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第1部【明暗の大魔導師】編
第32話 魔法免許習得までの道
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俺の名前はコォ、インとイワと共に宿屋で休息を取っている冒険者だ。
昨日、天の大魔導師ガシラドウと会い、光の大魔導師の居場所を聞き、魔力の引き上げと新たな魔法も教えてもらった。
船が来るまでの3日間…するべきことはある。
まず最初に魔法免許の習得…教えてもらった魔法は免許が無いと使ってはいけないらしいので中級免許の取得が必須。
次に父さんの貸金庫に行き、預けていた荷物の確認…これは大事。
そして俺達3人の装備の新調…費用はガシラドウのポケットマネー…つまりお祝い品。
【ウチは今日もお留守番かぁ…】
「すまないな…本当は連れて行きたいけど…」
「アンタって種族が種族だから。」
【大丈夫!留守番なら負ける気しない!ずっと1人だったから。】
「そんな事言わないで…直ぐ帰って来るから。」
今日はまず、魔法免許を取りに行くので魔法免許センターへ行く。
イワはもちろん、お留守番…ゆっくり休んでいてもらおう。
免許取得までの大まかな流れとしては、簡単な受講、筆記試験、実技試験で最短当日に発行可能。
手数料は通常、結構掛かるが…冒険者として登録しているので初回は無料だ。
「着いたね、此処が免許センター?」
「そうだな…結構人…少ないんだな…」
全国魔法委員会運営の魔法免許センター(モース城下町支部)へやって来たが…意外と人が少ない…どうやら今の時期にわざわざ習得する人は少ないようだ。
自分達は早速、書類を作成し、次の時間の講習に申請しておいた。
適性診断も有ったが…軽い質問だけだ。
主に持病や犯罪歴の事だが…当たり前だが無い。
【まもなく次の講習が始まります、魔法条約違反者以外の方は3番の部屋までいらしてください。】
「お、行くぞ。」
「うん…なんかドキドキして来た…」
自分達は講習を受けた。
内容については…まぁ近年の魔法事故や違反者の例等についてだ…他にも基本的な事を教えてもらった…一行一句、聞き逃さずに聞いておいた。
意外と知らないルールが多くて驚いた…自分の知識って一体…
講習時間は2時間とちょっとくらいで終わった…気のせいか、短い気がする。
「次は筆記試験か…」
「私…字に自信が無いんだよね…」
【筆記試験の方は7番の部屋まで来てください。1秒でも遅れたら最初からです。】
恐ろしいと思いながらも、自分達は筆記試験も行った。
出る問題は基本的なルール等に関する事だ、ハッキリ言って面白くないの一言に限るが…試験に面白みを求める方はおかしいのだ。
何気に図面問題は少し苦戦した…情けない。
さて…筆記試験を終えたら、まずは試験に受かったかだ…30分ほどすれば筆記試験の合格者の数字が張り出されボードが運ばれるが…今回は無いらしい。
なにせ…人が少ないからね……今回は直接教えてもらえる。
【001、8番の部屋まで。003、9番の部屋まで005と006、10番の部屋へ…以上です。】
【うげ…落ちちまった…】
「良かった…6番と5番は俺達だ。」
「最初からなんて嫌だから良かったぁ…」
落ちた人も居るが、今回は2人揃って合格だ。
次に実技試験…この試験は通常、1人1人が個別に専用の部屋へ案内され、その中で教官に見てもらうのだが…今回、自分とインは双子のペアで特別に2人だ。
10番の部屋へ入ってみれば…待ってる教官は…
【ど、どうも…ワシが今回の教官です…】
「こ、こんにちわ…」
「こんちわ。」
自分達の教官は…かなり歳を喰った赤皮族のおじいさんであった。
少しふらついているが大丈夫だろうか?
それより、実技試験の部屋は横に長く、魔法の分野において使う道具が沢山置かれている。
【えぇーっと…まず…コルくんから…】
「コォです…それはコォって読むんです…おじいさん…」
【そうだったか…すまんのう…】
「(本当に大丈夫かなこの人…)」
まずは基本的な攻撃魔法の火球のテストから。
最初に火球の形を見るために、右手の上へ作り出す…それをちゃんとした形に維持できるか、細かく審査されるのだ…自分はちょっと自信がない。
「火球!!ど、どうですか?」
【形は…申し分ないねぇ…だけど…ちょっと力が分散しているね。】
とりあえず、形は合格点…次に奥の的へ正確に当てる。
奥の的は10メートルほど離れているが…問題ない!あの程度の距離なら!!
