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第1部【明暗の大魔導師】編
第33話 冒険者たちを海が呼ぶ
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俺の名前はコォ、インとイワと共に街で買い物をする冒険者だ。
明後日に船へ乗り、コブサラ国を目指した船旅に出る…掛かる日数は約10日。
そして明日にはこの街を離れて港町まで行くので今日でモース城下町最後の日になる…最後ぐらい、ガシラドウへ挨拶でもしようかと思ったが…忙しいらしい。
だが、滞在費と装備の新調費用は負担してくれる…本当に良い人だ。
(腕の方も殆ど治っている)
「かなり痛んでいますね…お兄さん、何か硬い物を殴ったでしょう。」
「は、はい…(魔導人とかね)」
今は武器屋にて各々の武器を見てもらっている…どうやら俺のメイスがかなりヤバくなってきているらしい…そりゃ、この短期間で色々殴ったから当たり前だ。
ちょっと上部のパーツがカチャカチャしているのでヤバいとも言われた。
「買い直しとかの方が…良いですかね?」
「そうだねぇ…これ、見たところ安物だし…買った方が安いね。」
「やっぱり…」
「どうする?ウチで買うなら無料で引き取るけど。」
だが…自分は断った…別に武器を買わないワケでは無いが、このメイスは初めて買ったメイスなのだ…厳密に言えば父さんの金を使ったので父さんの物だ。
なんか、愛着が沸いてしまっている…ここまで来てくれたんだ…
それを すてるなんて とんでもない!
「なんか…おすすめの武器とかありませんかね?」
「今人気なのは名前を彫ったナイフだよ、恋人とかのね。」
「いえ…自分は恋人も何もいませんので…」
「コォって一生、結婚でき無さそうだよね。」
イワと共に店内を見て回ってるインに失礼な事を言われたが…気にしない。
別に結婚しなくても…良いじゃないか…うん。
それはそうと、自分も店内を見ていると…とても不思議な物体に目が行った。
鎧の手甲のような見た目をしているが…とても重そうで魔導人みたいな感じ。
「あの…これって?」
「それかい?それはサーバ国の最新鋭の武器、スチームフィストさ。」
「スチームフィスト…」
「蒸気の力を使った機械の武器さ。手にはめると腕力を何倍にも増幅できるんだ。」
「かっこいいなぁ…けど…(高い…)」
スチームフィストの値段は3万ドル…とても払えないし、奢ってもらえない様な値段。
自分には夢のまた夢だ。
しかし、サーバ国の武器と言うのは最近、かなりの勢いで発展してきているらしい。
片手で持てるような拳銃などだ…弾丸を消費するので自分には向かない。
俺に向いてるのは…やっぱり近接武器かな…
「やっぱりメイスで良いかな…このメイスください。」
「あいよ。お金は紹介通りに大魔導師会へ付けとくよ。」
「ありがとうございます。」
俺は使っていたのと同じ、新しいメイスを購入(に入るのかな?)した。
イン達も武器は今のままで良いと言っているので、メイスを買ったら退店して…銀行に行くと古いメイスを保管しておくように頼んでから防具屋へ向かった。
【お客さん、頭…守らないんかい?】
「はい…これ以上、重くなると困るので。」
【まぁ俺の仕事は防具を売るだけだ…好きにしろ。】
「させてもらいます。」
やっぱり…イワみたいに自分達も頭を守った方が良いのだろうか。
しかし…典型的主人公の決まりで頭を隠してはいけない…なのでまぁ…そんなわけだ。
自分達の鎧は特に破損している事も無かったので、イワの鎧だけを購入してその場を後にした…鉄面も着けているせいか…イワが怖い。
重装歩兵って感じだ。
「コォ…いよいよ明日は…港町だね…」
「そうだな。」
【港町ってなに?】
「港がある街の事よ。」
【港ってなに?】
「………えーっと…船が…あるところ?」
港町に行ったこと無い自分達に港の事を説明するのは難しいだろう。
本で見た限りだと、海に面した施設で荷物の出荷や仕入れなどをするらしい…が、見てからでないと分からない…もし時間が余っている様なら砂浜にも行ってみるか。
