの世だ。
出来るだけ近い所から飛び移って行く…建物が密集していて良かった…
「(山に比べたら…割と楽かも…)」
「うぉ!?」
「大丈夫か?」
「平気平気…ちょっとバランスを失っただけ。」
楽かと思ったが…インを見る限り、そんな事は無いな。
気を取り直して話題を戻そう…目指す塔が近くなって来たぞ…なんだ、案外楽に行けるな。
何かしら障害があるかと思ったが…無いっぽい。
ズスッ!!
「!?な、なんだ…矢だ!矢が…!?」
「どうしたの!?」
「隠れろ!そこに!早く!」
考えるよりも早く行動だ!建物の影へ隠れると、その瞬間、矢が自分の目の前を掠った…射手だ…何処かに射手が隠れていて自分達を狙っている!
ちっくしょう!奴め、完全に殺す気だ!
「こ、殺しに来てる…」
「そうらしいな…方角は大体分かったが…イン、魔法使えるか?」
「使えるけど…頭を出した途端に射抜かれちゃうよ。」
「考えがある。」
弓矢の良い所はよく飛び、音も無く、殺傷力が高い事だ…しかし、欠点もある!一々矢を番えなくてはいけないのだ…矢が無ければ弓矢では無い、ただの弓だ。
「良いか、俺が囮になる。大体の位置で良い…爆発する火球を投げるんだ。」
「そんな!?お、囮って…死んじゃうよ!」
「安心しろ…急所は守る。」
バッグを持つと、頭を隠すように影から出た!
奴は焦って矢を放ったのか、バッグに何かしたの衝撃が走る!
「イン!今だ!!」
「こ、こんちくしょぉおおおお!!」
『ッ!?うぎゃぁああぁぁぁぁぁぁ…』
や、やった…誰だか知らないが、奥に居る人影を爆発に巻き込み、ぶっ殺せた。
もうこの際、生死は構ってられない…それに…ど、どうせ魔導人だろう。
爆音で敵が集まる前に速く此処からトンズラしよう…きっと上に敵が集まる。
「はぁ…はぁ…ちょ、ちょっと待って…」
「どうしたイン…疲れたのか?」
「うん…少し休んでいい?」
「ダメだ…と言いたいが酷だよな…」
しょうがないとインを右肩に担いで進むことにした…かなり負担が掛かるが、時間を無駄にするよりかは良いだろう、インも多少は休まる。
だがしかし、揺れるようで…
「う、うっぷ…コォ…あんまり揺らさないで…」
「無茶言うなよ。我慢してくれよ。」
ゲロられると嫌なので早いとこ、この塔に登ってしまおう…よし、今なら見回りは居ないな…
「よっと…くっ……」
「ど、どうしたの?」
「インを抱えてる分の…脚の負担を考えていなかった…」
「重いって言いたいわけ?」
軽いなんて言えば…ウソになる…ともかく、脚の痛みを軽く治療すると塔の中へ直ぐに入った…此処からはインを降ろす。
流石に階段は勘弁してほしい。
「どうだ、イン?そっちは何か見えそうか?」
「うーん…特にこれと言って…」
塔へ登ると、上から街を見下ろした…この街は結構広いが、逃げる道は少ない…そこら辺にうじゃうじゃと見回りが居るのだ。
やはり、魔導人が多いな…それも、森で見た者とは少し違う。
殆どが両腕と両脚を装備しているのだ…色も赤いし。
(3倍速いわけではない)
「………あ!」
「何か見つけたか!」
「あっこに怪しい建物があるよ。」
「ヒミツちゃんか?」
インの指す方を見ると…この街には少し似合わない感じの整備された大きめの建物が一軒…ドアもボロくないし壁に大きな損傷も見られない。
あそこがチカの拠点かは知らないが、行ってみよう。
しかし…見回りが厄介だな…数が多すぎる…いっそのこと、始末してしまうか?