「火球!!ヤァア!!」
【速度、命中精度共に良好…着弾時の威力…ムラが有り…】
「やっぱり…まだまだかなぁ。」
【次の攻撃魔法を。】
「はい!次は…(よし…新しいヤツ…)スネレイズです。」
「(昨日、教えてもらったヤツだ)」
昨日、ガシラドウに教えてもらった魔法の1つ、スネレイズを使う事に。
スネレイズは一筋の光のようなレーザービームを放つ光魔法である…自分には相性がいいとも言われた。
【光魔法だね…珍しいねぇ…じゃ、あの的を狙って。】
「えぇ!?あ、アレですか!?」
【真ん中じゃなくても良いからね。】
教官の指す的は直径10センチにも満たない丸い的…距離は先ほどの的と同じく約10メートル程だ。
徹夜で練習したが…う、上手く行くだろうか…ええい!やるしかない!
指先へフラッシュルのように魔力を集中させて…
「スネレイズ!!」
「おお…当たった。」
【……うん、良好良好。頼もしいねぇ。】
眩しい一筋の光は残光のように飛び、的の中央より少し右の方へ当たった。
このくらいの距離なら良いそうだ…良かった…外さなくて…
「次はマジカウェポン甲です。」
【バーヤですか?】
「はい。」
【だったら…専用の的を出そうね。】
おじいさんは奥の方から…奇妙な…黄緑色のプルプルしたゼリーのような…形と言い、大きさと言い丸太のような…奇妙な物体が乗ったワゴンを持って来た。
これはマジカウェポン系専用の的で斬っても打ってもダメージを受けないプルプルな物らしい…原材料は教えてくれなかった。
「それでは早速……マジカ・バーヤ!!」
2人から遠く離れた場所で的?を魔法の剣で斬り裂く!!
ズガァア!!と斬り裂いたが…本当に的は無傷で小刻みにブルブル震えているだけであった…どうやら衝撃を受け流すらしい。
ちなみに結果は合格だ。
その後も自分はキム・ムーア、フラッシュル、回復の試験を行った…詳しい結果はまだ教えてくれない。
【次は…アインちゃんだね。】
「インだよおじいちゃん…」
インの試験の火球と雹球は形、飛び方、威力共に申し分ないと言われた。
次に…雷球…ズラッソも使っていた聖職者御用達の不殺魔法。
(威力を誤れば普通に死ぬらしいけど)
【雷球は維持が難しいからすぐ投げてね。】
「はーい…はぁあ…雷球!!デリャァ!!」
「!?」
雷球はズビュン!!と飛んで行き、的へぶつかると凄い勢いでバヂィイン!!と弾ける…か、完全に殺す気だ…
【うん、若干のムラが見られるけど強いね。良好…】
「やったー!」
「(良いのか…それで…)」
次はタニポ系、痛んだ植物を使う。
内容は簡単で花びらを捥がれた花と無傷の花を用意し、傷を押し付けると言うもの。
これもインは簡単にやってのけた…我ながら恐ろしい妹である。
次はマジカウェポン乙のテスト…的は俺が使ったのと同じ、ゼリー。
「マジカ…モーニス!!デリャァアア!!」
ガッシャァァアン!!
