インプレ・リプレイ

始動甘言

文字の大きさ
9 / 14

第4章-1

しおりを挟む

 「おう、沢渡。調子はどうだ?」
 「我聞さん、こんな拘束させられて気分いいと思います?最悪ですよ、もう」
 我聞は今、警察署の資料室に来ている。そこには手足を縛られた沢渡がいた。

 「その提案出したのは俺じゃないぞ」
 「分かってますよ。思い付きとはいえこればっかりは自分でやるしかないですからね」
 この、手足を縛る方法を思いついたのは沢渡自身だ。彼の名誉の為に言うが、彼はそういう性癖ではない。これは沢渡が考え付いた、現状最善の『対策』なのである。




 時は1時間前に遡る――――――

 「何!?分かっただって!?」
 佐恵との一度目の電話を終えてすぐに沢渡から電話がかかってきた。古くからの愛車ミラXリミテッドの車内でこれから陣矢少年の家に行こうとした矢先である。

 『はい、これはサイバーテロです』
 「あ?さいばーてろ?」
 『あーそうですよね。我聞さん、そういうの苦手ですもんね』
 電話越しに沢渡が頭を抱えるのが見えてぶん殴ってやろうかと思ったが、息を吐いて聞きの態勢に入る。

 「で、そのサイバーテロがどうした?」
 『まずそれを話す前に我聞さんは【サブリミナル効果】、【ブルーライト】、【フラッシュバック】を全て知っていますか?』
 「あ?」

 我聞はそれを聞いて、頭の中からうろ覚えの情報を引っ張ってくる。どれもどこかで聞きかじった情報ばかりだが、事件性に関連があるものが多いので一通りは言えるようにしている、はずだ。

 「【サブリミナル効果】は確か映画のワンシーンにコカ・コーラの絵を差し込んで買わせるようにする催眠みたいなやつで、【ブルーライト】はパソコンから出る光、【フラッシュバック】はPTSDのやつが別の出来事と実際に出来たことを思い出してPTSDが再発するみたいなやつ、だったか?」
 『概ね合ってます。我聞さんはこれらに何か関連性があると思いますか?』
 「うーん・・・・」

 我聞は沢渡が言おうとしていることがイマイチまとまらないことに気付く。
 「少し待て」
 メモを取り出し、紙に今言ったことをまとめる。

 (【サブリミナル効果】はあるものを見して潜在意識(?)に働きかける催眠、【ブルーライト】は確か人が起きる為に必要な光とかなんとかっていう情報があったな、でもって【フラッシュバック】?何故だ?光つながりで洒落て使っているのか?いや、そういう意図ならもっと別の言葉を使っているはずだ・・・そうなると)

 連想されるのはこれらの言葉は全てに繋がりがあり、これまで起きた事件の原因を探る糸になるということだ。そしてこれらを繋げるのは・・・
 「そうか!スマホか!!」
 『当たりです』

 「待て、もう少しで何か閃く。何も言うなよ」
 『分かっています』
 我聞はこれまで、いやここ数日起きたことを考える。

 沢渡と資料の整理をしていたこと、妻とボケの話をしたこと、テレビで休戦協定が結ばれたこと、佐恵の周りが危ないと聞いて調査をしに行ったこと、被害者の少年がまるで繰り返すかのように車に轢かれたフリ(実際に吹き飛んだ)を見たこと、そして先程の佐恵に電話を掛けて病院を調べさせることにしたこと。

 いや、待て。その前に自分で出したものがあるじゃないか。集団催眠、今回の事件に関わるのはそれを利用した何かだ。しかもこれには時間が必要ない。この催眠のトリガーはスマホを見て発生する何か・・・・。

 情報はかなりあったが、沢渡の出したワードに合ったものを見つける。どれが一番合うか、光に関係すること?当たりではあるが。被害者のこと?半分当たっている。ならボケか?いやこれは一番遠い気がする。そうなると・・・・

 「沢渡」
 『はい』
 「確認だが、今のSNSは世界繋がって情報を発信できる、合ってるか」
 『・・・・はい』
 「・・・・そうか」

 なんとなく、これの全貌が見えてきた。思わず震える手を誤魔化すように溜息を吐いた。それでも背中から流れ出る冷や汗が止まらない。
 「俺はね、素直にこれを作った奴を褒めると思うよ。こんな無駄な使い方をしなければな」
 『ですよね』

 「これは今、どれくらいの奴らが知っている」
 『流石に調べきれてはいないですが、まだどこも、ですかね』
 クソッ!と我聞は愛車のハンドルを殴った。これは予想以上に深刻なものになると本能が言っていた。

 「一度そっちに戻る。これからこの事件についてまとめるぞ」
 『分かりました。お待ちしております』
 我聞は愛車のエンジンをかけ、急いで駐車場から出る。これを作った奴の目的、そして原理がなんとなく分かってしまったのだ。

 (スマホを使った集団催眠・・・・はん、歴史は繰り返すってことか・・・!!)

 我聞は出来るだけ信号を守りながら、沢渡のいる警察署に急いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。  怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——  どれもがただの作り話かもしれない。  だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。  本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。  最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...