インの魔法、底なしの穴は強力だが何処に繋がっているかどうか分からない…前に一度だけ、鳥が吸い込まれた時…その鳥はあっという間に消えてしまった。
「コォ、どうしたの?」
「イン…底なしの穴って使えるか?」
「使えるけど…やるの…?」
「やるしかない。…行くぞ。」
影魔法は強力だが使い過ぎるとインの身体に負担がかかる…なるべく一回で多くの奴等を蹴散らす必要がある。
少し危なっかしいが、俺が囮になって奴らを引き寄せよう。
「という作戦だが…イケるか?」
「で、でも…コォが吸い込まれたら…」
「気にするな、その場合は俺の落ち度が原因だ。」
下に降りると、奴等を掻い潜って路地裏までやって来た…此処でやろう。
まず最初に俺がありったけの見回りを集めて此処に戻って来る、インは物陰に隠れて底なしの穴を発動、自分はそこの窓を掴んで上へ避難…完璧…とは言えない。
それでもやるしかない、やるっきゃない!
「そこに隠れて準備をしてろ、良いな?」
「うん。コォ、死なないでね。」
「こんな所でくたばる俺じゃない。」
ヒャーカッコイイ!!そんな事を想像しながら大通りへ向かうと…
「うぉおおおおおお!!チカァァアア!!出て来い!俺は此処だぞ!!」
【ビビビィッ!!ギューギャッギャ!】
【ピポポポ…カッカッカッカ…ギャンギャン!!】
「うひゃー!き、来た…」
大声で叫べば周辺の見回り魔導人たちは一斉にこちらへ寄って来た!
命の危機を光よりも早く感じ取った自分は直ぐにその場から逃走!肺が潰れる勢いで走りに走って路地裏までやって来た。
そして窓を掴んで屋内へ避難すると…
【ギュグゥウ…ガッゴゴ…?】
【グガガガ…ボッボォオオ…ブーンブーン…】
【ンババ…】
「(よし…今だ!!)ハァアアッ!!」
【【【!?】】】
インが物陰から出て、底なしの穴を唱えると…光すらも吸収すると言うドス黒い穴が出現し、5体ほどの魔導人を跡形も無く…音すら出さずに飲み去った。
な、なんて恐ろしい技なんだ…もし何処か、別の世界に繋がっていたら気の毒だな。
「はぁ…はぁ…」
「よくやったイン!今のうちに奴の所へ行くぞ!」
「う、うん…ちょっと待ってぇ…」
少し息切れするインを担いで怪しい建物へ向かった。
作戦が効いたのか…他の魔導人たちも先ほどの大通りへ集まっているので今の内だ。
・・・
「此処だ…よし、警備も居ないな。」
「本当に入るの…?」
「当たり前だろ!此処まで来て逃げるのか?」
「けど怖いし…」
だったら1人で外で待つか?と聞いたら「1人は嫌!」と言った。
そうなれば一緒に来るしかない、残念だが俺は全知全能の神では無いのだ。
2人で恐ろしいと感じながらも(死んだら困るが)決死の思いで布のカーテンを捲って中へと突入した…しかし、そこには誰の姿も無い。
暗い部屋の中は酷いオイルのような匂いが充満し、魔導人のパーツと作りかけと思われる赤い首飾りが中央の大きなテーブルにばら撒かれていた。
「うっ…酷い匂い…」
「換気は出来ないな…布で口元を覆え。出来るだけ吸い込むなよ。」
「うん…(このハンカチも洗ってないから酷い匂いだけど…)」
自分は白いバンダナを口元に巻くと、2人でその部屋を物色した。
この建物はただの作業部屋か?もしそうだとしても近くに奴の基地があるかもしれない。
本来作業と言うのは基地でするものだからな。
「……こ、これは…」
「どうかしたの?」
「床下収納みたいなものがあるな…怪しい。」
詰まれた箱の影の床に小さく四角い木の扉を見つけた…床下収納なら普通だが…もしかするとこれは地下への扉なのかもしれない。
もしも、ただの収納で何かしら不気味な物が仕舞ってあったら困るが…
開けることにした。
「……よ、よかった…梯子だ…」