「【!?】」
「あ…ご、ごめんなさい…」
インの魔法で作った鎖鉄球はバッシュゥウン!!とゼリーを吹き飛ばし、的はそのまま窓を突き破って外まで飛んで行ってしまった。
おじいさんと2人で慌てて破られた窓から下を見たが…幸いにも路地裏だったので誰も居らず、窓の破片が突き刺さった的が横たわっているだけ…
【威力とかは良いけどね…誰かを巻き込む可能性が高いね…強いのを自覚してね。】
「はい…ごめんなさい…」
「すいません本当に…あの…窓代は…」
【あぁ…一応、大丈夫かもね。よくあるから。】
「そうですか…(よくあるのか…)」
そうだ、ただ強けりゃ良いってものではない。
真に強い者は自分の力の強大さを自覚しており、制御できる者のみだ…強い事を自覚しない者に強力な力を持つ資格など無い。
職員と一緒に割れた窓を片付け…試験を再開した。
「次は…バレチトン!」
【バレチトンは一点を集中させるように打ってね。】
「(う…ば、バレチトンって…)」
バレチトンは確か、山で対峙した聖職者のコリンパイと言う人が使っていた技だ…雷球とは違い、電気をそのまま放つような魔法。
「バレチトン!!」
【……持続時間、良好。狙い、良。威力、良好。】
「ふぅ…こんなもんよ。」
さて…次にインが使う魔法と言えば影魔法だが…影魔法はパスされ、実技試験は幕を閉じた。
影魔法は免許に入っていない様である…珍しく、危険な物だからだろう。
とにかく…実技試験も終了と来たら…お待ちかねの…
【お2人さん、合格。中級魔法免許の発行権だ。持って行け。】
「やったぁ!!ありがとうございます!」
「わーい!」
【それでは、安全で正しい魔法生活を送る様に。】
自分達は受け取った中級魔法免許の発行権を持ってカウンターに行くと、直ぐに免許を発行してもらった。
美しい青入りのカード…凄い!これが中級魔法免許!
大人って感じがする…これが有れば一般的な魔法関連の仕事が出来る様になる!…特に予定はないけど。
ちなみに手帳にも印を押してもらえる…この印を見せれば免許が無くとも、提示する事で証明できるし、再発行時に一から試験を受けなくて済む。
「かっけー…これが…魔法免許…」
「手帳に挟んどこ。」
さて…免許の取得も済んだので次は父さんの貸金庫へ行くとしよう。
貸金庫はモース銀行にて職員へ昨日、ガシラドウから受け取ったカードを渡せば行けるらしい。
銀行なんて行った事ないけど…まぁ何とかなるだろう。
俺達はモース銀行へ向かった。
「此処が銀行…なんか…紙の匂いがする。」
「良い匂い…と言えないが、悪くはないな。」
モース銀行は色んな人が出入りする、モース地方最大の銀行だ…そりゃ、少ないので最大にもなるだろう…だが!此処の銀行は他とは比べ物にならない大きさだ。
カウンターも沢山ある…殆ど、職員が居ないけど。
「あの、すいません。これを。」
【はい?あぁ…昨日、ご連絡いただいた…おい!34番!】
【何か用か?】
【昨日の件の人達だ。案内してあげて。】
【ああ…タブルス殿のご子息と令嬢さん…】
自分達は青肌族の魔族の銀行員に案内され、エレベーターに乗り込むと、ズルズルと下へ降りて行った。
この人は父さんの金庫専属のスタッフらしい…という事は…かなりの年齢なハズ。
しかし、この場で歳の話はちょいと野暮って物だ、黙っておこう。
「パパの事知ってるの?」
【ええ。彼はお金は預けませんでしたが、物は沢山預ける方ですね。】
「(父さん…)あの…利用料金って…」
【ご安心ください。数十年先の分まで頂いております。】
「そうなんですね…」
「良かったぁ…」
しばらく地下まで降りて行き、暗い地下牢をしばらく歩いて行くと…やがて大きな石製の扉の前までやって来た。
番号はK1534…特に覚える必要はない?
次に職員が特殊な鍵を穴に入れ、ガチャガチャと細かく傾けると…ガチッ…と鳴り、重そうな扉がズゴゴ…と開き始めた。
金庫と言う割には石製…貸石庫?
【どうぞ、お入りください。】
「……ごほ!か、かび臭い…」
【アンティーク品の匂いですね。彼はそう言うのが好きでしたから。】
「なーんか…古い物置って感じ。」
石製の大きな部屋の中には大量の…古臭い家具…所謂、アンティーク品が大量にあった…昔に父さんが集めて家に飾ろうとしていたらしい。
が…あの家じゃ無理だろう…ここに住んだ方が理想的である。
そんな家具の他にも大量の古そうな巻物、何かの賞の数々…
古い写真もある…写っているのは昔の父さん?凄く若々しくて…俺に…あんまり似て無いな、父さんの方が重みがある。
「それにしても凄いな…父さんが最後に来たのは何時ですか?」
【そうですね…5年ほど前に来て以来…お会いしていませんね…】
「5年前…その時は一体何を?」
【私は見ていませんが、おそらく何かを置いて行ったのでしょう。】
何かをかぁ…もしかしたら要らなくなった本とかかな?