海の水が本当にしょっぱいのか気になる。
ところで…ザリィ達は自分達が起きる前に行ってしまった様だ…また会う事になるのだろうか…もし外国で会ったら笑ってしまうかもしれない。
・・・
「で…街を出るワケだが…大丈夫そうか?」
「救急用品も日用品も食料も全部持ったよ。」
【特に不備はない。】
「じゃ、いざ出発…目的地は港町シャベゥだ。」
俺達は意気揚々と港町シャベゥを目指して歩き出した…いよいよ、このモース地方ともお別れだ…ロクな事が無かったな…ここは。
いやいや…前向きに行こうじゃないか…イワにも出会えたんだ、良い事も沢山あった。
「にしても外国かぁ…まさか行くことになるとは思わなかったな…」
「私だって…ずっと山の中で暮らすのかと思ってたもん。」
【ウチも。2人と一緒に居れてうれしい。】
「イワ…すまないな本当に、巻き込んでしまって。」
一応、謝っているが…本音を言うと自分もイワと居れて嬉しい。
もちろんインも…まぁ家族だしね。
救い出せて本当に良かった。
「んぅ…」
「なんだ、また掻いてるのか?悪化するから止めろと言っただろ。」
「ごめんごめん…軟膏を塗ったら逆に落ち着かなくて…」
【インの尻、薬の匂いがする。】
「イワ、あんまり人の匂いは嗅がない方がいいぞ。」
話を戻すが、港町までは半日かければ歩いて行けると言われた…飽くまでも半日間、一回も休まずに一定のペースで歩いた時の目安だが。
普通はもっと掛かる、きっと着くころには日が暮れる寸前くらいだろう。
早朝に出発したので充分に時間はあるが遅くともそれくらいには着くようにしなくては…一応、港町の宿代も出してもらえるようだ。
感謝しかない。
・・・
「なんやかんやあって港町に着いたぞ。」
「わー…一瞬みたい…」
【でも…今日は1日中歩いてたよ。】
「そんな日もあるさ。早く教えてもらった宿に行こうぜ。」
自分達は何とか、日が暮れる前に港町シャベゥへ到着した。
この辺りは独特な匂いがして、色々な…大きな船が海の上にジャブジャブと浮いている…なんと不思議な光景だろうか…とにかく、今日は暗くなってきたので宿へ行こう。
それから港町をちょっと見てから休むか。
「あの、コォですけど。」
「え?あぁ…大魔導師会の…部屋は2回の一番奥だよ。これ鍵。」
「はい、ありがとうございます。」
「大魔導師会…?ちょっと待ってくれ。」
「はい?」
受付から鍵を受け取って3人で部屋へ行こうとしたその時、同じくロビーに居た男に声を掛けられ、足を止めた。
男は…なんともボロボロの上着を羽織った初老の男。
ちょっと酒臭い。
「お前達がコブサラ国へ行く冒険者か?」
「はい…そうですけど、どちら様ですか?」
「レガンだ…明日、お前たちを乗せる船の船長だ。」
【せんちょー?】
彼は明日からコブサラ国へ乗せて行ってくれる船の船長…
明日の出航予定時間などを知らせるためにわざわざ此処で待っていてくれた様だ。
そうとなれば安心…自分達も名乗っておいた。
「貴方がですね。どうも、よろしくお願いたします。」
「しっかりと送り届けるから期待してくれよ。そんで出航時間だが…明日の午前10時キッカリに出発する…もし来ない様だったら8時くらいに迎えを向かわせるぞ。」
「一応、早起きはしておきます。」
「船長って事は船で一番偉いの?」
「ああ、もちろん…と言っても俺の他にクルーは1体のみだが…」
「(1体?)」
レガン船長はそれを伝えると、詳しい事は明日に説明すると言い残し、忙しそうに外へ行ってしまった…きっと船長と言うからにはかなり多忙なのだろう。
自分達も部屋に行き、荷物を置くと日が暮れた港町を歩いて回った。
まず最初に驚いたのが海だ…変な匂いを漂わせ、ざぶざぶと水面を揺らして佇む圧倒的広大さの水たまりは圧巻だ…自分が知っている湖よりも何倍も…大きい。
「何も見えないね…あれが地平線ってこと?」
「まぁ…そうかも。」
【ちへいせん?】
「奥に何も無くて、平らだろ?そう言うのを地平線って言うんだ。」
【へぇー…地平線。】
