100均で始まる恋もある2

三森のらん

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6.ジャック・オー・ランタン

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 結局、小笠原と相談をして、その新しく出向で来るという女性は小笠原の営業一課のほうを担当してもらうことにした。部長はその辺の業務分担については俺たちに丸投げ、というか、信頼をしてくれているお陰で、多少のことは俺たちで判断させてもらっている。
 特に、彼女の出向が、どれだけの期間になるのか見えない状況だけに、あまり重い仕事を任せるのも不安だし、派遣の丹野さんを辞めさせるなんてのは、営業部としては痛手でしかない、という結論に至ったからだ。
 出向者の資料を見ると、まだだいぶ若い女性だということもあり、まずは事務の佐藤さん、丹野さんと共に作業をしてもらいながら仕事を覚えてもらうのが一番だろう、という話になった。

「まぁ、うちは恵庭ちゃんが辞めちゃってから、なかなか次の子が決まらないから、助かるけどな」

 小笠原の課にも、以前は恵庭さんという事務の子がいたのだが、その子が寿退社してから、新しい子が居つかなくなってしまった。とりあえず、彼女が来るのは来月ということだから、それまでに業務分担について事務の女性たちと相談しなくてはならない。

「それにしても、ずいぶんと変な時期に来るもんだな」

 小笠原は履歴書を見ながら言うと、一瞬、おやっという顔をした。

「どうかしたか?」
「いや、この子の名前、どっかで見たような気がするんだが……」

 何だっけかなぁ、とブツブツ言いながら、履歴書を睨み続ける。俺は小笠原の手から紙を取ると、彼女の名前を見た。

『八巻櫻子』

 結局、これだ、というのが思い浮かばず、俺たちはパーテーションから出ると、それぞれに席へと戻る。とりあえず、来月と言われたものの、受け入れるための準備期間は、あまりない。時計を見ると、そろそろ16時を回る。パートの佐藤さんは、お子さんのお迎えがあるから帰られる時間だ。その前に、ちょっと話をしておこうと、事務の二人のところへと向かう。

「佐藤さん、丹野さん」

 俺の声に二人が顔をあげる。特に丹野さんのほうは、俺の電話が聞こえたのか、不安そうな顔になっている。

「ちょっといいかな」
「あの、お話、長いですか?今日は、早めに会社を出たいんですが」

 佐藤さんが困ったような顔で言う。

「何かあった?」
「あ、ちょっと、保育園に預ける時、息子の調子があまりよくなかったもので」

 共働きで実家も遠方にある佐藤さんにしてみれば、頼れる人がいない分、心配でしかたがないだろう。

「ああ、そうか。心配だよね。わかった。丹野さんに話しておくから、帰ってもいいですよ」
「すみません」
「丹野さん、ちょっといいですか」

 俺たちはパーテーションに入り、出向者の話をした。最初はビクビクしていた丹野さんも、自分が切られるわけではない、とわかってホッとしたのか、その後は積極的に引継についての話をしてくれた。そして最後には「佐藤さんとは、あとで、LINEしておきます」と、張り切って答えてくれた。
 彼女たちが仕切ってくれれば、なんとかなるだろう。パーテーションを出ていく彼女の背中を頼もしく思いながら、俺は大きくため息をついた。
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