100均で始まる恋もある2

三森のらん

文字の大きさ
43 / 93
6.ジャック・オー・ランタン

42

しおりを挟む
 家に着き、テーブルにあり合わせの物を並べていく。濱田くんは「すごい」と感動しているようだが、夕飯に誘ったわりに、俺が作ったわけでもないので逆に申し訳なくなる。
 俺はアーモンド小魚をつまみに、ビールを飲みながら、彼の様子を見ていた。部屋の明かりで見ると、やはり顔色もあまりよくなかったが、少しずつ食べ始めたせいか、血色が戻ってきているようだ。ちゃんと自炊をしていない、と言っていたから、一人暮らしなのは想像できる。
 俺も学生時代は、一人暮らしだったが、友人や当時付き合ってた女の子などと、よく食事をした記憶がある。時には外食、時には家に来て作ってくれたり。俺が作って食べさせたり、なんていうのもあった。濱田くんには、そういう友人とかはいないのだろうか。しかし、百均の店では和気あいあいとしてる様子を何度か見かけてはいるが。

「あの、山本さんは、もう、ご飯は」
「ん? ああ、もう食べたよ」
「す、すみません、僕のために」

 申し訳なさそうな顔をした濱田くん。こんな風に可愛い顔をする彼なら、百均のお姉さんたちも可愛がるのも頷ける。

「いやいや、この肉じゃがも余らせてしまうところだったしね。それに、もうちょっと肉つけたほうがいいぞ。少し食べたからか、顔色もよくなってきたみたいだ……が……えっ?」

 俺が濱田くんの二の腕をつかんで肉付きを確かめていると、濱田くんの顔が真っ赤になっていた。

「お、おい、大丈夫かっ?」

 思わず驚いて、熱でも出たのかと、濱田くんの額に手を当てようとすると、彼は急に立ち上がって逃げ越しになった。

「だ、大丈夫ですっ。ご、ご馳走様でしたっ」
「濱田くんっ、ちょっとっ」

 食事も半分くらいしか食べ終わってもいない。濱田くんの反応に、俺は何か気に障るようなことをしたのではないか、と、心配になった。これはちゃんと確かめなくては、と思い、彼の後を追う。 

「ちょっと、待ちなさいっ」

 すでに玄関で靴を履いている濱田くん。

「こらっ、大人の言うことを聞きなさいっ」

 強引に彼の腕を掴み、俺のほうを向かせた。そこには涙を流している濱田くんの顔。やっぱり、俺は何かしでかしていたのだろう。彼にこんな顔をさせてしまったことに、胸が痛くなる。
 
「濱田くん。何か気に障ったのなら、謝る。でも、その何かがわからなければ、私は同じことを繰り返してしまうかもしれない。だから教え……」
「好きです」
「て……えっ」

 話を言い切る前に、突然、濱田くんは震える声でそう言った。とても切なそうな顔で言われたその言葉の意味に、俺の頭は一瞬ついていけなくて、驚きで掴んでいた手が離れてしまった。
 濱田くんは涙で濡れた顔で、悲しそうな笑顔を見せた。俺は、その笑顔に対して、何か言わなければいけなった。しかし、俺の言葉は口から発することなく、濱田くんは家を飛び出していった。
 そして、ゆっくりと濱田くんの言った言葉が、俺の脳みそに到達する。

「……好きって……えぇぇ?」

 彼の後を追いかけることも出来ず、俺は両手で自分の口元おさえ、しゃがみ込み、ついには頭を抱えこんだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

宵にまぎれて兎は回る

宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…

竹本義兄弟の両片思い

佐倉海斗
BL
 高校一年の春、母親が再婚をした。義父には2歳上の引きこもりがちな連れ子の義兄がいた。初対面ではつれない態度だった義兄だった。最初は苦手意識があったのに、先輩に目を付けられて暴行されている時に助けられてから、苦手意識が変わっていった。それにより、少しずつ、関係が変わっていく。

女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師
BL
 南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。  彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。  そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。 「そーちゃん、キスさせて」  その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。

処理中です...