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7.オーナメント
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どうにも濱田くんと会えない。
もともと週に1回、金曜日に百均で顔を会わせていたわけだが、その1回ですら、顔を見ることも出来なくなった。百均のスタッフの人にでも声をかけて聞いてみればいいんだろうけれど、どう見ても、いい年をしたおっさんが、大学生の男の子のことを聞いたりしたら、怪しい奴と思われそうだ。
「はぁ……」
俺は自販機の前で大きくため息をついた。3階にある自販機のスペースで、俺は一人きり。いつもなら、フロアにあるコーヒーメーカーから入れるんだが、今日は何やら周囲から見られている気がして、ここへと逃げてきた。俺が何かやらかしたのか、自分でもよくわからない。
自販機の中のいくつか並んでいる缶のうちの一つ、ブラックのコーヒーを選んでそのボタンを押す。ガコンッ、という勢いのいい音をたてて、缶コーヒーが落ちてくる。俺はそれを取り出し、一番の奥のテーブルに座った。そのテーブルは都合よく大き目な観葉植物の陰になっていて、他の人が来ても気にならないようになっていた。そして缶コーヒーを飲もうとした時。
「葛木さんは、何、飲みます?」
八巻さんの楽しそうな声が聞こえてきた。
「あ、俺はミルクティ」
「えー、意外。男性って、紅茶よりもコーヒーかと思いました」
「悪いかよ」
「いえ、カワイイですね」
「……はぁ。カワイイとか、やめて。これでも一応、男なんですけど」
若い者同士の和気あいあいとした声に、青春だなぁ、などとしみじみと思いながらコーヒーを飲む。
そして、再び、濱田くんのことを思い出す。
彼は今頃、どうしているんだろうか、と。
「……葛木さん、あの」
「んー?」
八巻さんの声が、少しだけ緊張して聞こえた。なんとなく、この場にいるのはまずいような気がしてきた。彼らから見えないようにと、もっと壁際に寄る。出るに出れない状況で、どうしようか、と思っているけれど、二人には全然気づかれていない。
ガコンッ、と缶が落ちた音が響き。
「か、彼女とかいるんですかっ」
「は?」
「え、や、えと、彼女いないなら、立候補しちゃおうかなーって」
彼女の少し茶化したような、そして恥ずかしそうな声だけが聞こえてくる。しかし、葛木は答えるのに、一瞬間が空いた。自販機に小銭を入れていく音がする。
「あの……?」
「や、やだなぁ。そういう冗談。た、確かに彼女はいないけどさぁ……もしかして、馬鹿にしてる~?」
葛木は困惑しながらも、なんとか笑いに持っていこうとしてるんだろうけれど……彼女にそれは通じないんじゃないか。俺は、コーヒーを飲み干しながら、天井を見上げた。
「ば、馬鹿になんかしてないですっ」
ほらなぁ。
八巻さんの声に悲痛な響が含まれる。葛木~、女の子、泣かすなよ。
再び、ガコンッ、と缶が落ちた音。そして葛木の冷静な声が続いた。
「八巻さんは遠藤さんがいいんじゃなかったの? あんなにアピールしてたじゃない」
「え、そ、それは、もう、いいっていうか……だ、だったら、なんでっ」
なんだか、段々興奮したような声になっていく。隠れていた俺だけれど、さすがにそろそろ席に戻りたい。飲み干して空になったコーヒーの缶を手に立ち上がると、座っていた椅子がガタッと音をたてた。
もともと週に1回、金曜日に百均で顔を会わせていたわけだが、その1回ですら、顔を見ることも出来なくなった。百均のスタッフの人にでも声をかけて聞いてみればいいんだろうけれど、どう見ても、いい年をしたおっさんが、大学生の男の子のことを聞いたりしたら、怪しい奴と思われそうだ。
「はぁ……」
俺は自販機の前で大きくため息をついた。3階にある自販機のスペースで、俺は一人きり。いつもなら、フロアにあるコーヒーメーカーから入れるんだが、今日は何やら周囲から見られている気がして、ここへと逃げてきた。俺が何かやらかしたのか、自分でもよくわからない。
自販機の中のいくつか並んでいる缶のうちの一つ、ブラックのコーヒーを選んでそのボタンを押す。ガコンッ、という勢いのいい音をたてて、缶コーヒーが落ちてくる。俺はそれを取り出し、一番の奥のテーブルに座った。そのテーブルは都合よく大き目な観葉植物の陰になっていて、他の人が来ても気にならないようになっていた。そして缶コーヒーを飲もうとした時。
「葛木さんは、何、飲みます?」
八巻さんの楽しそうな声が聞こえてきた。
「あ、俺はミルクティ」
「えー、意外。男性って、紅茶よりもコーヒーかと思いました」
「悪いかよ」
「いえ、カワイイですね」
「……はぁ。カワイイとか、やめて。これでも一応、男なんですけど」
若い者同士の和気あいあいとした声に、青春だなぁ、などとしみじみと思いながらコーヒーを飲む。
そして、再び、濱田くんのことを思い出す。
彼は今頃、どうしているんだろうか、と。
「……葛木さん、あの」
「んー?」
八巻さんの声が、少しだけ緊張して聞こえた。なんとなく、この場にいるのはまずいような気がしてきた。彼らから見えないようにと、もっと壁際に寄る。出るに出れない状況で、どうしようか、と思っているけれど、二人には全然気づかれていない。
ガコンッ、と缶が落ちた音が響き。
「か、彼女とかいるんですかっ」
「は?」
「え、や、えと、彼女いないなら、立候補しちゃおうかなーって」
彼女の少し茶化したような、そして恥ずかしそうな声だけが聞こえてくる。しかし、葛木は答えるのに、一瞬間が空いた。自販機に小銭を入れていく音がする。
「あの……?」
「や、やだなぁ。そういう冗談。た、確かに彼女はいないけどさぁ……もしかして、馬鹿にしてる~?」
葛木は困惑しながらも、なんとか笑いに持っていこうとしてるんだろうけれど……彼女にそれは通じないんじゃないか。俺は、コーヒーを飲み干しながら、天井を見上げた。
「ば、馬鹿になんかしてないですっ」
ほらなぁ。
八巻さんの声に悲痛な響が含まれる。葛木~、女の子、泣かすなよ。
再び、ガコンッ、と缶が落ちた音。そして葛木の冷静な声が続いた。
「八巻さんは遠藤さんがいいんじゃなかったの? あんなにアピールしてたじゃない」
「え、そ、それは、もう、いいっていうか……だ、だったら、なんでっ」
なんだか、段々興奮したような声になっていく。隠れていた俺だけれど、さすがにそろそろ席に戻りたい。飲み干して空になったコーヒーの缶を手に立ち上がると、座っていた椅子がガタッと音をたてた。
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