木の戸をギィーっと開けると、そこにあったのは不気味な瓶詰ではなく、無機質な石製の梯子であった…いや、無機質と言ったが、生きている梯子なんて無い。
何処かの国に在るかもしれない呪いの梯子以外の話だが。
「だ、大丈夫かな…いきなり待ち伏せなんて…無いよね…」
「行くしか無いな。俺が先に行く。」
自分でも思うが、よくこんなにズカズカと先に進めるな。
梯子をゴトゴトと少し早めに降りると、その先は暗い地下道…掘ったと思われる四角い土の道を何処から運んだのか、木の柱で固定されている。
空気もすこし湿り気を含んでいて、息苦しい…早く進もう。
自分達は不安を感じながらもそのまま先へと進んだ…
つづく
・・・
キャラクタープロフィール
名前:フィフィレー(オス) 身長:199㎝ 箱の色:黒と金 箱の中:不明
誕生日:11月15日 星座:カルキ座 血液型:Z型 人種:頭箱族(魔族)
好物:魚フライ 趣味:草野球 職業:魔導師チカの側近
『フィフィレーは魔導師チカの側近の頭箱族である。側近だが完全なる忠誠を誓っているワケではなく、恐怖も交えて慕っている。3魔士の1人でリーダーを気取っているが単に実力があるだけで(今は亡き)2人には少々ウザがられていた。また、ワケあって同じ頭箱族のジャッキーとは知り合いである。』
昼間の激闘で体力と魔力を使い果たした自分達は先に進むことを止め、そのまま遺跡街で一晩を越すことにした…此処は廃屋だらけなのでゆっくり眠れる。
街で買っておいた携帯食も食べたので…寝ればある程度はマシになるだろう。
「コォ…その…明日、どうするの?」
「イワを捜しに行く。」
「やっぱり…けど、私もそうした方がいいって思ってる…」
イワは3魔士のボス、チカに連れ去られてしまった…イワが紫肌族だとか言っていたが…そんな事はどうでも良い、ちゃんと山から出すと約束したんだ。
見捨てて進むなんて男じゃない。
「場所は分かるの?」
「あの女の人が使ったのは転移魔法だと思うんだ…」
「だったら…そんなに離れてない?」
「その可能性が高い。」
転移魔法は最大でも、かなり離れた位置くらいにしか動けない。
つまり変質者の目撃情報からしても…アイツの本拠地はこの遺跡街の何処かだろう…どうやらこの街には特殊な魔法が掛けてあるようで、昼間に戦った場所は元通りになっていた。
あれだけ強力な魔力が満ちていると言う事は、間違いなく近くにチカが潜んでいると言う事だ。
「にしてもさ…外から…変な音が聞こえてるんだけど…」
「きっとアイツが寄こした見回りだろうな。確実に俺達を探している。」
外の道からは『ガッシャンガッシャン』や【ビーボッボ…】と言う不気味な音が聞こえる…きっと魔導人辺りがチカの使いで見回りをしているのであろう。
どうやら俺達がこの街に留まっていることに気付いている様だ。
もし見つかったら…良くて拘束、悪くて…死だ。
「異音が近づいたらあまり音を出すなよ。」
「えぇ…そんなぁ…寝てる間は?」
「知らん。とりあえず寝るしかないだろ。」
【ピギョギョ!!】
「ひっ…心臓に悪いなぁ…」
「じゃ…イン、おやすみ。」
今のうちに寝ておかなくては…明日はもっと大変になる。
俺達は時々聞こえる異音にビクビクしながらも眠りに就いた。
・・・
「うぅ…じんせーで一番寝起きが最悪…」
「しょうがないさ、この状況じゃな。」
特に何事もなく自分達はぐっすり眠って、明るい真昼に目が覚めた。
懐中時計を見れば時間は午前9時半…未だに外では魔導人たちがうろついている様だ…異音が聞こえる。
ちなみにインは俺と父さんが魔導人になる夢を見たようだ…凄い悪夢だな。
正夢にならなきゃいいけど。
「ど、どうするの?どうやって出るの?」
