【R18作品】コォとインの奇怪冒険譚

蛾脳シンコ

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第1部【明暗の大魔導師】編

第35話 浪漫海遊記 その2

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俺の名前はコォ…インとイワの3人で船に揺られる冒険者だ。
現在、自分達はコブサラ国に向けて出発した船に乗っている…昼間に敵の襲撃を受けたが何とか撃退。
しかし、敵の正体は以前に襲撃した魔影団より送り込まれた刺客であった、俺達は奴等に狙われることになったのだ…今後は気を付けなければ。
それはそうと、船の夜とはやる事がないものだと知った…いや、厳密に言えばある。
平らな海を馬鹿みたいに眺めたり、甲板の端から端まで走って運動したり、或いは寝転んで満点の星空を見上げたり…だけど、それって暇な人間がする事でしょ?

「コォ…どうしよう…」
「どうかしたのか?」
「やる事が全然ないよ…暇で暇でしょうがないよ…」
「魔導書でも読んでればいい、そういうの好きだろ。」

だが、そんな事を言ってもインは魔導書を開かず、自分の横で寝転ぶのみ。
そりゃそうだ、船上で本を読むような人間は居ない、濡れてしまうからだ。
しかし、船内でも揺れて気持ちが悪くなってしまう。

「空に魔法でも撃ってみようかな…」
「止めとけ。海賊に見つかるかもしれないぞ。」
「魔力も無駄になるし止めとく。」

ちなみにイワは手すりに掴まり、ずーっと…海を眺めている。
彼女にとっては面白くて仕方が無いのだろう、もしくはやる事が無いが、文句を言う事も無いか…
2人は昼間に寝てしまったので夜はあんまり眠れないらしい…イワは元から睡眠をあまり取らないので猶更だ…ふぁが自分は眠いので寝ることにした。

「俺は先に寝とくからな。」
「えぇ…つまんないの……そうだ、コォのベッドは下だからね。」
「へいへい。」

船内に入り、狭い部屋に行けば…あるのは数歩の床とデカい2つの2段ベッド。
入り口から見て右下が俺の、右上がイワ、左上がイン…左下には荷物を置いている。
靴と上着、防具を脱いでベッドに横たわれば…一気に全身へ疲れがドッと溢れる…このままだと直ぐに眠れそうだ…

「(明日は一日中…何をしようか…)」

そんな事を頭に思い浮かべながらも自分はそのまま眠りへ就いた。

・・・

ガンガン…

「ん…んぅ…?」

いきなり自分は何かの物音で目が覚めた…それはガンガン…と何かを叩く音だ。
部屋にはいつの間にかインとイワも居り、それぞれが自分のベッドで寝ていた…という事はこの物音で起きたのは自分だけか…一体何だ?

「はい?」

そう言って扉を開けたが…そこには誰の姿も無い…叩き逃げ?いや違う。
自分が扉を開けて確認したその瞬間もガンガンと音は鳴っていた…つまり、ドアでは無い…ではどこから…
その答えは直ぐに見つかった…後ろから音がしたからだ。
直ぐに後ろの方を振り返れば!丸い窓を誰かが叩いているのが見えた!ほんの一瞬だが!間違いない!そこには人間と思わしき手の影が有った!

「(嘘だろ…?窓の外って…海だよな?)」

だがそれはおかしい、窓の外は海だ…とても人間が居れるような場所ではない。
ま、まさか…船長が落ちたとか?そんなわけ…いや、あり得なくはないな。
自分は少し怖くなって、防具類などを装着すると直ぐに船の甲板まで登った。
そして手すりから海を見たが…誰も落ちていないし、落ちた気配もない…だが船長は居ない、今は休んでいるのか?

「なんだ…無駄足だったかな…」

ベトォ…

「は?」

踵を返して帰ろうとしたその時…自分はベチョベチョの何かとぶつかった。
そんなベチョベチョが…船の甲板にあっただろうか…生暖かいが…

【何処へ行く気だ?…】
「ひっ!!ぐぁああ!!」

それは生物だった!ベチョベチョの魚人間みたいな生物が自分の後ろに立っており、気付いた瞬間に自分を腕ごと抱きしめて絞め殺そうとする!!
こ、この感じ…ちょっと前にもされたヤツだ…

【センスターの事は上手くやったようだが…オレはそうは行かないぜ!】
「ぐぁあああ!!だ、誰だ…」
【オレはゴルバン…魔影団の刺客さ!!】
「な!?く、くっそ…」

またしても刺客か…海の上までもやって来るとは…と、とにかく!!
今はこの状況を打開するしかない!

