100均で始まる恋もある2

三森のらん

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6.ジャック・オー・ランタン

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 最近、小島のデスクで定番になりつつある飲み物がある。

「小島ぁ、それ、そんなに旨いか?」

 小島の隣に座る野原が、胡散臭そうな顔で小島の手にある缶を見つめる。それは、俺が濱田くんにあげたシュークリーム味とかいうジュースだ。珍しいから、とか、たまには、という理由で飲むのはわかるが、毎日のように飲んでいる様子は、野原じゃなくても、旨いのか? と言いたくなる気持ちはわかる。
 そういえば、最近、百均に行っても、濱田くんと話をする機会がない。彼はあれを飲んでくれたのだろうか。できれば、彼の感想を聞いてみたい気はするんだが。

「意外に美味しいですよ? そんなにドロッとしてるわけじゃないし。それに飲んでるのは私だけじゃないですよ?」

 そう言いながら缶に口をつける小島。

「私も買ってきた~」

 事務の佐藤さんが、アルバイトに来ている女の子と連れ立って、ずいぶんと嬉しそうにあの缶を持って戻って来た。大人しそうなアルバイトの女の子は、佐藤さんに隠れるようについてきている。彼女はその缶を二本も手にしていた。そんなに、あのシュークリームの缶ジュース、旨いんだろうか。

「わー、俺にはわかんない世界だわ」

 野原がげんなりした顔をして、自分の仕事をするためにパソコンへと向き直った。

「けっこう美味しいのにねー」
「……はい」

 彼女たちのおしゃべりが、しばらく続きそうな雰囲気だったが、それを注意する間もなく、俺の机の電話が鳴った。

「はい。東日本営業部の山本です」
『人事の相沢だけど』
「……お疲れ様です」

 相変わらず不遜な言い方で電話をしてくる人だな、と思いつつ、いつも通りに挨拶をする。そういえば、結局、俺のメールには返事してこなかったな、この人。そう思うと、ムッとしそうになったが、なんとか感情を抑え込む。

『ああ、お疲れ。ちょっと早いんだが、人事の件で話があるんだが』

 季節外れな異動の話で、思わず、「は?」と返事をしてしまう。通常、年明けの異動にしても、もう少し後のはず。なぜに、今頃。

『人事といっても、正確には異動じゃなくて出向。それも、うちが受け入れる側なんだ』
「はぁ」
『山本くんのところ、今年は新人いなかっただろ。だから、君のところでお願いしたいと思ってね』

 確かに、今年は新人の配属はなかったが、それはうちだけではないはず。この人が意図してうちの課というのなら、その出向してくるヤツになんかしら問題でもあるのだろうか。しかし、正直、うちには小島という、なかなか手ごわい3年目がいるんだが。
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