100均で始まる恋もある2

三森のらん

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5.ネクタイ

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 そういえば普段の彼は、ポロシャツ姿だったよな、と思い出して、思わず「ネクタイしたままでやってるんだ」と声をかけると、「は、はい。あ、324円です」と、俺の方を見ずに、少し焦り気味に商品を袋に入れていく。

「何時ごろ、仕事終わったの?」 
「え?」
「気が付いたら、もういなかったようだからさ」


 話しかけられるとは思わなかったのか、キョトンとした顔で俺の顔を見る濱田くん。俺は彼の目の前に、小銭を差し出す。濱田くんは無意識に掌を開いたので、その上にのせた。

「あ、えと、5時前には終わったので……」
「そうか。ちょうど、打ち合わせをしに行ってる間だったか」


 会議が終わってすぐだったら、まだ濱田くんがいたかもしれなかったのか。そして思い出す。彼にと買った缶ジュースを鞄の中に入れていたのを。濱田くんからつまみの入った袋を受け取りつつ、俺は鞄の中をあさり、缶ジュースを探し出す。

「ああ、あった。これ」
「……シュークリーム?」
「ああ、面白そうだな、と思って」

 濱田くんの不思議そうな顔を見ると、なぜだかホッとする。素直に感情を出すせいだろうか。

「これって」
「ちょうど打ち合わせから戻る途中にあった自販機にあったもんでね」

 自分では積極的に飲もうとは思わないが、濱田くんなら飲むんじゃないか、というのは偏見だろうか。差し出した缶に、すぐに反応を示さなかった濱田くんに、ふと、失敗したか?という思いがよぎる。

「甘いものは好きじゃないかい?」

 そう問いかけると、慌てたように缶を受け取り、「い、いえ、す、好きです」と顔を赤くしながらそう答えた。

「よかった。私もまだ飲んでないんだけどね。糖分とったほうがいいかな、と思ってね」

 俺が飲むかは、まぁ、微妙ではあるが。

「あ、ありがとうございますっ」

 はにかんだように笑顔を浮かべながらも、俺の背後にチラリと視線を向ける。どうやら、後ろの客を待たせていたようだ。

「今度、感想聞かせてね」

 俺は後ろでずいぶんと怖い顔をしているおばさんに、小さく会釈をしてその場を離れた。濱田くんが、あのおばさんにいじめられなければいいんだが。そんな心配をしながら、俺は家に向かって歩き出した。
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