しばらく職員にも手伝ってもらい、3人で整理していたその時…
「あ、なにこれ…」
「イン?どうかしたか?」
「鍵のペンダント見つけた。」
インが見つけたのはやけに目新しい箱に入った純金の鍵が付いたペンダント…鍵には精巧な模様が彫られており、黒い宝石も付いていた。
これは一体…と思ったが…
【これは日記の鍵かもしれませんね。】
「日記の鍵ですか?」
「きっとそうかも!パパは日記を見られたく無くて鍵を此処に隠したのかも!」
「えぇ…父さんって日記付けるタイプだったんだ…意外…」
どうやら派手具合から見て、日記の鍵だと断定された。
インは持って帰ろうよと言ったが…父さんが見たら怒るに違いない…だが…気になる……そうだ、父さんを救うんだ、日記を見たってバチは当たらない。
そう自分に言い聞かせ、整理がてら、日記も探してみたが…見つけたのは鍵が付いてない手記っぽい物のみ…
「どれどれ…おっとこれは……読めないな…」
【古代語かもしれません…こ、これは!!】
「どうかしたんですか!!」
【凄く下手くそなだけですね…よく見たら現代語ですよ。】
「えぇ…私の字が下手なところってパパからの遺伝だったんだ…」
結局、めぼしい物は見つからず、インが鍵のペンダントを首へぶら下げただけで終わった。
装備の新調は明日するとして…そろそろ帰るか…イワが可哀想だ。
明日は一緒に連れて行こう。
つづく
・・・
行方不明になった患者の捜索届
発行元:ビーミスの病院
『警戒!ビーミス城塞病院より狂獣人病を患った患者が脱走!患者の名はマドールス。カカオ山付近にて目撃情報が有ったものの、火災以降目撃情報なし。患者は非常に危険な状態で、動いているもの、音を出すものへ無差別に攻撃を繰り返します!万が一、噛まれたりして傷口から体液などが体内へ入ると狂獣人病が伝染するので直ぐに最寄りの病院へ急いでください!また、患者を見つけても刺激せず、直ぐに退避してください。』
『発見次第、速やかにご連絡を。ビーミス城塞内病院一同』
昨日、天の大魔導師ガシラドウと会い、光の大魔導師の居場所を聞き、魔力の引き上げと新たな魔法も教えてもらった。
船が来るまでの3日間…するべきことはある。
まず最初に魔法免許の習得…教えてもらった魔法は免許が無いと使ってはいけないらしいので中級免許の取得が必須。
次に父さんの貸金庫に行き、預けていた荷物の確認…これは大事。
そして俺達3人の装備の新調…費用はガシラドウのポケットマネー…つまりお祝い品。
【ウチは今日もお留守番かぁ…】
「すまないな…本当は連れて行きたいけど…」
「アンタって種族が種族だから。」
【大丈夫!留守番なら負ける気しない!ずっと1人だったから。】
「そんな事言わないで…直ぐ帰って来るから。」
今日はまず、魔法免許を取りに行くので魔法免許センターへ行く。
イワはもちろん、お留守番…ゆっくり休んでいてもらおう。
免許取得までの大まかな流れとしては、簡単な受講、筆記試験、実技試験で最短当日に発行可能。
手数料は通常、結構掛かるが…冒険者として登録しているので初回は無料だ。
「着いたね、此処が免許センター?」
「そうだな…結構人…少ないんだな…」
全国魔法委員会運営の魔法免許センター(モース城下町支部)へやって来たが…意外と人が少ない…どうやら今の時期にわざわざ習得する人は少ないようだ。
自分達は早速、書類を作成し、次の時間の講習に申請しておいた。
適性診断も有ったが…軽い質問だけだ。
主に持病や犯罪歴の事だが…当たり前だが無い。
【まもなく次の講習が始まります、魔法条約違反者以外の方は3番の部屋までいらしてください。】
「お、行くぞ。」
「うん…なんかドキドキして来た…」
自分達は講習を受けた。
内容については…まぁ近年の魔法事故や違反者の例等についてだ…他にも基本的な事を教えてもらった…一行一句、聞き逃さずに聞いておいた。
