牛丼、大盛、つゆだくで

三森のらん

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7.オッサンとの距離感に困惑する俺

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 ――朝だ。

 うん、たぶん、朝。カーテンの隙間から、薄く日差しがこぼれてる。
 しかし、今のこの状況はどういうことだ?
 昨夜は、結局、シャワーの後、オッサンのグレーのトレーナーにハーフパンツ(俺がはくと、悔しいことにハーフじゃないんだが)をはいて、薄手の毛布を借りてソファで寝させてもらったはずなんだが……ここはソファではなく、ベッドだ。そして、重い腕が俺の胸の上に乗っていて……いや、これは抱え込まれている、が正しいか。

 なんで、俺はオッサンに抱きかかえられてるんだっ!
 それも、オッサン、上半身裸だぞっ!

 今の状況を考えようとしてるんだけど、頭が回らない。いや、ぐるぐるしてる。どういうことっ!?

「……んんっ? ああ、起きたか」

 ぼそりと俺の頭の上のほうから、少し枯れた低いオッサンの声が聞こえる。そおっと見上げると、無精ひげが生えてる顎が見えて、その上には、まだちょっと眠そうな眼差しが見える。

「お、お、おはようございますっ」

 ひっくり返った俺の声に、オッサンはなぜだかふにゃりと笑みを浮かべてる。

 ねぇ、オッサン、もしかして、まだ寝ぼけてたりする?
 ねぇ、寝ぼけてるよね?うん、そうだよねっ!!

 頭の中では、思い切りオッサンに問い詰めてるけど、声になんかなるわけがなく。俺はなんとか笑みを浮かべながらも、そろり、そろりと、オッサンの腕の中から抜け出ようとしたのだが。

「んぎゃっ」

 オッサーンッ!
 抱き寄せないでぇぇぇっ!

「まだ、早いだろ、もう少し寝てろ」

 ぎゃぁぁぁっ!
 オッサンの分厚い胸に抱き寄せられてるよぉっ!
 どゆこと? ねぇ、これ、どゆことっ!?

 俺は完全にパニックになっていた。相手がヤクザで寝ぼけていようが、ここから抜け出そうと、力いっぱい這い上がろうとしたけど、上からは無理。仕方なく、今度は下からずりずりっと這い降りる。グレーのトレーナーは、まるでさなぎの抜け殻みたい。
 そして完全に抜け出ようとした時、目の前に思い切りテントをはったジャージが現れた。

 ……はい、朝勃ちですね。
 ええ、男ですから、わかります。しっかし、ずいぶんとご立派な。

 でもね、この状況で目の前に差し出されたら、血の気が引くというか。別のことを想像しちゃうというか。完全に固まる俺なわけです。

「なんだ、政人、朝から積極的だな」

 もう完全に目が覚めていたのか、オッサンがクククッと笑いながら、上半身を起こして俺を見下ろしている。いや、さすがです。鍛えられた上半身。必死に抜け出そうとして気づかなかったけど。

「な、何言ってるんですかっ」
「なんだ、咥えてくれるんじゃないのか」
「く、咥える!? んなわけ、ないでしょうがっ!」

 俺はそう叫ぶと、寝室から飛び出していた。
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