それにしても…港町って言うのは変な匂いがするんだなぁ…どうやら潮の香りらしいけど…変な感じ。
(個人差もあるが)良い匂いとは言えないが、悪いとも言えない。
服に付いたりしないよね?たまに洗濯してるとは言え、元からお世辞にも良い匂いとは言えない、これ以上変な匂いが染みついたりしたら困る。
「ところでさ、コブサラ国ってどんなところなの?」
「あぁ…なんか、湿ってるらしいよ。」
【ジメジメ…雨季みたいに?】
「そうだ、蒸し暑いと聞いた。(雨季は知ってんのかい)」
ガシラドウからサラッとしか聞いていないが、コブサラ国は年中ジメジメしていて蒸し暑く、湿原や熱帯雨林があるらしい。
なので通気性が良く、防水性のある上着を買っておいて良かった。
(イワの分は…あっちに着いたら買おう)
「さてと…宿に戻って飯でも食うか。」
「わーい!タダ飯。」
【ご飯ってそんなに楽しい?】
食事を摂らないタイプの魔族には分からない嬉しさ…食事は楽しい。
特に自分は好物より新しい物を食べるのにワクワクするタイプだ、どんな食感か味か…とても楽しみじゃないか…マズかったら嫌だけど。
ちなみに宿の食事代は宿代に入っているのでタダ飯…言い方は悪いな。
だが…どうして大魔導師会の人達は…こうも、自分達に優しくしてくれるのだろうか…俺達が父さんの子供だからか?
やっぱり…そう言うのって大きいのかな?
そんな事を考えながら一通り、街を見終わった自分達は宿に戻った。
「……あの、これって何ですか?」
「見て分からないかい?シーフードだよ。」
「…生ですか?」
「生だよ。」
始めてみたシーフードと言う海の幸は…グロテスクで奇妙な物であった。
なんか、デカいザリガニみたいな生物に生の貝と魚の切り身…匂いは…無臭だ。
一応普通の料理も出て来た…海老と根菜のスープ、これは美味しい。
「あぁ…イワ、アンタに一口あげる!お先にどうぞ!」
【ウンチしたくないから要らない。】
「ッチ…毒見は失敗か…」
「イン、イワを毒見に使わないで…】
インは俺に「やれ」というような視線を向ける…まさか…俺に犠牲なれと言うのか!実の兄に向かって!!な、なんという妹だ…将来、ロクな奴にならんぞ…
冗談は置いといて…先に自分が頂くことに…まずはこの貝から。
群体牡蠣という名の貝らしい、生で頂くのが好ましいとのこと。
「んぐ……」
「ひぇ…ホントに食べた…」
味は…生臭いの一言に限る…海の匂いが口の中にドロリと広がる…何というか大量の痰が口内に広がっているみたいだ…
無理やりゴクンと飲み込んだ…ドロドロが食道を通り、胃へ落ちるのを感じる。
なんと不気味な食べ物だろうか。
「なんか…かたつむり。」
「かたつむり?」
【マイマイ?】
「きっとカタツムリを生で食べるとしたらこんな感じかなって…」
「どんな感想なの…」
失礼かもしれないが、そう言った感想しか出てこない食べ物だ。
これを最初に食べようとした人間の顔を見てみたい…かなり飢えていたのだろう。
結局、生ものに関しては自分が1人で片付けることになり、インはスープを啜るのみであった。
・・・
「くっそぉ…」
『ねぇコォ…まだ?』
翌朝、自分はお腹を激しく壊した…激しい腹痛と下痢…そして頭痛。
なんだこれは…ま、まさか昨日の生モノが当たってしまったのか…と、とにかく…今は出せるだけ出さなくては…船に乗るまでは大丈夫なようにしないと…
「で、出たぞ…」
「もう…大丈夫なの?今日だよ、出航は。」
「平気平気…なんとか我慢するから…」
腹痛が凄いので、受付に相談すると薬が貰えた…気休め程度にしかならない様だが、痛みと下痢は多少引くとのこと…用意してあるってことは、よく起こるのだろうか…
あとこの症状は放置してれば治る様だ…大体3日ぐらい。
3日なんてすぐに過ぎ去るだろう…どうせ、船に乗っている間はやる事も無い。
「7時か…そろそろ行くぞ。」
「はーい。」【分かった。】
集合は8時だが、砂浜へ寄って行きたい。
自分はともかくインとイワは元気なので気になると言うのなら連れて行ってやろう………やばい、何か考えないと意識が腹痛に向いて痛くなる!