意外と知らないルールが多くて驚いた…自分の知識って一体…
講習時間は2時間とちょっとくらいで終わった…気のせいか、短い気がする。
「次は筆記試験か…」
「私…字に自信が無いんだよね…」
【筆記試験の方は7番の部屋まで来てください。1秒でも遅れたら最初からです。】
恐ろしいと思いながらも、自分達は筆記試験も行った。
出る問題は基本的なルール等に関する事だ、ハッキリ言って面白くないの一言に限るが…試験に面白みを求める方はおかしいのだ。
何気に図面問題は少し苦戦した…情けない。
さて…筆記試験を終えたら、まずは試験に受かったかだ…30分ほどすれば筆記試験の合格者の数字が張り出されボードが運ばれるが…今回は無いらしい。
なにせ…人が少ないからね……今回は直接教えてもらえる。
【001、8番の部屋まで。003、9番の部屋まで005と006、10番の部屋へ…以上です。】
【うげ…落ちちまった…】
「良かった…6番と5番は俺達だ。」
「最初からなんて嫌だから良かったぁ…」
落ちた人も居るが、今回は2人揃って合格だ。
次に実技試験…この試験は通常、1人1人が個別に専用の部屋へ案内され、その中で教官に見てもらうのだが…今回、自分とインは双子のペアで特別に2人だ。
10番の部屋へ入ってみれば…待ってる教官は…
【ど、どうも…ワシが今回の教官です…】
「こ、こんにちわ…」
「こんちわ。」
自分達の教官は…かなり歳を喰った赤皮族のおじいさんであった。
少しふらついているが大丈夫だろうか?
それより、実技試験の部屋は横に長く、魔法の分野において使う道具が沢山置かれている。
【えぇーっと…まず…コルくんから…】
「コォです…それはコォって読むんです…おじいさん…」
【そうだったか…すまんのう…】
「(本当に大丈夫かなこの人…)」
まずは基本的な攻撃魔法の火球のテストから。
最初に火球の形を見るために、右手の上へ作り出す…それをちゃんとした形に維持できるか、細かく審査されるのだ…自分はちょっと自信がない。
「火球!!ど、どうですか?」
【形は…申し分ないねぇ…だけど…ちょっと力が分散しているね。】
とりあえず、形は合格点…次に奥の的へ正確に当てる。
奥の的は10メートルほど離れているが…問題ない!あの程度の距離なら!!
「火球!!ヤァア!!」
【速度、命中精度共に良好…着弾時の威力…ムラが有り…】
「やっぱり…まだまだかなぁ。」
【次の攻撃魔法を。】
「はい!次は…(よし…新しいヤツ…)スネレイズです。」
「(昨日、教えてもらったヤツだ)」
昨日、ガシラドウに教えてもらった魔法の1つ、スネレイズを使う事に。
スネレイズは一筋の光のようなレーザービームを放つ光魔法である…自分には相性がいいとも言われた。
【光魔法だね…珍しいねぇ…じゃ、あの的を狙って。】
「えぇ!?あ、アレですか!?」
【真ん中じゃなくても良いからね。】
教官の指す的は直径10センチにも満たない丸い的…距離は先ほどの的と同じく約10メートル程だ。
徹夜で練習したが…う、上手く行くだろうか…ええい!やるしかない!
指先へフラッシュルのように魔力を集中させて…
「スネレイズ!!」
「おお…当たった。」
【……うん、良好良好。頼もしいねぇ。】
眩しい一筋の光は残光のように飛び、的の中央より少し右の方へ当たった。
このくらいの距離なら良いそうだ…良かった…外さなくて…
「次はマジカウェポン甲です。」
【バーヤですか?】
「はい。」
【だったら…専用の的を出そうね。】
おじいさんは奥の方から…奇妙な…黄緑色のプルプルしたゼリーのような…形と言い、大きさと言い丸太のような…奇妙な物体が乗ったワゴンを持って来た。
これはマジカウェポン系専用の的で斬っても打ってもダメージを受けないプルプルな物らしい…原材料は教えてくれなかった。
「それでは早速……マジカ・バーヤ!!」
2人から遠く離れた場所で的?を魔法の剣で斬り裂く!!
