牛丼、大盛、つゆだくで

三森のらん

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10.牛丼よりも、愛を大盛、お願いします

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 目の前にいる天童と海老沢。二人並んで座ってる。
 涙は止まったけれど、涙を拭き過ぎて目の周りを真っ赤にしている天童。
 長い脚を偉そうに組みながら、思いっきり不機嫌そうに俺を睨みつけている海老沢。
 本来なら二人の修羅場、のはずが、なぜか責められてる俺。

 ……なんか、おかしくない?

「どうもこうもないわ。原因はお前だ。お前。海老沢」

 怒りたいのは俺の方だっての。
 不機嫌そうに文句を言う俺だけど、海老沢の方は納得いかないって顔してるし。
 理不尽だ。

「なんで俺よ」
「はぁ? お前、自覚なしとか、最低だなっ」
「……何のこと?」

 俺がマジで怒ってることがわかったのか、今度は困惑する海老沢。そりゃそうだよな。俺、あんまり怒ることないし。
 そして隣で泣きそうな顔で俯く天童を心配そうに見下ろし、優しく声をかける。

「テンちゃん、どうしたの?」
「……っ!?」

 ……おいおい。奥の方で人が少ないとはいえ、ここ、一応、学食だから。
 俺の目の前で天童の手を両手で握りしめるとか、やめれ。天童も恥ずかしそうにしてるだろうがっ。というか、見てる俺の方が恥ずかしいぞっ。
 仕方がないから、俺が代弁するしかない。

「んんんっ、お前、天童と付き合ってるんだろ。それなのに、女と朝から一緒にくるとか、ありえねぇだろ」
「は?」
「は? じゃねぇよ。 お前ら、仲良く入ってきたの、天童が見たらどう思うかって考えろよ」

 俺の言葉にキョトンとする海老沢。

「……テンちゃん、高橋に俺たちのこと、言っちゃったの?」
「だ、だって」

 俺の言葉を無視して、海老沢は天童に話しかける。
 おいおい、距離、近い、距離、近いってば。天童は天童で、困ったような顔してるだろうが。

「……もう……やだ、嬉しいっ」

 海老沢は突然天童を抱きしめた。まさに、ギュウギュウと音が聞こえそうなほどに。

「えっ、えっ、えっ?」

 抱きかかえられてる天童は目を白黒させている。それは状況のわかってない俺も同様で。

 ……えーと。これは、どういうこと? わけわからん。

 俺は呆れて二人を見つめるしかなかった。
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