自分達はすぐに宿を後にして、近くの砂浜へ向かった。
「す、すごい…本当に全部砂なんだな…」
【足が沈む…】
昨日は暗くて海はあまりよく見えなかったが、こんだけ明るいと地平線もくっきり見えて美しい…そして変な匂いが一層と鼻を突く。
「……しょっぱい…しょっぱいよコォ!」
「あんまり飲むなよ、腹を壊すと後がキツイぞ。」
【あんまり美味しくない…】
イワは海水を美味しいものとでも思っていたのだろうか。
それはともかく、自分もちょっと啜ってみたが…冷たく、しょっぱいと言うより、何か他の味もするが本当にしょっぱい。
確か塩ってのは海水を蒸発させて作るみたいなことを聞いた事がある。
全ての生物は海から来たっていう説があるけど、その説が正しいとしたらこれが生命の味なのだろうか?自分達の何億年も先の先祖が浸かっていた水…不思議だ。
ところで…とんでもない事を思い出してしまった…実は船が止まっている係留所の場所を聞いていない…
此処は港町なので船が多い…どれが俺達の乗る船か分からないが…まぁ、何とかなるだろう!レガン船長を探せば良んだ。
自分達は砂浜で少し過ごすと、船を探して係留所へ向かった。
つづく
・・・
キャラクタープロフィール
名前:ガシラドウ(女) 身長:208㎝ 瞳の色:不明 髪色:銀色
誕生日:非公開 星座:ホウマ座 血液型:0型(ゼロ) 人種:サーバ人
好物:コットンキャンディ 趣味:天体観測 職業:天の大魔導師(現)
『ガシラドウは天の大魔導師である。彼女はサーバ国の貴族の家庭で生まれ、類稀なる才能を持って生まれた。2歳の時には5種類の魔法言語を解読し、飛び級を重ねて11歳でサーバ国立大学院を卒業。その後、全国魔法委員会の役員になるも、3年で退職…天体観測に興味があった彼女は前代の天の大魔導師の推薦を受けて大魔導師会のテストを受け、合格。天の大魔導師へと就任した。』
『引用:大魔導師会員管理帳。』
明後日に船へ乗り、コブサラ国を目指した船旅に出る…掛かる日数は約10日。
そして明日にはこの街を離れて港町まで行くので今日でモース城下町最後の日になる…最後ぐらい、ガシラドウへ挨拶でもしようかと思ったが…忙しいらしい。
だが、滞在費と装備の新調費用は負担してくれる…本当に良い人だ。
(腕の方も殆ど治っている)
「かなり痛んでいますね…お兄さん、何か硬い物を殴ったでしょう。」
「は、はい…(魔導人とかね)」
今は武器屋にて各々の武器を見てもらっている…どうやら俺のメイスがかなりヤバくなってきているらしい…そりゃ、この短期間で色々殴ったから当たり前だ。
ちょっと上部のパーツがカチャカチャしているのでヤバいとも言われた。
「買い直しとかの方が…良いですかね?」
「そうだねぇ…これ、見たところ安物だし…買った方が安いね。」
「やっぱり…」
「どうする?ウチで買うなら無料で引き取るけど。」
だが…自分は断った…別に武器を買わないワケでは無いが、このメイスは初めて買ったメイスなのだ…厳密に言えば父さんの金を使ったので父さんの物だ。
なんか、愛着が沸いてしまっている…ここまで来てくれたんだ…
それを すてるなんて とんでもない!
