100均で始まる恋もある2

三森のらん

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3.エアプランツ

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 午前中から客先に呼ばれ、ありがたいことに新規契約を取ることができた。俺たちは午後の会議に間に合わせるために、駅前の立ち食いそばで慌ただしく昼飯をとると、急いで会社へと向かっていた。

「何度も通った甲斐がありましたね」

 そう言いながら俺の後をついてくる遠藤。俺の方は汗だくになってるというのに、涼しい顔で歩いている姿を、羨ましく思う。

「まぁな」

 額の汗をハンカチで拭いながら、返事をする。いつだって新規契約はありがたいわけで、ついニヤリと笑ってしまう。会社の自動ドアを入ったとたん、ひんやりとした冷気に包まれる。

「はぁ、涼しい~」

 遠藤の声に、フッと笑みが零れそうになる。遠藤がいなければ、同じように俺も声にだしていたかもしれない。

「あ、お疲れ様ですっ」

 小島と、もう一人、バイトで来ている男の子が一緒にエレベーターから降りてきたところに、ばったり遭遇した。

「なんだ、お前ら」

 そろそろ昼休みが終わる時間だというのに、会社から出ていこうとする二人に、遠藤が訝し気に声をかけた。

「作業に夢中になりすぎちゃって、昼、食べ損ねちゃったんです」

 ぺろりと舌を出して言い訳をする小島。バイトの男の子もすまなそうな顔をしながら、俺の方をチラリと見る。課内のデータ整理専門で採用したバイトの男の子は、半袖のワイシャツにグレーのスラックスと、学生というよりは新入社員と間違えられそうだ。春頃から、よく見かける子だが、直接関わることがないせいか、名前まではよく覚えていない。

「このあと会議の予定入ってなかったっけ?」
「あ、はい。でも、2時過ぎでしたよね。大丈夫です。すぐに戻りますから」

 そう言うと、二人は慌てたように会社を出ていった。

「大丈夫か、あいつ」

 ムッとしながら見送る遠藤。苦笑いしながら俺はエレベーターのボタンを押した。

「あ、そういえば、今日は部内の暑気払いですけど、課長、大丈夫ですよね」
「ん?ああ、そういえば、そうだったな」

 遠藤に言われるまで、すっかり忘れていた。年に何度もない部内での飲み会。さすがに課長が参加しないという訳にもいかない。普段なら、それすらも面倒に思うのだが、今日は契約を取れたこともあり、気分がいい。何事もなければ、普通に参加しようと思った。 

「7時に、店、予約取ってるみたいなんで、それまでに仕事終わらせてくださいね」
「ああ」

 俺は頭の中で、今日中に終わらせなくてはならないことを考えながら、到着したエレベーターに乗り込んだ。
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