「外を見るわけにもいかないからな…音を聞いて、隙を見計らってから一気にこの家の裏まで行こう。路地裏から屋根に上って屋根伝いを伝って行くんだ。」
「カッコイイ…なんか忍者みたい…」
「ニンジャ…?」
ニンジャってアレだろ…?赤いマスク付けてたりドーモって挨拶する奴だろう。
確か本で見たのはそんな感じだった…自分がイメージしているのは暗殺者なのだが…まぁ似たようなもんか。
(違ってたらアレだけど)
「けど…まずは奴の居場所を探さないとな。」
「アッチが探す間にこっちも探すのね。」
「その通り、戦争と同じで相手と同じことをすればいい。」
アッチが探す前にコッチが探し出してやるという戦法だ。
いくらアイツでも用心深いに決まっている、きっと本拠地の近くには大量の兵を置いているであろう、そして自分達がイワを救出しに来ることも視野に入れているハズ。
一筋縄ではいかなさそうだが…行くっきゃない!
「よし…準備は良いか?」
「う、うん…出来てる…2割は。」
「その意気だ…次だ、次の物音が遠ざかったらだ…」
荷物は持った、もうここから去るべき時なのだ…次に何者かがそこを通って行った後を狙う。
歩いてくる頻度からして、見回りは一定の距離を均一に保って見回っていると思われる。
そして今まさに…ガッシャコンと音が聞こえる…魔導人だな。
【ビー…ブッブ…ボーンボーン…ピポポ…】
「(相変わらず不気味な音だな…)」
【ギュッビ…バシュシュゥウウ!!】
「「!?」」
今回の奴も直ぐに通り過ぎて行くと思っていたが…なんと魔導人は突如として壁を殴り壊して中を覗いて来た!
そして自分達を見つけると凄まじい音を出す!
な、なぜ…急にコイツだけが…いや!それよりも!逃げなくては!!
「行くぞイン!とにかくついて来い!」
「そ、そんな!?待ってよぉ…」
【ギュアガァアアアア!!ボッボ!!ビジィイイイ!!】
とにかく外へ出ると、追手が来る前に路地裏へ逃げ込んだ!
そこら中から共鳴するように異音が聞こえる!や、奴等…情報を共有できるのか!?いや…もしかしたら仲間を呼んでいるのかもしれない…
とにかく!全員こちらへ近付いてきている!
「ねぇ!何処から上に登るの!?」
「えーっと…俺を踏んで行け!それから引っ張れ!」
「分かった…逆の方が良くない?」
「それもそうだな…」
インが壁に手を付け、背中を丸めて向けると自分は荷物を屋根の上へ投げ…インの背中を踏んで上へ駆け上がった!幸いにもこの街の殆どの建物が四角い…
登るのは比較的容易かった。
【ビギギィ!!】
「ひぃい!?く、来る!早く上げて!!」
「待ってろ!キム…ムーア!!」
そして右手で屋根の縁を掴み、ぶら下がると左手でインの手を握って力を使えるだけ使ってどうにか上まで登った…あ、危なかった…しかし、魔力は回復してるな。
これも腕輪のおかげだろうか…
【ギッビビ!!ズゴゴゴゴッ!!】
「さ、探してる…」
「とにかく進むぞ、ジッとしてると命取りだ。」
「うん…何処に行くの?」
「ひとまずあの高い建物に向かおう。」
目指すは少し遠くの登場の建物…あそこに登って見渡そう。
屋根から屋根に飛び移るのは…ハッキリ言って恐ろしい!一歩間違えれば地獄に落ちることになる…地獄は比喩でも何でも無く、あの世だ。
出来るだけ近い所から飛び移って行く…建物が密集していて良かった…
「(山に比べたら…割と楽かも…)」
「うぉ!?」
「大丈夫か?」
「平気平気…ちょっとバランスを失っただけ。」
楽かと思ったが…インを見る限り、そんな事は無いな。
気を取り直して話題を戻そう…目指す塔が近くなって来たぞ…なんだ、案外楽に行けるな。
何かしら障害があるかと思ったが…無いっぽい。
ズスッ!!