「なんか…おすすめの武器とかありませんかね?」
「今人気なのは名前を彫ったナイフだよ、恋人とかのね。」
「いえ…自分は恋人も何もいませんので…」
「コォって一生、結婚でき無さそうだよね。」
イワと共に店内を見て回ってるインに失礼な事を言われたが…気にしない。
別に結婚しなくても…良いじゃないか…うん。
それはそうと、自分も店内を見ていると…とても不思議な物体に目が行った。
鎧の手甲のような見た目をしているが…とても重そうで魔導人みたいな感じ。
「あの…これって?」
「それかい?それはサーバ国の最新鋭の武器、スチームフィストさ。」
「スチームフィスト…」
「蒸気の力を使った機械の武器さ。手にはめると腕力を何倍にも増幅できるんだ。」
「かっこいいなぁ…けど…(高い…)」
スチームフィストの値段は3万ドル…とても払えないし、奢ってもらえない様な値段。
自分には夢のまた夢だ。
しかし、サーバ国の武器と言うのは最近、かなりの勢いで発展してきているらしい。
片手で持てるような拳銃などだ…弾丸を消費するので自分には向かない。
俺に向いてるのは…やっぱり近接武器かな…
「やっぱりメイスで良いかな…このメイスください。」
「あいよ。お金は紹介通りに大魔導師会へ付けとくよ。」
「ありがとうございます。」
俺は使っていたのと同じ、新しいメイスを購入(に入るのかな?)した。
イン達も武器は今のままで良いと言っているので、メイスを買ったら退店して…銀行に行くと古いメイスを保管しておくように頼んでから防具屋へ向かった。
【お客さん、頭…守らないんかい?】
「はい…これ以上、重くなると困るので。」
【まぁ俺の仕事は防具を売るだけだ…好きにしろ。】
「させてもらいます。」
やっぱり…イワみたいに自分達も頭を守った方が良いのだろうか。
しかし…典型的主人公の決まりで頭を隠してはいけない…なのでまぁ…そんなわけだ。
自分達の鎧は特に破損している事も無かったので、イワの鎧だけを購入してその場を後にした…鉄面も着けているせいか…イワが怖い。
重装歩兵って感じだ。
「コォ…いよいよ明日は…港町だね…」
「そうだな。」
【港町ってなに?】
「港がある街の事よ。」
【港ってなに?】
「………えーっと…船が…あるところ?」
港町に行ったこと無い自分達に港の事を説明するのは難しいだろう。
本で見た限りだと、海に面した施設で荷物の出荷や仕入れなどをするらしい…が、見てからでないと分からない…もし時間が余っている様なら砂浜にも行ってみるか。
海の水が本当にしょっぱいのか気になる。
ところで…ザリィ達は自分達が起きる前に行ってしまった様だ…また会う事になるのだろうか…もし外国で会ったら笑ってしまうかもしれない。
・・・
「で…街を出るワケだが…大丈夫そうか?」
「救急用品も日用品も食料も全部持ったよ。」
【特に不備はない。】
「じゃ、いざ出発…目的地は港町シャベゥだ。」
俺達は意気揚々と港町シャベゥを目指して歩き出した…いよいよ、このモース地方ともお別れだ…ロクな事が無かったな…ここは。
いやいや…前向きに行こうじゃないか…イワにも出会えたんだ、良い事も沢山あった。
「にしても外国かぁ…まさか行くことになるとは思わなかったな…」
「私だって…ずっと山の中で暮らすのかと思ってたもん。」
【ウチも。2人と一緒に居れてうれしい。】
「イワ…すまないな本当に、巻き込んでしまって。」
一応、謝っているが…本音を言うと自分もイワと居れて嬉しい。
もちろんインも…まぁ家族だしね。
救い出せて本当に良かった。
「んぅ…」
「なんだ、また掻いてるのか?悪化するから止めろと言っただろ。」
「ごめんごめん…軟膏を塗ったら逆に落ち着かなくて…」
【インの尻、薬の匂いがする。】
「イワ、あんまり人の匂いは嗅がない方がいいぞ。」
話を戻すが、港町までは半日かければ歩いて行けると言われた…飽くまでも半日間、一回も休まずに一定のペースで歩いた時の目安だが。
