【R18作品】コォとインの奇怪冒険譚

蛾脳シンコ

文字の大きさ
34 / 48
第1部【明暗の大魔導師】編

第34話 浪漫海遊記 その1

しおりを挟む
俺の名前はコォ…イン、イワと共に3人で船の係留所ケイリュウジョを進む冒険者だ。
今日から船に乗ってコブサラ国へ向かわないといけないのだが…船長に船の場所を聞くのを忘れてしまった…ここは港町、船なんて大量に浮いている。
困った…レガン船長の姿も見えないし…一体どこに…

「……おーい!お前等!こっちだ!」
「!?せ、船長!」

と思ったが、直ぐに船長の姿を見つけた…彼はかなり大きな船の甲板でこちらへ手を振っていた。
本当に大きい船だな…他のよりかは見劣るが、それでも大きいのは確かだ。
自分達は木の板で作られた薄い橋を渡って船の上へと降り立つ。

「どうだ、これがワシの船。フルメタル・シャーク号だ。」
「立派ですね。(木製なのにメタル?)」
「この船、木製だよね?」
【メタル?】
「あぁ……お嬢ちゃんたち、面白い事を言うな。木だってたまには鉄になるんだぜ。」

この人が何を言っているかは分からないが、それはさておき、自分達は荷物を少し狭い部屋に置くと、船長の部屋で船旅についての説明を受けた。
机の上に広げられた地図に描かれているのは島々…自分達が住んでいるダニーグ大陸も描いてある。
(描いて無かったら大問題だが)

「今回のルートはダニーグ東海域を通り、怨霊海域を経由してコブサラ南海域へ行き、ドチョッパ港町にてお前等を降ろそう。」

「ま、待ってください!怨霊海域って何ですか…」
「幽霊が沢山出るところだ。それで、掛かる日数だが…」
「ちょっと!なんで普通に話してるんですか!幽霊が出るんですか!?」
「そんな所を行くの…?」
【お化け怖い…】
「安心しろい、幽霊と言ってもすこし殺しに来るだけだ。」

そんな事を言われたら安心できないよ!
というか地図見た限りだと、なんか遠回りしてない?

「すまねぇな。荒波海域は海賊が多くて今は立ち入り禁止なんだ。」
「か、海賊…本当に居るんですね…」
「そりゃ当たりまえさ。奴等は木箱を狙って来るからな。」

真っすぐ向かった場合、荒波海域と言う場所を行くことになる…がしかし、今は海賊が多いらしく、立ち入り禁止にされているらしい。
なので仕方なしに怨霊海域を経由すると…出る幽霊はポルターガイストに溺死した船員のゾンビ、または海の底から這い上がって来たスケルトンなどの半魔物だ。

「安心せい。幽霊と言うのは暴風域にでも入らない限り、来ない。」
「ほっ…なら良かったです…」
「それは良いとして、何日くらいかかる?」
「良い質問だ。掛かる日数は約10日だ。早けりゃ8日で着く。」

聞いていた通り、10日か…まぁ休息だと思えば直ぐだろう。
あんな狭い部屋で一週間以上も寝泊まりしろと言われるとアレだが…贅沢は言ってられない。

「ところで…乗組員の方々の姿が見えませんが…」
「昨日も言ったが俺の船のクルーは1体だけだ。奴なら荷を運び終わって船の細かい点検を終えてくる頃だろう…」

【キャプテン、今戻りました。】
「ひぇ!?クッドに居たスケルトン!?」
「うわッ!?ま、魔導人だ!!」
【まどうじん…!】

その時、後ろの扉から一体の魔導人が部屋へ入って来た。
直ぐに自分達は構えたが…それを船長は止めた。

「落ち着け。魔導人と言っても悪い奴では無い。」
「え?」
【お客様、ご挨拶が遅れました。副船長兼業務員兼戦闘員のルッパでございます。炊事洗濯戦闘操縦なんでもお任せください。】

丁寧に挨拶する魔導人に対して呆気に取られながらも、構えを解除すると自分達も名乗っておいた…いや、まて!普通に聞いていたが喋っている!
この魔導人!喋るぞ!普通ならピポピポとかの雑音しか出さないのに!
不気味な声だ…

「船で何かあったらコイツに言え。」
【お客様のお役に立つのがワタクシの仕事ですから。】
「流暢な人だなぁ…」
「人なの?」

彼…というか彼女?が魔導人でなぜ話せるのかは謎だが、敵で無いなら安心だ。
どうやら普通に人を雇うより、魔導人の方が力が強く、文句は言わない、給料も要らないので良いらしい。
そんな事をしていたら何時か痛い目を見そうだけど。