「!?な、なんだ…矢だ!矢が…!?」
「どうしたの!?」
「隠れろ!そこに!早く!」
考えるよりも早く行動だ!建物の影へ隠れると、その瞬間、矢が自分の目の前を掠った…射手だ…何処かに射手が隠れていて自分達を狙っている!
ちっくしょう!奴め、完全に殺す気だ!
「こ、殺しに来てる…」
「そうらしいな…方角は大体分かったが…イン、魔法使えるか?」
「使えるけど…頭を出した途端に射抜かれちゃうよ。」
「考えがある。」
弓矢の良い所はよく飛び、音も無く、殺傷力が高い事だ…しかし、欠点もある!一々矢を番えなくてはいけないのだ…矢が無ければ弓矢では無い、ただの弓だ。
「良いか、俺が囮になる。大体の位置で良い…爆発する火球を投げるんだ。」
「そんな!?お、囮って…死んじゃうよ!」
「安心しろ…急所は守る。」
バッグを持つと、頭を隠すように影から出た!
奴は焦って矢を放ったのか、バッグに何かしたの衝撃が走る!
「イン!今だ!!」
「こ、こんちくしょぉおおおお!!」
『ッ!?うぎゃぁああぁぁぁぁぁぁ…』
や、やった…誰だか知らないが、奥に居る人影を爆発に巻き込み、ぶっ殺せた。
もうこの際、生死は構ってられない…それに…ど、どうせ魔導人だろう。
爆音で敵が集まる前に速く此処からトンズラしよう…きっと上に敵が集まる。
「はぁ…はぁ…ちょ、ちょっと待って…」
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「うん…少し休んでいい?」
「ダメだ…と言いたいが酷だよな…」
しょうがないとインを右肩に担いで進むことにした…かなり負担が掛かるが、時間を無駄にするよりかは良いだろう、インも多少は休まる。
だがしかし、揺れるようで…
「う、うっぷ…コォ…あんまり揺らさないで…」
「無茶言うなよ。我慢してくれよ。」
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「よっと…くっ……」
「ど、どうしたの?」
「インを抱えてる分の…脚の負担を考えていなかった…」
「重いって言いたいわけ?」
軽いなんて言えば…ウソになる…ともかく、脚の痛みを軽く治療すると塔の中へ直ぐに入った…此処からはインを降ろす。
流石に階段は勘弁してほしい。
「どうだ、イン?そっちは何か見えそうか?」
「うーん…特にこれと言って…」
塔へ登ると、上から街を見下ろした…この街は結構広いが、逃げる道は少ない…そこら辺にうじゃうじゃと見回りが居るのだ。
やはり、魔導人が多いな…それも、森で見た者とは少し違う。
殆どが両腕と両脚を装備しているのだ…色も赤いし。
(3倍速いわけではない)
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「何か見つけたか!」
「あっこに怪しい建物があるよ。」
「ヒミツちゃんか?」
インの指す方を見ると…この街には少し似合わない感じの整備された大きめの建物が一軒…ドアもボロくないし壁に大きな損傷も見られない。
あそこがチカの拠点かは知らないが、行ってみよう。
しかし…見回りが厄介だな…数が多すぎる…いっそのこと、始末してしまうか?