普通はもっと掛かる、きっと着くころには日が暮れる寸前くらいだろう。
早朝に出発したので充分に時間はあるが遅くともそれくらいには着くようにしなくては…一応、港町の宿代も出してもらえるようだ。
感謝しかない。
・・・
「なんやかんやあって港町に着いたぞ。」
「わー…一瞬みたい…」
【でも…今日は1日中歩いてたよ。】
「そんな日もあるさ。早く教えてもらった宿に行こうぜ。」
自分達は何とか、日が暮れる前に港町シャベゥへ到着した。
この辺りは独特な匂いがして、色々な…大きな船が海の上にジャブジャブと浮いている…なんと不思議な光景だろうか…とにかく、今日は暗くなってきたので宿へ行こう。
それから港町をちょっと見てから休むか。
「あの、コォですけど。」
「え?あぁ…大魔導師会の…部屋は2回の一番奥だよ。これ鍵。」
「はい、ありがとうございます。」
「大魔導師会…?ちょっと待ってくれ。」
「はい?」
受付から鍵を受け取って3人で部屋へ行こうとしたその時、同じくロビーに居た男に声を掛けられ、足を止めた。
男は…なんともボロボロの上着を羽織った初老の男。
ちょっと酒臭い。
「お前達がコブサラ国へ行く冒険者か?」
「はい…そうですけど、どちら様ですか?」
「レガンだ…明日、お前たちを乗せる船の船長だ。」
【せんちょー?】
彼は明日からコブサラ国へ乗せて行ってくれる船の船長…
明日の出航予定時間などを知らせるためにわざわざ此処で待っていてくれた様だ。
そうとなれば安心…自分達も名乗っておいた。
「貴方がですね。どうも、よろしくお願いたします。」
「しっかりと送り届けるから期待してくれよ。そんで出航時間だが…明日の午前10時キッカリに出発する…もし来ない様だったら8時くらいに迎えを向かわせるぞ。」
「一応、早起きはしておきます。」
「船長って事は船で一番偉いの?」
「ああ、もちろん…と言っても俺の他にクルーは1体のみだが…」
「(1体?)」
レガン船長はそれを伝えると、詳しい事は明日に説明すると言い残し、忙しそうに外へ行ってしまった…きっと船長と言うからにはかなり多忙なのだろう。
自分達も部屋に行き、荷物を置くと日が暮れた港町を歩いて回った。
まず最初に驚いたのが海だ…変な匂いを漂わせ、ざぶざぶと水面を揺らして佇む圧倒的広大さの水たまりは圧巻だ…自分が知っている湖よりも何倍も…大きい。
「何も見えないね…あれが地平線ってこと?」
「まぁ…そうかも。」
【ちへいせん?】
「奥に何も無くて、平らだろ?そう言うのを地平線って言うんだ。」
【へぇー…地平線。】
それにしても…港町って言うのは変な匂いがするんだなぁ…どうやら潮の香りらしいけど…変な感じ。
(個人差もあるが)良い匂いとは言えないが、悪いとも言えない。
服に付いたりしないよね?たまに洗濯してるとは言え、元からお世辞にも良い匂いとは言えない、これ以上変な匂いが染みついたりしたら困る。
「ところでさ、コブサラ国ってどんなところなの?」
「あぁ…なんか、湿ってるらしいよ。」
【ジメジメ…雨季みたいに?】
「そうだ、蒸し暑いと聞いた。(雨季は知ってんのかい)」
ガシラドウからサラッとしか聞いていないが、コブサラ国は年中ジメジメしていて蒸し暑く、湿原や熱帯雨林があるらしい。
なので通気性が良く、防水性のある上着を買っておいて良かった。
(イワの分は…あっちに着いたら買おう)
「さてと…宿に戻って飯でも食うか。」
「わーい!タダ飯。」
【ご飯ってそんなに楽しい?】
食事を摂らないタイプの魔族には分からない嬉しさ…食事は楽しい。
特に自分は好物より新しい物を食べるのにワクワクするタイプだ、どんな食感か味か…とても楽しみじゃないか…マズかったら嫌だけど。
ちなみに宿の食事代は宿代に入っているのでタダ飯…言い方は悪いな。
だが…どうして大魔導師会の人達は…こうも、自分達に優しくしてくれるのだろうか…俺達が父さんの子供だからか?
やっぱり…そう言うのって大きいのかな?