「この…クルァアアア!!」
【ぐっ…破ったか…】

今回、口では言ってないがキム・ムーアを使って腕を強化すると無理やり奴の呪縛から何を逃れた。
さぁどうする…スネレイズを使うか…しかし、魚人の身体を知らない。
変な所にでも撃って、そのまま逝かれたら困る。
それにアレは魔力を結構消費する…迂闊には使えない。

【ボーっとしてんじゃねぇぞ!!】
「あうッ!?」

考え事をしていた自分は相手の裏拳に弾かれ、奥の柱へ頭をゴンッ!と強打した。
そのまま起き上がって前を向いた頃には…視界に広がるヤツの巨体。
危険を本能で悟った自分は直ぐに横へ回避するとそこにかつて自分の脳天が有った場所にはゴルバンの拳が振り下ろされた。

「(撃つっきゃねぇ!手なら死なんだろ!!)スネレイズ!」
【ずにゅ…いってぇな…なんだよさっきの爪楊枝は?】
「き、聞いていなァッ!!?」

なんとビームの着弾地点は軽く凹んだだけで奴はいとも平気そうにこちらを蹴り飛ばす。
ば、化け物だ…貫通力に特化したスネレイズのビームを受けても穴が空かないなんて…奴の身体の硬度は岩以上なのか…
それに…今の蹴りで腹部の痛みが残り出した…何かヤバイ…

「がは!!(しまった…血が…ど、どうすれば…)」
【内臓が潰れて血が出たか…それ、次は目でも潰してやろうか!】
「(目を潰す…!そうか!)フラッシュル!!」
【な!?何を…クソ!何も見えねぇ…!】

奴の目を潰すと言うところから咄嗟の回避手段を閃いた。
フラッシュルで目くらましをしてやると、直ぐに跳ね飛び、奴の背後へ回る!
そして…残念だが…コイツは殺すしかない!マジカウェポンを使わせてもらう!
右手へ魔力を溜めると…

「マジカ…バーヤァ!!」
【ぐほぁ!!な、なにを…】
「き、効いていない!?」

そんな…全力の魔法の刃に斬れぬモノ等無かった…だが!これはどういうことだ!
奴の背中を斬りつけても残るは…表面の浅い傷のみ…こんな事があって良いのか…

「(どうする…最強魔法のマジカウェポンすら通用しないなんて…)」
【舐めやがって…人間風情が…オレ達最上級捕食者を舐めるなよ…】

目が見えるようになってきたのか、奴はこちらを振り返り、ジリジリと静かに踏み寄る…奴の歩幅に合わせて自分も後ずさる…お互いにこのまま一定の距離を保ちたいが…
そうはいかない…自分は反対側の手すりまで追い込まれてしまったのだ。

【追い詰めたぞ…クソ野郎…直ぐには殺さねぇ…】
「(そ、そうだ!目だ!)」

こんな危機的状況だと言うのに自分はもっと早く考える事の出来たくだらない勝利方法を閃いてしまった…
狙うのは目だ…確かにどれほど頑固な生物でも眼球は弱い事が多い。
なのでアイツももしかしたら…いや、本当になんでもっと早く思いつかなかったんだよ!
手すりが腰に当たる…もうこれ以上は逃げられんぞ!!

【さっきはよくも背中をやってくれたな…許さねぇぞ…貴様の背中を開いて背骨を取り出してやる!痛みの中!悶え苦しんで死ね!!】

「うわぁあああ!!!」
【捕まえ…ウガァッ!!】

奴に肩を掴まれたその時、ゴルバンの側頭部へ急にガクッと何かがぶつかった。
それは砕けて、白い破片へと変わったが…

「コォを離せ、シーフード野郎…」
「い、イン!」
【ちっくしょう!オレの顔に…】

ゴルバンは自分を離すとインの方を向いた…顔面に雹球をぶつけられて怒っている様だ。
そりゃ、顔面に氷をぶつけられれば誰だって怒る、俺もそーする。
しかし…こんな事を書いて文字数を無駄にするのは野暮って物だ…だがこの作品は一応ギャグ込みなのだ、1話に1回は入れなければならない。
この小説の存在自体がギャグなんてジョークは受け付けないぞ。

「あら、怒った?最上級捕食者様?」
【な…ムカつく小娘だ!!貴様の肝臓を生きたまま抉り出してやる!】
「逃げろ!イン!そいつは硬いぞ!!」
「コォ…気付かないの?奴は魚、しかもズブ濡れ…」

そう言いながらインは落ち着いて右手へ雷球を創り出す…そうか!
確かに水ってのは電気を通す…ちくしょう、俺も雷球を覚えておけば良かった…

【そ、それは…なぜだ…聖職者では無いハズ…】
「そんな決まり…何処にもないけど!!」
【ぐっがぁぁああああ!!】

バチバチと不安定な光を出す雷球を投げつけられたゴルバンの全身はランプのように煌めく!!それはまるで人型の炎がそこに立っていたようであった。
そして…少しした頃には…そこに横たわるは焼け焦げた…生命体。

