100均で始まる恋もある2

三森のらん

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8.クリスマスツリー

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 遠藤の元カノの話で盛り上がっているうちに、腕時計に目を向けると、すでに予定の1時間が過ぎていた。

「悪い、俺はこの辺で失礼するよ」

 そう言って、席を立ちコートに手を伸ばす。

「何言ってるんですかっ。来たばっかりじゃないですかぁっ!」

 そう叫んだのは顔を真っ赤にした小島で、隣に座ってた佐藤さんの頭の上に、ミニスカサンタの衣装からはみ出そうな大きな胸を乗せて俺の方に身を乗り出した。

「小島ちゃーん、頭、重いー!」

 佐藤さんも酔っぱらっているのか、頬を膨らませて文句を言ってはいるものの、楽しそうですらある。丹野さんもニヤニヤしながら笑って見ている。この中でまともなのは遠藤と野原だけのようなので、俺は目の前にいた野原に、財布から取り出した1万円札を渡した。

「若い者で楽しんで。じゃ、とりあえず、これな」
「あ、はい。すみません」
「課長~、もしかして、これからデートですかぁ?」

 そう声をかけてきた遠藤。口元は笑っているようだが、その眼差しには少し鋭いものがある。遠藤の言葉に、騒いでいた小島たちの声が止まり、店内の騒めきだけが聞こえた。それも一瞬のこと。

「ええええええっ!」

 すぐに、遠藤以外のメンバーの驚きの声が響き、周囲の視線が俺たちのほうに向けられる。

「おいっ、大きな声出すな」

 俺が声を抑えながら注意すると、小島たちは慌てて身体を縮こませた。

「デートじゃないよ。ちょっと知り合いの子と約束があるだけだ」
「知り合いって、女の子ですかっ」

 必死な形相の小島。その必死さを仕事に向けてくれ、と内心思う俺。

「男の子だよ」
「本当ですかぁぁぁっ」
「本当、本当」
「いや、もしかしたら、恋人とかじゃないんですか」

 ニヤニヤしてるのは野原で、彼の言葉に女性陣は野原を睨みつける。その視線の鋭さに、さすがの野原も顔を引きつらせている。

「……違うって。とにかく、あとは任せたから」

 俺は苦笑いしながら、コートに腕を通す。

「じゃぁ、俺が相手をチェックしてこよう」

 楽しそうにそう言って立ち上がったのは遠藤だった。散々、小島から元カノの話を根掘り葉掘り聞かれ、うんざりしてたせいもあるのかもしれない。遠藤もコートを手にしようとしている。

「お前も前に会ってるだろうが」
「……ああ、彼ですか」
「え? 何? 彼って」

 今度は遠藤のほうに身を乗り出す小島。遠藤は、ただニヤリと笑うだけで、小島はムッとした顔をしたかと思ったら、すぐに俺の方に顔を向ける。

「誰です? 私も知ってます?」

 そう言いながら小島の手が、俺のコートの裾に伸びてきた。

「とりあえず、お先に」
「ちょ、課長、課長っ!」

 小島の手にコートを掴まれる前に、俺はテーブルから離れた。小島の俺を呼ぶ声を無視して、店を出ながら携帯を取り出し、濱田くんにメールを送る。すると、間髪入れずに返事が来た。前に一緒に飯を食った中華料理店にいるらしい。濱田くんの笑顔が頭に浮かぶと、俺の方まで顔が緩みそうになる。歩くスピードも速くなる。

「課長~。待ってくださいよぉ」

 後ろから追いかけてきたのは、やっぱり遠藤だった。俺はその声に足を止めることもなく、駅の階段を上り始める。いつの間にか、遠藤は俺の隣を同じようなペースで階段を上っている。ムカつくことに、俺は息が切れ始めているのに、隣の遠藤は余裕の表情だ。

「なんだっ、遠藤。まだっ、残ってれば、いいだろうに」
「いやぁ、小島たちから、ちゃんと見てこいって言われて」
「使いっぱしりかよ。言っただろっ、相手はっ、男だってっ」
「いやいや、こればっかりは、ちゃんと確かめないと」

 俺はため息をつきながらも、遠藤の相手をするよりも、濱田くんに会いたい気持ちの方が勝ってしまっていた。だから、この前、濱田くんを泣かせた原因を確認することも忘れ、濱田くんの待つ、中華料理店へと向かってしまった。
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