そんな事を考えながら一通り、街を見終わった自分達は宿に戻った。
「……あの、これって何ですか?」
「見て分からないかい?シーフードだよ。」
「…生ですか?」
「生だよ。」
始めてみたシーフードと言う海の幸は…グロテスクで奇妙な物であった。
なんか、デカいザリガニみたいな生物に生の貝と魚の切り身…匂いは…無臭だ。
一応普通の料理も出て来た…海老と根菜のスープ、これは美味しい。
「あぁ…イワ、アンタに一口あげる!お先にどうぞ!」
【ウンチしたくないから要らない。】
「ッチ…毒見は失敗か…」
「イン、イワを毒見に使わないで…】
インは俺に「やれ」というような視線を向ける…まさか…俺に犠牲なれと言うのか!実の兄に向かって!!な、なんという妹だ…将来、ロクな奴にならんぞ…
冗談は置いといて…先に自分が頂くことに…まずはこの貝から。
群体牡蠣という名の貝らしい、生で頂くのが好ましいとのこと。
「んぐ……」
「ひぇ…ホントに食べた…」
味は…生臭いの一言に限る…海の匂いが口の中にドロリと広がる…何というか大量の痰が口内に広がっているみたいだ…
無理やりゴクンと飲み込んだ…ドロドロが食道を通り、胃へ落ちるのを感じる。
なんと不気味な食べ物だろうか。
「なんか…かたつむり。」
「かたつむり?」
【マイマイ?】
「きっとカタツムリを生で食べるとしたらこんな感じかなって…」
「どんな感想なの…」
失礼かもしれないが、そう言った感想しか出てこない食べ物だ。
これを最初に食べようとした人間の顔を見てみたい…かなり飢えていたのだろう。
結局、生ものに関しては自分が1人で片付けることになり、インはスープを啜るのみであった。
・・・
「くっそぉ…」
『ねぇコォ…まだ?』
翌朝、自分はお腹を激しく壊した…激しい腹痛と下痢…そして頭痛。
なんだこれは…ま、まさか昨日の生モノが当たってしまったのか…と、とにかく…今は出せるだけ出さなくては…船に乗るまでは大丈夫なようにしないと…
「で、出たぞ…」
「もう…大丈夫なの?今日だよ、出航は。」
「平気平気…なんとか我慢するから…」
腹痛が凄いので、受付に相談すると薬が貰えた…気休め程度にしかならない様だが、痛みと下痢は多少引くとのこと…用意してあるってことは、よく起こるのだろうか…
あとこの症状は放置してれば治る様だ…大体3日ぐらい。
3日なんてすぐに過ぎ去るだろう…どうせ、船に乗っている間はやる事も無い。
「7時か…そろそろ行くぞ。」
「はーい。」【分かった。】
集合は8時だが、砂浜へ寄って行きたい。
自分はともかくインとイワは元気なので気になると言うのなら連れて行ってやろう………やばい、何か考えないと意識が腹痛に向いて痛くなる!
自分達はすぐに宿を後にして、近くの砂浜へ向かった。
「す、すごい…本当に全部砂なんだな…」
【足が沈む…】
昨日は暗くて海はあまりよく見えなかったが、こんだけ明るいと地平線もくっきり見えて美しい…そして変な匂いが一層と鼻を突く。
「……しょっぱい…しょっぱいよコォ!」
「あんまり飲むなよ、腹を壊すと後がキツイぞ。」
【あんまり美味しくない…】
イワは海水を美味しいものとでも思っていたのだろうか。
それはともかく、自分もちょっと啜ってみたが…冷たく、しょっぱいと言うより、何か他の味もするが本当にしょっぱい。
確か塩ってのは海水を蒸発させて作るみたいなことを聞いた事がある。
全ての生物は海から来たっていう説があるけど、その説が正しいとしたらこれが生命の味なのだろうか?自分達の何億年も先の先祖が浸かっていた水…不思議だ。
ところで…とんでもない事を思い出してしまった…実は船が止まっている係留所の場所を聞いていない…
此処は港町なので船が多い…どれが俺達の乗る船か分からないが…まぁ、何とかなるだろう!レガン船長を探せば良んだ。
自分達は砂浜で少し過ごすと、船を探して係留所へ向かった。
つづく
・・・
キャラクタープロフィール
名前:ガシラドウ(女) 身長:208㎝ 瞳の色:不明 髪色:銀色
誕生日:非公開 星座:ホウマ座 血液型:0型(ゼロ) 人種:サーバ人
好物:コットンキャンディ 趣味:天体観測 職業:天の大魔導師(現)
『ガシラドウは天の大魔導師である。彼女はサーバ国の貴族の家庭で生まれ、類稀なる才能を持って生まれた。2歳の時には5種類の魔法言語を解読し、飛び級を重ねて11歳でサーバ国立大学院を卒業。その後、全国魔法委員会の役員になるも、3年で退職…天体観測に興味があった彼女は前代の天の大魔導師の推薦を受けて大魔導師会のテストを受け、合格。天の大魔導師へと就任した。』
『引用:大魔導師会員管理帳。』
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