「そんじゃ…出航まで時間あっから、ゆっくりしててくれ。」
「はい。ところで…トイレって何処ですか?」
カワヤなら2個下の一番奥だ。」
「ありがとうございます…2人は適当にしてて!」

そう言って自分は直ぐにトイレへ向かった…忘れていたが下痢がまだ続いている。
ちっくしょう!もう一生牡蠣なんて食べないぞ!
・・・

「それじゃ出航だ!…ってなんかノリ悪くないか?」
「すいません…少し具合が悪くて…」
「そうか…まぁ海じゃよくある。そんじゃ出航だ。」
「あ、ちょっと待ってください。聞いておきたいことがあります!」

出航の時間だ…しかし、その前に聞きたい事が1つ。

「他のお客さんとか居ないんですか?」
「生憎様、今回はお前とその連れの3人だけだ。ゆったりしててくれ。」
「はい…ありがとうございます。」

甲板にてガレン船長と話し終えると、彼は舵の元へ行き、船の出航を始めた。
インとイワは部屋で寝ている…どうやら少し疲れている様だ…今、広い甲板に居るのは俺だけ…静かで風が気持ちいい…
にしても…意外と船って早いんだな…もっと遅いのかと思った。

「白い鳥が多いんだな。」

港町でも思ったが…変な鳴き声の白い鳥が何匹も空を舞っている。
それどころか、船の至る所にも止まっている…自分は手すりへもたれ掛かっているが、俺の肘のすぐ横にも鳥は止まってこちらを見つめている。
鳥ってのはこんなに人間を恐れないものではない…慣れているのだろうか?

「なんて名前なんだろ…」
【カモメだよ。】
「へぇ、カモメかぁ。」

親切なカモメだな、わざわざ教えてくれるなんて…はは……は………は?
今…喋ったか?鳥って…喋らないよな……いや、気のせいだ、気のせい。
下痢ぴっぴのし過ぎで頭まで酸化してしまったのだろうか。

「いかんいかん…俺の頭はどうかしてしまったのか…」
【元からどうかしてんだろ、コォ?】
「!?な、なぜ俺の名前を!?」
【ひへへへ!魔影団へ歯向かったことを悔やみな!!】

気のせいでは無い!このカモメ!明らかに俺へ語りかけている!
自分は直ぐに後ずさると、奴はボンッ!と煙に包まれると、その本来の姿を現す。
犬とは違う…少し丸い顔の獣人……あ!思い出したぞ!あの顔の形は…

「ラクーンの獣人か!」
【違うわ!タヌキだ!灰色じゃねぇだろ!!】

確かに…アライグマラクーンにしては黒寄りの茶色だ…レオを思い出す。
いや!それはどうでも良い!奴の姿を見るに魔影団だ…さっき言ってたしね。

【人の事を害獣扱いしやがって…許さねぇぞ!!】
「(まずい、怒ってる…とりあえず助けを…)てきし…」
【させるか!!】
「ぐぅうッ!?」

敵襲だ!と知らせようとした自分の背中を奴は掴むと、勢いよく後ろへ投げる!!
ブンッ!と投げられた自分は手すりを越えてそのまま海へ…落ちない!
ギリギリでロープを掴んで事なきを得た…いくら港が近いからと言っても、泳ぎが苦手な自分はこのまま落ちれば溺死してしまう!

「あ、危ねぇ…」
【お!まだ生きてるな!しぶといな…おい、登ってみろよ!】
「バカにしやがって…!この野郎!」

手すりに座ってこちらを見下ろしながら嘲笑する奴を目指して縄を登る!
四角く編まれているので登りやすい!奴を引きずり落としてやる!

【おー!おー!頑張るねぇ…どれ…べぇえ…】
「おわぁッ!?き、汚ない!やめろ!」

縄を登る自分へ奴は涎をダラーッと垂らして、妨害する!汚いヤツだな!
唾液を他人に飛ばしてはいけないと教えてもらわなかったのか!?
奴の口から垂らさられる唾を巧みに避け、登って行く…そして…ここまで来れば!