【か、かは…ありえ…ねぇ…人間に…】
「どうするのコォ?コイツまだ生きてるよ。」
「ちょ、ちょっと待ってろ…」

自分は新しく覚えた中級回復魔法で腹部を治療すると、スッと立ち上がった。
コイツの処分だが…海に投げ捨ててしまえば良い…だって見たところ魚人だし、溺死などはしないと思う…どっちみち、こんな傷では直ぐに戻って来ないだろう。
そういう事で俺はインと2人で重い巨体を持ち上げ…ザッボォン!と海の中へ奴を戻してあげた…なんか、魚のキャッチ&リリースみたいだ。

「イン、助かった…本当にありがとう。だけど…いつ起きたんだ?」
「今さっき起きたとこだよ。」
「そりゃまた…結構、音が出てたんだな…」
「いや、音は全然…私が起きたのは……あぁ!そうだ!トイレ!!」

急に尿意を催したのか、インはそのまま下の階のトイレへ急いで行った。
頼りになるが慌ただしい奴だ…とにかく、インの成長度合いと自分の不甲斐無さが知れて良かった……自分で言うとさらに悲しいなぁ…
・・・

「夜中にそんな事がなぁ…」

同日の朝…朝食の席にて自分はレガン船長に夜中の襲撃の事を話した。
船長は夜間の間は寝ており、ルッパもたまたま活動停止中だった様だ…結構な音がしたと思うんだけどなぁ。
イワも起きなかったし、みんな一度寝ると起きないタイプなんだな。
ちなみにこの船には5人乗っているが食事をするのは3人だけである。
俺とインと船長の3人だけ…つまり此処に居るのも3人だ。

「ところで…このパン硬いよ。」
「乾パンだからな。」

船上での食事は毎食違う…が、朝だけは硬いクラッカーみたいなものと燻製肉が出て来る…1日に1回は硬い物を食べないと顎が弱くなるかららしい。
食料類は倉庫にて魔法を掛けて保存してあるのでちゃんと昼と夜は料理が出て来る。

「マリッジ号の悲劇という話があるのは知っているか?」
「いえ…全く…どんな話なんですか?」
「昔のとある海域にて航海に出発したラバー船長率いる海賊団が居た…しかし、積み荷係はとんでもないミスを犯したのさ…」

「それってどんなミス?」
「飲食品に魔法を掛け忘れたのさ。」

そしてそのまま航海に出てしまった海賊たち…不運な事に暴風域に突入し、海に迷ってしまった…その間にも肉にはカビが生え、魚には蛆が湧く、そしてパンにはネズミの死骸。
次第に無くなって行く食糧、しかし大陸は疎か、他の船すら見当たらない。
遂に食料が無くなったと思えば、船員たちは己の服や本を千切って食べ始める始末。

「そうして何も食べるものが無くなった…ある日…1人が飢餓で死んだ。」

最初は海に投げ捨てようかと思ったが、1人がとある提案をした…それはコイツの肉を喰らうと言う事だ…これに皆は賛成し、遺体はバラバラに分解され、胃袋に消える。
食べ終われば次に死ぬ者を待ち、食し…待ち、食す…それを繰り返していたが…
ある日船長は痺れを切らして部下の1人を殺して食おうとしたが…それを皮切りに船員たちは殺し合いを始め…結局、誰も何も食わずに死んだ…というお話し。

「うっ…私、ちょっとトイレ行って来る…」
「ってまぁ…こんな感じだ…お前も食わんのか?」
「すみません…食欲が失せまして…」
「無理も無いな…安心せい今回は魔法を掛けて来た、それにルートも完璧だ。」

現在、自分達はダニーグ東海域と怨霊海域の丁度真ん中くらいに居るらしい。
ここまで来れば追手も、もう来ないだろう。

「そうだ…お前さん、暇なら釣りでもしてみたらどうだ。」
「釣りですか?海ではやったこと無いですね…」
「同じさ、餌を付けて糸を垂らせば良い。暇つぶしにはなるぞ。」

確かに海には魚が居るワケだし、釣りと言うのも楽しいかもしれない。
自分は釣り道具を借りることになり、そのまま船長とは分かれた。
このまま…何事も無く、海を通過できればいいのだが…いや!無駄な事を考えると良くない事が起きるかもしれない!これ以上は何も考えないでおこう。
それが良い。

つづく
・・・
キャラクタープロフィール
名前:ルッパ(一応メス) 身長:210㎝ モノアイの色:白 ボディの色:紺色
製造日:不明 星座:無し 流れるオイル:上物 種族:魔導人(人間側)
好物:酸素 趣味:稼働 職業:フルメタル・シャーク号副船長兼業務員

『ルッパはレガン船長の部下の船員である。なぜ彼女が話せて人間と仲が良いのかは不明だが、害は無いので安心。同じ魔導人として他の魔導人とは話せなくも無いが、話そうとはしない。立場上は副船長だが、レガンとの間にややこしい上下関係は無い…何もかもが不明な機械である。』
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