インの魔法、底なしの穴は強力だが何処に繋がっているかどうか分からない…前に一度だけ、鳥が吸い込まれた時…その鳥はあっという間に消えてしまった。
「コォ、どうしたの?」
「イン…底なしの穴って使えるか?」
「使えるけど…やるの…?」
「やるしかない。…行くぞ。」
影魔法は強力だが使い過ぎるとインの身体に負担がかかる…なるべく一回で多くの奴等を蹴散らす必要がある。
少し危なっかしいが、俺が囮になって奴らを引き寄せよう。
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「で、でも…コォが吸い込まれたら…」
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【ビビビィッ!!ギューギャッギャ!】
【ピポポポ…カッカッカッカ…ギャンギャン!!】
「うひゃー!き、来た…」
大声で叫べば周辺の見回り魔導人たちは一斉にこちらへ寄って来た!
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【ギュグゥウ…ガッゴゴ…?】
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【ンババ…】
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【【【!?】】】
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少し息切れするインを担いで怪しい建物へ向かった。
作戦が効いたのか…他の魔導人たちも先ほどの大通りへ集まっているので今の内だ。
・・・
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「本当に入るの…?」
「当たり前だろ!此処まで来て逃げるのか?」
「けど怖いし…」
だったら1人で外で待つか?と聞いたら「1人は嫌!」と言った。
そうなれば一緒に来るしかない、残念だが俺は全知全能の神では無いのだ。
2人で恐ろしいと感じながらも(死んだら困るが)決死の思いで布のカーテンを捲って中へと突入した…しかし、そこには誰の姿も無い。
暗い部屋の中は酷いオイルのような匂いが充満し、魔導人のパーツと作りかけと思われる赤い首飾りが中央の大きなテーブルにばら撒かれていた。
「うっ…酷い匂い…」
「換気は出来ないな…布で口元を覆え。出来るだけ吸い込むなよ。」
「うん…(このハンカチも洗ってないから酷い匂いだけど…)」
自分は白いバンダナを口元に巻くと、2人でその部屋を物色した。
この建物はただの作業部屋か?もしそうだとしても近くに奴の基地があるかもしれない。
本来作業と言うのは基地でするものだからな。
「……こ、これは…」
「どうかしたの?」
「床下収納みたいなものがあるな…怪しい。」
詰まれた箱の影の床に小さく四角い木の扉を見つけた…床下収納なら普通だが…もしかするとこれは地下への扉なのかもしれない。
もしも、ただの収納で何かしら不気味な物が仕舞ってあったら困るが…
開けることにした。
「……よ、よかった…梯子だ…」
木の戸をギィーっと開けると、そこにあったのは不気味な瓶詰ではなく、無機質な石製の梯子であった…いや、無機質と言ったが、生きている梯子なんて無い。
何処かの国に在るかもしれない呪いの梯子以外の話だが。
「だ、大丈夫かな…いきなり待ち伏せなんて…無いよね…」
「行くしか無いな。俺が先に行く。」
自分でも思うが、よくこんなにズカズカと先に進めるな。
梯子をゴトゴトと少し早めに降りると、その先は暗い地下道…掘ったと思われる四角い土の道を何処から運んだのか、木の柱で固定されている。
空気もすこし湿り気を含んでいて、息苦しい…早く進もう。
自分達は不安を感じながらもそのまま先へと進んだ…
つづく
・・・
キャラクタープロフィール
名前:フィフィレー(オス) 身長:199㎝ 箱の色:黒と金 箱の中:不明
誕生日:11月15日 星座:カルキ座 血液型:Z型 人種:頭箱族(魔族)
好物:魚フライ 趣味:草野球 職業:魔導師チカの側近
『フィフィレーは魔導師チカの側近の頭箱族である。側近だが完全なる忠誠を誓っているワケではなく、恐怖も交えて慕っている。3魔士の1人でリーダーを気取っているが単に実力があるだけで(今は亡き)2人には少々ウザがられていた。また、ワケあって同じ頭箱族のジャッキーとは知り合いである。』
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