「キム…ムーア!!ウラァッ!!」
【な!?ほげぇッ!?】

手すりへ八分くらいに近付いたその時!キム・ムーアで腕を強化すると縄を掴み、自分を投げるように一気に上へ飛んだ!奴はこれだけは予想できず、唖然としたまま…
俺の脳天に下顎を強打される!自分も痛いが相手も痛いハズ!
そのまま自分も奴も甲板へ倒れ込んだ。
だが…お互い、直ぐに立ち上がると…少し離れて睨み合う…

「があッ…ど、どうだ…」
【おのれぇ!よくもやってくれたな…こうなりゃ船ごとぶっ飛ばしてやる!】
「な、なんだと!!や、止めろ!!お前もただじゃ済まないぞ!」
【鳥になって逃げれば良いさ!】

奴はヤケになったのか、青い火球を右手の上に作り上げ、メラメラと滾らせる!
あのサイズの火球がぶち込まれれば沈みはしないと思うが、それでも大ダメージを負ってしまう!しかし、下手に動けば奴は……しょうがない!
使いたくなかったが、新しい魔法の「スネレイズ」を使うしかない!

【ハァアアア!!】
「な、なんだ!?何事だ!?だ、誰だこの犬は!?」
「ガレン船長、コイツは敵だ!」
「なにぃ!?まさか…その火球を…」
【ッチ…だが…もう遅い!粉々に砕けろ!!】

やって来た船長を見て、奴は火球を天高く掲げる!!もうヤバイ!やるしかない!!
自分は直ぐに指先へ光魔法の力を溜めると…

「スネレイズ!!」
【かッは!?ご、ごれぶぁ…】

一筋の光のような素早いレーザービームは奴の腹部を撃ち抜く!
それでも相手は火球をそのまま投げようとする…が、コントロールが上手く行かずに火球は海へ落ちて大爆発を起こした。
水しぶきと流れる血が甲板を濡らす…

「安心しろ…ちゃんと急所は外した。抵抗するのを止めれば治療してやる。」
【ぢ、ぢぐじょう!な、舐めるな!!】
「「!?」」

奴は腹部からビュッビュと血を噴き出しながらも手すりまで後ずさる…
逃げるつもりか…その傷で…だが、陸地からは近いし、傷も急所を外しているので間に合うかもしれない…一番良いのは奴が此処から居なくなることだ。

【どうかしましたか!!】
「ルッパ!敵だ!あの犬人間をやれ!!」
【アイアイサ―!キャプテン!!】
【な、なんだごいづは!ま、魔導人…ぐっふぁァア!!】
「!?け、蹴り飛ばした…」

丁度そこへやって来たルッパにレガン船長は命令すると、彼女は勢いよく奴に向かって走って行き、ドロップキックを相手へ打ち込んだ!
奴は蹴り飛ばされ、そのまま海へ落ち……ない!だが落ちない!
海へ落ちる前にザバァアア!!と海の中から巨大なサメが飛びだし、奴の下半身を食い千切ったからだ。
なんと恐ろしき海の怪物だろうか…

【がァ…ごぼぼぼ…】

【ふぅ…任務完了致しました。お2人共、お怪我はございませんか?】
「俺は平気だ…お前さんは?」
「自分も大丈夫です。」
【なら良かったです。直ぐに甲板のお掃除へ移ります。】

そう言ってルッパはモップを持って来て甲板の血を掃除し始め、船長は舵の元へ戻った。
奴が落ちたところを見てみれば…真っ赤な染みが海に出来ている。
なんか肉片みたいな物も浮いているが、徐々に魚やサメが集まってそれらを片付けて行く…ああやって海の生態系が保たれているのか…
いや…可哀想だ、いくら敵でもあんな最期は哀れと言うもの。

「(けど…もう街はあんな遠くか…)」

もう港からはかなり離れている…ダニーグ大陸ともそろそろお別れか。
今思えば、カカオ山から随分と遠くまで来たな…ガトーヒルにビーミス城塞都市…クシの森にルリーグ古代城…
そしてロリア山とクッド旧市街を抜けた先のモース地方…
それでもまだまだダニーグには行っていない場所はある、いつかは行くことになるのだろうか。
とにかく今はコブサラ国まで休むか…
自分は一旦、自分の部屋まで戻る事にした。

つづく
・・・
キャラクタープロフィール
名前:レガン(男) 身長:196㎝ 瞳の色:オリーブ色 髪色:灰
誕生日:7月1日 星座:ソーメ座 血液型:A型 人種:ダニーグ人
好物:フィッシュガンボ 趣味:葉巻 職業:フルメタル・シャーク号の船長

『レガンはフルメタル・シャーク号の船長である。元々は海とはあまり関係のない人間であったが、消えた父親の仕事が灯台守だと知ると、彼を探すために幾数年…数ある海をとある船の船員として渡った。しかし、やがてもう父親は生きておらず、探すことが困難だと悟ると…船員の知識を活かし、船長としてF・S号と共に新たな人生を歩み始めるのであった。諸事情により大魔導師会とは縁があるらしい。』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

処理中です...