ズガァア!!と斬り裂いたが…本当に的は無傷で小刻みにブルブル震えているだけであった…どうやら衝撃を受け流すらしい。
ちなみに結果は合格だ。
その後も自分はキム・ムーア、フラッシュル、回復の試験を行った…詳しい結果はまだ教えてくれない。
【次は…アインちゃんだね。】
「インだよおじいちゃん…」
インの試験の火球と雹球は形、飛び方、威力共に申し分ないと言われた。
次に…雷球…ズラッソも使っていた聖職者御用達の不殺魔法。
(威力を誤れば普通に死ぬらしいけど)
【雷球は維持が難しいからすぐ投げてね。】
「はーい…はぁあ…雷球!!デリャァ!!」
「!?」
雷球はズビュン!!と飛んで行き、的へぶつかると凄い勢いでバヂィイン!!と弾ける…か、完全に殺す気だ…
【うん、若干のムラが見られるけど強いね。良好…】
「やったー!」
「(良いのか…それで…)」
次はタニポ系、痛んだ植物を使う。
内容は簡単で花びらを捥がれた花と無傷の花を用意し、傷を押し付けると言うもの。
これもインは簡単にやってのけた…我ながら恐ろしい妹である。
次はマジカウェポン乙のテスト…的は俺が使ったのと同じ、ゼリー。
「マジカ…モーニス!!デリャァアア!!」
ガッシャァァアン!!
「【!?】」
「あ…ご、ごめんなさい…」
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おじいさんと2人で慌てて破られた窓から下を見たが…幸いにも路地裏だったので誰も居らず、窓の破片が突き刺さった的が横たわっているだけ…
【威力とかは良いけどね…誰かを巻き込む可能性が高いね…強いのを自覚してね。】
「はい…ごめんなさい…」
「すいません本当に…あの…窓代は…」
【あぁ…一応、大丈夫かもね。よくあるから。】
「そうですか…(よくあるのか…)」
そうだ、ただ強けりゃ良いってものではない。
真に強い者は自分の力の強大さを自覚しており、制御できる者のみだ…強い事を自覚しない者に強力な力を持つ資格など無い。
職員と一緒に割れた窓を片付け…試験を再開した。
「次は…バレチトン!」
【バレチトンは一点を集中させるように打ってね。】
「(う…ば、バレチトンって…)」
バレチトンは確か、山で対峙した聖職者のコリンパイと言う人が使っていた技だ…雷球とは違い、電気をそのまま放つような魔法。
「バレチトン!!」
【……持続時間、良好。狙い、良。威力、良好。】
「ふぅ…こんなもんよ。」
さて…次にインが使う魔法と言えば影魔法だが…影魔法はパスされ、実技試験は幕を閉じた。
影魔法は免許に入っていない様である…珍しく、危険な物だからだろう。
とにかく…実技試験も終了と来たら…お待ちかねの…
【お2人さん、合格。中級魔法免許の発行権だ。持って行け。】
「やったぁ!!ありがとうございます!」
「わーい!」
【それでは、安全で正しい魔法生活を送る様に。】
自分達は受け取った中級魔法免許の発行権を持ってカウンターに行くと、直ぐに免許を発行してもらった。
美しい青入りのカード…凄い!これが中級魔法免許!
