ぬるいミルクに、熱いハチミツ

三森のらん

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2杯目

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 目の前で魚を綺麗に箸で食べていく姿に、ついつい見惚れる俺。

「ホワイトさん、魚食べるの、上手ですね」

 思わず言葉に出てしまった。俺は日本人のくせに、ホワイトさんみたいに魚が上手く食えない。ホワイトさんと同じ、Aランチにしなくてよかった、と、つくづく思う。

「そうかな……そうだとしたら、ばあやのお陰かな」

 ニッコリ笑うホワイトさん。うわー、その笑顔に、周囲の女性たち、釘付けですよー。

「ば、ばあや、ですか」

 つられて俺も引きつった笑みを浮かべるが、当たり前だけど、俺の笑顔に反応する者、なし。ていうか、『ばあや』って。その単語が出てくるあたり、ホワイトさんは、どこぞのお坊ちゃんだったのか、と、驚きを隠せない俺。

「おっと、口が滑った」

 ホワイトさんはそう呟くと、大きな身体を少しだけ小さくして、身を乗り出し、俺にこっそりと言う。 

「悪いけど、これは秘密な。学生の頃、ぽろっと言ったせいで、変な女たちにつきまとわれて、大変な目にあったんだ」

 ……でしょうね。
 こんなイケメンで、お金持ち……これで高学歴ときたら、目敏い女たちから狙われること、間違いなし。
 俺はあえて大学名は聞かないことにした。だって、聞かなくても、きっと、いい大学出てそうだから。まぁ、海外の大学の名前聞いても、わからないかもしれないが、下手に聞いて知ってる大学名だったら、自己嫌悪に陥る自信、ある。

「そ、そのばあやさんっていうのは?」
「ん?今でも現役バリバリだよ。実家でビシバシ、後進の育成に勤しんでるよ」

 その様子を思い出したのか、楽しそうに笑ってる。

「海外の方なのに、お箸の使い方を教えられるって、すごいですね」
「いや、日本人だよ」
「え?」

 あっさりと言うホワイトさんの言葉に一瞬驚く。確かに、ホワイトさんは、すごく日本語が上手だけど、見るからに立派な外人さん。その彼が『ばあや』なんていったら、なんかイメージ的にはやっぱり外人さんだっただけにびっくりする。だからこんなに日本語が上手いのか。

「うちの祖母が大の日本贔屓でね。若い頃、来日した時にばあやと出会って、そのままスカウトしてきたらしいんだ」

 クスクスと笑うホワイトさん。その『ばあや』さんのことを思い出して話すホワイトさんは、とても優しい顔をしている。『ばあや』さんはホワイトさんのお祖母さんよりも少しだけ若いらしいけれど、とっても小さくて、白髪頭を一つにまとめて、いつでも着物を着ているらしい。アメリカの実家周辺は、案の定、高級住宅街にあるらしいが、その住宅街の中を着物姿で歩いている『ばあや』さんは、すっかり、近所でも有名らしい。

「ばあやの名前は梅子なんで、近所の人たちは『梅さん』って親しみをこめて呼ばれてるんだよ」

 気が付けば、ホワイトさんのトレーの上の食器は、すっかり綺麗になっている。一方の俺は、ホワイトさんとの会話に夢中になってて、まだ半分近く残ってた。慌ててかきこみ、お茶で飲み下す。そんな俺を、ニコニコと見つめるホワイトさん。
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