100均で始まる恋もある2

三森のらん

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7.オーナメント

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 夕方頃になって、月末の会議のための資料を作る集中力が切れた。右手で瞼を軽く揉む。大きく背伸びをすると、「んーっ」という声が自然と漏れる。身体がゴリゴリに固まっている気がしたので、軽く気分転換も兼ねて、フロアの片隅にあるコーヒーメーカーでコーヒーを淹れるべく立ち上がる。
 ちょうどその時、パーテーションに区切られた打ち合わせスペースから、小島とバイトの女の子の姿が見えた。あれは、確か、臨時で来た濱田くんの知り合いだった気がする。そう思ったら、彼女に声をかけていた。

「濱田さんですか?」
「ああ、彼が君の代わりで来てた気がするんだけど」
「あっ、はい。えと、同じ大学に通ってます。学部は違うんですけど」

 彼女の隣に立つ、小島が訝し気に俺と彼女を何度もチラチラ見てくる。もうちょっと色々聞きたいところなんだが、小島の視線が正直煩かった。

「そうか……いや、彼、駅の百均でバイトしてるだろ? 最近、見かけなくてね。身体でも壊してるんじゃないかと、心配になってね」
「そうなんですね……じゃあ、今度、様子みてみます」
「ああ。ありがとう」

 それだけ聞くと、コーヒーメーカーへと向かう。案の定、俺の後ろに、小島がついてきていた。

「なんだ。小島」
「……山本課長って、意外と、心配性なんですね」
「あ?」

 上目遣いに見てくる小島に、俺は苦笑いする。

「だってぇ、たかがバイトの大学生の様子を気にするとか、優しいっていうか。どんな子だったか、私、忘れちゃいましたけど」

 小島にしてみれば、一度会っただけの相手だから、印象にも残っていないのかもしれないが、俺には『たかがバイトの大学生』ではない。少なくとも、彼とは話もし、食事もした。彼の笑顔や泣き顔も見た。

「あー、父親が息子を気に掛ける、みたいなものですか?」

 楽し気に話す彼女の言葉に、胸にズキンと痛みが走った。
 その言葉は二重の意味で、俺の隠していた苦い思いを浮かび上がらせる。俺と濱田くんの年齢差、そして、亡き娘静流のことを。生きていたら、静流は中学生くらいか。

「山本課長?」
「あ、ああ、そうだな」

 顔を引きつらせながらそう答え、コーヒーメーカーに紙コップをセットした。そして気が付いた。
 自分が、年齢差のことを気にしている割に、肝心の男同士だということに、違和感を感じていないことに。
 それは濱田くんだからだろうか。彼の泣いた顔を思い出し、再び、胸の痛みを感じる。
 コーヒーがなみなみと入った紙コップを取ると、まだ何か言いたげな小島を残し、俺は自分の席へと戻った。
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