大人って感じがする…これが有れば一般的な魔法関連の仕事が出来る様になる!…特に予定はないけど。
ちなみに手帳にも印を押してもらえる…この印を見せれば免許が無くとも、提示する事で証明できるし、再発行時に一から試験を受けなくて済む。
「かっけー…これが…魔法免許…」
「手帳に挟んどこ。」
さて…免許の取得も済んだので次は父さんの貸金庫へ行くとしよう。
貸金庫はモース銀行にて職員へ昨日、ガシラドウから受け取ったカードを渡せば行けるらしい。
銀行なんて行った事ないけど…まぁ何とかなるだろう。
俺達はモース銀行へ向かった。
「此処が銀行…なんか…紙の匂いがする。」
「良い匂い…と言えないが、悪くはないな。」
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カウンターも沢山ある…殆ど、職員が居ないけど。
「あの、すいません。これを。」
【はい?あぁ…昨日、ご連絡いただいた…おい!34番!】
【何か用か?】
【昨日の件の人達だ。案内してあげて。】
【ああ…タブルス殿のご子息と令嬢さん…】
自分達は青肌族の魔族の銀行員に案内され、エレベーターに乗り込むと、ズルズルと下へ降りて行った。
この人は父さんの金庫専属のスタッフらしい…という事は…かなりの年齢なハズ。
しかし、この場で歳の話はちょいと野暮って物だ、黙っておこう。
「パパの事知ってるの?」
【ええ。彼はお金は預けませんでしたが、物は沢山預ける方ですね。】
「(父さん…)あの…利用料金って…」
【ご安心ください。数十年先の分まで頂いております。】
「そうなんですね…」
「良かったぁ…」
しばらく地下まで降りて行き、暗い地下牢をしばらく歩いて行くと…やがて大きな石製の扉の前までやって来た。
番号はK1534…特に覚える必要はない?
次に職員が特殊な鍵を穴に入れ、ガチャガチャと細かく傾けると…ガチッ…と鳴り、重そうな扉がズゴゴ…と開き始めた。
金庫と言う割には石製…貸石庫?
【どうぞ、お入りください。】
「……ごほ!か、かび臭い…」
【アンティーク品の匂いですね。彼はそう言うのが好きでしたから。】
「なーんか…古い物置って感じ。」
石製の大きな部屋の中には大量の…古臭い家具…所謂、アンティーク品が大量にあった…昔に父さんが集めて家に飾ろうとしていたらしい。
が…あの家じゃ無理だろう…ここに住んだ方が理想的である。
そんな家具の他にも大量の古そうな巻物、何かの賞の数々…
古い写真もある…写っているのは昔の父さん?凄く若々しくて…俺に…あんまり似て無いな、父さんの方が重みがある。
「それにしても凄いな…父さんが最後に来たのは何時ですか?」
【そうですね…5年ほど前に来て以来…お会いしていませんね…】
「5年前…その時は一体何を?」
【私は見ていませんが、おそらく何かを置いて行ったのでしょう。】
何かをかぁ…もしかしたら要らなくなった本とかかな?
しばらく職員にも手伝ってもらい、3人で整理していたその時…
「あ、なにこれ…」
「イン?どうかしたか?」
「鍵のペンダント見つけた。」
インが見つけたのはやけに目新しい箱に入った純金の鍵が付いたペンダント…鍵には精巧な模様が彫られており、黒い宝石も付いていた。
これは一体…と思ったが…
【これは日記の鍵かもしれませんね。】
「日記の鍵ですか?」
「きっとそうかも!パパは日記を見られたく無くて鍵を此処に隠したのかも!」
「えぇ…父さんって日記付けるタイプだったんだ…意外…」
どうやら派手具合から見て、日記の鍵だと断定された。
インは持って帰ろうよと言ったが…父さんが見たら怒るに違いない…だが…気になる……そうだ、父さんを救うんだ、日記を見たってバチは当たらない。
そう自分に言い聞かせ、整理がてら、日記も探してみたが…見つけたのは鍵が付いてない手記っぽい物のみ…
「どれどれ…おっとこれは……読めないな…」
【古代語かもしれません…こ、これは!!】
「どうかしたんですか!!」
【凄く下手くそなだけですね…よく見たら現代語ですよ。】
「えぇ…私の字が下手なところってパパからの遺伝だったんだ…」
結局、めぼしい物は見つからず、インが鍵のペンダントを首へぶら下げただけで終わった。
装備の新調は明日するとして…そろそろ帰るか…イワが可哀想だ。
明日は一緒に連れて行こう。
つづく
・・・
行方不明になった患者の捜索届
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『発見次第、速やかにご連絡を。ビーミス城塞内病院一同』
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