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1杯目

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 カフェオレを口に含みながら、母さんのメッセージの続きを読む。いつも通り、夕飯の買出しのメモがつらつらと書かれていた。母さんも事務の仕事でフルタイムで働いているせいで、仕事帰りに買い物に寄っていくとだいぶ遅くなる。だったら、昼前には帰ってくる俺が買い物をしてくるよ、という話になって今に至っている。
 今日は材料からすると親子丼か。俺の大好物の一つ。

「番号札、3番でお待ちのお客様~」

 店内の静かなBGMが流れる中、自分の番号を大きな声で呼ばれると、ちょっとだけ驚いてしまって、ついついビクンと身体が跳ねてしまう。呼ばれるのはわかってるんだけど。
 俺は番号札を手に、席を立った。受け渡しのカウンターのところ向かうと、短めの黒髪を一つに束ねた、可愛い感じの女の子が、トレーを持って待っていた。

「ありがとう……って、俺、ゆで卵は頼んでないけど?」

 困惑気味に、彼女にそう言うと、彼女のほうも困ったような顔で笑った。

「店長からです。卵、お嫌いですか?」
「え。いや、好きですけど」

 親子丼好きの俺が、卵を嫌いなわけがない。トレーを受け取りながら、カウンターの中のホワイトさんの姿を探すと、ちょうど新しくきたお客さんの対応をしているところだった。

「じゃぁ、ありがたく、いただきます」
「はい」

 彼女が嬉しそうに微笑むので、俺の方が照れくさくなった。自分の席へと戻って、のんびりと遅めの朝食を食べる、仮眠はとってはいるものの、夜勤明けだから、カフェオレを両手で持ちながら、ボーッとしていると、テーブルを拭きに来た人がいた。

「寝不足?」

 いきなり声をかけてきたのは、なんとホワイトさん。

「えっ」

 それに驚いて、また思い切りビクッとなってしまう。そのせいで、カフェオレがテーブルの上に少しだけ零れてしまった。

「あ、すみません」
「いえいえ、こちらこそ、急にお声掛けしたから」

 ホワイトさんが申し訳なさそうに、零れたところを拭いてくれる。
 身体が近くなったせいか、ホワイトさんから、ふんわりといい匂いが鼻を掠めた。爽やかでそんなに甘ったるい香りじゃない。思わず、ジッとホワイトさんの様子を伺ってしまう。パッと見た感じ、華奢なイメージだったのに、そばで見ると白いシャツの下は結構鍛えていそうだ。

「いつも、この時間だけど、大学生?」

 テーブルを吹き終わったのか、ホワイトさんは優しく笑いかけながら、気安い感じで話しかけてきた。

「あ、いえ」

 俺は両手で持っていたカフェオレをテーブルに戻すと、ホワイトさんへと視線を向ける。やっぱり、この人、綺麗だなぁ、と、つくづく思いながら。

「ここで警備のバイトやってるんです」
「えー? そうだったんだ? 私も、ここは半年近くなるけど、気が付かなかったなぁ」

 半年ということは、俺と同じだけ、ここにいるってことか。そういえば、ここのカフェに来てすぐに、ああ、すごいイケメンがいるな、とは思ったのを思い出した。

「俺、夜間の勤務なんで」
「ああ、だから、この時間なんだね。お疲れ様」

 ニッコリと笑うホワイトさんに、俺の方が目が釘付けになる。やっぱり、ハーフでイケメンは迫力あるなぁ、と思っていると、カウンターのほうが忙しくなったのか、ホワイトさんがチラリと視線をはずした。おかげで、俺の方も身体の力が抜けてホッとする。

「じゃ、また来てね」
「は、はい」

 爽やかな匂いだけ残して、ホワイトさんはカウンターのほうへと戻っていく。

「……ヤバイ、すげー、かっこいい」

 ポツリと、そんな言葉が零れてしまった俺なのであった。
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